相続が起きると、まず「だれが、どの財産を、どのように引き継ぐか」という遺産分割を考えることになります。一方で、一定額を超える遺産がある場合には、相続税の申告と納税を期限内に行わなければなりません。この二つは別の手続のように見えますが、実際には密接に関係しています。財産の分け方によって、相続税の負担、各種特例を使えるかどうか、納税のための資金、そして配偶者が亡くなったときの次の相続(二次相続)への影響までが変わり得るためです。
この記事では、遺産分割と相続税申告をなぜ一体で考える必要があるのか、分け方によって何が変わり得るのか、申告期限までに分割がまとまらない場合に何へ注意すべきかを、国税庁の公表情報をもとに整理します。読み終えたときに、ご自身が次に確認すべき資料と、弁護士・税理士に相談すべきタイミングが見えてくることを目指します。
なお、個別の税額がいくらになるか、特例を実際に使えるかどうかは、財産の内容や分割の内容によって異なり、資料の確認と税務上の検討が必要です。本記事は一般的な制度と実務上の考え方を説明するものであり、個別の税額や申告の可否を結論づけるものではありません。具体的な税額の試算や申告の可否については、税理士等とあわせてご確認ください。
相続では、分け方を決める前に全体像を整理しておくことで、後から修正が必要になる事態を避けやすくなります。神戸みらい法律会計事務所では、相続に関するご相談を承っています。
Contents
なぜ遺産分割と相続税申告は一体で考える必要があるのか
この記事で分かること
- 遺産分割と相続税申告がどのように関係しているか
- 分け方によって税負担や特例の適用が変わり得る主な場面
- 相続税の申告期限までに分割がまとまらない場合の注意点
- 遺産分割協議書に署名する前に確認しておきたいこと
- 弁護士と税理士に相談すべきタイミングと役割分担
遺産分割と相続税申告は、本来それぞれ別の目的を持つ手続です。遺産分割は、相続人の間で財産の帰属を確定させる民事上の手続です。相続税申告は、課税対象となる財産の価額を計算し、税額を申告・納税する税務上の手続です。担当する専門家も、前者は弁護士、後者は税理士が中心になります。
もっとも、この二つを切り離して進めると、次のような不都合が生じやすくなります。たとえば、税負担だけを優先して分け方を決めた結果、将来の不動産の管理や売却で相続人同士が対立する、あるいは、分け方を後から変更したことで修正申告や更正の請求が必要になる、といった事態です。逆に、税務上の取扱いをまったく考慮せずに分割を決めると、本来使えたはずの特例を使えなくなったり、納税資金を確保できなくなったりすることもあります。
| 視点 | 別々に考えた場合に起きやすいこと | 一体で考える意義 |
|---|---|---|
| 税負担 | 特例を使えない分け方を選んでしまう | 適用要件を踏まえて分け方を検討できる |
| 納税資金 | 不動産中心の取得で納税資金が不足する | 資金繰りを見据えて取得財産を検討できる |
| 二次相続 | 一次相続だけを見て配偶者に集中させる | 次の相続まで見据えて全体を検討できる |
| 紛争リスク | 安易な共有で将来の処分・管理が滞る | 将来の管理・処分まで想定して分け方を選べる |
| 手続のやり直し | 分割の変更で修正申告等が必要になる | 当初から整合した内容で進めやすくなる |
以下では、まず前提となる制度を確認し、そのうえで分け方が税負担に影響し得る場面、申告期限までにまとまらない場合の注意点を順に整理します。
前提となる基礎知識
遺産分割とは何か
遺産分割とは、被相続人(亡くなった方)が残した財産を、相続人の間でどのように分けるかを決める手続です。相続人全員の合意によって成立し、その内容は遺産分割協議書という書面にまとめるのが一般的です。協議がまとまらない場合には、家庭裁判所の遺産分割調停や審判という手続を利用することになります。
重要なのは、一度成立した遺産分割協議は、原則として相続人の一方が後から自由に撤回・変更できるものではない、という点です。署名・押印の前に内容を十分に検討する必要があります。
相続税の申告と納税の期限
相続税の申告と納税は、被相続人が死亡したことを知った日(通常は死亡の日)の翌日から10か月以内に行うこととされています。提出先は、原則として被相続人の死亡時の住所地を所轄する税務署です。期限までに申告・納税をしなかった場合や、実際より少ない額で申告した場合には、本来の税金のほかに加算税や延滞税がかかることがあります。
相続税の申告は、遺産分割がまとまっていない場合であっても、この10か月以内の期限までに行う必要があります。分割が終わっていないことを理由に申告期限が延びることはありません。
基礎控除と「申告が必要かどうか」
相続税は、課税対象となる正味の遺産額が基礎控除額を超える場合に課税されます。基礎控除額は、「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」という式で計算します。正味の遺産額がこの基礎控除額の範囲内であれば、原則として相続税の申告も納税も必要ありません。
もっとも、後で述べる配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を使った結果として税額がゼロになる場合は、特例を使うために申告そのものが必要になります。「税額がゼロだから申告も不要」とは限らない点に注意が必要です。
配偶者の税額軽減とは
配偶者の税額軽減とは、被相続人の配偶者が遺産分割や遺贈によって実際に取得した正味の遺産額が、次のいずれか多い金額までは配偶者に相続税がかからないという制度です。
- 1億6,000万円
- 配偶者の法定相続分相当額
この軽減は、配偶者が実際に取得した財産を基に計算されます。したがって、相続税の申告期限までに分割されていない財産は、原則として軽減の対象になりません。後述する一定の手続をとることで、後から対象にできる場合があります。
小規模宅地等の特例とは
小規模宅地等の特例とは、被相続人等の居住用や事業用に使われていた宅地等について、一定の面積までの部分の相続税の課税価格を、区分に応じて減額する制度です。減額の割合と限度面積は、おおむね次のとおりです。
| 区分 | 主な対象 | 限度面積 | 減額割合 |
|---|---|---|---|
| 特定居住用宅地等 | 被相続人等の自宅の土地 | 330平方メートル | 80% |
| 特定事業用宅地等 | 被相続人等の事業用の土地 | 400平方メートル | 80% |
| 特定同族会社事業用宅地等 | 一定の同族会社の事業用の土地 | 400平方メートル | 80% |
| 貸付事業用宅地等 | 賃貸など貸付事業用の土地 | 200平方メートル | 50% |
この特例には、だれが取得するか、申告期限まで居住や事業・保有を継続しているか、といった要件があります。また、特例の対象となり得る宅地を取得する相続人が複数いる場合には、どの宅地に特例を適用するかについて全員の同意が必要であり、原則として申告期限までに分割されていることが求められます。つまり、だれがどの土地を取得するかという分け方そのものが、特例を使えるかどうかに直結します。
遺産分割協議書が持つ二つの役割
遺産分割協議書は、相続人の間の合意を示す法律上の書面であると同時に、相続税の申告や名義変更の場面でも重要な資料になります。たとえば、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例の適用を受ける際には、遺産分割協議書の写しや相続人全員の印鑑証明書などの添付が求められます。不動産の名義変更(相続登記)や預貯金の解約手続でも、協議書が必要書類となるのが一般的です。
このように、遺産分割協議書は「もめごとを解決するための書面」にとどまらず、その後の税務手続・財産の名義変更の前提となる書類です。記載内容に不備があると、後の手続で支障が出ることがあります。
分け方によって相続税の負担が変わり得る主な場面
だれがどの財産を取得するか
相続税は、相続財産全体に対して算出した税額を、各相続人が取得した財産の割合に応じて負担する仕組みになっています。そのうえで、配偶者の税額軽減のように、だれが取得したかによって適用される軽減が異なる制度があります。したがって、同じ財産であっても、だれが取得するかによって相続人全体の税負担や各人の負担割合が変わり得ます。
配偶者がどの程度取得するか(税額軽減と二次相続)
配偶者が多くの財産を取得すれば、配偶者の税額軽減により、その相続(一次相続)での税負担は軽くなる可能性があります。しかし、ここで見落とされやすいのが二次相続です。二次相続とは、今回の相続で財産を取得した配偶者が、将来亡くなったときに起きる次の相続をいいます。
配偶者に財産を集中させると、その財産は二次相続の際に子などへ承継され、そのときには配偶者の税額軽減を使えません。結果として、一次相続と二次相続を合わせた全体の税負担が、必ずしも軽くならない場合があります。配偶者にどの程度取得させるかは、一次相続だけでなく二次相続まで見据えて検討する必要があり、その判断には財産内容に応じた税務上の検討が欠かせません。
「配偶者が全部相続すれば相続税はかからない」という理解は、二次相続を考慮していない点で正確ではありません。最終的にどの分け方が望ましいかは、財産の内容や分割の内容によって異なるため、税理士等と連携して検討することをおすすめします。
自宅・事業用の土地をだれが取得するか
小規模宅地等の特例は、自宅の土地(特定居住用宅地等)であれば330平方メートルまで80%、事業用の土地(特定事業用宅地等)であれば400平方メートルまで80%というように、大きな減額につながり得る制度です。一方で、取得者や継続要件を満たさなければ適用できません。たとえば、自宅の土地をだれが取得するか、その人が申告期限まで居住・保有を続けるかによって、特例の適用可否や減額の対象が変わり得ます。
このため、「自宅を承継する人をだれにするか」という分け方の判断は、感情面や生活面だけでなく、特例を活かせるかどうかという観点からも検討する価値があります。なお、適用可否は個別の事情により異なるため、具体的な判断は資料を確認したうえで税理士等とあわせて検討する必要があります。
不動産を共有・代償分割・換価分割のどれにするか
不動産の分け方には、主に次の方法があります。それぞれ法的な効果や将来のリスクが異なります。
| 分け方 | 内容 | 主に検討すべき点 |
|---|---|---|
| 現物分割 | 不動産そのものを特定の相続人が取得する | 取得者の偏りをどう調整するか |
| 共有 | 複数の相続人が持分を共有する | 売却・管理に共有者全員の関与が必要となり、将来の意思決定が滞りやすい |
| 代償分割 | 不動産を取得した相続人が、他の相続人に代償金を支払う | 代償金の支払原資を確保できるか |
| 換価分割 | 不動産を売却し、その代金を相続人で分ける | 売却に伴う譲渡所得課税など売却時の取扱い |
とくに共有は、一見すると公平に見えますが、将来その不動産を売却・賃貸・建替えする際に共有者全員の協力が必要となり、世代が下るほど権利関係が複雑になりやすい方法です。代償分割では代償金の原資、換価分割では売却に伴う課税といった、それぞれ別の検討事項があります。どの方法が適しているかは、財産の内容、相続人の関係、納税資金の状況によって異なります。
分け方によって税負担や将来の手続が変わり得るため、相続税の申告期限が来る前に、法的な論点を整理しておくことをおすすめします。資料を確認することで、見通しを検討しやすくなります。
相続税の申告期限までに遺産分割がまとまらない場合の注意点
未分割でも申告期限は延びない
すでに述べたとおり、相続税の申告と納税は、遺産分割がまとまっていない場合であっても、被相続人の死亡を知った日の翌日から10か月以内に行う必要があります。分割が成立していないことを理由に、申告期限が延長されることはありません。
未分割申告では当初使えない特例がある
遺産分割がまとまらないまま申告期限を迎える場合には、各相続人が民法に規定する相続分(法定相続分等)または包括遺贈の割合に従って財産を取得したものとして相続税を計算し、申告・納税することになります。この未分割の状態での申告では、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例などを当初の申告では適用できません。そのため、本来これらの特例を使えば軽減され得たはずの税額を、いったん納付しなければならない場面が生じます。
申告期限後3年以内の分割見込書
未分割のまま申告する場合でも、相続税の申告書に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付しておくことで、申告期限までに分割されなかった財産について、申告期限から3年以内に分割されたときに、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例の対象とすることができます。さらに、3年以内に分割できないやむを得ない事情があり、税務署長の承認を受けた場合には、その事情がなくなった日の翌日から4か月以内に分割されたときも、対象になり得ます。
分割見込書の添付や、その後の特例適用には、期限や要件があります。具体的な手続・要件・期限は財産や分割の状況によって異なるため、相続税の申告にあたっては税理士等とあわせてご確認ください。
更正の請求と修正申告
未分割の状態で法定相続分等により申告した後に遺産分割が行われ、その分割に基づいて計算した税額が当初の申告額と異なる場合には、次の手続をとることになります。
- 修正申告 当初の申告税額よりも、実際の分割に基づく税額が多くなる場合に行います。
- 更正の請求 当初の申告税額よりも、実際の分割に基づく税額が少なくなる場合に行います。更正の請求ができるのは、原則として分割があったことを知った日の翌日から4か月以内です。
このように、いったん未分割で申告した後に分割が確定すると、税額の精算手続が必要になります。手続には期限があるため、分割が成立した際には早めの対応が求められます。
遺産分割調停に移行した場合
相続人の間で協議がまとまらず、家庭裁判所の遺産分割調停に移行した場合でも、相続税の申告期限は変わりません。調停が長引いている間も、申告期限が到来すれば未分割の状態で申告・納税を行い、分割見込書の添付や、分割成立後の更正の請求・修正申告を検討することになります。調停対応と並行して、申告期限・必要資料・税理士との連携を意識しておくことが重要です。
| 場面 | 問題になりやすい点 | 検討の方向性 |
|---|---|---|
| 申告期限が近い | 分割が未了でも10か月以内に申告・納税が必要 | 未分割申告と分割見込書の添付を検討 |
| 特例を使いたい | 未分割では当初申告で特例を使えない | 分割見込書を添付し、3年以内の分割を目指す |
| 分割が後で確定 | 当初申告額と差が生じる | 更正の請求(4か月以内)・修正申告を検討 |
| 調停に移行 | 調停中も申告期限は延びない | 申告期限・必要資料・税理士連携を並行管理 |
実務でよく問題になるケース
自宅不動産をだれが取得するか
自宅の土地は、小規模宅地等の特例の対象となり得る一方、だれが取得し、申告期限まで居住・保有を続けるかによって適用可否が変わり得ます。配偶者が自宅を取得する場合と、同居していた子が取得する場合とでは、要件や今後の生活設計が異なります。居住の確保と財産の取得を分けて考える方法として、配偶者居住権という選択肢が検討されることもありますが、その設定の可否や税務上の評価は個別の検討を要します。
配偶者に多く取得させるか、子に分けるか
配偶者の税額軽減を使えば一次相続の税負担は軽くなる可能性がありますが、前述のとおり二次相続まで含めると全体の税負担が必ずしも軽くなるとは限りません。配偶者の生活設計、子の人数、財産の内容を踏まえ、一次・二次を通じた検討が必要です。
不動産を共有にしてよいか
「とりあえず法定相続分どおり共有にする」という分け方は、合意は得やすい一方で、将来の売却・管理・建替えの際に共有者全員の関与が必要となり、意思決定が滞るリスクがあります。共有を選ぶ場合は、将来の処分方針までを見据えて検討することが望ましいといえます。
代償金を用意できるか
特定の相続人が不動産を取得し、他の相続人に代償金を支払う代償分割では、代償金の支払原資を確保できるかが現実的な課題になります。原資の見通しが立たないまま代償分割で合意すると、後の支払をめぐって新たな紛争が生じることもあります。
申告期限が近いのに協議がまとまらない
申告期限が迫っているにもかかわらず協議がまとまらない場合は、未分割申告と分割見込書の添付を検討しつつ、並行して分割協議や調停を進めることになります。期限を意識した段取りが重要です。
遺産分割協議書に署名してよいか迷う
提示された遺産分割協議書に署名してよいか迷う場面は少なくありません。一度成立した協議は原則として後から自由に変更できないため、署名の前に、内容が自分の認識と一致しているか、税務上の取扱いに影響しないか、納税資金に問題がないかを確認しておくことが大切です。
手続前に確認しておきたいチェックリスト
時点ごとに、確認・準備しておきたい主な事項を整理します。財産や事案によって必要なものは異なりますので、具体的な準備は専門家にご確認ください。
遺産分割協議を始める前
- 相続人の範囲(戸籍による相続人調査)を確認したか
- 相続財産の全体像(不動産、預貯金、有価証券、債務など)を把握したか
- 遺言の有無を確認したか
- 相続放棄や限定承認を検討すべき事情がないか確認したか
相続税申告の前
- 正味の遺産額が基礎控除額を超え、申告が必要かを確認したか
- 申告期限(10か月)までの残り期間を把握したか
- 未分割の場合に分割見込書の添付が必要かを確認したか
- 納税資金の手当て(現金・換価・延納等の検討)ができているか
遺産分割協議書に署名する前
- 記載内容が自分の認識と一致しているか確認したか
- 特例の適用や税務上の取扱いに影響しないか確認したか
- 不動産の分け方(共有・代償・換価)の将来のリスクを確認したか
- 代償金がある場合、支払・受領の条件が明確か確認したか
調停申立て・税理士相談の前
- 申告期限と調停の見込み時期の関係を整理したか
- 税理士に伝えるべき法的争点(相続人・遺産の範囲など)を整理したか
- 必要資料(戸籍、評価資料、残高証明等)の収集状況を確認したか
弁護士に相談するタイミング
弁護士への相談は、相続人の間で争いが起きてからのものと考えられがちですが、それだけではありません。むしろ、次のような「分け方を決める前」「手続の前」の段階で相談することで、対応方針を整理しやすくなります。
- 相続人の間で分け方を話し合う前に、論点や進め方を整理したいとき
- 相続税の申告期限が近づき、未分割申告や資料準備が気になるとき
- 遺産分割協議書に署名する前に、内容を確認したいとき
- 不動産の共有や代償金の支払を検討しているとき
相続の場面では、税額の試算や申告そのものは税理士の役割です。一方、弁護士は、相続人・遺産の範囲の確定、相続人間の交渉、遺産分割協議書の作成、調停・審判への対応、資料の整理といった法的な側面を担い、必要に応じて税理士と連携しながら全体方針を整理します。法務と税務の両面から検討する視点を持つことで、分け方の選択肢を整理しやすくなります。
当事務所は、弁護士と公認会計士の双方の視点から、相続に関するご相談に対応しています。個別の税務判断については税理士等と連携しながら検討します。なお、相談により必ず特定の結果が得られることをお約束するものではなく、対応方針は事案により異なります。
遺産分割と相続税申告は、早い段階で全体像を整理しておくほど、選択肢を検討しやすくなります。まずはお気軽にご相談ください。費用や手続の流れもあわせてご確認いただけます。
よくあるご質問(FAQ)
遺産分割が終わらないと相続税申告はできませんか。
いいえ。遺産分割がまとまっていなくても、申告期限内に申告・納税が必要です。その場合は、民法に規定する相続分などに従って取得したものとして計算して申告することになります。
相続税の申告期限までに遺産分割がまとまらない場合、期限は延びますか。
延びません。相続税の申告と納税は、被相続人の死亡を知った日の翌日から10か月以内に行う必要があり、分割が未了であることを理由に期限が延長されることはありません。
配偶者が多く相続すれば相続税は必ず安くなりますか。
必ず安くなるとは限りません。配偶者の税額軽減により一次相続の負担は軽くなる可能性がありますが、配偶者の二次相続まで含めると全体の税負担が軽くなるとは限りません。財産内容や分割内容により結論は異なるため、税理士等と連携した検討が必要です。
小規模宅地等の特例は、だれが不動産を相続しても使えますか。
取得者や継続要件などによって適用の可否が変わります。だれが取得し、申告期限まで居住・事業・保有を継続するかによって結論が異なるため、個別の事情を踏まえた確認が必要です。
遺産分割協議書に署名した後で分け方を変えられますか。
一度成立した遺産分割協議は、原則として一方的に変更することはできません。また、分割をやり直すと税務上の取扱いに影響が生じることもあります。署名の前に内容を十分確認しておくことが大切です。
税理士に相談していれば弁護士への相談は不要ですか。
役割が異なります。税額の試算や申告は税理士の領域ですが、相続人・遺産の範囲の確定、相続人間の交渉、協議書の作成、調停対応といった法的な側面は弁護士が担います。両者が連携することで、全体方針を整理しやすくなります。
相続税申告前に弁護士へ相談するメリットは何ですか。
分け方を決める前に法的な論点を整理し、必要資料の準備や税理士との連携を進めやすくなる点です。結果を保証するものではありませんが、申告や署名の前に確認しておくことで、後からの修正を避けやすくなります。
遺産分割調停中でも相続税申告は必要ですか。
必要です。調停中であっても申告期限は延びないため、未分割の状態での申告と分割見込書の添付を検討し、分割成立後に更正の請求・修正申告を行うことを検討します。
まとめ
- 遺産分割と相続税申告は別の手続だが、分け方が税負担・特例・納税資金・二次相続に影響するため一体で考える必要がある
- 相続税の申告期限は原則10か月で、未分割でも延びない
- 未分割では配偶者の税額軽減・小規模宅地等の特例を当初申告で使えないことがあり、分割見込書の添付や更正の請求・修正申告を検討する
- 配偶者への集中は二次相続まで、不動産の共有・代償・換価は将来の処分・課税まで見据えて検討する
- 遺産分割協議書は税務・名義変更の前提資料でもあり、署名前の確認が重要
- 個別の税額・適用可否は税理士等と連携し、法的論点は弁護士に相談して整理する
相続の進め方や分け方にお悩みの場合は、資料を確認したうえで、法務と税務の両面から対応方針を整理することができます。神戸みらい法律会計事務所にご相談ください。
監修者・執筆者
神戸みらい法律会計事務所(弁護士法人ひょうご支所)
本記事は、弁護士・公認会計士である藤井貴之が監修しています。当事務所は、法務と会計・税務の双方の視点から、相続に関するご相談に対応しています。個別の税額計算や申告の可否などの税務判断については、税理士等と連携して対応します。
参考資料

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