事業承継を法務・税務・財務から設計|株式・納税・経営権 |神戸市(須磨・垂水・西神・北神)の弁護士|初回相談無料|弁護士法人ひょうご支所神戸みらい法律会計事務所

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事業承継を法務・税務・財務から設計|株式・納税・経営権

事業承継を検討し始めると、「株式を誰に集めればよいのか」「相続税や贈与税の納税に会社や後継者は耐えられるのか」「経営権が親族間で分散しないか」「家族や株主の間で揉めないか」といった疑問が次々に出てきます。これらは、後継者を決めるだけでは解決しません。事業承継は、株式・議決権・代表権・税負担・資金繰り・親族間の調整を、法務・税務・財務の三つの面から同時に設計していく作業だからです。

この記事では、中小企業・同族会社・非上場会社の経営者、後継者、親族株主、経理・財務のご担当者に向けて、事業承継を三面から整理する考え方と、相談前に確認しておきたい資料を解説します。結論を先にお伝えすると、特定の制度や手法から入るのではなく、まず自社の株主構成と財務状況を把握することが出発点になります。具体的な税額計算や制度の適用可否は、会社ごとの事情により異なり、税理士等による確認が必要です。

株主構成や定款、決算書などを整理してからご相談いただくと、事業承継の方針を検討しやすくなります。まずは現状の資料を確認するところから始めましょう。

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事業承継でまず押さえたい結論

事業承継は、「後継者を決めること」だけではありません。次の四つを切り離さず、同時に検討する必要があります。

  • 株式と議決権を後継者にどう集約するか(経営権の確保)
  • 相続税・贈与税などの税負担をどう見込むか(税務)
  • 納税資金や株式の買取資金をどう確保するか(資金繰り)
  • 後継者以外の相続人や親族株主とどう調整するか(紛争予防)

これらを法務・税務・財務で別々に検討すると、後から矛盾が生じることがあります。たとえば、税負担を抑える設計を優先した結果、経営権が分散したり、納税資金が不足したりする可能性があります。経営権を渡す時期と、財産権(株式)を移す時期は、必ずしも同じではありません。どの順序で、いつ、何を移すかを一体で考えることが重要です。

事業承継では「株式集中」「納税」「経営権」「資金繰り」を同時に検討します。一つの制度だけで全部が解決するわけではない、という前提で進めることをおすすめします。

法務・税務・財務の三面から見た全体像

事業承継で確認すべき事項を、三つの面から整理すると次のようになります。関係する資料や専門家も異なります。

視点 主に確認する事項 主に関係する専門家
法務 株主名簿・定款・登記、議決権割合、株式の集中、機関設計、遺言・遺留分、株主間の合意 弁護士
税務 非上場株式の評価、贈与・相続・譲渡・退職金などの課税、納税猶予制度の適用可否 税理士・公認会計士
財務 納税資金・株式買取資金・退職金、借入金・個人保証・担保、金融機関対応 公認会計士・金融機関

三つの面は独立しておらず、互いに影響し合います。たとえば株式評価(税務)が高いと、納税資金(財務)の確保が課題になり、その資金を捻出するために株式の一部を他の親族に残すと、経営権(法務)が分散する、というように連動します。だからこそ、分けて考えるのではなく、横断的に整理することが大切です。

事業承継の基礎知識

承継のかたち

事業承継には、大きく分けて親族内承継、役員・従業員承継、第三者承継(社外への引継ぎ)があり、第三者承継の手法としてM&Aが用いられることもあります。どの形が適しているかは、後継者の有無、株式の状況、会社の財務内容によって変わります。

非上場株式・議決権・代表権の関係

中小企業の多くは、株式に譲渡制限を付した非上場会社です。会社の意思決定は株主総会の議決権により左右されるため、後継者が安定的に経営するには、代表取締役という「地位」だけでなく、議決権を伴う「株式」を一定程度集約しておく必要があります。代表権と株式(財産権)は別の問題であり、両方を計画的に承継することが求められます。

相続税・贈与税と納税猶予の位置づけ

株式を後継者に移す方法には、生前贈与、相続、譲渡などがあり、それぞれ課税関係が異なります。非上場株式は評価額が高くなることがあり、相続税・贈与税の負担が事業承継の障害になる場合があります。こうした負担を緩和する制度として、後述する法人版事業承継税制(納税猶予・免除)があります。ただし、制度名から入るのではなく、まず自社の株主構成と財務状況を確認することが先決です。

法務の視点 — 株式集中と経営権の確保

株主名簿・定款・登記の確認

最初に、株主名簿、定款、登記事項証明書を確認し、現在の株主構成と議決権割合、株式譲渡制限の有無、機関設計を把握します。古い会社では、株主名簿が実態と一致していないことや、定款が現行の会社法に対応していないことがあります。

後継者への株式集中の必要性

安定した経営のためには、後継者に議決権を集約することが重要です。会社法上、株主総会の普通決議・特別決議には一定の議決権割合が必要であり、後継者の保有割合によって、できる意思決定の範囲が変わります。どの程度集約すべきかは、会社の状況や他の株主との関係により異なるため、資料を確認したうえで検討する必要があります。

少数株主・名義株・所在不明株主

親族や元役員などに株式が分散している場合、将来の意思決定や承継の妨げになることがあります。また、過去の経緯で名義と実質的な株主が一致しない「名義株」や、連絡が取れない「所在不明株主」が存在することもあります。これらは早期に把握し、対応を検討することが望まれます。対応方法は事案により異なります。

機関設計

取締役、代表取締役、株主総会、取締役会の構成をどう設計するかも重要です。後継者の就任時期、現経営者の関与の度合い、役員構成の見直しを、登記手続も含めて計画します。

遺言・遺産分割・遺留分への配慮

株式を相続で承継させる場合、遺言の有無や内容、遺産分割の方法が問題になります。後継者に株式を集中させると、他の相続人の遺留分(民法上、一定の相続人に保障される最低限の取り分)との関係で争いが生じる可能性があります。後継者以外の相続人への配慮を、あらかじめ設計に織り込むことが大切です。

経営承継円滑化法の遺留分特例

中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律(経営承継円滑化法)には、一定の要件のもとで、後継者が取得した自社株式を遺留分の計算から除外したり、評価額を固定したりできる民法の特例が設けられています。適用には要件や手続があり、推定相続人全員の合意や所定の確認・許可が必要とされるため、利用の可否は個別事情により異なります。

種類株式(議決権制限株式・拒否権付株式など)、株主間契約、議決権の設計、定款変更などは、事業承継の有力な選択肢になり得ますが、設計を誤ると後の紛争につながることもあります。導入の可否は、会社の状況や株主構成を確認したうえで慎重に検討する必要があります。

税務の視点 — 株式評価と納税猶予

非上場株式の評価が税額に影響

非上場株式は市場価格がないため、財産評価基本通達などに基づいて評価されます。会社の規模、資産内容、利益の状況によって評価方法や評価額が変わり、それが相続税・贈与税の額に影響します。内部留保が厚い会社や不動産を多く保有する会社では、評価額が高くなり、納税資金が課題になりやすい傾向があります。

承継方法で税務上の取扱いが変わる

株式を移す方法(生前贈与、相続、譲渡、役員退職金の活用など)によって、課税される税目や取扱いが異なります。どの方法が適しているかは、会社の財務、株主構成、親族関係、資金繰りなどを総合して判断する必要があり、税額計算や申告は税理士等の確認が必要です。

法人版事業承継税制(一般措置・特例措置)

一定の要件を満たすと、後継者が取得した非上場株式に係る贈与税・相続税の納税が猶予・免除される「法人版事業承継税制」があります。従来からの「一般措置」と、平成30年度税制改正で10年間限定として拡充された「特例措置」があり、内容が異なります。下表は中小企業庁・国税庁の公表資料に基づきます。具体的な適用可否や税額は、税理士等の確認が必要です。

項目 一般措置 特例措置
事前の計画 不要 特例承継計画の提出が必要(提出期限:令和9年9月30日)
適用期限 なし 平成30年1月1日から令和9年12月31日までの贈与・相続
対象となる株式 総株式数の3分の2まで 取得したすべての株式
納税猶予の割合 贈与は100%、相続は80% 贈与・相続ともに100%
承継のパターン 複数の株主から1人の後継者 複数の株主から最大3人の後継者
雇用確保要件 5年間平均で8割の維持が必要 維持できない場合も理由を報告すれば猶予を継続できる

特例措置の期限と手続の流れ

特例措置を利用するには、令和9年9月30日までに認定経営革新等支援機関の指導・助言を受けた「特例承継計画」を都道府県へ提出し、令和9年12月31日までに贈与・相続による株式の取得(事業承継)を行う必要があります。その後、都道府県知事の認定を受け、税務署へ申告します。認定後も、原則として申告期限から5年間は年に1回の年次報告(都道府県)と継続届出(税務署)が必要で、要件を満たさなくなると猶予が取り消される可能性があります。なお、制度の今後のあり方は税制改正の動向により変わり得ます。

納税猶予制度は、要件、期限、手続、継続要件、取消リスクの確認が欠かせません。具体的な税額計算、株式評価、申告、届出、制度の適用可否は、必ず税理士等にご確認ください。節税のみを目的に設計すると、経営権、親族間の関係、資金繰りで別の問題が生じることがあります。

財務の視点 — 納税資金・買取資金・金融機関対応

納税資金・株式買取資金・退職金の確保

事業承継では、相続税・贈与税の納税資金や、株式を買い取る場合の資金、役員退職金などの資金需要が生じます。これらをどこから捻出するかを、早い段階で見込んでおくことが重要です。

会社の資金と後継者個人の資金を分ける

会社のキャッシュフローと、後継者個人の資金力は分けて考える必要があります。納税は原則として個人が負うため、会社に資金があっても、そのまま個人の納税に充てられるとは限りません。配当、役員報酬、退職金などの方法には、それぞれ税務上・会社法上の留意点があります。

借入金・個人保証・担保・経営者保証

借入金、個人保証、担保提供の状況も確認が必要です。現経営者が会社の借入に個人保証を提供している場合、後継者がそれを引き継ぐかどうかが問題になります。経営者保証の扱いについては、金融機関との協議が必要です。

財務内容によっては他の選択肢も

株価が高い会社、内部留保が厚い会社、債務超過の会社などでは、親族内承継だけでなく、役員・従業員承継や第三者承継(M&A)も選択肢になります。どれが適しているかは財務内容により異なり、金融機関、税理士、公認会計士、弁護士の連携が必要になる場面があります。

株主構成・定款・決算書・借入資料などを整理すると、法務・税務・財務の論点を分けて確認しやすくなります。具体的な税額や制度適用の可否は、税理士等とも連携して確認します。

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よく問題になるケース

事業承継では、次のような場面で判断に迷うことが多くあります。いずれも、結論は個別事情により変わります。

  • 後継者に株式が集まっておらず、経営権が安定しない
  • 兄弟姉妹や親族株主に株式が分散している
  • 株価が高く、相続税・贈与税の納税資金に不安がある
  • 現経営者が株式を手放す時期を決められない
  • 後継者はいるが、金融機関や取引先への説明が整理できていない
  • 個人保証、借入、担保が残っている
  • 後継者以外の相続人への配慮が必要
  • 名義株や所在不明株主が疑われる
  • 親族内承継とM&Aのどちらを選ぶべきか迷っている

これらは、一つの正解があるわけではなく、会社の株式評価、株主構成、承継方法、親族関係、資金繰りを確認したうえで方針を整理していくことになります。

事業承継前のチェックリスト

手続を進める前に、次の点を確認しておくと、検討がスムーズになります。

  • 株式移転前:現在の株主構成、議決権割合、株式譲渡制限の有無を確認したか
  • 贈与前:贈与の方法と課税関係、納税資金を税理士等と確認したか
  • 遺言作成前:後継者以外の相続人の遺留分に配慮した内容になっているか
  • 定款変更前:機関設計や種類株式の導入が会社の状況に合っているか
  • 株主総会前:必要な議決権割合と決議要件を確認したか
  • 金融機関説明前:借入・個人保証・担保の状況を整理したか
  • 税務申告前:制度の適用要件と提出期限を税理士等と確認したか

相談前に準備したい資料

ご相談の際は、次の資料があると、現状把握と方針整理が進めやすくなります。すべてが揃っていなくても構いません。

  • 定款、株主名簿、登記事項証明書
  • 決算書、法人税申告書、勘定科目内訳書
  • 株式評価に関する資料、借入金一覧、担保・保証に関する資料
  • 役員構成や親族関係が分かる資料
  • 遺言書、遺産分割協議書案、贈与契約書案、株式譲渡契約書案(あれば)
  • 取締役会・株主総会の議事録、事業計画、資金繰り表
  • 後継者候補の経歴や関与状況、顧問税理士・金融機関とのやり取り資料

弁護士に相談するタイミング

事業承継は、法務・税務・財務が交差します。早い段階で資料を整理しておくと、株主構成、税務上の課題、資金繰り、経営権の見通しを整理しやすくなります。相談によって結果が保証されるわけではありませんが、どの論点を、どの順序で、どの専門家と進めるべきかという対応方針を整理することができます。具体的な税額計算や申告は税理士等との連携・確認が必要であり、当事務所では弁護士・公認会計士の視点から、法務と財務の論点整理をお手伝いします。事業承継・企業法務のご相談については、法人のお客様向けの取扱業務法律顧問のページもご確認ください。

よくある質問(FAQ)

事業承継では最初に何を確認すべきですか。

まず自社の株主名簿・定款・登記と、決算書などの財務資料を確認することをおすすめします。制度の検討は、現状を把握した後の段階になります。

後継者に株式を集める必要はありますか。

安定した経営のためには議決権の集約が重要になることが多いですが、必要な割合や方法は会社の状況により異なります。資料を確認したうえで検討する必要があります。

株式を贈与すれば事業承継は完了しますか。

株式の移転は重要な要素ですが、それだけでは完了しません。経営権、納税資金、親族間の調整、登記や契約書の整備などを併せて検討する必要があります。

事業承継税制を使えば税金はかからないのですか。

法人版事業承継税制は、要件を満たした場合に納税を猶予・免除する制度であり、自動的に税負担がなくなるものではありません。要件、期限、継続要件、取消リスクの確認が必要で、適用可否は税理士等の確認が必要です。

相続で株式が分散すると何が問題ですか。

議決権が分散すると、会社の意思決定が滞ったり、後継者の経営が不安定になったりする可能性があります。あらかじめ承継方法を設計しておくことが望まれます。

納税資金は会社のお金で払えるのですか。

納税は原則として個人が負うため、会社の資金をそのまま充てられるとは限りません。配当や退職金などの方法には税務上・会社法上の留意点があり、税理士等との確認が必要です。

親族内承継とM&Aはどちらがよいですか。

後継者の有無、株式や財務の状況により異なり、一概には言えません。財務内容を確認したうえで、複数の選択肢を比較検討することになります。

弁護士に相談する前に何を準備すべきですか。

定款、株主名簿、登記事項証明書、決算書、借入・保証に関する資料などがあると、現状把握が進めやすくなります。揃っている範囲で構いません。

まとめ

  • 事業承継は、後継者を決めるだけでなく、株式・議決権・税負担・資金繰り・親族間調整を同時に設計する作業です。
  • 法務・税務・財務を分けて検討すると矛盾が生じることがあるため、横断的に整理することが大切です。
  • 制度名から入るのではなく、まず株主構成と財務状況の把握から始めることをおすすめします。
  • 法人版事業承継税制には一般措置と特例措置があり、特例措置には提出期限(令和9年9月30日)と適用期限(令和9年12月31日)があります。具体的な適用可否は税理士等の確認が必要です。
  • 早めに資料を整理し、弁護士・税理士・公認会計士・金融機関と連携して進めることが、円滑な承継につながります。

株主構成、定款、決算書、借入資料などを整理すると、事業承継の方針を検討しやすくなります。手続を進める前に、法務・税務・財務の論点を分けて確認することをおすすめします。具体的な税額や制度適用の可否は、税理士等とも連携して確認します。

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監修者・執筆者

弁護士・公認会計士 藤井貴之

兵庫県弁護士会所属/日本公認会計士協会兵庫会所属

企業法務・事業承継に関するご相談に対応しています。詳しくは弁護士紹介のページをご覧ください。

参考資料(本文で参照した公的機関の情報)

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