【2026年12月施行】中小企業の内部通報窓口|社外弁護士へ委託する範囲 |神戸市(須磨・垂水・西神・北神)の弁護士|初回相談無料|

弁護士法人あわじみらい法律会計事務所

初回相談無料

兵庫県神戸市須磨区中落合2丁目2−5
名谷センタービル7階

 078-797-5227

受付時間 : 9:00〜20:00

【2026年12月施行】中小企業の内部通報窓口|社外弁護士へ委託する範囲

「内部通報の窓口は、社外の弁護士に任せればよいと聞いた」「2026年12月の法改正で、中小企業にも窓口の設置が義務づけられるのか」。内部通報体制の見直しを任された総務・法務のご担当者から、こうしたご相談をいただくことが増えています。

2026年12月1日には、公益通報者保護法の改正法が施行されます。もっとも、この改正によって、すべての中小企業に窓口の設置義務が新たに生じるわけではありません。他方で、従業員数にかかわらず、会社の規模を問わずに適用される新しい禁止規定や罰則もあります。ここを混同したまま「社外の弁護士に窓口を委託したので改正対応は完了した」と整理してしまうと、実際には会社側の体制が空白のまま残ります。

この記事では、中小企業の制度設計を担当する立場から、①自社に法律上の義務があるか、②社外弁護士窓口と法律上の外部通報はどう違うか、③社外弁護士にどこまで委託でき、会社内に何が残るか、④委託契約と内部規程で何を決めるか、を順に整理します。あわせて、施行前にそろえておきたい資料と、弁護士に相談する場面もお示しします。なお、具体的な結論は各社の事業内容、組織体制及び資料の内容によって異なります。

自社の人数区分の判定、既存の窓口と規程の見直し、委託先との役割分担については、資料を確認したうえで対応方針を整理することができます。

企業法務のスポット相談の内容を確認する

結論|社外弁護士窓口は「受付の外部化」であって、体制整備の完了ではありません

先に結論を述べます。社外弁護士窓口は、通報の心理的な障壁を下げ、経営陣からの独立性を確保することに資する場合があります。しかし、受付を社外に置いただけでは、調査、事実認定、是正、通報者の保護、記録、周知及び制度評価といった会社側の機能は残ったままです。法律上の体制整備義務は、窓口を社外に置くかどうかにかかわらず、事業者自身が負います。

そのうえで、次の四点を最初に確認してください。

内部通報体制を見直すときに最初に確認する四点
確認したいこと この記事での結論の方向 法令上の位置づけ 確認する資料
自社に義務があるか 常時使用する労働者の数が300人を超えるかどうかで、義務か努力義務かが分かれます。300人以下でも適用される規律は別にあります。 法律上の義務又は努力義務(公益通報者保護法第11条第1項から第3項まで) 雇用形態別の人数資料、出向・派遣に関する契約書
社外弁護士窓口は必要か 法律上、社外弁護士窓口を置くことは求められていません。社内のみ、社外のみ、併設のいずれもあり得ます。 法定指針及び指針の解説が示す選択肢(行政資料上の整理) 現行の内部規程、既存窓口の利用実績
どこまで委託できるか 受付、初期整理、匿名化などは委託になじみます。是正措置の決定と実行、不利益取扱いの防止、周知は会社に残ります。 法律上の義務と実務上の提案が混在する領域 委託契約書案、業務分担表、組織図
施行前に何をするか 人数判定、規程改定、従事者の指定、委託契約の見直し、周知及び研修を順に進めます。 法律上の義務、指針上の要請及び実務上の提案 就業規則、情報管理規程、顧問契約書

法的な位置づけの区別 この記事では、次の四つを区別して記載しています。ひとまとめに「法律で決まっていること」と読まないでください。

  • 法律上の義務又は禁止(条文を示します)
  • 2026年12月1日以後に効力が生じる改正事項(同日施行と記載します)
  • 法定指針、指針の解説、Q&Aなど行政資料が示す要請又は運用
  • 法令上の一律の義務ではない、リスク管理上の実務的な提案

2026年12月1日施行の改正で何が変わるか

改正法の位置づけ

今回の改正法は「公益通報者保護法の一部を改正する法律」(令和7年法律第62号)です。消費者庁の公表資料によれば、令和7年3月4日に国会へ提出され、同年4月24日に衆議院で修正議決、同年6月4日に参議院で可決・成立し、同年6月11日に公布されました。施行日は、施行期日を定める政令により、令和8年(2026年)12月1日とされています。

あわせて、法定指針及びその解説も改正されています。改正後の法定指針は「公益通報者保護法第11条第1項及び第2項の規定に基づき事業者がとるべき措置に関して、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針」(令和3年8月20日内閣府告示第118号。令和8年3月31日内閣府告示第15号による一部改正)です。

現行法と改正後の対比

窓口設計に影響する範囲に絞ると、主な変更点は次のとおりです。

窓口設計に影響する主な改正事項(現行法と2026年12月1日以後の対比)
項目 現行法(2026年11月30日まで) 2026年12月1日以後 根拠
従事者を定める義務 事業者は公益通報対応業務従事者を定めなければならない。常時使用する労働者の数が300人以下の事業者は努力義務。 この枠組み自体は維持されます。 法第11条第1項・第3項
体制整備の義務 必要な体制の整備その他の必要な措置をとらなければならない。300人以下は努力義務。 条文に「労働者等に対するその周知」が明示され、周知が体制整備の一内容であることが条文上明確になります。 法第11条第2項
通報を妨げる行為 正面から禁止する規定はありません。 正当な理由なく公益通報をしない旨の合意を求めること等により公益通報を妨げることが禁止され、これに違反してされた合意その他の法律行為は無効となります。 改正後の法第11条の2
通報者の探索 正面から禁止する規定はありません。 正当な理由なく公益通報者を特定することを目的とする行為が禁止されます。 改正後の法第11条の3
解雇・懲戒の効力 公益通報を理由とする解雇は無効。 解雇に加え、懲戒としてされた不利益な取扱いも無効とされます(あわせて「解雇等特定不利益取扱い」と定義されます)。 改正後の法第3条第1項・第2項
立証責任 通報を理由とすることの立証は、原則として通報者側の負担になります。 公益通報をした日等から1年以内にされた解雇等特定不利益取扱いは、公益通報をしたことを理由としてされたものと推定されます。 改正後の法第3条第3項
刑事罰 従事者の守秘義務違反に罰金刑があります。 公益通報を理由とする解雇・懲戒に直罰が新設され、法人には別枠の罰金刑が科され得ます。 改正後の法第21条第1項、第23条
行政の権限 報告徴収、助言、指導及び勧告と、勧告に従わない場合の公表。 勧告に従わない場合の命令、立入検査等が加わり、命令違反や検査拒否には罰金刑が定められます。 改正後の法第15条の2、第16条、第21条第2項
保護される通報者 労働者、派遣労働者、退職者、役員など。 業務委託を受ける特定受託業務従事者(いわゆるフリーランス)及びその契約終了後の者が加わります。 改正後の法第2条、第5条

罰則は「対象となる行為」と「対象者」を分けて確認する

改正で刑事罰が新設されたことは事実ですが、法に反する行為のすべてが刑事罰の対象になるわけではありません。罰則の対象となる行為は限定されています。特に、直罰と推定規定の対象は、あらゆる不利益取扱いではなく、解雇と懲戒に絞られている点に注意してください。降格、減給、配転などの不利益な取扱いは、禁止されてはいるものの、直罰と推定の対象とは範囲が異なります。

改正後の主な罰則等(対象行為と法定刑)
対象となる行為 効果 対象となる者 根拠
公益通報を理由とする解雇・懲戒 6月以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金 当該違反行為をした者 改正後の法第21条第1項
同上(法人の業務に関して行われた場合) 法人に3000万円以下の罰金刑 法人(国及び地方公共団体を除く取扱いが定められています) 改正後の法第23条
行政庁の命令に違反した場合、報告をせず若しくは虚偽の報告をした場合、検査を拒み・妨げ・忌避した場合 30万円以下の罰金(両罰の対象) 当該違反行為をした者及び法人 改正後の法第21条第2項、第23条
従事者が正当な理由なく通報者を特定させる事項を漏らした場合 30万円以下の罰金 従事者又は従事者であった者 法第12条、改正後の法第22条
通報妨害・通報者探索 禁止規定であり、妨害に関する合意等は無効。刑事罰は定められていません。 事業者 改正後の法第11条の2、第11条の3

改正後の執行実務はこれから積み重なる段階です。どのような事案で命令や公表がされるか、直罰がどのような場面で適用されるかについては、現時点で確立した運用があるわけではありません。この記事の記載も、条文と行政資料から読み取れる範囲にとどまります。

従業員数にかかわらず適用される規律がある

ここが誤解の生じやすい点です。従事者の指定義務と体制整備義務は、常時使用する労働者の数によって義務と努力義務に分かれます。しかし、通報妨害の禁止、通報者探索の禁止、解雇・懲戒の無効、推定規定、直罰及び両罰規定は、いずれも人数区分による限定を設けていません。

したがって、常時使用する労働者が10人の会社であっても、公益通報をした従業員を懲戒すれば、その懲戒は無効となり得ますし、行為者と法人が刑事罰の対象になり得ます。「うちは努力義務だから対応は不要」という整理は、この点を見落としています。

自社が義務対象かを確認する方法

「中小企業」と法第11条第3項の人数区分は別のもの

社内の会議では、しばしば「うちは中小企業だから対象外」という言い方がされます。しかし、公益通報者保護法は「中小企業」という区分を用いていません。同法第11条第3項が用いているのは「常時使用する労働者の数が三百人以下の事業者」という基準です。中小企業基本法上の中小企業者の定義とは、そもそも別の基準です。

中小企業基本法上の中小企業者と、公益通報者保護法第11条第3項の人数区分の違い
業種 中小企業基本法第2条第1項の中小企業者 公益通報者保護法第11条第3項
製造業、建設業、運輸業その他の業種 資本金の額又は出資の総額が3億円以下の会社、又は常時使用する従業員の数が300人以下の会社及び個人 業種を問わず、常時使用する労働者の数が300人以下であれば努力義務。300人を超える(すなわち301人以上)場合は義務。
卸売業 資本金の額又は出資の総額が1億円以下の会社、又は常時使用する従業員の数が100人以下の会社及び個人
サービス業 資本金の額又は出資の総額が5000万円以下の会社、又は常時使用する従業員の数が100人以下の会社及び個人
小売業 資本金の額又は出資の総額が5000万円以下の会社、又は常時使用する従業員の数が50人以下の会社及び個人

この表からわかるとおり、中小企業基本法上は資本金基準で「中小企業者」に当たる製造業の会社でも、常時使用する労働者が301人以上であれば、公益通報者保護法上は義務対象になります。逆に、卸売業で従業員が150人であれば、中小企業基本法上は中小企業者に当たらない場合がありますが、公益通報者保護法上は努力義務側です。両者を同一視しないでください。

「常時使用する労働者」が300人を超えるかの確認手順

人数の判定は、実務上もっともつまずきやすいところです。正社員だけを数えて「280人だから努力義務」と判断していたところ、パートタイム労働者を含めると300人を超えていた、という例は珍しくありません。

消費者庁の「公益通報者保護制度Q&A」には、「常時使用する労働者」の意味と、パート、アルバイト、契約社員、非正規社員、出向者、派遣労働者の取扱いに関する項目が置かれています。自社の人数が300人前後である場合は、次の資料をそろえたうえで、同Q&Aの記載に即して判定してください。判定の結論が義務と努力義務のどちらに振れるかで、その後の設計が大きく変わります。

  • 雇用形態別の在籍者数がわかる資料(正社員、契約社員、パートタイム労働者、アルバイト等の別)
  • 直近の労働者名簿及び賃金台帳
  • 出向契約書と、出向者の雇用関係がどちらに残っているかがわかる資料
  • 労働者派遣契約書と、受け入れている派遣労働者の人数がわかる資料
  • 業務委託契約書と、いわゆるフリーランスへの委託状況がわかる資料
  • グループ会社がある場合は、各社の在籍者数と兼務・出向の状況

「常時使用する労働者」の具体的な算定方法、基準となる時点、派遣労働者や出向者の取扱いは、公表資料の記載に即して確認する必要があります。人数が境界線上にある会社が、努力義務側であることを前提に設計を進めると、判定を誤ったときに義務違反の状態が生じます。境界線上の会社は、義務対象であることを前提に設計しておくほうが、後戻りが少なくなります。

300人以下の会社に残る課題

常時使用する労働者が300人以下の会社は、従事者の指定と体制整備が努力義務にとどまります。もっとも、次の三点は、努力義務であることとは別に検討が必要です。

  • 通報妨害の禁止、通報者探索の禁止、解雇・懲戒の無効、推定規定、直罰及び両罰規定は、人数区分にかかわらず適用されます。
  • 指針の解説は、体制整備について努力義務を負うにとどまる中小事業者においても、組織の長その他幹部からの影響力が不当に行使されることを防ぐため、独立性を確保する仕組みを設ける必要性が高いことに留意すべき旨を示しています。
  • ハラスメントに関する相談体制の整備は、公益通報者保護法とは別に、労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律第30条の2第1項等により、事業主の雇用管理上の措置として求められています。人数区分による免除はありません。

「社外弁護士窓口」と法律上の「外部通報」は別のもの

通報先の三類型を整理する

用語の混同が、設計の議論を止めてしまうことがあります。法律上の「外部」は、会社の外にある窓口という意味ではありません。会社があらかじめ定めた社外の法律事務所への通報であっても、通報先として会社が定めている以上、法律上は事業者に対する通報、すなわち一号通報(内部公益通報)として扱われます。

公益通報者保護法上の通報先の三類型(労働者による通報の場合)
類型 通報先 主な保護要件 窓口設計上の意味
一号通報(内部公益通報) 役務提供先又は役務提供先があらかじめ定めた者。社外に設置した窓口もここに含まれ得ます。 通報対象事実が生じ、又はまさに生じようとしていると思料すること。 会社が設計できるのはこの類型です。社内窓口も社外弁護士窓口も、ここに位置づけられます。
二号通報 処分等の権限を有する行政機関等 相当の理由があること、又は氏名等を記載した書面を提出すること。 会社の設計の対象外です。社内で受け止められなければ、この経路に進みます。
三号通報 被害の発生・拡大の防止に必要と認められる者(報道機関、消費者団体等) 相当の理由に加え、法第3条第3号イからヘまでのいずれかに該当すること。 社内対応が機能しない場合に保護要件が満たされやすくなります。ここを避けることが体制整備の実務的な目的の一つです。

社内、社外、併設のどれを選ぶかは会社が決める

法律は、内部公益通報を受け付ける窓口を社外に置くことを義務づけていません。逆に、社外に置くことを禁じてもいません。指針の解説は、内部公益通報受付窓口について、事業者内の部署に設置するのではなく事業者外部(外部委託先、親会社等)に設置すること、及び事業者の内部と外部の双方に設置することも可能である旨を示しています。中小企業について、何社かが共同して事業者の外部(例えば、法律事務所や民間の専門機関等)に窓口を委託することや、事業者団体・同業者組合等の関係事業者共通の窓口を設けることも、考えられる例として挙げられています。

「20日」は社内窓口の回答期限ではありません

社内で「20日以内に回答しなければ違法になる」という説明がされていることがありますが、正確ではありません。法第3条第3号ホは、書面により一号通報をした日から20日を経過しても調査を行う旨の通知がない場合等を、三号通報が保護される要件の一つとして定めています。これは通報者側の保護要件であって、社内窓口に対する法定の回答期限ではありません。

もっとも、指針の解説では、受付から20日以内に調査開始の有無を伝えることが例として挙げられています。法律上の期限ではないものの、報道機関等への通報が保護される要件が満たされる状態を放置しないという意味で、運用上の目安として合理性があります。委託契約に対応目安を定める場合も、法定の期限としてではなく、当事者が合意した運用基準として書き分けてください。

社外弁護士へ委託できる範囲と会社に残る役割

受付から制度評価までを機能に分解する

「窓口を委託する」という言い方は、実際には十数個の機能をひとまとめにしています。委託の範囲を決めるには、まず機能を分解し、一つずつ担い手を決める必要があります。次の表は、その分解と一般的な整理です。実際の分担は、会社の規模、社内の人材、想定される通報の内容によって変わります。

内部公益通報対応の機能分解と担い手の整理
機能 社外弁護士への委託 会社に残る役割 位置づけ
通報の受付と受領連絡 委託になじみます。 受付経路を定め、周知すること。 体制整備の一部(法第11条第2項)
匿名・顕名の意思確認と匿名のままの双方向連絡 委託になじみます。専用の連絡手段の運用を含みます。 匿名でも受け付ける方針を規程に定めること。 指針の解説が示す運用
初期聴取と資料の受領 委託になじみます。 受領した資料の保管方法とアクセス権限を定めること。 指針上の要請及び実務上の提案
公益通報該当性の一次整理と振分け 委託になじみます。 公益通報以外の相談の受け皿を用意すること。 実務上の提案
緊急度、証拠保全の要否、人身の安全に関する初期評価 委託できますが、判断の実行には会社の関与が必要です。 緊急時に連絡を受ける責任者と、その代替者を定めること。 実務上の提案
通報者を特定させる事項の匿名化と会社への報告 委託になじみます。 報告を受ける範囲を限定し、共有先を記録すること。 範囲外共有の防止(指針)
案件ごとの利益相反の確認 委託先自身も確認します。 会社側でも、社内の関与者に事案関係者が含まれていないかを確認すること。 利益相反の排除(指針)
調査の要否の判断と調査計画 助言を委託できます。 調査を行うか否かの決定は、原則として会社が行います。 法第11条第2項に基づく体制整備の中核
ヒアリング、文書・電子データの調査 委託できます。中立性・公正性に疑義が生じるおそれがある場合の起用は避けるべきとされています。 調査対象となる資料へのアクセスを可能にすること。就業規則等の根拠を確認すること。 指針の解説が示す留意点
事実認定と法的評価 委託できます。 認定結果を受けて判断する主体は会社です。 実務上の提案
経営陣、監査役、社外役員への報告 経営陣が関係する事案では、社外弁護士から監査機関へ直接報告する経路を設けることも考えられます。 報告先と意思決定者を、事案の類型ごとにあらかじめ定めること。 組織の長その他幹部からの独立性の確保(指針)
是正措置、被害回復及び再発防止策の決定と実行 助言はできますが、決定と実行は委託できません。 会社が決定し、実行します。 法第11条第2項に基づく体制整備の中核
通報者への進捗及び結果の通知 委託できます。 通知すべき内容を委託先へ伝えること。 是正措置等の通知(指針)
不利益取扱いの監視とフォローアップ 確認の窓口を委託することはできます。 人事情報を持つ会社でなければ、不利益取扱いの有無は把握できません。 不利益な取扱いの防止(指針)
記録の作成・保管、アクセス管理 委託先側の記録は委託先が管理します。 会社側の記録の保管期間とアクセス権限は会社が定めます。 記録の保管(指針)
運用実績の集計と体制の評価・点検 点検を社外の第三者に依頼することは考えられます。 評価・点検を実施し、改善するのは会社です。 見直し・改善(指針)
役員・従業員への周知 資料作成の支援は委託できます。 周知は会社が行います。改正後は条文上も体制整備の内容として明示されます。 改正後の法第11条第2項
従事者に対する教育・研修 講師としての関与は委託できます。 実施主体は会社です。 従事者に対する教育(指針)

受付だけを外部化しても完了しない理由

表を見ていただくとわかるとおり、委託になじむのは、受付から一次整理までの前半部分です。是正措置の決定と実行、不利益取扱いの防止と把握、周知、記録、評価・点検といった後半部分は、人事権と業務執行権限を持つ会社でなければ担えません。法第11条第2項が求めているのは、この一連の流れが機能する体制であって、受付窓口の存在そのものではありません。

実際にご相談を受けていて多いのが、「社外の窓口はあるが、通報を受けたあと社内の誰に上げるかが決まっていない」「通報があったこと自体は聞いているが、調査を誰の権限で始めるのかが決まっていない」という状態です。この状態では、通報が来た時点で対応が止まります。

委託の範囲、社内に残す責任者、報告経路、利益相反が生じた場合の代替ルートは、既存の規程と契約書を確認したうえで具体的に検討します。継続的に相談できる体制を検討されている場合は、法律顧問の業務内容もあわせてご確認ください。

法律顧問の業務内容を確認する

社内窓口と社外弁護士窓口の設計モデル

実務上は、次の三つの型のいずれか、又はその組合せに落ち着くことが多いところです。どれが適切かは、規模、想定される通報量、経営陣が関係する通報のリスク、社内の人材及び費用負担で変わります。

内部通報窓口の三つの設計モデル
モデル 概要 検討する場面 注意点
社内中心型 社内に窓口を置き、外部の弁護士には必要に応じて助言を求めます。 組織規模が小さく、通報件数も限られる場合。まず制度を立ち上げる段階。 担当者が人事部門に近いと利用が進まないことがあります。経営陣が関係する事案の受け皿を別に用意する必要があります。
社外受付・社内対応の併設型 受付を社外の法律事務所に委託し、調査と是正は社内の責任者が担います。社内窓口も併設します。 通報しやすさと社内での実行力を両立させたい場合。多くの中小企業で現実的な選択肢です。 社外窓口から社内へ何をどこまで報告するかを、契約と規程で具体的に決める必要があります。
調査支援まで外部活用型 受付に加え、事案に応じて調査や事実認定の支援まで外部に依頼します。 経営陣や役員が関係する事案、社内に調査経験がない場合、利害関係が複雑な場合。 費用が増えます。中立性・公正性に疑義が生じるおそれがある事務所の起用は避ける必要があります。是正の決定は会社に残ります。

選択にあたっては、次の判断軸を用いると議論が整理されます。

  • 常時使用する労働者の数と、義務・努力義務のいずれに当たるか
  • 想定される通報の内容(会計、品質、労務、ハラスメント等)と、社内に対応できる人材がいるか
  • 経営陣、役員又は特定の部門長が関係する通報が想定されるか
  • 既存のハラスメント相談窓口と統合するか、分けるか
  • 年間の想定件数と、委託にかけられる費用
  • グループ会社がある場合、共通窓口とするか各社ごとに置くか

顧問弁護士を窓口にする場合の注意点

一律に可でも不可でもありません

顧問弁護士を内部公益通報受付窓口とすることについて、法律は禁止していません。消費者庁のQ&Aにも、顧問弁護士を内部公益通報受付窓口とすることに関する項目が置かれています。他方で、指針の解説は、顧問弁護士を窓口とすることについて、顧問弁護士に内部公益通報をすることを躊躇する者が存在し、そのことが通報対象事実の早期把握を妨げるおそれがあることに留意すべき旨を示しています。

つまり、可否の問題というより、通報が実際に集まるかどうかという実効性の問題として検討すべき事項です。日常的に会社側の相談を受けている弁護士が窓口になっている場合、通報者からは「会社側の人」と見えます。これは弁護士の中立性の有無以前の、利用者側の受け止めの問題です。

弁護士の側の制約

弁護士には、依頼者について職務上知り得た秘密を正当な理由なく他に漏らし、又は利用してはならないという義務があります(弁護士職務基本規程第23条)。また、受任している他の事件の依頼者又は継続的な法律事務の提供を約している者を相手方とする事件や、依頼者の利益と他の依頼者の利益が相反する事件については、原則として職務を行うことができません(同規程第27条、第28条)。同一の法律事務所に所属する他の弁護士が職務を行い得ない事件についても、同様の制約があります(同規程第57条)。

ここで重要なのは、窓口を担当する弁護士は会社から委託を受けた立場であって、通報者個人の代理人ではないということです。通報者に対しては、この立場をあらかじめ明示しておく必要があります。窓口の案内文で「弁護士があなたの味方になります」といった説明をしてしまうと、実際の役割と食い違います。

弁護士が関与した資料であることを理由に、訴訟や行政調査において常に開示が免れるわけではありません。日本法上、いわゆる秘匿特権が一般的に保障されているという前提で調査資料を作成すると、想定と異なる結果になることがあります。調査記録の作成方法は、事案ごとに検討してください。

経営陣が関係する通報のための代替ルート

指針は、内部公益通報受付窓口で受け付ける通報に関し、組織の長その他幹部に関係する事案については、これらの者からの独立性を確保する措置をとることを求めています。また、事案に関係する者を公益通報対応業務に関与させない措置をとることも求めています。指針の解説は、独立性を確保する方法の一つとして、窓口を事業者外部に設置することを挙げるとともに、複数の窓口を設ける場合には、少なくとも一つについて独立性を確保する方法など、事業者の規模に応じた方法も考えられる旨を示しています。

社外の弁護士に委託したというだけで独立性が自動的に確保されるわけではありません。次のような場合に備えて、あらかじめ別の経路を用意しておくことが実務上重要です。

  • 代表取締役その他の取締役が通報の対象となっている場合
  • 社内の窓口責任者や人事部門の責任者が通報の対象となっている場合
  • 窓口を担当している法律事務所自身が、通報に関係する取引や助言に関与していた場合
  • 顧問先である取引先が関係し、委託先との間で利益が相反する場合

代替ルートの例としては、監査役又は監査等委員へ直接届く経路、社外役員へ届く経路、窓口を担当する事務所とは別の法律事務所へ届く経路が考えられます。どの経路を用意するかは、機関設計と役員構成によって変わります。

取締役の責任追及や社内の調査手続の考え方については、役員の使途不明金・私的流用に関する会社側の調査と責任追及の解説もあわせてご覧ください。顧問契約の活用範囲を検討されている場合は、顧問弁護士の必要性と費用対効果の考え方が参考になります。

秘密保持、匿名通報、個人情報及び公正な調査

匿名性や秘密保持を無条件に約束することはできません

周知資料の文案でもっとも注意が必要なのが、この部分です。窓口の案内文に、匿名性や秘密の保持を無条件に約束する記載を置きたくなりますが、そのとおりに運用できない場面があります。約束した内容と実際の運用が食い違うと、制度そのものへの信頼が失われます。

指針の解説は、外部窓口を設ける場合の例として、公益通報者を特定させる事項は、公益通報者を特定した上でなければ必要性の高い調査が実施できない等のやむを得ない場合を除いて、公益通報者の書面や電子メール等による明示的な同意がない限り、事業者に対しても開示しないこととする等の措置を講ずることも考えられる旨を示しています。裏を返せば、やむを得ない場合や明示的な同意がある場合には、会社へ共有されることがあるということです。

また、通報内容と所属部署の組合せから、結果として本人が推測されてしまうことは避けられない場合があります。案内文は、次のような書き方が実態に合います。

  • 匿名での通報を受け付けること
  • 通報者を特定させる事項は、原則として本人の明示的な同意がない限り会社に共有しないこと
  • 調査上どうしても必要な場合には、あらかじめ本人に説明し、同意を得る手順を踏むこと
  • 共有する場合も、必要最小限の範囲にとどめること
  • 通報内容の性質上、本人が推測される可能性が残ること

なお、匿名であることを理由に調査をしない運用は適切ではありません。指針の解説は、範囲外共有の防止や通報者の探索の防止についても措置を求めており、匿名のまま双方向の連絡ができる仕組みを用意しておくことが、調査と保護の両立に役立ちます。

個人情報保護法上の整理は、データの流れごとに決める

社外に窓口を置くと、通報者や関係者の個人情報が会社と委託先の間で移動します。この移動をどう位置づけるかによって、必要な手当てが変わります。

社外窓口を設ける場合に検討する個人情報保護法上の論点
論点 検討する内容 根拠
利用目的 内部通報対応のために個人情報を取得・利用することを、利用目的として整理できているか。 個人情報の保護に関する法律
安全管理措置 受付記録、調査記録、音声データ等の保管方法、アクセス権限、送信先の誤りを防ぐ手順を定めているか。 同法第23条
委託先の監督 個人データの取扱いを委託する場合、委託先に対する必要かつ適切な監督を行っているか。 同法第25条
第三者提供・共同利用 会社と委託先との間の情報の流れが、委託に伴う提供、第三者提供、共同利用のいずれとして整理されるか。整理に応じて、同意、通知、公表の要否が変わります。 同法第27条
漏えい等の報告 委託先で漏えい等が生じた場合の連絡手順と、個人情報保護委員会への報告及び本人への通知の要否を定めているか。 同法第26条
保存と消去 記録の保管期間、契約終了時の返還・消去の方法、クラウド利用や再委託の可否を定めているか。 同法第23条及び第25条に関連する実務対応

外部の弁護士による個人情報の取扱いを、当然に「委託」と決めつけないでください。弁護士が独立した立場で通報を受け付け、自ら判断して会社へ報告する設計とする場合、会社の指揮監督の下で個人データを取り扱う典型的な委託とは実態が異なることがあります。契約書上の名称ではなく、実際の取扱いの実態に即して整理し、必要な手当てを決める必要があります。個人情報の漏えいが生じた場合の初動については、個人情報漏えいの初動対応と報告義務の解説もご確認ください。

被通報者と調査協力者への配慮

通報があったという事実だけで、違反行為があったと認定することはできません。調査は、被通報者の名誉、信用及びプライバシーに配慮し、反論の機会を確保して進める必要があります。他方で、指針の解説は、被通報者が公益通報者の存在を知り得る場合には、被通報者が公益通報者に対して不利益な取扱いを行うことがないよう、被通報者に対して注意喚起をする等の措置を講じ、公益通報者の保護の徹底を図ることを示しています。両方への配慮が必要です。

調査に協力した従業員が、その後に不利益を受けないようにすることも重要です。指針は、公益通報者が不利益な取扱いを受けていないかを把握する措置をとり、把握した場合には適切な救済・回復の措置をとることを求めています。指針の解説は、公益通報者に対して能動的に確認することや、不利益な取扱いを受けた際に連絡すべき部署をあらかじめ伝えておくことを、その方法として挙げています。

公益通報以外の相談を入口で排除しない

ハラスメントの相談が公益通報に当たるかどうかは、一律には決まりません。公益通報に当たるかは、通報した人の立場、役務提供先との関係、通報対象事実が法律上の通報対象事実に当たるか、不正の目的がないか、通報先ごとの保護要件を満たすかなどを踏まえた個別の判断になります。暴行や傷害に当たり得る行為に関する通報と、職場の人間関係に関する相談とでは、評価が異なり得ます。

受付の時点では、該当性が判断できないことが通常です。したがって、入口で「これは公益通報ではない」と切り分けてしまう運用は適切ではありません。消費者庁のQ&Aには、内部公益通報受付窓口が他の窓口を兼ねること、及びハラスメント相談窓口が内部公益通報受付窓口となり得るかに関する項目が置かれています。実務的には、公益通報、ハラスメント、人事上の苦情、内部規程違反、倫理相談をいったん広く受け付け、受付後に適切な担当へ振り分ける設計にしておくほうが安全です。

最終的に事実が認定されなかったこと、通報内容に誤りがあったこと、会社への不満が動機に含まれていたことは、それ自体で虚偽通報や「不正の目的」があったことを意味しません。意図的な捏造が疑われる場合であっても、就業規則上の根拠、証拠、処分の相当性を個別に検討して初めて問題となります。周知資料に「虚偽の通報は懲戒処分の対象となります」とだけ書くと、通報をためらわせる効果が生じます。改正後は、通報を妨げる行為自体が禁止されることにも留意してください。

委託契約・内部規程・周知で決める事項

委託契約で確認する事項

社外弁護士窓口を利用する場合、次の事項を契約書で確認してください。法令上必須の事項に限らず、指針が求める措置を実行するために必要な事項と、望ましい契約条件を含みます。

  • 窓口を利用できる者の範囲(労働者、役員、退職者、業務委託先を含めるか)と、対象とする事項の範囲
  • 受付手段(電話、電子メール、専用フォーム、書面)、対応時間及び緊急時の連絡方法
  • 受領連絡、初動及び進捗連絡の担い手と、対応の目安となる期間
  • 匿名通報の受付可否と、匿名のまま双方向で連絡する手段
  • 通報者を特定させる事項の取扱い、本人の同意の取り方、同意がなくても共有できる場合、会社への報告の粒度
  • 従事者として指定する者の範囲と、指定の手続及び指定を本人に明らかにする方法
  • 案件ごとの利益相反の確認手順、除外の基準、担当交代及び別ルートへの振替
  • 経営陣が関係する案件の報告先と、意思決定を行う者
  • 受付、調査、法的評価、是正の助言、是正の決定、結果通知の分担
  • 証拠保全、記録の作成、保存期間、アクセス権限、契約終了時の返還又は消去
  • 秘密保持、安全管理措置、再委託の可否、クラウド利用の可否、事故が生じた場合の報告手順
  • 不利益取扱いの有無の確認と、その後のフォローアップの担い手
  • 周知文の作成支援、研修の実施及び定期的な制度評価への関与
  • 契約が終了する場合又は委託先を変更する場合の引継ぎと記録の取扱い
  • 費用の算定方法と、追加業務が生じる場合の取扱い

費用の水準は、受付件数、対応時間、調査支援の有無によって大きく変わります。契約前に、想定件数と業務範囲を具体的に示したうえで見積りを受けてください。

内部規程に落とす事項

指針は、指針において求められる事項について内部規程において定め、その定めに従って運用することを求めています。委託契約だけを整えても、社内側の規程が空白では体制になりません。少なくとも次の事項を規程に定めてください。

  • 窓口の名称、設置場所(社内・社外の別)及び受付方法
  • 通報を受けた後の社内の報告経路と、調査の開始を決定する者
  • 組織の長その他幹部が関係する場合の独立した経路
  • 事案に関係する者を対応業務に関与させないための手続
  • 通報者を特定させる事項の共有範囲と、共有の記録の残し方
  • 通報者及び調査に協力した者に対する不利益取扱いの禁止と、違反した場合の措置
  • 調査への協力義務と、調査を妨害する行為の禁止
  • 是正措置等の通知の方法
  • 記録の保管期間とアクセス権限
  • 定期的な評価・点検と、運用実績の概要の開示

消費者庁は「はじめての公益通報者保護法」のページで、内部規程例や従事者指定書などの様式を公開しています。自社の規程を作成又は改定する際の出発点として利用できます。

施行対応の進め方

2026年12月1日の施行に向けて、次の順序で進めると手戻りが少なくなります。各段階に法律上の期限が定められているわけではありませんので、社内の稟議や取締役会の開催時期に合わせて計画してください。

施行対応の進め方(八つの段階)
段階 行うこと 確認する資料
現状把握 既存の窓口、規程、委託契約、周知状況、過去の通報件数を洗い出します。 内部規程、委託契約書、周知資料、受付記録
人数の判定 常時使用する労働者の数を確認し、義務か努力義務かを判定します。 雇用形態別の人数資料、出向・派遣の契約書
設計の決定 社内・社外・併設のいずれにするか、経営陣が関係する場合の経路をどうするかを決めます。 組織図、役員構成、機関設計に関する定款の定め
規程と契約の改定 内部規程を改定し、委託契約の役割分担を書き分けます。 改定案、契約書案
従事者の指定 従事者を定め、その地位に就くことが本人に明らかとなる方法で指定します。社外に委託する場合も同様です。 従事者指定書、委託先との合意書面
周知と研修 労働者、役員、退職者及び業務委託先に周知し、従事者には特に十分な教育を行います。 周知文、掲示物、研修資料
模擬受付 実際に通報が入った場合の流れを試し、報告経路と保管方法を確認します。 受付票、記録様式
点検と改善 定期的に評価・点検を行い、運用実績の概要を開示します。 点検記録、運用実績の集計

従事者の指定は書面で行う 指針は、従事者を定める方法について、書面により指定をするなど、従事者の地位に就くこと(それに伴い法第12条に定める守秘義務が課されること及び罰則の適用対象となり得ることを含む。)が従事者となる者自身に明らかとなる方法により定めなければならないとしています。指針の解説は、従事者を事業者外部に委託する際も同様である旨を示しています。委託先の弁護士や補助者が従事者に当たるかは、肩書ではなく、実際に公益通報対応業務に主体的に関与し、通報者を特定させる事項を伝達される立場にあるかどうかで判断されます。

見直しの前にそろえておきたい資料

弁護士に相談する場合も、社内で検討する場合も、次の資料がそろっていると議論が具体的になります。

  • 現行の内部通報規程、公益通報に関する規程
  • 就業規則(懲戒に関する定めを含む)及び関連する規程
  • 組織図と、意思決定権限に関する規程(職務権限規程等)
  • 雇用形態別の在籍者数がわかる資料と、労働者名簿
  • 出向契約書、労働者派遣契約書、業務委託契約書
  • 既存の窓口の利用状況(件数、内容の類型、対応期間)
  • 顧問契約書と、顧問弁護士が関与している案件の範囲がわかる資料
  • 役員構成、監査役又は監査等委員の有無、社外役員の有無がわかる資料
  • ハラスメント相談窓口に関する規程と周知資料
  • 情報管理規程、個人情報の取扱いに関する規程、プライバシーポリシー
  • 社外窓口を利用している場合は、委託契約書と、情報の流れがわかる資料
  • 直近の周知資料(掲示物、社内イントラネットの掲載内容、研修記録)

弁護士に相談するタイミング

次のような場面では、資料を確認したうえで方針を整理しておくことが有益です。いずれも、結論を保証するものではなく、判断材料を整えるための相談です。

  • 常時使用する労働者の数が300人前後で、義務対象かどうかの判定に迷っている
  • 既存の内部通報規程が古く、改正後の内容に対応していない
  • 社外の窓口を委託しているが、社内の報告経路と役割分担が決まっていない
  • 顧問弁護士を窓口とすることの適否を検討している
  • 経営陣や役員が関係する通報を受けた、又は受ける可能性がある
  • 通報を受けたが、調査をどこまで行うべきか判断できない
  • 通報者を特定させる事項をどこまで社内で共有してよいか判断できない
  • 通報後に人事上の措置を検討しており、不利益取扱いに当たらないか確認したい
  • グループ会社を含めた共通窓口の設計を検討している

労務に関する規程の整備や、従業員との個別の紛争が生じている場合は、労働法務の取扱業務もあわせてご確認ください。

よくあるご質問

Q.常時使用する労働者が300人以下なら、何もしなくてよいのですか。

従事者の指定と体制整備は努力義務にとどまります。もっとも、通報妨害の禁止、通報者探索の禁止、公益通報を理由とする解雇・懲戒の無効、推定規定、直罰及び両罰規定は、人数区分にかかわらず適用されます。また、ハラスメントに関する相談体制の整備は別の法律で求められています。何もしなくてよい、という整理にはなりません。

Q.社外の弁護士に窓口を置くことは、法律上の義務ですか。

義務ではありません。法律は窓口の設置場所を指定していません。指針の解説は、事業者内部に置くこと、事業者外部に置くこと、内部と外部の双方に置くことのいずれも可能である旨を示しています。どれを選ぶかは、規模、想定される通報の内容、経営陣が関係するリスク等を踏まえて判断します。

Q.顧問弁護士を窓口にしてもよいのですか。

法律は禁止していません。ただし、指針の解説は、顧問弁護士に通報することを躊躇する者が存在し、そのことが通報対象事実の早期把握を妨げるおそれがあることに留意すべき旨を示しています。また、弁護士職務基本規程上、利益相反に当たる事件については職務を行えない場合があります。顧問弁護士を窓口とする場合でも、経営陣が関係する事案や、顧問先が関係する事案に備えた別の経路を用意しておく必要があります。

Q.受付だけを社外に委託すれば、改正への対応は終わりますか。

終わりません。法第11条第2項が求めているのは、受付から調査、是正、通報者の保護、記録、周知及び評価までが機能する体制です。是正措置の決定と実行、不利益取扱いの防止と把握、周知は、人事権と業務執行権限を持つ会社でなければ担えません。受付の外部化は、その一部にとどまります。

Q.匿名の通報も受け付けなければならないのですか。

消費者庁のQ&Aには、匿名による公益通報及び内部公益通報受付窓口における匿名の通報の受付に関する項目が置かれています。匿名であることを理由に調査をしない運用は適切ではありません。匿名のまま双方向で連絡できる手段を用意しておくと、追加の事実確認ができ、調査の実効性が高まります。

Q.ハラスメント相談窓口と内部通報窓口は、一つにまとめてよいですか。

消費者庁のQ&Aには、内部公益通報受付窓口が他の窓口を兼ねることや、ハラスメント相談窓口が内部公益通報受付窓口となり得るかに関する項目が置かれています。まとめること自体は否定されていません。ただし、部門横断的に受け付けられること、組織の長その他幹部からの独立性が確保されることが前提になります。受付後に、公益通報として扱うべき事案を適切に振り分ける手順を定めておいてください。

Q.通報者の氏名を会社が知ることはできますか。

設計次第です。指針の解説は、外部窓口を設ける場合の例として、公益通報者を特定させる事項は、特定した上でなければ必要性の高い調査が実施できない等のやむを得ない場合を除き、書面や電子メール等による明示的な同意がない限り事業者にも開示しないこととする措置を挙げています。共有する場合も必要最小限にとどめ、共有した範囲を記録に残してください。なお、正当な理由なく通報者を特定することを目的とする行為は、2026年12月1日以後は禁止されます。

Q.業務委託先のフリーランスからの通報も対象になりますか。

2026年12月1日以後は、特定受託業務従事者、いわゆるフリーランスと、その業務委託が終了して一定期間内の者が、公益通報者として保護される対象に加わります。業務委託に係る契約の解除、取引の数量の削減、取引の停止、報酬の減額その他の不利益な取扱いが禁止されます。窓口の利用対象者と周知の対象に、業務委託先を含めるかどうかを、規程で明確にしておいてください。

まとめ

  • 2026年12月1日に改正法が施行されますが、この改正によってすべての中小企業に窓口の設置義務が新たに生じるわけではありません。
  • 従事者の指定と体制整備の義務は、常時使用する労働者の数が300人を超えるかどうかで、義務と努力義務に分かれます。
  • 通報妨害の禁止、通報者探索の禁止、解雇・懲戒の無効、推定規定、直罰及び両罰規定は、人数区分にかかわらず適用されます。
  • 「中小企業」という区分と、法第11条第3項の人数区分は別のものです。中小企業基本法の定義を持ち込まないでください。
  • 会社があらかじめ定めた社外弁護士窓口への通報は、法律上は内部公益通報として扱われます。行政機関や報道機関への通報とは区別してください。
  • 社外弁護士へ委託になじむのは受付から一次整理までであり、是正の決定と実行、不利益取扱いの防止、周知、記録、評価は会社に残ります。
  • 顧問弁護士を窓口とすることは禁止されていませんが、通報が集まるかという実効性と、利益相反への備えを検討する必要があります。
  • 匿名性や秘密保持を無条件に保証することはできません。共有する場合の同意と範囲を、規程と案内文で具体的に定めてください。
  • 最初に着手すべきは、人数の判定と、既存の規程・委託契約・報告経路の棚卸しです。

ここまでの内容は一般的な整理であり、実際の結論は、会社の規模、機関設計、既存の契約内容及び通報の具体的な内容によって異なります。規程や契約書を確認したうえで検討することをおすすめします。

内部通報体制の見直しについては、現行の内部規程、委託契約書、就業規則及び組織図を確認したうえで、自社の人数区分の判定、窓口の設計、社内に残す責任と報告経路、利益相反が生じた場合の代替ルートを整理することができます。施行前や委託契約の締結前に一度ご確認ください。

初回のご相談は無料としています。事前のご予約をお願いしています。お電話でのご予約は078-797-5227(営業時間9時から20時まで)へお願いいたします。

お問い合わせ方法を確認する

弁護士費用を確認する

監修者

本記事の内容は、次の弁護士が監修しています。

弁護士法人ひょうご支所 神戸みらい法律会計事務所
代表弁護士・公認会計士 藤井 貴之
兵庫県弁護士会 所属/日本公認会計士協会兵庫会 所属

弁護士と公認会計士の双方の登録を有し、企業法務、労働法務及び会社の内部管理に関するご相談に対応しています。内部通報体制の見直しでは、内部規程、委託契約、報告経路及び情報管理の資料を確認したうえで、法令上の義務と実務上の対応を整理します。

担当弁護士の紹介を見る

参考資料

本記事は、2026年9月3日時点の法令及び公表資料に基づいて作成しています。法令、政令、指針及び行政資料は改正されることがありますので、実際の対応にあたっては最新の情報をご確認ください。

まずはご予約ください。夜間/休日はご予約で相談可能

法律のお悩みは、 相談しやすい
神戸みらい法律会計事務所
にお任せください。

(初回相談無料 / 交通事故 債務整理は電話での無料相談が可能)

初回相談無料

ご予約フォームはこちら

お電話でもご予約いただけます

 078-797-5227

受付時間 : 9:00〜20:00

LINEからの
ご予約はこちら