少数株主権の行使|帳簿閲覧・検査役・差止め・代表訴訟の使い分け |神戸市(須磨・垂水・西神・北神)の弁護士|初回相談無料|

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少数株主権の行使|帳簿閲覧・検査役・差止め・代表訴訟の使い分け

非上場の会社の株主で経営に関与していないと、役員への送金、関連会社との取引、会社資産の売却などに疑問があっても、十分な説明を受けられないことがあります。会社法上の手段には、会計帳簿の閲覧・謄写の請求、業務執行検査役の選任の申立て、取締役の違法行為の差止請求、株主代表訴訟があり、事実を調べるのか、行為を止めるのか、会社の損害を回復させるのかという目的と、その緊急性で選びます。資産の処分などが目前に迫っているときは、調査の完了を待たずに差止めを並行して検討します。使える手続と見通しは、持株割合や保有期間、会社の定款・機関設計、問題となる行為の内容によって異なります。

この記事の要点

  • 調査は会計帳簿の閲覧・謄写と業務執行検査役、違法な行為の防止は差止請求、会社の損害の回復は株主代表訴訟が中心です。決まった順番はありません。
  • 原則として議決権又は株式の3%以上が必要なのは、会計帳簿の閲覧・謄写と業務執行検査役です。差止請求と株主代表訴訟に持株割合の要件はありませんが、公開会社での6か月の継続保有や、単元未満株式についての定款の定めを確認します。
  • 株主代表訴訟の提訴請求後の60日は原則として待つ期間であり、過ぎると訴えを起こせなくなる期限ではありません。
  • 代表訴訟の賠償金は会社に支払われ、株主が受け取るものではありません。

少数株主権は目的と会社の状況で使い分ける

「少数株主権」は、一般に、一定割合(又は一定数)以上の議決権又は株式を持つ株主だけが行使できる権利を指します。本記事の手続のうち、会計帳簿の閲覧・謄写と業務執行検査役の選任はこれに当たり、違法行為の差止請求と株主代表訴訟は、持株割合の要件がない単独株主権です(保有期間や単元未満株式についての定款の定めは別に確認します)。株主の権利の全体は、少数株主が行使できる権利の全体像で解説しています。

本記事は通常の株式会社を対象とします。特例有限会社には、会計帳簿の閲覧・謄写と業務執行検査役の選任について総株主の議決権の10分の1以上とする特則があり(会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律第23条・第26条)、3%の説明は当てはまりません。合同会社、親会社の株主による子会社への権利行使、多重代表訴訟、上場会社に特有の手続(振替株式の個別株主通知など)は扱いません。

4つの手続でできることとできないこと

会社法上の4つの手続の違いは、次のとおりです。

4つの手続の比較(条文は会社法)
手続 目的・効果 株主資格・保有期間 主な限界
会計帳簿の
閲覧・謄写
(第433条)
調査:株主が会社に請求して会計帳簿と関連資料を閲覧・謄写し、取引の内容を確認する 議決権又は株式の3%以上(定款で引下げ可)。保有期間の要件なし 請求の理由を具体的に示す必要がある。法定の拒絶事由に当たると認められる場合は、会社は拒むことができる
業務執行
検査役の選任
(第358条)
調査:裁判所が選任した検査役が業務と財産の状況を調査し、裁判所に報告する 議決権又は株式の3%以上(定款で引下げ可)。保有期間の要件なし 不正の行為等を疑うに足りる事由が必要。報告だけで賠償や解任は実現しない
違法行為の
差止請求
(第360条)
防止:法令・定款に違反する行為などをやめるよう取締役に求める 持株割合の要件なし。公開会社は原則として6か月前から継続保有(定款で短縮可)。非公開会社は保有期間の要件なし 会社に著しい損害(監査役設置会社等では回復することができない損害)が生ずるおそれが必要
株主代表訴訟
(第847条)
損害の回復:役員等の会社に対する責任を追及する 持株割合の要件なし。保有期間は差止請求と同じ 原則として会社への提訴請求と60日の待機が必要。賠償金は会社に支払われる

表の「3%以上」は、総株主の議決権の3%以上か、自己株式を除く発行済株式の3%以上のどちらかを満たせば足ります。議決権で数える場合、株主総会で決議できる事項の全部について議決権を行使できない株主は「総株主」から除かれます。いずれの割合も定款で引き下げることができます。また、単元未満株式については、定款で権利の行使が制限されていることがあるため(同法第189条第2項)、差止請求や株主代表訴訟でも定款を確認します。

調査の手続を使っても、それだけで違法性が確定するわけではなく、経営権を得たり取締役を解任したりできるわけでもありません。また、4つの手続はこの順番で進めるものではなく、調査を進めながら差止めを検討するなど、並行して使う場面もあります。

持株割合だけでなく定款と機関設計を確認する

会社法の「公開会社」は、上場会社という意味ではありません。発行する全部の株式について譲渡による取得に会社の承認を要する旨の定款の定めがある会社が非公開会社(公開会社でない株式会社)で、一部の株式にでもその定めがなければ、上場していなくても公開会社です(会社法第2条第5号)。差止請求と株主代表訴訟の6か月の継続保有の要件は、公開会社にだけ適用されます。

確認には、定款、登記事項証明書、株主名簿、株式の取得経緯が分かる資料(譲渡や相続の資料など)を突き合わせます。名義と実際の株主が異なるとして株主資格そのものが争われることもあり、株主名簿の記載だけで足りるとは限りません。相続した株式が遺産分割前で複数の相続人の共有となっている場合(民法第898条第1項)は、権利を行使する者を一人定めて会社に通知しなければ、会社が同意した場合を除き、その株式について権利を行使できません(会社法第106条)。機関設計は、差止請求で必要となる損害の程度や、代表訴訟の前に会社を代表して提訴請求を受ける者に影響します。

会計帳簿閲覧謄写請求で取引の内容を確認する

対象の帳簿と請求理由を具体化する

議決権又は株式の3%以上を持つ株主は、会社の営業時間内であればいつでも、請求の理由を明らかにして、会計帳簿又はこれに関する資料の閲覧・謄写を請求できます(会社法第433条第1項)。公開会社でも保有期間の要件はありません。

対象は、総勘定元帳や仕訳帳などの会計帳簿と、疑問のある取引に関する伝票や請求書などの資料であり、取引と関係のない社内資料まで当然に含まれるわけではありません。電子データの帳簿については、法務省令で定める方法で表示したものの閲覧・謄写を求める制度であり、会計システムへのログイン権限やデータ一式の交付を当然に求められるわけではありません。

請求の理由は、不正が確定していなくても示すことができます。最高裁平成16年7月1日判決(最高裁判所第一小法廷、平成15年(受)第1104号・民集58巻5号1214頁)は、旧商法等の下での帳簿の閲覧・謄写の請求について、理由は具体的に記載しなければならないものの、その理由を基礎付ける事実が客観的に存在することの立証までは要しないと判断しました。旧法の事案であり、現行法では第433条の文言に即して検討しますが、不正の全体像を先に証明しなければ閲覧できないわけではありません。他方で、理由を示さずに請求できる、求めた資料がすべて開示される、という意味でもありません。

現行法は請求を書面で行うことまでは求めていませんが、拒否の当否が後で争われる場合に備え、対象期間、取引、帳簿・資料、調査の目的を整理した書面で請求し、日時の調整、送付日と到達日、拒否の理由を記録しておくことをおすすめします。

拒否された場合に確認すること

会社は、次のいずれかに当たると認められる場合を除き、請求を拒むことができません(会社法第433条第2項)。

  • 請求者が、その権利の確保又は行使に関する調査以外の目的で請求したとき
  • 請求者が、会社の業務の遂行を妨げ、株主の共同の利益を害する目的で請求したとき
  • 請求者が、会社の業務と実質的に競争関係にある事業を営み、又はこれに従事するものであるとき
  • 請求者が、閲覧・謄写によって知り得た事実を利益を得て第三者に通報するため請求したとき
  • 請求者が、過去2年以内に、閲覧・謄写によって知り得た事実を利益を得て第三者に通報したことがあるとき

帳簿に秘密の情報が含まれていることや、株主と経営陣が対立していることだけで、当然に拒否できるわけではありません。競争関係については、最高裁平成21年1月15日決定(最高裁判所第一小法廷、平成20年(許)第44号・民集63巻1号1頁)が、旧商法の下で親会社の株主が子会社の帳簿の閲覧・謄写の許可を求めた事案で、拒絶事由(許可の場面では不許可事由)に当たるというためには、競業をなす者であるなどの客観的な事実が認められれば足り、得た情報を競業に利用するなどの主観的な意図までは要しないと判断しています。現行法では「実質的に競争関係にある事業を営み、又はこれに従事する」かどうかを事業の内容に即して確認することになり、競合会社の株式を持つだけで一律に拒否されるとも、悪用しないと約束すれば当然に閲覧できるともいえません。

なお、決算書に当たる計算書類等は持株割合にかかわらず閲覧を請求でき(会社法第442条第3項)、会計帳簿とは対象が異なります。また、要件を満たす株主が株式を持つ会社に請求する場合、事前に裁判所の許可を得る必要はありません(許可が必要となるのは、親会社の株主が子会社の帳簿を求める場合などの別の制度です)。

拒否されたときは、会社がどの拒絶事由を主張しているのか、請求の理由や対象の特定に補うべき点がないかを確認したうえで、閲覧・謄写を求める訴えや、必要に応じて仮処分を検討します。仮処分は当然に認められるものではなく、担保を求められることもあります。請求理由の書き方は、会計帳簿閲覧請求の理由と拒否された場合の対応で解説しています。

業務執行検査役による調査を求める

業務執行検査役は、株主の申立てにより裁判所が選任し、会社の業務と財産の状況を調査する者です(会社法第358条)。株主総会の招集手続や決議方法を調査する検査役(同法第306条)とは別の制度です。

選任には不正等を疑うに足りる事由が必要

申し立てることができるのは、会計帳簿の閲覧・謄写と同じく議決権又は株式の3%以上を持つ株主で、割合の数え方と定款による引下げも同じです。6か月の継続保有は要件ではなく、先に会計帳簿の閲覧・謄写を請求しておくことも法律上の要件ではありません。

選任の要件は、業務の執行に関し、「不正の行為又は法令若しくは定款に違反する重大な事実があることを疑うに足りる事由」があることです(同条第1項)。不正が確定している必要はありませんが、経営への抽象的な不満や、会社が資料を開示しないことだけで当然に選任されるわけではありません。どの取引が、いつ、誰との間で、いくらで行われ、帳簿や会社の説明とどこが整合しないのかを、資料で具体的に示せるよう準備します。

調査の範囲・報告後の対応・費用

調査するのは裁判所が選任した検査役であり、申立てをした株主自身ではありません。検査役は、職務上必要があるときは子会社の業務と財産の状況も調査でき、結果を裁判所に報告します。会社と申立てをした株主には、報告の書面の写しの交付などがされます(同条第4項・第5項・第7項)。

裁判所は、必要があると認めるときは、取締役に対し、一定の期間内の株主総会の招集や、調査結果の株主への通知を命じます(同法第359条第1項)。もっとも、報告によって役員に賠償が命じられたり、取締役が解任されたりするわけではなく、その後の差止請求や代表訴訟などは別に検討します。

申立先は、会社の本店の所在地を管轄する地方裁判所です(同法第868条第1項)。裁判所は会社が検査役に支払う報酬の額を定めることができますが(同法第358条第3項)、株主に費用の負担が一切生じないという意味ではありません。申立ての費用、弁護士費用、予納金の要否と額、調査の期間は、申立先の裁判所や依頼する弁護士に個別に確認します。

取締役の違法行為を差止請求で止める

取締役が法令・定款に違反して会社の資産を処分しようとしているときなど、違法な行為がこれから行われる場合や続いている場合に、その行為をやめるよう求める手続が取締役の違法行為の差止請求です(会社法第360条)。

株主資格と会社に生じる損害の要件

持株割合の要件はありません。公開会社では原則として6か月前から引き続き株式を持つ株主が請求でき(期間は定款で短縮可)、非公開会社では保有期間の要件はありません(同条第1項・第2項)。単元未満株式の場合は、定款による制限がないかを確認します。

要件は、取締役が会社の目的の範囲外の行為その他法令若しくは定款に違反する行為をし、又はするおそれがあり、その行為によって会社に「著しい損害」が生ずるおそれがあることです。監査役設置会社、監査等委員会設置会社、指名委員会等設置会社では「回復することができない損害」に置き換えられます(同条第3項)。監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する定款の定めがある会社は、ここでいう監査役設置会社に当たらないため(同法第2条第9号)、監査役という役職の有無だけで判断せず、定款や登記事項証明書などで確認します。

判断の対象は会社に生じる損害であり、株主個人の不満や損害、結果として経営がうまくいかなかったことだけでは差止めの理由になりません。例えば(仮定の例です)、取締役が法令や定款の求める承認を経ずに、会社の主要な資産を時価を大きく下回る価格で関係者に譲渡しようとしている場合には、違反のおそれと会社の損害のおそれの両面から差止めを検討する余地があります。

実行が迫る場合の仮処分

判決を待つ間に行為が実行されるおそれがある場合は、差止請求とともに、仮の地位を定める仮処分の申立てを検討します(民事保全法第23条第2項)。申立てでは、次の二つを分けて示します(同法第13条)。

  • 保全すべき権利:株主として差止めを請求できること(保有期間など)、取締役の行為の法令・定款違反(そのおそれを含みます)と、それによって会社に著しい損害(又は回復することができない損害)が生ずるおそれ
  • 保全の必要性:判決を待っていては著しい損害又は急迫の危険を避けられないこと(実行の予定日や支払の予定を示す資料で裏付けます)

仮処分は、申し立てただけで行為が止まるものではなく、担保を求められることもあります(同法第14条)。財産の流出が目前に迫っている場合は、帳簿の閲覧などの調査を待たず、差止めと仮処分を先に、又は並行して検討します。

株主代表訴訟で会社に対する責任を追及する

役員等が任務を怠って会社に損害を与えたのに会社が責任を追及しない場合に、株主が会社のために訴えを起こす手続が株主代表訴訟(会社法上の「責任追及等の訴え」)です(会社法第847条)。

提訴請求と60日の原則・例外

持株割合の要件はなく、公開会社では原則として6か月前から引き続き株式を持つ株主(期間は定款で短縮可)、非公開会社では保有期間を問わず株主が対象です。ただし、定款の定めにより権利を行使できない単元未満株主は除かれ、株主や第三者の不正な利益を図る目的又は会社に損害を加える目的の訴えは認められません(同条第1項・第2項)。

株主は、原則として、まず会社に対し、被告となるべき者、請求の趣旨及び請求を特定するのに必要な事実を記載した書面の提出又は電磁的方法による提供により、訴えを起こすよう請求します(同条第1項、会社法施行規則第217条)。これが提訴請求であり、問題の取締役本人に抗議しただけでは足りません。

会社を代表して請求を受ける者は機関設計で異なり、取締役の責任追及であれば、監査役設置会社では監査役(会社法第386条第2項第1号)、監査等委員会設置会社では監査等委員(同法第399条の7第5項第1号)、指名委員会等設置会社では監査委員(同法第408条第5項第1号)です(その委員自身が訴えの相手方となる場合を除きます)。監査の範囲が会計に限定された監査役しかいない会社では、監査役が会社を代表して提訴請求を受けることにはなりません(同法第389条第7項)。宛先を確認し、到達日を証明できる方法で送付して記録を残します。

会社が請求の日から60日以内に訴えを起こさないときは、請求をした株主が会社のために訴えを起こせます(同法第847条第3項)。会社が訴えを起こさない場合、請求をした株主は、その理由の通知を求めることができます(同条第4項)。ただし、60日の経過により会社に回復することができない損害が生ずるおそれがある場合は、提訴請求と待機を経ずに直ちに訴えを起こせます(同条第5項)。すでに提訴請求をした場合に限られる例外ではありません。

60日は提訴請求の後に原則として待つ期間であり、これを過ぎると訴えを起こせなくなる期限(出訴期限)ではありません。責任追及には消滅時効などの期間の制限があり得るため、提訴請求をしたことで期間の問題が解決すると考えず、個別に確認します。訴えを起こした株主は、遅滞なく会社に訴訟告知をしなければなりません(同法第849条第4項)。

賠償金の帰属と費用・回収の見通し

役員等の責任(会社法第423条)を追及するには、どの義務に違反したのか、会社にどのような損害が生じたのか、両者の因果関係などを具体的に整理します。承認を受けずに行った競業取引については損害の額を、利益相反取引については一定の取締役の任務懈怠を推定する規定もあり(同条第2項・第3項)、誰が何を立証するかは一律ではありません。

勝訴しても、賠償金は会社に支払われます。株主個人が受け取る制度でも、株式を買い取らせる制度でもありません。また、判決を得ても、相手方に資力がなければ回収できないことがあります。

被告となった役員等は、訴えの提起が悪意によるものであることを疎明して、株主に担保を立てさせるよう申し立てることができます(同法第847条の4第2項・第3項)。株主は、敗訴しても悪意があったときを除き、会社に損害賠償責任を負いません(同法第852条第2項)。勝訴(一部勝訴を含みます)した株主は、訴訟費用以外の必要な費用や弁護士報酬のうち相当と認められる額を会社に請求できますが、支出額がそのまま補塡されるわけではありません(同条第1項)。訴訟費用の負担は別に判断されます。

裁判所に納める手数料は、訴訟の目的の価額を160万円として算定します(同法第847条の4第1項、民事訴訟費用等に関する法律第4条第2項)。令和8年(2026年)5月21日以後に提起する場合、被告1名なら、裁判所の手数料額早見表では電子申立て14,400円、書面申立て15,500円で、被告が1名増えるごとに2,000円が加算されます。申立ての方式は自由に選べるとは限らず、この額は弁護士費用や担保を含む費用の総額でもありません。会社自身が役員に損害賠償を求める訴訟には、この扱いは当てはまりません。

権利行使の前に整理する証拠と進め方

疑問と証拠を対応させる

確かめたい事項と裏付けの資料を対応させておくと、請求の理由や申立ての内容を具体化しやすくなります。ただし、次の資料を株主が当然に入手できるとは限りません。

立証したい事項と資料の対応
疑問・立証事項 対応資料 確認の限界
株主資格 定款、株主名簿、株式の取得や名義に関する資料(譲渡・相続の資料など) 株主名簿の記載だけで、名義と実際の株主が異なるという争いが解決するとは限らない
疑われる
資金の流出
総勘定元帳、振込記録、請求書、契約書 会計上の科目や残高の異常、税務上の否認は、それだけで違法や任務懈怠を意味しない
取引の承認と
役員の関与
株主総会議事録、取締役会議事録など 議事録の記載だけで、承認の適法性や役員の責任の有無が決まるわけではない
差止めの緊急性 契約の予定、実行日、支払の予定が分かる資料 予定は変わり得るため、把握した時期とともに記録する。入手は適法な方法に限る
代表訴訟の前提
となる提訴請求
提訴請求書の控え、到達の記録 会社を代表して請求を受ける者は機関設計によって異なるため、宛先を確認しておく

資料は、適法に入手した原本、写し、メールなどを改変せずに保存し、入手した日と経緯を記録します。会社のシステムへの無断でのアクセス、持ち出す権限のない資料の取得、関係者に圧力をかけて資料を出させることは避けてください。

緊急性・費用・回収可能性を踏まえて進める

進め方に法律で決まった順序はありません。次の点を確認し、目的と緊急性に合った手続を選びます。

  • 株主資格:持株割合、保有期間、単元未満株式の扱い、定款の定めと機関設計
  • 止めるべき行為:資産の処分や支払などの予定があるか、実行の予定日はいつか
  • 資料の保全:手元の資料を改変せずに保存し、入手の経緯を記録したか
  • 手続の選択:調査(帳簿の閲覧・謄写、検査役)、防止(差止め、仮処分)、損害の回復(代表訴訟)のどれが目的に合うか
  • その後の対応:追加の調査、責任追及、交渉のどれを想定するか
  • 期間の制限:60日とは別に、責任追及の請求権の消滅時効などを確認したか(行為の時期、問題を知った時期、行為の当時の法令や経過措置によって異なることがあります)
  • 株主資格の継続:手続の間も株主であり続けるか、3%以上が必要な手続ではその割合を保てるか(株式の譲渡の予定、相続した株式の遺産分割の状況など)

費用と見通しは、調査する資料の量、当事者の数、仮処分の要否、争点、会社や相手方の資力によって変わるため、手続を選ぶ段階で回収の見通しも検討します。

申立先も手続ごとに確認します。株主代表訴訟は本店の所在地を管轄する地方裁判所の専属管轄(会社法第848条)、業務執行検査役も本店の所在地を管轄する地方裁判所ですが(同法第868条第1項)、帳簿の閲覧・謄写を求める訴えや差止めの事件まで同じとは限りません。兵庫県内に本店がある会社でも、本庁と支部のどちらで扱うか、どの部署が窓口かは、事件の種類と本店の所在地によって異なります。神戸地方裁判所の窓口案内では、本庁の窓口として、訴訟の申立ては民事訟廷事務室、商事非訟の申立ては第3民事部、保全の問い合わせは第3民事部(分室)が示されていますが、提出方法や担当は申立ての時点で確認が必要です。

よくある質問

持株が3%未満だと、何もできませんか。

できることはあります。3%以上が原則として必要なのは会計帳簿の閲覧・謄写と業務執行検査役で、違法行為の差止請求と株主代表訴訟に持株割合の要件はありません。ただし、公開会社では原則として6か月の継続保有が必要で、単元未満株式は定款で権利の行使が制限されていることがあります。決算書に当たる計算書類等の閲覧も3%の要件なく請求できますが、会計帳簿とは対象が異なります。

業務執行検査役は、会計帳簿の閲覧を請求した後でなければ申し立てられませんか。

先に会計帳簿の閲覧・謄写を請求しておくことは法律上の要件ではなく、6か月の継続保有も要件ではありません。原則として議決権又は株式の3%以上を持つ株主が申し立てることができますが、不正の行為などを疑うに足りる事由を資料で具体的に示す必要があります。

株主代表訴訟で勝訴すれば、賠償金は株主が受け取れますか。

受け取れません。賠償金は会社に支払われ、株主個人が直接回収する制度でも、株式を買い取らせる制度でもありません。勝訴の判決を得ても、相手方の資力によっては回収できないことがあります。

少数株主権の行使を相談するとき

次の資料のうち、手元にあるものをご用意ください。資料が揃っていなくても、取引の実行や資産の処分が迫っている場合は、把握している事実と予定日を整理して早めにご相談ください。

  • 定款、登記事項証明書、株主名簿など、株主資格と機関設計が分かる資料
  • 株式の取得経緯や名義が分かる資料
  • 疑問のある取引の資料(決算書、振込記録、契約書、請求書など)
  • 会社とのやり取りの記録(請求書面の控え、会社の回答、メールなど)
  • 予定されている行為の内容と日付が分かる資料

相談予約のご案内

手元の資料をもとに、どの手続を使い、何を先に行うかを整理するご相談をお受けしています。ご相談の前に、相手方となる会社や役員等との利益相反を確認しますので、確認が済むまでは帳簿の写しなどの資料は送らず、予約の際は、お名前とご連絡先、対象の会社や相手方の名称、相談の概要、期限の有無だけをお知らせください。予約の受付は受任を意味するものではなく、ご相談やお問い合わせによって時効などの期間が止まることもありません。

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参考資料と情報の基準日

情報の基準日:令和8年(2026年)10月14日。同日時点で施行されている法令(会社法は令和8年8月12日施行のもの)と公表資料に基づく一般的な解説であり、個別の事案についての法的助言ではありません。結論は、事実関係や会社の定款・機関設計によって異なります。

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