会社の通帳に、心当たりのない出金がある。帳簿の残高と通帳の残高が合わない。承認した覚えのない振込先がある——。経営者や経理責任者の方から、こうした不安をお聞きすることがあります。ただ、帳簿や通帳に違和感があっても、その時点で「使い込み」や「横領」と断定できるわけではありません。会計処理の誤り、未精算の立替金や仮払金、役員貸付金、決算整理など、正当な理由で説明できる不一致も少なくないからです。
一方で、不審な点を放置したり、確証のないまま本人を問い詰めたりすると、証拠を消されたり、逆に名誉毀損やハラスメントと受け取られたりするおそれもあります。大切なのは、感情で動く前に、会計と法律の両面から「何を、どの順番で確認するか」を整理することです。
この記事では、会社・法人・事業者の帳簿、通帳、入出金明細、伝票、請求書、領収書などを確認し、使い込み、横領、不正送金、架空経費、二重払い、売上除外などの疑いを、安全に切り分けていくための進め方を整理します。あわせて、証拠の保全、本人へ確認する前の注意点、弁護士・公認会計士・税理士に相談するタイミングについても解説します。
本記事は、帳簿・通帳の確認の一般的な考え方を整理したものです。不正の有無、請求や処分の可否は、証拠関係や個別事情により結論が変わります。具体的な事案については、資料を確認したうえで判断する必要があります。
「これは会計処理の誤りなのか、それとも不正なのか」が判断しづらい段階でも、資料を整理することで論点や次の手順を明確にしやすくなります。会社資金の使い込みや会計不正についてお悩みの方は、会計と法律の両面から状況を整理することができます。
Contents
帳簿・通帳・伝票の確認を始める前に整理しておきたいこと
調査に着手する前に、枠組みを決めておくと、後の手続がぶれにくくなります。やみくもに資料を集めるのではなく、「誰が」「どの権限で」「何を対象に」「何のために」確認するのかを先に固めることが重要です。
誰が、どの権限で調査するのか
会社の調査では、調査を行う人の立場と権限を確認しておく必要があります。経営者、取締役、監査役、経理責任者など、職務上どこまで会計資料にアクセスできるのかは、役職や社内規程によって異なります。権限の範囲を超えた調査は、後の手続で適法性を問われる可能性があります。とりわけ、対象者の私的領域(私物、私的端末、個人アカウント、私的な口座情報など)に無断でアクセスすることは、権限、プライバシー、個人情報保護上の問題を生じさせることがあるため、避けるべきです。
会社の資産か、個人の資産かを切り分ける
調査の対象が、会社の資産なのか、個人の資産なのかを最初に区別します。法人口座と個人口座、会社経費と個人的支出、役員個人の貸借と会社の貸借が混在していると、不一致の原因を見誤りやすくなります。とくに中小企業では、社長個人と会社の資金が事実上混ざっている例もあり、その場合は「公私混同による会計処理の問題」と「不正」を分けて考える必要があります。
対象期間・対象口座・対象部門・対象者を決める
調査の範囲を限定します。対象期間(いつからいつまでの取引か)、対象口座(どの預金口座・現金・カードか)、対象部門(経理・営業・店舗など)、対象者(誰の関与を確認するのか)をあらかじめ決めておくと、資料の収集と分析が効率的になります。範囲を広げすぎると調査が散漫になり、狭めすぎると見落としが生じます。まずは違和感のある取引を起点に、関連する期間・口座へ広げていく方法が現実的です。
関係者に気づかれる前に保全したい資料
不正が疑われる場合、関係者に調査の動きを知られると、原本の廃棄、データの削除、つじつま合わせの記帳などが行われるおそれがあります。そのため、関係者への確認や本人へのヒアリングに入る前に、紙の原本や電子データを保全しておくことが重要です。何を、いつ、どのように保全したのかを記録に残しておくと、後の手続で資料の信用性を示しやすくなります。
調査着手前の要点は、(1)権限の範囲を確認すること、(2)会社資産と個人資産を切り分けること、(3)対象期間・口座・部門・対象者を決めること、(4)本人に気づかれる前に資料を保全すること、の4点です。
結論|帳簿・通帳の不一致は「不正の疑い」であって「不正の断定」ではありません
先に要点を整理します。帳簿と通帳の不一致や不明な出金は、不正を疑うきっかけにはなりますが、それだけで不正と断定できるものではありません。会計処理の誤り、証憑の不足、未精算の立替金・仮払金、役員貸付金、決算整理仕訳、期ズレなど、正当な説明がつく場合もあるためです。したがって調査では、「説明がつく取引」と「説明がつかない取引」を分け、後者について証拠を保全し、本人の説明と突き合わせていく流れになります。
不正と断定する前に確認しておきたい事項は、次のとおりです。
| 確認の視点 | 確認する内容 |
|---|---|
| 会計処理 | 仕訳の誤り、二重計上、期ズレ、決算整理・振替・相殺による不一致ではないか |
| 社内承認 | 稟議・支払申請・承認記録があるか、権限者の決裁を経ているか |
| 契約関係 | 契約書・発注書・納品書があり、取引の実態があるか |
| 勘定科目 | 役員貸付金・仮払金・立替金・外注費などとして説明できる支出か |
| 本人の説明 | 業務上の必要性や経緯について、本人や担当者の説明があるか |
| 証憑 | 領収書・請求書が後日提出される可能性はないか |
これらを確認したうえで、なお説明がつかない取引が残る場合に、はじめて不正の可能性を具体的に検討していくことになります。会計処理、社内承認、契約関係、本人の説明を確認したうえで判断する必要がある、という点が出発点です。
帳簿・通帳・伝票と会計の基礎知識
主要な帳簿・証憑の役割
調査では、複数の資料を突き合わせます。それぞれの役割を押さえておくと、どこを見れば不一致の原因にたどり着けるかが分かりやすくなります。総勘定元帳は、すべての取引を勘定科目ごとに集計した帳簿です。補助元帳は、得意先・仕入先・科目などの内訳を細かく記録します。仕訳帳は、取引を発生順に記録します。現金出納帳・預金出納帳は、現金や預金の入出金を時系列で記録します。これらの帳簿に対し、領収書・請求書・見積書・納品書・契約書・稟議書・支払申請書などの証憑が、取引の裏づけとなります。通帳やインターネットバンキングの取引履歴は、実際の資金移動を示す客観的な資料です。
使い込み・横領・架空経費・売上除外などの典型例
会社資金に関する不正には、いくつかの典型的な形があります。たとえば、現金売上をそのまま着服する、会社の預金を自分や第三者の口座に振り込む、実体のない外注費や経費を計上して資金を引き出す(架空経費)、同じ支払を二重に行って差額を得る(二重払い)、売上を計上せずに帳簿から除外する(売上除外)、長期間精算されない仮払金・立替金・役員貸付金として資金を引き出したまま戻さない、といった形です。ただし、これらと外形が似ていても、正当な業務上の支出や会計処理である場合があります。外形だけで判断せず、実態を確認することが欠かせません。
民事・刑事・労務・税務・会計の論点を整理する
不正が疑われる場面では、複数の法分野・実務が関係します。混同すると対応を誤るため、初期段階で整理しておくと有用です。民事では、損害の回復として、不当利得返還請求、不法行為に基づく損害賠償請求、債務不履行に基づく請求、役員の任務懈怠責任の追及などが検討対象になります。刑事では、業務上横領、横領、背任などの該当性が問題になり得ますが、成立の有無や告訴の可否は証拠関係により異なります。労務では、就業規則に基づく懲戒処分の可否が問題になります。税務・会計では、売上除外や架空経費が判明した場合、決算の訂正や修正申告の要否が問題になり、税理士・公認会計士の確認が必要になることがあります。
民事・刑事・労務・税務が絡む場面では、どの順序で何を検討するかによって取り得る選択肢が変わります。法人のお客様向けの取扱業務もご確認ください。
不正調査の進め方|資料保全から再発防止までの流れ
調査は、おおむね次の流れで進めると整理しやすくなります。順序を意識することで、証拠を固める前に本人を問い詰めてしまう、といった失敗を避けやすくなります。
①資料を保全する
まず、紙の原本と電子データを保全します。通帳、入出金明細、総勘定元帳、補助元帳、現金出納帳、伝票、請求書、領収書、契約書、稟議書、メール、チャット、会計システムのデータなどが対象です。会計システムの入力者・更新者・更新日時のログも、後の分析で役立ちます。改ざんや削除を防ぐため、原本はコピーを取って保管し、いつ・誰が・どの資料を保全したかを記録します。
②通帳残高と帳簿残高を照合する
通帳(または入出金明細)の残高と、帳簿上の預金残高を照合します。両者が一致しない場合、未記帳の取引、記帳の誤り、期ズレ、あるいは不正な出金などが原因として考えられます。入出金明細を日付順に並べ、不明な出金・入金・現金引出しを抽出します。
③伝票と証憑を突合する
抽出した取引について、伝票(仕訳)と証憑(請求書・領収書・契約書など)を突き合わせます。支払先、金額、摘要、承認者、振込先口座を確認し、証憑がない支払、承認記録のない支払、取引実態の確認できない支払を洗い出します。同じ請求書番号・同じ金額・同じ摘要の反復、端数のない高額支払、月末・月初に集中する処理、取消伝票や訂正仕訳の多用などにも注意します。
④不審な取引を抽出する
説明がつく取引と、説明がつかない取引を分けます。説明がつかない取引については、日付・金額・支払先・摘要・関与者・確認状況を一覧(不審取引一覧)にまとめ、あわせて事実経過表を作成すると、全体像を把握しやすくなります。
⑤関係者に確認する
資料がそろい、不審な取引が特定できた段階で、関係者への確認を検討します。順序が重要で、本人を問い詰める前に資料を整理しておくことが原則です。確認の際は、断定的な物言いや一方的な追及を避け、事実関係を確認する姿勢を保つことが、名誉毀損やハラスメントと受け取られない対応につながります。
⑥法的対応を検討する
確認の結果、不正の可能性が高いと考えられる場合には、民事上の請求(不当利得返還・損害賠償・役員責任など)、労務上の懲戒処分、刑事告訴・被害届・警察相談、保全手続(仮差押えなど)を検討します。いずれも証拠関係により採り得る選択肢が変わるため、資料を整理したうえで判断します。証拠隠滅のおそれや資産の散逸が懸念される場合は、早めに専門家へ相談することが現実的です。
⑦再発防止につなげる
調査で明らかになった原因を踏まえ、再発防止策を検討します。たとえば、申請・承認・支払・記帳を同一人物に集中させない、振込先口座の変更には複数人の確認を要する、現金の取扱いを最小化する、定期的に通帳と帳簿を照合する、といった内部統制の見直しが考えられます。
帳簿・通帳・伝票で見るべきポイント(資料別)
資料ごとに、確認のポイントと注意点を整理します。数値や基準は、根拠を確認できるものだけを社内で確定させ、判断に用いてください。
| 資料 | 見るべきポイント | 注意点 |
|---|---|---|
| 預金通帳・入出金明細 | 不明な出金、現金引出し、会社と関係の薄い支払先への振込、繰り返される少額出金 | 正当な経費・返済・振替の可能性を確認する |
| 総勘定元帳・補助元帳 | 仮払金・立替金・役員貸付金・雑費・交際費・外注費・消耗品費の動き、長期未精算の残高 | 未精算が直ちに不正とは限らない。経緯と承認を確認する |
| 現金出納帳 | 現金売上と入金額の整合、頻繁な現金支出、残高の不一致 | 記帳漏れ・釣銭管理の誤りと切り分ける |
| 伝票・仕訳 | 取消伝票・訂正仕訳の多用、決算期末の調整・戻入・振替 | 正当な決算整理と不自然な操作を区別する |
| 請求書・領収書 | 欠落、同一番号・同一金額の反復、宛名・但し書き・日付の違和感 | 証憑が後日提出される可能性を確認する |
| 取引先マスタ・振込先情報 | 振込先口座の変更履歴、実在しない取引先、関連者と疑われる支払先 | 正当な口座変更・取引と区別する |
| 会計システムの記録 | 入力者・更新者・更新日時の偏り、深夜・休日の入力 | 権限委譲・代理入力の運用実態を確認する |
次に、不正が疑われる「サイン」と、それを直ちに不正と断定できない理由を整理します。
| サイン | 疑われる問題 | 断定する前に確認すること |
|---|---|---|
| 使途不明の現金引出し | 現金の着服 | 小口現金の運用、経費精算の遅れ、記帳漏れではないか |
| 申請・承認・支払・記帳が同一人物に集中 | けん制の欠如 | 人員不足による兼務か、意図的な権限集中か |
| 領収書・請求書の欠落 | 架空経費・水増し | 証憑の保管漏れ、後日提出の可能性はないか |
| 会社と関係の薄い先への送金 | 私的流用・架空取引 | 新規取引・スポット発注など正当な取引ではないか |
| 仮払金・立替金・役員貸付金の長期未精算 | 資金の引出し | 精算手続の遅延か、返済意思のない引出しか |
| 現金売上と入金額の不一致 | 売上の着服・売上除外 | レジ誤差、入金タイミングのズレではないか |
| 振込先口座の変更 | 振込先のすり替え | 取引先からの正式な変更連絡があるか |
不正と断定する前に確認すべきこと
くり返しになりますが、帳簿上の違和感だけで結論を出すことは避ける必要があります。不審な取引について、次の点を確認してください。
- 会計処理の誤り(二重計上・期ズレ・科目誤り・決算整理)ではないか
- 税務上の処理や決算整理仕訳として説明できないか
- 稟議・支払申請・決裁など社内承認の記録があるか
- 契約書・発注書・納品書など取引の裏づけがあるか
- 役員報酬・貸付金・立替金・仮払金・外注費などとして説明できるか
- 証憑が後日提出される可能性があるか
- 業務上必要な支出だったか、支払先との取引実態があるか
- 本人や担当者から経緯の説明を受けられるか(ただし証拠保全の後に)
不明出金がある場合でも、会計処理、承認記録、契約関係、本人の説明を確認する必要があります。領収書がない支払は、業務関連性や社内承認の有無を確認しましょう。会社のパソコンやスマートフォンであっても、私的領域や個人アカウントへの無断アクセスは、権限・プライバシー・個人情報保護上の問題を生じさせることがあります。家族や従業員の個人口座を調べることにも、同様の問題が生じ得ます。
よく問題になるケース
相談の現場で迷いやすい場面を、類型ごとに整理します。いずれも一般的な説明であり、具体的な結論は証拠と個別事情により変わります。
従業員による現金着服
レジや集金の現場で、現金売上の一部が記帳されずに着服される類型です。現金売上と入金額の照合、レジ記録と帳簿の突合が確認の出発点になります。ただし、レジ誤差や入金タイミングのズレと区別する必要があります。
経理担当者による不正送金
会計や振込を任された担当者が、会社の預金を自分や第三者の口座に振り込む類型です。振込先口座、承認記録、取引実態を確認します。申請・承認・支払・記帳が一人に集中している場合は、けん制が働きにくいため注意が必要ですが、人員不足による兼務である可能性も踏まえて確認します。
役員による会社資金の私的流用
役員が会社資金を私的に用いる類型です。役員貸付金・仮払金として処理されている場合、その経緯、返済の有無、取締役会等の承認の有無が問題になります。役員の会社に対する責任(任務懈怠責任)が問題になることもありますが、成立の有無は事実関係により異なります。
架空請求書・水増し請求
実体のない取引の請求書を作成したり、金額を水増しして差額を得たりする類型です。請求書番号・金額・摘要の反復、取引先の実在性、納品・役務提供の実態を確認します。証憑の保管漏れと、架空計上は分けて考える必要があります。
売上金の入金漏れ
売上が計上されない、または入金が確認できない類型です。売上計上の遅れ、入金消込の漏れ、売上除外のいずれであるかを、受注・納品・請求・入金の各段階で確認します。税務・会計に影響する可能性があるため、税理士・公認会計士との連携が必要になることがあります。
親族会社・関係者への不自然な支払
役員や従業員の親族が関係する会社、知人などへの支払が問題になる類型です。取引の実態、価格の妥当性、承認の有無を確認します。正当な取引である場合も多いため、関係性のみを理由に不正と決めつけないよう注意します。
相続・親族間の預金使い込みと混同しやすいケース
個人事業や同族会社では、相続や親族間の財産管理をめぐるトラブルと、会社資金の使い込みが混在することがあります。会社の資産か、個人・相続財産かを切り分けることが前提になります。相続人間の預金使い込みや成年後見など個人の財産管理の問題は、会社の不正調査とは別の枠組みで検討する必要があります。
会計処理ミスと不正の切り分け
もっとも多いのが、単純な会計処理の誤りと、意図的な不正の切り分けです。期ズレ、科目誤り、二重計上、記帳漏れ、決算整理の誤りなどは、悪意がなくても残高の不一致を生みます。会計の視点で原因を分析することで、過剰反応も見落としも避けやすくなります。
調査前・本人確認前のチェックリスト
本人への確認、関係者へのヒアリング、警察への相談、返還請求、懲戒処分、決算・税務の修正などに進む前に、次の点を確認しておくと、その後の手続を進めやすくなります。
- 対象期間・対象口座・対象部門・対象者を特定したか
- 通帳・入出金明細・総勘定元帳・補助元帳・現金出納帳・伝票を保全したか
- 請求書・領収書・契約書・稟議書・支払申請書・承認記録を保全したか
- メール・チャット・会計システムのデータとログを保全したか
- 不審取引一覧と事実経過表を作成したか
- 説明がつく取引と、つかない取引を分けたか
- 就業規則・職務権限規程・取締役会議事録など社内規程を確認したか
- 本人へ確認する前に証拠を固めたか
- 私的端末・個人アカウント・個人口座への無断アクセスを避けているか
- 税務・会計に影響しうる場合、税理士・公認会計士への相談を検討したか
弁護士・公認会計士・税理士に相談するタイミング
専門家への相談は、結果を保証するためのものではなく、資料を整理し、取り得る選択肢と手順を明確にするためのものです。次のような場面では、早めに相談することで方針を検討しやすくなります。
- 不明な出金が複数あり、自社だけでは原因を切り分けにくいとき
- 関係者が資料の提出を拒んでいるとき
- 証拠隠滅や資産の散逸が懸念されるとき
- 本人に説明を求める前に、進め方を整理しておきたいとき
- 返還請求や示談交渉を検討する前
- 懲戒処分を検討する前
- 警察相談や刑事告訴を検討する前
- 売上除外・架空経費など、決算や税務申告に影響しうるとき
- 通帳・帳簿・伝票の見方や、会計と法律の整理に不安があるとき
当事務所では、弁護士が会計・税務の視点も踏まえながら、帳簿・通帳・伝票などの資料を整理し、民事上の請求、社内での対応、刑事相談の進め方などの検討をお手伝いすることができます。税務申告の要否や決算の訂正など税理士・公認会計士の判断が必要になる事項についても、必要に応じて整理の方向性をお示しします。
相談にあたって準備しておくと整理が進みやすい資料は、次のとおりです。
| 資料 | 確認できること | 準備できない場合の対応 |
|---|---|---|
| 通帳・入出金明細 | 資金の動き、不明な出金・入金 | 取引履歴の再発行を金融機関に確認する |
| 総勘定元帳・補助元帳・試算表 | 勘定科目ごとの残高と推移 | 会計データの出力可否を確認する |
| 伝票・請求書・領収書・契約書 | 取引の裏づけと承認の有無 | あるものから整理し、不足分を一覧化する |
| 稟議書・支払申請書・承認記録 | 社内手続の有無 | 運用実態(口頭決裁など)を記録する |
| 就業規則・職務権限規程・議事録 | 権限の範囲と処分の根拠 | 現行版の所在を確認する |
| 不審取引一覧・事実経過表 | 論点と時系列の整理 | 分かる範囲でメモを作成する |
「どこから手をつければよいか分からない」という段階でも、お手元の資料を一緒に整理することで、確認すべき点や次の手順を明確にしやすくなります。弁護士費用や相談の進め方については、あわせてご確認ください。
帳簿と通帳が合わないだけで不正といえますか?
合わないこと自体は、不正を疑うきっかけにはなりますが、それだけで不正と断定できるわけではありません。記帳の誤り、期ズレ、未精算の立替金・仮払金、決算整理など、正当な理由で不一致が生じることもあります。会計処理、社内承認、契約関係、本人の説明を確認したうえで判断する必要があります。
従業員の横領を疑う場合、最初に何を確認すべきですか?
まず、対象期間・対象口座・対象者を特定し、通帳・入出金明細・帳簿・伝票・証憑を保全することが出発点になります。本人に気づかれる前に資料を確保し、不審取引を一覧化してから、説明がつくかどうかを確認していく流れが一般的です。
本人に確認する前に資料を集めてもよいですか?
会社の権限の範囲内で、業務上アクセスできる会計資料を確認・保全することは、一般に重要な初動とされています。一方で、対象者の私的端末・個人アカウント・個人口座など私的領域への無断アクセスは、権限・プライバシー・個人情報保護上の問題を生じさせることがあるため、慎重に判断する必要があります。
通帳の不明な出金は、どのように調査しますか?
入出金明細を日付順に並べ、不明な出金・現金引出しを抽出し、伝票・証憑・承認記録と突き合わせます。支払先・金額・摘要・振込先口座を確認し、取引実態や承認の有無を見ていきます。説明がつかないものについては、一覧化して経緯を確認します。
領収書や請求書がない支払は不正ですか?
証憑がないことは確認すべき事情ですが、それだけで不正と断定できるわけではありません。証憑の保管漏れや、後日提出される可能性もあります。業務との関連性、社内承認の有無、取引の実態をあわせて確認しましょう。
不正が疑われる場合、警察にすぐ相談すべきですか?
刑事相談を検討する場合でも、まず証拠関係を整理しておくことが現実的です。刑事と民事は別の手続であり、成立する犯罪の有無や告訴の可否は証拠により異なります。資料を整理したうえで、相談の進め方を検討することをおすすめします。
返還請求や懲戒処分は、どの段階で検討すべきですか?
いずれも証拠がそろい、事実関係が整理できた段階で検討するのが一般的です。返還請求の可否や処分の相当性は、証拠、就業規則、役職、権限、被害の内容、本人の説明などにより変わります。先に処分や請求を行うと、後の手続に影響することもあるため、順序の検討が重要です。
弁護士に相談するときは、何を準備すればよいですか?
通帳・入出金明細、総勘定元帳・補助元帳・試算表、伝票・請求書・領収書・契約書、稟議書・承認記録、就業規則・職務権限規程、不審取引一覧などがあると整理が進みやすくなります。すべてそろっていなくても、あるものから整理し、不足分を一覧にしておけば相談を進められます。
まとめ|次に確認すべきこと
- 帳簿・通帳の不一致は「不正の疑い」であり、それだけで「不正の断定」はできない
- 調査は、権限の確認・会社資産と個人資産の切り分け・対象範囲の特定から始める
- 本人に気づかれる前に、原本・データ・ログを保全し、記録を残す
- 通帳と帳簿を照合し、伝票と証憑を突合して、不審取引を一覧化する
- 会計処理・承認・契約・説明を確認し、説明がつく取引と切り分ける
- 民事・刑事・労務・税務・会計の論点を混同せず整理する
- 私的端末・個人アカウント・個人口座への無断アクセスは避ける
- 証拠隠滅のおそれや決算・税務への影響があるときは、早めに専門家へ相談する
会社資金の使い込みや会計不正の疑いは、初動の進め方によって、その後の選択肢が変わることがあります。帳簿・通帳・伝票などの資料を一緒に整理することで、論点や見通し、次に取るべき手順を検討しやすくなります。まずはお気軽にご相談ください。
監修者・執筆者情報
本記事は、神戸みらい法律会計事務所(弁護士法人ひょうご支所)に所属する弁護士が監修しています。当事務所は、法律と会計・税務の双方の視点から、企業の資金や会計に関するお悩みの整理をお手伝いしています。弁護士の氏名、所属弁護士会、保有資格、取扱分野の詳細は、弁護士紹介ページをご覧ください。
参考資料(公的機関・公式資料)
- e-Gov法令検索(会社法・刑法・民法・法人税法ほか):https://laws.e-gov.go.jp/
- 国税庁(帳簿書類等の保存期間):https://www.nta.go.jp/
- 裁判所(民事訴訟・民事保全手続の案内):https://www.courts.go.jp/
- 警察庁(相談・各種手続の案内):https://www.npa.go.jp/
- 個人情報保護委員会(個人情報の取扱い):https://www.ppc.go.jp/
- 日本公認会計士協会:https://jicpa.or.jp/

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