神戸市や兵庫県内で会社を経営されている方、あるいは後継者として会社を引き継ぐ立場にある方にとって、「自社株を次の世代へどのように渡すか」は避けて通れない課題です。とりわけ株式の評価額が高い会社では、贈与税や相続税の負担が後継者に重くのしかかることがあります。
この負担を抑える選択肢の一つが、法人版事業承継税制の「特例措置」です。一定の要件を満たすと、後継者が取得した非上場株式等に係る贈与税・相続税の納税が猶予され、最終的に免除される場合があります。
もっとも、この特例措置を使うには、まず「特例承継計画」を期限内に都道府県へ提出しておく必要があります。インターネット上には「2026年3月31日が提出期限」と説明する情報も残っていますが、これは改正前の期限です。本記事では、現在の提出期限、適用期限との違い、主な要件、神戸・兵庫の会社が確認すべき点を、公的情報をもとに整理します。なお、結論や税務上の取扱いは会社の状況や個別事情により異なるため、最終的には資料を確認したうえでの判断が必要です。
自社株の承継について、何から手を付けるべきか整理したい場合は、株主名簿・決算書・親族関係資料などを確認しながら、手続の見通しと進め方を整理できます。
Contents
まず結論|事業承継税制の特例措置と現在の提出期限
はじめに要点を整理します。
事業承継税制の特例措置の要点
- 後継者が取得した非上場株式等に係る贈与税・相続税の納税を猶予し、一定の場合に免除する制度です。税負担が直ちに消える制度ではありません。
- 利用するには、まず「特例承継計画」を都道府県へ提出して確認を受ける必要があります。
- 特例承継計画の提出期限は、改正前は令和8年(2026年)3月31日でしたが、令和8年度税制改正により令和9年(2027年)9月30日まで延長されています(中小企業庁の公表に基づきます)。
- 一方、贈与・相続そのものの実行期限(適用期限)は令和9年(2027年)12月31日で、延長されていません。
- 計画を提出すれば必ず納税猶予を受けられるわけではありません。会社・先代経営者・後継者・株式・申告・担保・継続届出など、複数の要件を満たし続ける必要があります。
全体像を表で示します。各手続の関係を押さえておくと、どの段階に期限があるのかを整理しやすくなります。
| 段階 | 主な内容 | 位置づけ |
|---|---|---|
| ①特例承継計画の提出・確認 | 認定経営革新等支援機関の指導助言を受けて計画を作成し、都道府県へ提出して確認を受ける | 制度利用の入口(この段階に提出期限があります) |
| ②贈与・相続の実行 | 後継者が自社株を贈与または相続により取得する | 実行期限(適用期限)があります |
| ③都道府県知事の認定申請 | 要件を満たすことについて知事の認定を受ける | 承継方法ごとに申請期限があります |
| ④税務署への申告・担保提供 | 認定書の写しを添えて贈与税・相続税を申告し、担保を提供する | 申告期限内に行う必要があります |
| ⑤継続届出・年次報告 | 認定後、都道府県への年次報告と税務署への継続届出を継続して行う | 一定期間の継続が前提です |
計画提出は①の入口にすぎません。②以降の要件を満たして初めて納税猶予が適用され、その後も継続要件を満たし続ける必要があります。期限・要件は最新の公式情報で確認することをおすすめします。
「令和9年9月30日」が現在の特例承継計画の提出期限|「2026年3月」は改正前の期限
「2026年3月で期限が切れるのではないか」という不安から検索される方が多いテーマです。まず、期限の現状を正確に整理します。
改正前の期限(令和8年3月31日)と現行期限(令和9年9月30日)
法人版事業承継税制の特例措置は、平成30年度税制改正で10年間限定として拡充された制度です。当初、特例承継計画の提出期限は段階的に定められ、改正前は令和8年(2026年)3月31日とされていました。その後、令和8年度税制改正により、法人版の特例承継計画の提出期限は令和9年(2027年)9月30日まで延長されています。
したがって、「2026年3月31日」は改正前の期限であり、現在の提出期限ではありません。改正前の期限はすでに経過していますが、現行の提出期限である令和9年9月30日までは、特例承継計画を提出する余地があります。
延長されたのは「計画の提出期限」だけ|適用期限は令和9年12月31日のまま
ここが最も誤解されやすい点です。延長されたのは、あくまで特例承継計画の提出期限です。実際に贈与・相続によって自社株を承継する「実行期限(適用期限)」は、令和9年(2027年)12月31日のままで、延長されていません。
計画提出期限(令和9年9月30日)と、贈与・相続の実行期限(令和9年12月31日)は、わずかな間隔しかありません。計画を期限ぎりぎりで提出すると、その後の株式評価、後継者の代表就任、認定申請、申告までを短期間で進めることになります。実行期限から逆算して早めに準備を進めることが現実的です。
公式情報の表示が分かれている場合の確認方法
制度改正の直後は、行政機関ごとに公表情報の更新時期が異なり、提出期限の表示が一致しないことがあります。実際、制度を所管する中小企業庁のページは現行期限(令和9年9月30日)に更新されていますが、他の公的サイトでは改正前の表示が残っている場合があります。期限が会社の判断に直結する場面では、中小企業庁および兵庫県の最新情報を確認し、不明な点は認定経営革新等支援機関や専門家に確認することをおすすめします。
法人版事業承継税制(特例措置)の基礎知識
特例措置と一般措置の違い
法人版事業承継税制には、期間の定めのない「一般措置」と、10年間限定で要件が緩和された「特例措置」があります。特例措置は、事前に特例承継計画を提出することが前提となる一方で、納税猶予の対象や承継パターンの面で一般措置より使いやすく設計されています。
| 項目 | 特例措置 | 一般措置 |
|---|---|---|
| 事前の計画 | 特例承継計画の提出が必要 | 不要 |
| 対象となる株式 | 取得した全株式が対象になり得る | 総株式数の一定割合まで |
| 納税猶予の割合 | 100% | 贈与は全額、相続は一定割合 |
| 承継のパターン | 複数の株主から最大3人の後継者へ | 複数の株主から1人の後継者へ |
| 雇用に関する要件 | 弾力化されている | 承継後一定期間の雇用維持が前提 |
具体的な割合や適用関係は会社の状況により異なり、また細部は公式資料の確認が必要です。表は制度の大枠を理解するための整理としてご覧ください。
「納税猶予」と「免除」は同じではない
「納税猶予」は、要件を満たしている間、贈与税・相続税の納付が猶予される仕組みです。猶予された税が直ちに消えるわけではありません。後継者の死亡など一定の事由が生じた場合に、猶予されていた税が「免除」されます。逆に、途中で要件を満たさなくなると、猶予が打ち切られ、猶予されていた税額や利子税の納付が必要になることがあります。
押さえておきたい用語
- 非上場株式等:上場していない会社の株式等です。本制度の対象となります。
- 先代経営者・後継者:株式を渡す側と受け取る側です。それぞれに要件があります。
- 認定経営革新等支援機関:国が認定した支援機関で、特例承継計画の作成に際して指導・助言を行います。商工会・商工会議所、金融機関、税理士、公認会計士、弁護士等が認定されています。
- 都道府県知事の認定:要件を満たすことについて知事から受ける認定で、納税猶予の前提となります。
特例措置を使うための主な要件
特例措置の要件は細かく、会社の状況や承継の方法によって変わります。ここでは大枠のみを整理します。実際に当てはまるかどうかは、資料を確認したうえで個別に判断する必要があります。
会社・先代経営者・後継者・その他株主の要件
都道府県知事の認定を受けるには、対象会社に関する要件、先代経営者に関する要件、後継者に関する要件、先代経営者以外の株主等に関する要件を、それぞれ満たす必要があります。たとえば後継者については、代表者であることや、一定の議決権を保有することなどが問われます。要件の内容は贈与と相続で異なります。
贈与の場合と相続の場合
同じ特例措置でも、生前の贈与で進めるか、相続を待つかによって、要件・手続・タイミングが変わります。先代経営者の年齢や健康状態、後継者の役員就任状況、株主構成などを踏まえて、どちらの方法が会社の実情に合うかを検討することになります。いずれが有利かは個別事情により結論が異なります。
認定後も続く要件(継続保有・報告・継続届出・担保)
納税猶予は、認定を受けて終わりではありません。報告期間中は代表者として経営を行うことや、対象株式を継続して保有することなどが求められ、都道府県への年次報告と税務署への継続届出を継続して行う必要があります。また、納税猶予に当たっては担保の提供も必要です。これらを怠ると認定が取り消され、猶予が打ち切られることがあります。
手続の全体的な流れ
現状把握から認定後の報告まで、手続は長期にわたります。流れを表で整理します。各段階の具体的な期限は承継方法により異なるため、最新の公式資料で確認してください。
| 順序 | 手続 | 主な確認事項 |
|---|---|---|
| 1 | 現状把握 | 株主構成、自社株評価、後継者候補、親族関係、会社の財務状況 |
| 2 | 認定経営革新等支援機関の指導・助言 | 計画内容についての指導・助言を受ける |
| 3 | 特例承継計画の作成・提出・確認 | 都道府県へ提出し、確認を受ける(提出期限あり) |
| 4 | 贈与または相続の発生 | 後継者が自社株を取得(実行期限あり) |
| 5 | 都道府県知事の認定申請 | 承継方法ごとに申請期限がある |
| 6 | 税務署への申告・担保提供 | 認定書の写しを添付して申告し、担保を提供する |
| 7 | 継続届出・年次報告 | 都道府県・税務署への報告を継続する |
| 8 | 要件を満たさなくなった場合の確認 | 猶予打ち切り・納付のリスクを確認する |
神戸市・兵庫県の会社が迷いやすいケース
実務では、制度そのものよりも「自社の状況でどう判断すべきか」で迷う場面が多くあります。代表的なケースを整理します。いずれも結論は個別事情により異なります。
後継者がまだ決まっていない
特例承継計画には後継者を記載することが想定されており、後継者が定まっていない段階では検討が難しくなる場面があります。一方で、計画は確定後に変更する余地もあります。後継者選定と並行して、株主構成や事業計画の整理を先に進めることが現実的な場合があります。後継者が未定のまま利用できると断定はできないため、早めに方針を整理することが重要です。
株式が親族・役員に分散している/兄弟姉妹間で不満が出そう
株式が複数の親族や役員に分散している場合、後継者へ議決権を集約できるかが論点になります。また、後継者へ株式を集中させると、他の相続人との間で遺留分などをめぐる不満が生じることがあります。税務上の手当てだけでなく、株主構成の整理や相続全体のバランスを併せて検討する必要があります。
株式評価が高く、税負担が心配
業績の良い会社ほど株式評価額が高くなり、後継者の税負担が大きくなる傾向があります。納税猶予はこの負担への対応策の一つですが、評価額や税額は会社の財務内容によって異なり、税務上の取扱いは申告内容により変わります。具体的な税額試算は税理士・税務署への確認が必要です。
顧問税理士に勧められたが、会社支配や遺留分が不安
顧問税理士から事業承継税制を勧められたものの、株式を後継者に集中させることで会社支配や他の相続人との関係に影響が出ないか不安、というご相談があります。税務面は税理士が、法務面(株主構成、議決権、遺留分、遺言、種類株式、後継者間の調整など)は弁護士が、それぞれの観点から整理することで、全体像を確認しやすくなります。
贈与で進めるか、相続を待つか
生前贈与で早めに承継するか、相続まで待つかは、先代経営者の年齢・健康状態、後継者の準備状況、株価の見通し、納税資金などを踏まえた判断になります。実行期限(令和9年12月31日)が定まっていることも考慮要素です。どちらが適しているかは個別事情により異なります。
手続前に準備しておきたい資料
相談や手続をスムーズに進めるために、あらかじめ次のような資料を整理しておくと、現状把握が早く進みます。すべてが直ちに必要というわけではありませんが、手元にある範囲で確認しておくと役立ちます。
- 株主名簿
- 登記事項証明書(会社の登記簿)
- 定款
- 決算書、税務申告書、勘定科目内訳書
- 株式評価に関する資料
- 親族関係図・相続人関係図
- 遺言書、遺産分割協議書の有無
- 先代経営者の保有株式数
- 後継者候補の役員就任状況
- 会社の事業計画
- 従業員の雇用状況
- 金融機関からの借入、経営者保証の状況
- 顧問税理士・会計事務所・金融機関との協議状況
- 過去の株式の移転・贈与・売買、名義株の有無
- 中小企業庁・兵庫県の最新様式
弁護士・公認会計士に相談するタイミングと役割分担
事業承継税制は、税務だけで完結する話ではありません。誰が、どの部分を担うのかを整理しておくと、相談先の見通しが立てやすくなります。
| 担い手 | 主に整理できる事項 |
|---|---|
| 税理士・税務署 | 株式評価、税額試算、贈与税・相続税の申告、納税猶予に関する税務上の取扱い |
| 認定経営革新等支援機関 | 特例承継計画の内容についての指導・助言 |
| 弁護士 | 株主構成・議決権の整理、遺留分、遺言、遺産分割、種類株式、株主間の調整、契約書、役員退職金、経営者保証などの法務面 |
税務申告や税額試算は税務の確認が必要であり、弁護士だけで税務申告を完結させるものではありません。一方で、株式を後継者に集約する場面では、会社支配や相続全体のバランスといった法務上の論点が同時に生じることが多くあります。資料を整理して早めに相談することで、税務・法務それぞれの確認事項や手続の優先順位を整理しやすくなります。相談のタイミングとしては、実行期限から逆算し、株式評価や後継者の準備に着手する段階が一つの目安です。
自社株の承継について、税務・会社支配・相続を横断して整理したい場合は、株主名簿・決算書・相続関係資料などを確認しながら、手続の見通しと進め方を整理できます。
よくある質問
特例承継計画の提出期限はいつですか。
法人版の特例承継計画の提出期限は、改正前の令和8年(2026年)3月31日から延長され、現在は令和9年(2027年)9月30日とされています(中小企業庁の公表に基づきます)。期限は会社の判断に直結するため、最新の公式情報での確認をおすすめします。
「2026年3月31日」の期限は今も有効ですか。
「2026年3月31日」は改正前の期限であり、現在の提出期限ではありません。現行の提出期限は令和9年(2027年)9月30日です。ただし、贈与・相続の実行期限(令和9年12月31日)は延長されていない点に注意が必要です。
特例承継計画を提出すれば、必ず納税猶予を受けられますか。
いいえ。計画提出は入口にすぎません。会社・先代経営者・後継者・株式・申告・担保・継続届出など複数の要件を満たし、都道府県知事の認定や税務署への申告を経て初めて適用されます。要件を満たさなくなれば猶予が打ち切られることもあります。
神戸市の会社は、どこに特例承継計画を提出しますか。
申請窓口は、申請企業の主たる事務所が所在する都道府県となります。神戸市に主たる事務所がある会社は、兵庫県(産業労働部地域経済課)が窓口です。様式や提出方法は中小企業庁・兵庫県の最新情報で確認してください。
後継者がまだ確定していない場合でも検討できますか。
後継者の記載が想定される制度であり、未定の段階では検討が難しい面があります。一方で計画は後から変更する余地もあります。後継者が未定のまま問題なく利用できると断定はできないため、後継者選定と並行して株主構成や事業計画の整理を進めることをおすすめします。
自社株評価はいつ確認すべきですか。
株式評価額は税負担や承継方法の判断に影響します。評価額や税額は会社の財務内容や申告内容により異なるため、早めに税理士へ確認することが望まれます。評価の前提づくりには一定の時間がかかります。
顧問税理士がいても、弁護士に相談する意味はありますか。
あります。税務面は税理士が担いますが、株式集約に伴う会社支配、遺留分、遺言、種類株式、後継者間の調整などは法務上の論点です。税務と法務を分担して整理することで、全体像を確認しやすくなります。
事業承継税制を使わない場合、どのような選択肢がありますか。
納税資金の準備、株式の段階的な移転、種類株式の活用、遺言・株主間契約による手当て、第三者承継(M&A)など、複数の選択肢があります。どれが適するかは会社の状況により異なるため、資料を確認したうえで比較検討することになります。
まとめ
- 事業承継税制の特例措置は、非上場株式等に係る贈与税・相続税の納税を猶予・免除し得る制度で、税負担が直ちに消える制度ではありません。
- 特例承継計画の提出期限は、改正前の令和8年3月31日から延長され、現在は令和9年9月30日です(最新の公式情報で確認してください)。
- 贈与・相続の実行期限(令和9年12月31日)は延長されていません。提出期限との間隔が短いため、早めの準備が現実的です。
- 計画提出だけで適用は確定しません。会社・先代経営者・後継者・株式・申告・担保・継続届出など、複数の要件を満たし続ける必要があります。
- 神戸市の会社は、主たる事務所所在地を基準に、兵庫県(産業労働部地域経済課)が提出窓口です。
- 税務は税理士・税務署、法務(株主構成・遺留分・種類株式・会社支配など)は弁護士、と役割を整理し、資料を準備して早めに相談することで、手続の優先順位を確認しやすくなります。
事業承継税制の利用可否や、自社株承継の進め方を整理したい場合は、会社の資料を確認したうえで、手続の見通しと優先順位を整理できます。費用や相談の進め方は、各ページをご確認ください。
監修者・執筆者
本記事は、弁護士法人ひょうごあわじみらい法律会計事務所(神戸みらい法律会計事務所)の弁護士が監修しています。事業承継に関するご相談や、弁護士の経歴・取扱分野については、弁護士紹介ページをご覧ください。
参考資料

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