うつ病・適応障害は労災になる?精神障害の認定基準と2023年改正 |神戸市(須磨・垂水・西神・北神)の弁護士|初回相談無料|弁護士法人ひょうご支所神戸みらい法律会計事務所

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うつ病・適応障害は労災になる?精神障害の認定基準と2023年改正

仕事による強いストレスが続き、うつ病や適応障害と診断された。これは労災として認められるのだろうか――。そのように考えて情報を探している方は少なくありません。精神的な不調が業務に関係していると感じても、労災として認められるのか、何を準備すればよいのか、会社にどう伝えればよいのかが分からず、一人で抱え込んでしまう場面は多いものです。

この記事では、うつ病・適応障害などの精神障害が労災と認められるための基本的な考え方と、令和5年(2023年)に行われた認定基準の改正のポイントを、一般の読者に向けて整理します。あわせて、申請の前に確認しておきたい資料や、弁護士に相談する目安についても説明します。読み終えたときに、ご自身の状況で次に何を確認すればよいかを把握できることを目指しています。

気分の落ち込みや不眠などの症状が続いているときは、まず医療機関を受診することが大切です。気持ちがつらく自分を傷つけたい気持ちがある、急に体調が悪化したというときは、法律的な手続よりも先に、医療機関やお住まいの地域の相談窓口へご相談ください。診断や治療の要否は医師が判断するものであり、この記事は医療上の助言を行うものではありません。

労災にあたるかどうか迷っている段階でも、手元にある資料を整理することで、見通しを立てやすくなります。労働問題を取り扱う弁護士に相談することで、証拠や手続の整理がしやすくなります。

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結論|病名だけで労災が決まるわけではありません

はじめに要点を整理します。うつ病や適応障害と診断されたという事実だけで、労災として認められるかどうかが決まるわけではありません。労災として取り扱われるかどうかは、厚生労働省の認定基準に示された要件に照らして判断されます。

精神障害の労災認定で重視される主な点

  • 対象となる精神障害を発病していること
  • 発病前のおおむね6か月の間に、業務による強い心理的負荷が認められること
  • 業務以外の心理的負荷や個人側の要因によって発病したとは認められないこと

これらは認定基準が定める枠組みであり、診断名、発病の時期、業務上の出来事、労働時間、ハラスメントの有無、私生活上の事情などを総合的にみて判断されます。最終的な認定の可否は、医師の診断書や勤務記録などの資料を確認したうえで、労働基準監督署が判断します。個別の事情により結論は異なります。

確認したい点 具体的な内容
診断の状況 いつ、どの医療機関で、どのような診断を受けたか
業務上の出来事 長時間労働、ハラスメント、配置転換、重大なミスや事故対応などの有無
記録の有無 勤怠記録、メール、チャット、相談記録など、出来事を裏づける資料が残っているか
時期の関係 業務上の出来事と発病の時期がどのように重なっているか

精神障害の労災とは|制度と用語を整理する

労災保険は、業務が原因で生じた病気やけがなどについて、国が保険給付を行う制度です。雇用形態を問わず、労働者として働く方が幅広く対象となります。精神障害も、業務による強い心理的負荷が原因と認められる場合には、労災保険給付の対象になり得ます。

対象となる精神障害

認定基準では、国際的な診断分類で「精神及び行動の障害」に位置づけられる精神障害が対象とされています。うつ病や適応障害は、その代表的な例にあたります。一方で、頭部外傷や脳の疾患などに伴うものなど、対象から除かれる類型もあります。ご自身の診断がどれにあたるかは、診断書の内容を踏まえて判断する必要があります。

医療上の判断と労災(法律)上の判断は別である

注意したいのは、医師による診断・治療の判断と、労災として業務上のものと認められるかどうかの判断は、別の問題だという点です。医師が「仕事が原因の可能性がある」と述べていても、労災として認められるかどうかは、認定基準に沿って労働基準監督署が改めて判断します。逆に、診断を受けていなければ手続を始めることが難しいため、まずは医療機関を受診し、診断を受けることが出発点になります。

認定基準の判断枠組み|3つの要件をどうみるか

精神障害が労災として取り扱われるかどうかは、先に挙げた3つの要件に照らして判断されます。それぞれの内容を順にみていきます。

①対象となる精神障害を発病していること

まず、認定基準の対象となる精神障害を発病していることが前提となります。発病しているかどうか、いつ発病したか、どの疾患かについては、医師の医学的な判断が基礎になります。そのため、診断書や通院の記録が重要な資料になります。

②発病前のおおむね6か月の間に、業務による強い心理的負荷があること

次に、発病前のおおむね6か月の間に、業務による強い心理的負荷が認められることが必要とされています。ここでいう心理的負荷の強さは、その出来事を本人がどう受け止めたかという主観だけでなく、同じような立場の労働者が一般的にどう受け止めるかという観点から評価される、とされています。具体的な出来事を評価する表(業務による心理的負荷評価表)に当てはめ、「強」「中」「弱」のいずれにあたるかを検討する仕組みです。

いじめやハラスメントのように出来事が繰り返される場合の取扱いなど、評価の細かな運用は認定基準に定められています。どの出来事がどの強度にあたるかは、事実関係と資料に照らして慎重に判断する必要があります。

③業務以外の心理的負荷・個人側の要因

3つ目に、業務以外の心理的負荷や個人側の要因によって発病したとは認められないことが必要とされています。個人側の要因には、もともとの体質やストレスへの反応のしやすさ、過去の精神障害の既往などが含まれるとされています。これらが発病の主な原因と認められる場合には、業務によるものとは認められないことがあります。私生活上の出来事や既往歴についても確認の対象になり得ます。

要件 みられる主な資料
発病の有無・時期 診断書、診療明細、通院記録
業務による強い心理的負荷 勤怠記録、メール、チャット、業務指示、相談記録、録音、メモ
業務以外の要因 私生活上の事情、既往歴に関する情報

2023年(令和5年)改正のポイント

精神障害の労災の認定基準は、令和5年(2023年)9月に改正されました。社会情勢の変化や最新の医学的な知見を踏まえたもので、主に次の点が見直されています。改正されたことによって必ず認定されやすくなる、という性質のものではなく、評価の枠組みや具体例が整理されたものと理解しておくとよいでしょう。

業務による心理的負荷評価表の見直し

業務上の出来事を評価するための表が見直され、いわゆるカスタマーハラスメント(顧客や取引先、施設利用者などから著しい迷惑行為を受けたこと)が、評価の対象となる具体的な出来事として追加されました。あわせて、感染症などの病気や事故の危険性が高い業務に従事したことも、具体的な出来事として加えられています。また、パワーハラスメントの類型ごとの具体例が整理され、性的指向・性自認に関する精神的な攻撃などが含まれることも明記されました。

精神障害が悪化した場合の取扱いの見直し

すでに精神障害がある方について、業務による強い心理的負荷によって症状が悪化した場合の取扱いも見直されました。一定の場合に、悪化した部分について業務によるものと認められる範囲が整理されています。すでに通院している方の事案でも、その後の業務上の出来事が問題になり得るということです。

医学的な意見の集め方の効率化

労災として認められるかどうかを判断する際の、医師など専門家の意見の集め方についても、手続を効率化する見直しが行われました。審査の迅速化を目的としたものです。

改正の柱 主な内容
評価表の見直し カスタマーハラスメント・感染症等の危険性が高い業務の追加、パワーハラスメントの具体例の整理
悪化事案の取扱い 業務による強い心理的負荷で悪化した場合の取扱いの整理
医学的意見の収集 専門家の意見の集め方の効率化

よく問題になるケース

実際の相談では、次のような場面で判断が分かれやすく、迷いが生じやすい傾向があります。いずれも、結論は個別の事情によって異なります。

長時間労働が背景にある場合

残業時間が多い状況が続いたことが背景にある場合、その期間や程度が問題になります。タイムカードやPCのログ、入退館記録など、労働時間を裏づける資料が残っているかどうかが重要になります。

パワーハラスメント・カスタマーハラスメント

上司や同僚からの言動、あるいは顧客や取引先からの著しい迷惑行為が背景にある場合、その内容や頻度、続いた期間などが評価の対象になります。録音やメール、相談記録など、どの資料が残っているかを整理することが第一歩になります。

配置転換・業務量の大幅な変化

異動や担当業務の大きな変更、業務量の急増などが背景にある場合もあります。経緯が分かる資料や、業務量の変化を示す記録があるかどうかを確認しておくと、状況の整理がしやすくなります。

休職・復職・退職をめぐるトラブル

休職や復職、退職勧奨、解雇などが絡む場合、労災の問題とそれ以外の問題が同時に生じることがあります。体調や職場の状況、今後の働き方の希望によって、検討すべき順序が変わってきます。

会社が労災申請に協力しない場合

労災の請求は、原則として労働者本人が行うものとされており、会社の同意や承認が必須というわけではありません。会社が請求書の証明に応じない場合でも、その事情を説明したうえで労働基準監督署へ提出する取扱いが実務上とられています。具体的な進め方は、労働基準監督署の窓口や弁護士に確認しながら進めると安心です。

ここで挙げた例は、あくまで一般的な整理です。同じような出来事でも、続いた期間、前後の状況、残っている資料によって評価は変わります。「資料がそろっていないから難しい」と決めつける前に、どの資料が残っているかを整理することが大切です。

労災申請の前に確認しておきたい資料

申請を検討する段階、会社に相談する前、労働基準監督署に相談する前、弁護士に相談する前のいずれの場面でも、次のような資料が手元にあるかどうかを確認しておくと、状況を整理しやすくなります。

  • 診断書、診療明細、通院記録など、診断や治療の状況が分かるもの
  • 発病の時期が分かる資料
  • 勤怠記録、タイムカード、PCのログ、入退館記録、シフト表など、労働時間が分かるもの
  • 残業の状況が分かる資料
  • メール、チャット、業務指示、業務日報など、業務の状況が分かるもの
  • ハラスメントに関する録音、メモ、相談記録
  • 異動、配置転換、業務量の変更に関する資料
  • 会社への申告、産業医面談、休職・復職に関する書類
  • 労働基準監督署や会社から届いた書面

すべての資料がそろっていなくても、相談を始めることはできます。まずは残っているものを確認し、足りない部分は後から補う、という進め方も可能です。

どの資料が手元にあり、何を補えばよいかは、状況によって異なります。労働問題を取り扱う弁護士に相談することで、資料の整理や手続の見通しを立てやすくなります。

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弁護士に相談する目安

弁護士への相談は、必ず労災として認められることを約束するものではありません。資料の整理や手続の見通し、会社とのやり取りの方針を整理するためのものと考えるとよいでしょう。次のような場面では、早めに相談を検討する価値があります。

  • 労災の申請をするかどうか迷っているとき
  • 会社が労災の申請に協力しない、または事実関係を争っているとき
  • ハラスメントや長時間労働の証拠の整理が難しいとき
  • 休職、復職、退職勧奨、解雇などが絡むとき
  • 労災とは別に、会社に対する損害賠償を検討したいとき
  • 労働基準監督署から支給されない旨の決定を受けた後の対応を検討したいとき

うつ病と診断されれば労災になりますか。

診断名だけで決まるわけではありません。発病の時期や業務上の出来事、労働時間、私生活上の事情などを総合的にみて判断されます。資料を確認したうえで検討する必要があります。

適応障害でも労災申請はできますか。

適応障害も認定基準の対象となる精神障害の一つです。労災として認められるかどうかは、業務による心理的負荷の状況などを踏まえて判断されます。個別の事情により結論は異なります。

パワハラが原因の場合、どのような資料があるとよいですか。

言動の内容や頻度、続いた期間が分かる資料があると、状況を整理しやすくなります。録音、メール、チャット、社内の相談記録などが考えられます。まずは残っているものを確認することから始めるとよいでしょう。

長時間労働があれば必ず労災になりますか。

長時間労働があったからといって、必ず労災として認められるわけではありません。労働時間の程度や期間、ほかの事情とあわせて評価されます。労働時間を裏づける資料を確認しておくことが重要です。

会社が労災申請に協力してくれない場合はどうすればよいですか。

労災の請求は原則として労働者本人が行うものとされており、会社の協力が得られない場合でも、その事情を説明して労働基準監督署へ提出する取扱いがあります。具体的な進め方は、労働基準監督署の窓口や弁護士に確認するとよいでしょう。

労災申請の前に弁護士へ相談したほうがよいですか。

必須ではありませんが、資料の整理や手続の見通しに不安がある場合には、早めに相談することで方針を整理しやすくなります。会社とのやり取りや証拠の整理について相談することもできます。

休職中や退職後でも労災申請を検討できますか。

休職中や退職後であっても、検討できる場合があります。時期や状況によって確認すべき点が変わるため、資料を整理したうえで判断する必要があります。

労災と会社への損害賠償は別に考える必要がありますか。

労災保険給付と、会社に対する損害賠償は、性質の異なる別の手続です。両方を検討できる場合もありますが、それぞれ要件や進め方が異なります。詳しくは弁護士に相談するとよいでしょう。

まとめ

  • うつ病・適応障害という診断名だけで、労災になるかどうかは決まりません。
  • 発病前のおおむね6か月の業務による強い心理的負荷の有無が重視されます。
  • 令和5年(2023年)の改正で、カスタマーハラスメントの追加など、評価の枠組みが整理されました。
  • 診断書や勤務記録など、手元の資料を確認することが第一歩になります。
  • 迷ったときは、資料の整理や手続の見通しのために、労働問題を取り扱う弁護士への相談を検討するとよいでしょう。

うつ病・適応障害が労災にあたるか迷っている方は、まず手元の資料を整理したうえで、見通しを検討することができます。会社とのやり取りや証拠の整理についても、相談を通じて方針を整理しやすくなります。

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監修

本記事は、神戸みらい法律会計事務所に所属する弁護士が監修しています。所属する弁護士の経歴や取扱分野は、弁護士紹介ページでご確認いただけます。

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