咀嚼・言語機能障害の後遺障害|開口障害・構音障害・嚥下障害の等級 |神戸市(須磨・垂水・西神・北神)の弁護士|初回相談無料|弁護士法人ひょうご支所神戸みらい法律会計事務所

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咀嚼・言語機能障害の後遺障害|開口障害・構音障害・嚥下障害の等級

交通事故のあと、硬い物が噛めない、口が大きく開かない、発音が不明瞭で聞き返される、飲み込むときにむせる。こうした症状が治療を続けても残った場合、自賠責保険の後遺障害等級の対象となる可能性があります。もっとも、口の後遺障害は、骨折や神経損傷といった診断名だけで等級が決まるものではありません。実際にどの機能が、どの程度失われているかを、医学的な裏付けとともに示す必要があります。この記事では、咀嚼(そしゃく。噛み砕く働き)と言語の機能に関する等級の全体像、開口障害・構音(こうおん。発音のために口の形を変える働き)障害・嚥下(えんげ。飲み込む働き)障害の位置づけ、歯牙障害との違い、後遺障害の申請前にそろえたい資料を整理します。

後遺障害の申請前にお読みください

口の機能障害は、症状名だけでは等級が決まりません

どの機能が、どの程度、どのような医学的原因で制限されているのかを整理しないまま申請すると、実際の症状より低い等級にとどまったり、非該当となったりすることがあります。神戸みらい法律会計事務所では、診断書、画像、検査結果、日常生活の記録を確認したうえで、検討すべき障害の区分と手続を整理します。

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結論|咀嚼・言語機能障害の等級は「程度」と「一方か双方か」で決まる

自動車損害賠償保障法施行令別表第二は、咀嚼の機能と言語の機能について、障害の程度を「機能を廃したもの」「機能に著しい障害を残すもの」「機能に障害を残すもの」の三段階に分け、それが咀嚼と言語の双方に生じているか、いずれか一方に生じているかによって、次の六類型を定めています。

障害の程度 咀嚼・言語のいずれか一方 咀嚼・言語の双方
機能を廃したもの 第3級第2号 第1級第2号
機能に著しい障害を残すもの 第6級第2号 第4級第2号
機能に障害を残すもの 第10級第3号 第9級第6号

「一方」は左右ではありません。ここでいう「一方」とは、咀嚼機能と言語機能のうちどちらか一方という意味です。身体の左側・右側を指すものではありません。条文上も「咀嚼又は言語の機能」がいずれか一方、「咀嚼及び言語の機能」が双方に対応しており、この一字の違いで等級が二段階変わります。

自賠責と労災では号数の表記が異なります。自賠責は「第10級第3号」のように号数で示しますが、同じ内容を定める労災の障害等級表では「第10級の2」と表記されます。さらに紛らわしいことに、労災の「第10級の3」は歯牙障害(14歯以上に対する歯科補綴)を指し、自賠責では同じ内容が第10級第4号とされています。他制度の解説をそのまま自賠責の号数として読み替えないよう注意が必要です。

なお、この六類型に当てはまらない場合でも、後述のとおり第12級を準用する取扱いや、準用等級を検討する場面があります。等級表の六類型だけで判断できるとは限りません。

咀嚼・言語・構音・嚥下・歯牙は何がどう違うのか

口の症状は日常語では区別されにくいのですが、後遺障害の検討では評価の対象が異なります。まず自分の症状がどこに位置づけられるかを整理してください。

区分 評価の対象 主に関係する診療科
咀嚼機能 どのような性状の食物を噛んで摂取できるか 歯科口腔外科、歯科、形成外科
言語機能・構音 語音を正しく発音できるか、言葉だけで意思疎通できるか 耳鼻咽喉科、リハビリテーション科(言語聴覚士による評価)
嚥下機能 飲食物を口から胃へ安全に送り込めるか 耳鼻咽喉科、リハビリテーション科、消化器科
歯牙障害 歯科補綴を加えた歯の本数 歯科、歯科口腔外科

言葉が出にくいという症状でも、原因により整理の仕方が変わります。構音障害は、口唇、舌、口蓋、咽頭、喉頭などの発声器官の形態異常や運動機能の障害によって、発音に関わる機能が損なわれた状態です。これに対し失語症は、脳の言語中枢の損傷により、いったん獲得された言語機能そのものに障害が生じた状態で、発声器官の問題ではありません。脳外傷に由来する失語症や記憶・注意の障害は、高次脳機能障害を含む神経系統の障害として総合的に評価されることがあり、口の障害の六類型だけで結論を出すことはできません。また、声のかすれや声が出にくいという音声障害も、語音の発音可否とは別の問題です。

歯を失った、差し歯やインプラントを入れたという場合は、歯牙障害として補綴した歯の本数を基準に検討します。本数や治療費、将来の維持費については、別の記事で扱っています。交通事故で歯を失った場合の歯科補綴と後遺障害等級を確認する

咀嚼機能障害はどのように判断されるか

食べられる物の性状による三段階

自賠責の支払基準は、後遺障害等級の認定を原則として労災保険の障害等級認定の基準に準じて行うものとしています。そこで、条文には書かれていない具体的な判断基準は、労災の障害等級認定基準(昭和50年9月30日基発第565号。平成14年2月1日基発第0201001号により改正)を参照して検討することになります。

労災の認定基準では、咀嚼機能の障害は、上下の咬合と歯の排列の状態、下顎の開閉運動などにより総合的に判断するものとされ、三段階が次のように整理されています。

程度 労災の障害等級認定基準における考え方
機能を廃したもの 流動食以外は摂取できないもの
著しい障害を残すもの 粥食又はこれに準ずる程度の飲食物以外は摂取できないもの
障害を残すもの 固形食物の中に咀嚼できないものがあること、又は咀嚼が十分にできないものがあり、そのことが医学的に確認できる場合

「医学的に確認できる場合」という要件

三段階目には、原因が医学的に確認できることという要件が付いています。労災の認定基準は、その原因として、不正咬合、咀嚼に関与する筋群の異常、顎関節の障害、開口障害、補綴ができない歯牙損傷などを挙げています。つまり、噛みにくいという訴えだけでなく、なぜ噛めないのかを説明する所見が必要になります。

「今食べている物」と「機能上食べられない物」は分けて記録してください。用心して柔らかい物を選んでいる、家族が心配して刻んでいる、当面の安静のために指示されているという場合は、機能の限界とは意味が異なります。医師・歯科医師の所見、食事に関する指示の内容、実際の経過と照らし合わせて整理する必要があります。

開口障害があるときの三つの分かれ道

口が開きにくいという症状は、それ自体が独立の等級項目になっているわけではありません。労災の認定基準では、開口障害等を原因として咀嚼に相当時間を要する場合について、第12級を準用する取扱いが示されています。整理すると、少なくとも次の三つの場面を分けて考える必要があります。

  • 固形食物の中に咀嚼できないもの又は十分に咀嚼できないものがあり、その原因が医学的に確認できる場合は、「機能に障害を残すもの」(一方であれば第10級第3号)を検討する場面です。
  • 咀嚼はできるものの相当の時間を要する場合は、労災の認定基準上、第12級を準用する取扱いが示されています。
  • 機能制限の程度が軽く、又は医学的な原因の裏付けが足りない場合は、いずれの等級にも該当しないと判断されることがあります。

開口量の数値だけで等級は決まりません。「口が○ミリメートル以下しか開かないから何級」「指が○本入らないから何級」といった一律の基準は、公的な後遺障害の認定基準としては確認できません。日本顎関節学会の資料でも、開口距離は中切歯間の距離を定規で測定し、痛みのない最大開口距離、自力での最大開口距離、術者が負荷をかけた強制最大開口距離を区別して計測するものとされており、数値も顎関節の病態を判断する要素の一つとして位置づけられています。数値は重要な資料ですが、等級を自動的に決めるものではありません。

用語の整理も必要です。開口障害は口を開ける動きが制限されている状態、開咬は上下の歯を噛み合わせても前歯などに隙間が残る状態、不正咬合は噛み合わせが正常でない状態の総称です。診断書や意見書で用語が混在していると、認定側に症状が正確に伝わりません。

言語機能障害・構音障害はどのように判断されるか

四種の語音

労災の障害等級認定基準は、子音を構音部位により四種類に分類し、発音できない語音の数を基準としています。音の例は次のとおりです。

語音の種類 認定基準に挙げられている音の例
口唇音 ま行音、ば行音、ぱ行音、わ行音、ふ
歯舌音 な行音、た行音、だ行音、ら行音、さ行音、しゅ、し、ざ行音、じゅ
口蓋音 か行音、が行音、や行音、ひ、にゅ、ぎゅ、ん
喉頭音 は行音

発音できない語音の数と等級

程度 労災の障害等級認定基準における考え方
機能を廃したもの 4種の語音のうち、3種以上の発音ができないもの
著しい障害を残すもの 4種の語音のうち2種の発音ができないもの、又は綴音(語音を連ねて言葉にする働き)の機能に障害があるため、言語のみを用いては意思を疎通することができないもの
障害を残すもの 4種の語音のうち、1種の発音ができないもの

「2種」「1種」は、それより多い場合を含む「以上」ではありません。ここを「1種以上」と読むと、3種発音できない方が最も軽い区分に当てはまることになり、体系が成り立ちません。ご自身の症状を過小に評価しないよう、発音できない語音を種類ごとに確認してください。

自覚症状と医学的な確認は別のものです

「ろれつが回らない」「聞き取りにくいと言われる」という訴えだけでは、どの語音が発音できないのかが分かりません。言語聴覚士は、言語障害や嚥下の問題について検査・評価を行い、必要に応じて訓練、指導、助言を行う職種とされています。発音の状態、発話の明瞭度、会話による意思疎通の程度について評価資料を残しておくことが、症状を客観的に説明する助けになります。

嚥下障害は独立した等級項目ではありません

飲み込みにくい、むせるという症状は、自動車損害賠償保障法施行令別表第二に独立した項目として列挙されていません。労災の障害等級認定基準では、舌の異常や咽喉支配神経の麻痺等によって生ずる嚥下障害について、その障害の程度に応じて咀嚼機能障害に係る等級を準用する取扱いが示されています。自賠責でも同様に扱われるかは、資料を確認したうえで個別に検討する必要があります。

食道が原因の通過障害は「口の障害」ではありません。平成18年1月25日基発第0125002号により、食道の狭窄による通過障害は胸腹部臓器の障害として基準が定められ、これによって生ずる嚥下障害は口の障害として評価する対象から除外されました。「食道狭窄も咀嚼機能障害に準用する」と説明する古い解説が残っていますが、現行の基準とは整合しません。

飲み込みの働きは、口の中で食塊をつくって送り込む段階(口腔期)、のどを通過する段階(咽頭期)、食道を通る段階(食道期)に分かれ、段階によって原因も評価の対象も異なります。日本リハビリテーション医学会は、嚥下障害の評価方法として、嚥下造影検査、嚥下内視鏡検査、反復唾液嚥下テスト、水飲みテスト、フードテストなどを挙げています。嚥下造影検査(VF)は形態的・機能的な異常や誤嚥、残留を明らかにする検査、嚥下内視鏡検査(VE)は咽頭期の機能的異常や器質的異常の評価などを目的とする検査とされています。

もっとも、これらはすべての事案で必要となる検査ではなく、いずれか一つの結果だけで等級が決まるものでもありません。どの検査を行うか、そもそも実施できるかは、医師が症状と全身状態を踏まえて判断します。

強くむせる、息苦しさがある、誤嚥が疑われる、食事量が減って体重が落ちている、水分が十分に取れていないといった症状がある場合は、法律相談より先に医療機関へご相談ください。この記事は診断や治療に代わるものではありません。

歯牙障害との関係|併合・準用・二重評価

歯を補綴した本数による歯牙障害と、実際に噛む・話すという機能の障害は、評価の対象が異なります。両方の症状がある場合でも、常に単純に足し合わせて等級が上がるわけではありません。労災の障害等級認定基準は、次のように取扱いを分けています。

場面 労災の障害等級認定基準における取扱い
機能障害の原因が歯牙障害以外にある場合 顎骨骨折や顎関節の障害など別の原因による機能障害であれば、歯牙障害と併合して等級を認定する
歯科補綴後にも歯牙損傷に基づく機能障害が残る場合 各障害に係る等級のうち、上位の等級により認定する(併合しない)
咀嚼と言語の程度が異なり、等級表に組合せがない場合 各障害の該当する等級により、併合の方法を用いて準用等級を定める

同じ損傷から通常派生する障害を重ねて評価しないという考え方が背景にあります。どの原因からどの障害が生じているのかを診断書で切り分けておくことが、二重評価を避けつつ実際の症状に見合う等級を検討するうえで重要になります。事故前から歯を失っていた場合や補綴していた場合には、既存の障害との関係も問題になります。

後遺障害の申請前にそろえたい資料と記録

次の資料は、いずれも「何を確認するためのものか」を意識して集めると、過不足が分かりやすくなります。すべての事案で必要になるものではなく、法令上の必須書類でもありません。症状に応じて取捨選択してください。

資料・記録 何を確認するための資料か
診療録、診断書、紹介状、手術記録 受傷から症状固定までの経過、治療内容、症状の一貫性
顎骨・顎関節・頭部のX線、CT、MRI画像と画像所見 骨折や関節の状態など、機能制限の医学的な原因
口腔内写真、咬合・歯列・顎運動に関する資料 噛み合わせや下顎の開閉運動の状態
開口量や顎関節運動の経時的な所見 制限の程度と、治療による変化の有無
言語聴覚士による構音・語音・発話明瞭度・意思疎通の評価 どの語音が発音できないか、会話が成り立つか
症状に応じた嚥下機能の評価資料 飲み込みのどの段階に、どのような問題があるか
摂取できる食物・できない食物、食形態、1食に要する時間、むせ、介助の記録 実際の摂取能力と、日常生活への影響
栄養指導、食形態の指示、体重の変化に関する資料 医療者側が機能をどう評価していたか
事故前の歯科・顎関節・神経疾患・嚥下障害等の既往資料 既存の障害との区別
発話、電話応対、接客、勤務上の配慮、収入の変化に関する資料 仕事への具体的な影響

後遺障害診断書の書式や、症状別に確認しておきたい資料の考え方は、別の記事で詳しく整理しています。後遺障害診断書の作成前に確認したい資料を見る後遺障害の証拠の集め方を確認する

ご本人の説明が難しい場合、ご家族が食事の様子や会話の状況を記録しておくことは有用です。ただし、家族の記録や自作の日記、録音、動画は、医学的な所見に代わるものではありません。記録を残す際は、医療機関の運用やプライバシーにも配慮してください。

時系列で見る確認事項

  • 治療中/噛む・話す・飲み込むという症状を、受傷直後から継続して医師に伝え、診療録に残っているかを確認する。
  • 症状固定の前/必要な検査や評価が未了のまま治療を終えることになっていないかを、主治医に確認する。症状固定の時期は医師の医学的判断が重要な資料となります。症状固定と言われたときの確認事項を見る
  • 後遺障害診断書の作成前/摂取できる食形態、発音できない語音、開口の状態、嚥下の状態が、記載事項として抜けていないかを確認する。
  • 申請の前/加害者側の任意保険会社を通じて手続を進めるか、自賠責保険へ被害者側から請求するかによって、資料を集めて提出する主体が異なる点を確認する。
  • 非該当又は想定より低い等級の通知を受けた後/まず認定理由を書面で確認し、口の機能のどの点が認められなかったのか、どの資料が不足していたのかを特定する。
  • 示談書に署名・押印する前/等級を前提とする損害項目が漏れていないか、将来の治療や補綴に関する取扱いが記載されているかを確認する。示談案で確認すべき項目を見る

治療方針、検査の要否、症状固定の時期は、医師・歯科医師が医学的に判断する事項です。もっとも、損害賠償上いつを症状固定と評価するかが争点になる場面では、診療経過を踏まえた法的な評価も問題となります。医学的な判断と法的な評価は別のものとして整理してください。

請求の期限についても、請求する相手と請求の類型ごとに分けて確認する必要があります。自賠責保険に対する被害者側からの請求、加害者側からの請求、加害者本人に対する民事上の損害賠償請求、任意保険契約に基づく請求は、それぞれ別の制度です。後遺障害に関する自賠責への被害者請求については、国土交通省の案内において症状固定日の翌日から3年とされていますが、事故日、適用される規定、経過措置により結論が変わり得るため、早い段階で確認することをおすすめします。

診断書の作成前・申請前にご確認ください

資料を確認したうえで、検討すべき障害の区分を整理します

咀嚼機能、言語機能、嚥下機能、歯牙障害のどこを主張すべきかは、症状の内容と医学的な裏付けによって変わります。診断書、画像、検査結果、食事や会話に関する記録をご持参いただければ、不足している資料と今後の手続を整理できます。

等級が認定された後に検討する損害

後遺障害等級は、損害賠償額そのものではありません。等級が認定された後、次のような損害項目を個別に検討することになります。

  • 後遺障害慰謝料/自賠責の支払基準と、裁判実務上参照される基準とでは考え方が異なります。後遺障害慰謝料の考え方を確認する
  • 逸失利益/発話や接客が業務の中心である場合など、仕事への影響は重要な検討要素です。もっとも、仕事上の支障や退職の事実がそれ自体で自賠責の等級を決めるものではありません。
  • 将来の治療費、補綴費、食事介助費、栄養管理費、介護費/事故との因果関係、必要性、相当性、将来の実施可能性、期間、費用資料などを個別に検討する必要があり、等級が認定されれば当然に認められるものではありません。

また、自賠責保険で認定された等級は、民事の損害賠償請求において裁判所を法的に拘束するものではありません。自賠責の保険金の限度額と、裁判実務上検討される損害額も、別のものとして整理する必要があります。

弁護士に相談する時期

相談によって等級や賠償額が保証されるわけではありません。もっとも、資料を確認することで、検討すべき障害の区分、必要となり得る医学資料、手続の選択肢を整理しやすくなります。次のような場面は、一度確認しておく価値があります。

  • 症状固定と言われたが、口の機能について十分な評価が行われていないと感じる
  • 後遺障害診断書の作成をこれから依頼する
  • 咀嚼と言語の両方に症状があり、どの等級を検討すべきか分からない
  • 非該当又は想定より低い等級の通知を受けた
  • 示談案の提示を受けたが、将来の治療や食事への影響が反映されているか分からない

ご本人が十分に説明できない場合、ご家族が症状や生活状況を整理し、資料を持参してご相談いただくこともできます。ただし、ご家族であるというだけで、ご本人に代わって示談、委任、請求を当然に行えるわけではありません。ご本人の意思能力や代理権の有無、成年後見等の要否は、個別に確認が必要です。

よくある質問

口が開きにくく、食事に時間がかかるだけでも後遺障害になりますか。

労災の障害等級認定基準では、開口障害等を原因として咀嚼に相当時間を要する場合について、第12級を準用する取扱いが示されています。もっとも、症状の程度と医学的な原因の裏付けにより結論は変わり、該当しないと判断されることもあります。開口量の数値だけで決まるものではありません。

柔らかい物は食べられますが、硬い物が噛めません。何級になりますか。

症状の説明だけでは等級を特定できません。実際に摂取できる食物の性状、噛めない原因についての医学的な所見、噛み合わせや顎関節・咀嚼筋の状態、症状の永続性などを確認したうえで判断する必要があります。

言語機能障害でいう「4種の語音」とは何ですか。

子音を構音部位により分類したもので、労災の障害等級認定基準では、口唇音(ま行音、ば行音、ぱ行音、わ行音、ふ)、歯舌音(な行音、た行音、だ行音、ら行音、さ行音、しゅ、し、ざ行音、じゅ)、口蓋音(か行音、が行音、や行音、ひ、にゅ、ぎゅ、ん)、喉頭音(は行音)が挙げられています。

ろれつが回りにくいものの会話はできます。言語機能障害になりますか。

4種の語音のうち発音できないものがあるか、綴音の機能に障害があって言葉だけでは意思疎通ができないかが検討の出発点です。会話ができるという事実だけで一律に判断されるものではなく、評価資料の確認が必要です。原因が脳の損傷にある場合は、神経系統の障害としての評価も問題となり得ます。

構音障害と失語症は同じものですか。

異なります。構音障害は、発声器官の形態異常や運動機能の障害により発音に関わる機能が損なわれた状態です。失語症は、脳の言語中枢の損傷により、いったん獲得された言語機能そのものに障害が生じた状態をいいます。後遺障害の検討では、どちらに当たるかによって整理の仕方が変わります。

嚥下障害は後遺障害として認められますか。

自動車損害賠償保障法施行令別表第二に独立した項目はありません。労災の障害等級認定基準では、舌の異常や咽喉支配神経の麻痺等による嚥下障害について、程度に応じて咀嚼機能障害に係る等級を準用する取扱いが示されています。なお、食道の狭窄による通過障害は、胸腹部臓器の障害として別に整理されています。

咀嚼機能障害と歯牙障害の両方がある場合、必ず併合されますか。

必ず併合されるわけではありません。労災の障害等級認定基準では、機能障害が歯牙障害以外の原因による場合は併合し、歯科補綴後にも歯牙損傷に基づく機能障害が残る場合は上位の等級により認定するものとされています。原因の切り分けが重要になります。

症状が残っていても等級に該当しないことはありますか。

あります。症状の程度が基準に届かない場合や、機能制限の医学的な原因が確認できない場合には、非該当と判断されることがあります。認定結果に疑問があるときは、まず認定理由を書面で確認し、不足している資料を検討することになります。

まとめ

  • 咀嚼・言語機能障害の等級は、障害の程度(廃した・著しい障害・障害を残す)と、咀嚼と言語の双方か一方かの組合せで、6類型が定められています。
  • 自賠責と労災では号数の表記が異なります。他制度の解説をそのまま自賠責の号数として読み替えないでください。
  • 開口障害と嚥下障害は、症状名だけで特定の等級が決まるものではありません。開口障害は第12級の準用、嚥下障害は咀嚼機能障害の等級の準用が、労災の認定基準上の取扱いとして示されています。
  • 歯牙障害と機能障害は評価の対象が異なり、原因によって併合するか上位等級によるかが分かれます。
  • 申請前に、摂取できる食形態、発音できない語音、開口と嚥下の状態、仕事への影響を、医学資料と生活記録の両面から整理してください。
  • 個別の事情により結論は異なります。診断書の作成前、申請前、示談前に一度確認することをおすすめします。

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監修者・執筆者

弁護士・公認会計士 藤井 貴之

兵庫県弁護士会所属。日本公認会計士協会兵庫会所属。弁護士法人ひょうご支所神戸みらい法律会計事務所の代表弁護士・公認会計士として、交通事故に関するご相談にも対応しています。

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参考資料

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