借金の返済が立ち行かなくなり、自己破産を検討し始めると、「同時廃止」「管財事件」「少額管財」「予納金」といった耳慣れない言葉に直面します。なかでも気になるのは、自分の場合はどちらの手続になるのか、そして費用、とりわけ裁判所に納める予納金がいくらかかるのか、という点ではないでしょうか。
結論を先にお伝えすると、自己破産の手続が「同時廃止」になるか「管財事件」になるかは、申立てを受けた裁判所が判断します。申立てをする本人が自由に選べるものではありません。そして、裁判所に納める予納金と、弁護士に支払う弁護士費用はまったく別の費用です。この記事では、両手続の違い、予納金の意味と内訳、管財事件になりやすい事情、相談前に準備しておきたい資料までを、神戸で自己破産を検討している方に向けて整理します。
この記事で分かること
- 同時廃止と管財事件(いわゆる少額管財を含む)の違い
- 予納金とは何か、弁護士費用とどう違うのか
- どのような財産や事情があると管財事件になりやすいのか
- 相談前・申立前に準備しておきたい資料と注意点
同時廃止になるか管財事件になるか、予納金や弁護士費用がどの程度になりそうかは、財産や借入れの状況を示す資料を確認したうえで検討します。手続の見通しを整理したい方は、お早めにご相談ください。
Contents
まず押さえたい3つの結論
細かい説明に入る前に、迷いやすいポイントを3つに整理します。
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 手続は裁判所が判断する | 同時廃止か管財事件かは、申立てを受けた裁判所が決めます。本人が選ぶことはできません。弁護士は資料を整理し、見通しを検討して申立ての方針を整えます。 |
| 予納金と弁護士費用は別物 | 予納金は裁判所に納める手続費用です。弁護士に依頼した場合の弁護士費用は、これとは別にかかります。 |
| 金額・運用は管轄裁判所と事案で変わる | 予納金の額や「少額管財」と呼ばれる運用の有無は、申立先の裁判所と事案の内容によって異なります。具体的な金額は申立ての時点で確認が必要です。 |
この3点を前提に、それぞれの手続を詳しく見ていきます。
自己破産は「破産手続」と「免責手続」に分かれる
同時廃止と管財事件の話に入る前に、自己破産が2つの手続から成り立っていることを押さえておくと理解が進みます。
破産手続とは(財産の清算)
破産手続は、支払不能になった方の財産をお金に換え、債権者に公平に分配(配当)するための清算手続です。配当できるだけの財産がない場合には、配当をしないまま手続が終わることもあります。
免責手続とは(支払義務を免れるには免責許可が必要)
ここが誤解されやすい点ですが、個人の場合、破産手続をしただけで当然に借金の支払義務がなくなるわけではありません。支払う責任を法的に免れるためには、別に免責許可の申立てを行い、裁判所から免責許可決定を受ける必要があります。個人の自己破産では、通常、破産手続開始の申立てと免責許可の申立てを併せて行います。
「同時廃止になった=すぐに借金がゼロになる」という理解は正確ではありません。同時廃止であっても、その後に免責の手続が別途進み、免責許可決定が確定して初めて支払義務を免れます。
同時廃止と管財事件の違い
自己破産の手続の進み方は、大きく「同時廃止」と「管財事件」に分かれます。最大の違いは、破産管財人が選任されるかどうかです。
同時廃止とは
同時廃止は、破産手続の開始決定と同時に、破産手続を終了(廃止)させる扱いです。破産法216条1項は、「裁判所は、破産財団をもって破産手続の費用を支弁するのに不足すると認めるときは、破産手続開始の決定と同時に、破産手続廃止の決定をしなければならない」と定めています。簡単にいえば、配当できるような財産がないことが明らかな場合に選ばれる手続です。
同時廃止では破産管財人が選任されないため、裁判所に納める費用は比較的抑えられ、手続も短く終わる傾向にあります。ただし、前述のとおり免責の手続は別途進みますので、同時廃止になったからといってその時点で支払義務がなくなるわけではありません。
管財事件とは
管財事件は、裁判所が破産管財人(申立てを依頼した弁護士とは別の弁護士)を選任して進める手続です。破産法は、もともと管財事件を原則的な手続として位置づけています。破産管財人は、財産の調査・換価(お金に換えること)・配当のほか、免責に関する調査などを行うことがあります。
管財事件になると、読者の方が気にされる次のような負担が生じることがあります。ただし、具体的な運用は裁判所や事案によって異なります。
- 郵便物が一定期間、破産管財人に転送されること
- 居住地を離れる際に裁判所の許可が必要となる場合があること
- 破産管財人との面談(打合せ)があること
- 債権者集会が開かれ、出席が必要となる場合があること
「少額管財」という呼び方について
「少額管財」は、法律で定められた正式な手続名ではなく、実務上の呼び方です。代理人弁護士が付いた個人の管財事件について、引継予納金を比較的低額に抑えて進める運用を指して使われることがあります。
もっとも、この呼び方を用いるかどうか、用いる場合の予納金額や条件は、申立先の裁判所の運用によって異なります。裁判所によっては「少額管財」という区分を設けず、同時廃止か管財事件かのいずれかで取り扱う運用もあります。ご自身の事案を管轄する裁判所(神戸市内であれば神戸地方裁判所)が実際にどのような運用をしているかは、申立ての時点で確認することが重要です。「少額管財だから必ず安い」「必ず利用できる」と決めてかかることはできません。
予納金とは何か(裁判所に納める費用)
予納金とは、手続を進めるために、裁判所にあらかじめ納める費用のことです。自己破産の文脈では、次のように、場面によって指している中身が異なります。
- 官報公告費用……破産や免責の決定などが官報(国が発行する機関紙)に掲載される際の費用
- 予納郵券(郵便料)……裁判所が債権者などに書類を郵送するための費用
- 引継予納金……管財事件で選任された破産管財人の報酬などに充てられる費用
予納金と弁護士費用は別物
予納金は裁判所に納めるお金であり、弁護士に依頼した場合の弁護士費用とは別です。同時廃止と管財事件のどちらになるかによって、裁判所に納める費用も、弁護士費用も変わることがあります。
費用の内訳(同時廃止と管財事件の違い)
費用の項目ごとに、誰に支払うのか、同時廃止と管財事件でどう違うのかを整理します。具体的な金額は管轄裁判所や事案によって異なるため、ここでは金額ではなく性質を示します。
| 費用項目 | 性質・支払先 | 同時廃止での扱い | 管財事件での扱い | 確認すべき資料・備考 |
|---|---|---|---|---|
| 申立手数料 | 裁判所(収入印紙) | 必要 | 必要 | 破産手続開始と免責許可の申立てを併せて行うのが通常。金額は申立時に確認。 |
| 官報公告費用 | 裁判所に予納 | 必要(中心的な費用) | 必要 | 金額は管轄裁判所により異なる。 |
| 予納郵券(郵便料) | 裁判所に予納 | 必要 | 取扱いが異なる場合あり | 債権者数により変わる。管財事件では管財人が郵送するため扱いが異なることがある。 |
| 引継予納金 | 破産管財人へ | 不要 | 必要 | 管財人の報酬等。金額は管轄裁判所・事案・代理人の有無により異なる。 |
| 弁護士費用 | 依頼した弁護士へ | 依頼した場合に必要 | 依頼した場合に必要 | 予納金とは別。費用ページで確認。 |
| 各種取得費用 | 役所等へ | 必要に応じて | 必要に応じて | 住民票、評価証明書など。事案による。 |
費用面で大きく違うのは引継予納金です。管財事件では引継予納金が必要になり、一般的には最低でも20万円程度とする裁判所が多いとされますが、これは管轄裁判所の運用、申立てが代理人によるものか本人によるものか、事案の内容によって異なります。同時廃止では引継予納金は不要で、官報公告費用や郵便料が中心となるため、裁判所に納める費用は抑えられる傾向にあります。神戸地方裁判所における具体的な金額は、申立ての時点で確認する必要があります。
「自分の場合は同時廃止と管財事件のどちらになりそうか」「予納金と弁護士費用を合わせてどの程度を見込んでおくべきか」は、財産や借入れの資料を確認したうえで検討できます。費用の見通しを整理したい方は、ご相談ください。
どちらの手続になるかは裁判所が判断する
繰り返しになりますが、同時廃止になるか管財事件になるかは、申立てを受けた裁判所が判断する事項です。申立てをする本人が選べるものではなく、弁護士が「同時廃止にできます」と結果を保証できるものでもありません。
弁護士の役割は、財産や借入れの経緯に関する資料を整理し、どの手続が想定されるかの見通しを検討し、申立ての方針を整えることです。同時廃止を希望して申立てをしても、財産調査や免責調査の必要があると判断されれば、管財事件として進められることがあります。だからこそ、申立ての前に状況を正確に整理しておくことが重要になります。
管財事件になりやすい主な事情
次のような事情があると、破産管財人による調査などが必要と判断され、管財事件になりやすい傾向があります。あくまで一般的な傾向であり、最終的な判断は裁判所が行います。
| 事情 | なぜ問題になりやすいか | 確認資料の例 |
|---|---|---|
| 一定額以上の財産がある | 現金・預貯金・保険の解約返戻金・退職金見込額・自動車・不動産・売掛金・過払い金などがあると、換価・配当の可能性が検討される。 | 通帳、保険証券、退職金見込額資料、車検証・査定、登記事項証明書、評価証明書 |
| 不動産や自動車などの換価対象財産がある | 換価して配当に回せる財産があるかどうかの調査が必要になりやすい。 | 登記事項証明書、住宅ローン資料、自動車ローン資料、査定書 |
| 個人事業主・法人代表者である(過去を含む) | 個人と事業(法人)の財産関係や取引の実態の調査が必要と判断されやすい。 | 確定申告書、帳簿、売掛金資料、廃業関係資料 |
| 財産の流れや処分歴の調査が必要 | 申立て前の財産の動きに確認すべき点があると、調査が必要となる。 | 通帳の入出金履歴、売却・名義変更の資料 |
| 一部の債権者だけに返済した(偏頗弁済の可能性) | 特定の債権者だけに返済した場合、その返済の見直し(否認)の可否が調査されることがある。 | 返済の記録、振込履歴 |
| 免責調査が必要な事情がある | ギャンブル、浪費、投資、クレジットカードの現金化など、免責に関する調査が必要と判断されることがある。 | 利用履歴、借入れの経緯が分かる資料 |
| 過去に破産・個人再生・免責を受けた | 過去の手続との関係で調査が必要となることがある。 | 過去の手続の関係書類 |
| 債権者一覧や財産目録の正確性に確認を要する | 記載の正確性に疑問があると、調査が必要になりやすい。 | 債権者一覧、請求書・督促状 |
| 相続・離婚・差押え・税金滞納など別の論点が絡む | 財産関係が複雑になり、調査が必要となることがある。 | 関係書類(遺産分割、離婚、差押命令、滞納の資料など) |
このうちギャンブルや浪費は、免責に関する調査が必要かどうかという観点から管財事件につながり得る事情の一つです。ただし、ギャンブルや浪費があれば必ず管財事件になり、免責が受けられなくなるというものではありません。この点については、ギャンブル・浪費による借金と免責の注意点を読むもあわせてご覧ください。
相談前・申立前に確認しておきたいこと
準備しておきたい資料
手続類型や費用の見通しを検討するには、財産と借入れの状況を示す資料が必要です。相談の前に、手元にあるものを整理しておくと、見通しの検討がスムーズになります。
- 債権者一覧(どこから・いくら借りているか)
- 督促状、請求書、訴状、支払督促、差押命令などの郵便物
- 給与明細、源泉徴収票、課税証明書、確定申告書
- 預貯金通帳、ネット銀行の取引明細
- 家計収支の状況が分かるもの
- 保険証券、解約返戻金が分かる資料
- 車検証、自動車ローン資料、査定資料
- 不動産の登記事項証明書、固定資産税評価証明書、住宅ローン資料
- 退職金見込額が分かる資料
- 賃貸借契約書
- 事業に関する資料(売掛金、帳簿、廃業関係など)
- 過去の破産・個人再生・免責に関する書類
- 家族・勤務先・知人からの借入れが分かる資料
- 税金、社会保険料、養育費、罰金などの滞納が分かる資料
申立前に避けたい行動
次のような行動は、手続を不利にしたり、管財事件につながったりするおそれがあります。判断に迷う場合は、行動する前に弁護士に確認することをおすすめします。
- 財産を隠す、親族などに名義を変更する
- 一部の債権者だけに返済する(偏頗弁済)
- 新たに借入れをする、クレジットカードで現金化する
- 財産を処分・売却する(査定や相談を経ずに行う)
- 裁判所や債権者から届いた書類を処分する
よくあるケースと注意点
相談の場面で迷われやすいケースを整理します。いずれも結論は事案により異なります。
- 財産はないと思っていたが、保険や退職金見込額があった……解約返戻金や退職金見込額は財産として扱われることがあり、金額によっては管財事件の検討対象になります。
- 車や不動産がある……換価対象になり得るため、調査が必要と判断されやすくなります。
- 個人事業主・法人代表者である……財産関係や取引の調査のため、管財事件になりやすい傾向があります。
- ギャンブル・浪費・投資・カード現金化がある……免責調査の要否という観点で管財事件につながり得ますが、必ずそうなるわけではありません。
- 一部の債権者だけに返済した……偏頗弁済として、その見直しの可否が調査されることがあります。
- 家族や勤務先からの借入れを申告したくない……一部の債権者を除外することはできません。すべての債権者を申告する必要があります。
- 過去に破産・個人再生をしたことがある……過去の手続との関係で扱いが変わることがあります。
- 予納金をすぐに準備できない……弁護士に依頼して受任後に積み立てる、分納の可否を確認する、資力が一定基準以下であれば法テラスの民事法律扶助(弁護士費用等の立替え)を利用できる場合があるなど、状況に応じた方法を検討します。利用できるかは事案によります。
- 税金や養育費など、免責されない可能性のある債務がある……税金などは免責の対象とならない場合があります。詳細は別の論点となるため、個別にご確認ください。
弁護士に相談するタイミングと相談でできること
「同時廃止になるか管財事件になるか」「予納金や弁護士費用を合わせてどの程度を見込むべきか」は、財産や借入れの状況を確認しなければ判断できません。返済が苦しいと感じ始めた段階、督促や差押えの不安がある段階で、早めに状況を整理しておくことが、見通しの検討につながります。
相談では、結果をお約束するのではなく、資料を確認したうえで、想定される手続類型や費用の見通しを検討し、申立てに向けて何を準備すべきかを整理します。費用の詳細は費用ページを、当事務所の弁護士については弁護士紹介ページをご確認ください。
自己破産の手続類型や予納金・弁護士費用の見通しは、資料に基づいて整理できます。神戸で自己破産をお考えの方は、申立て前に一度ご相談ください。
よくある質問(FAQ)
同時廃止と管財事件の一番の違いは何ですか?
破産管財人が選任されるかどうかです。同時廃止では選任されず、裁判所に納める費用も比較的抑えられます。管財事件では破産管財人が選任され、財産の調査・換価や免責の調査などが行われることがあり、引継予納金も必要になります。
「少額管財」とは何ですか。神戸でも使えますか?
少額管財は法律上の正式名称ではなく、代理人弁護士が付いた管財事件で引継予納金を抑えて進める運用を指す実務上の呼び方です。この呼び方や金額・条件は裁判所によって異なり、区分を設けない裁判所もあります。神戸地方裁判所の運用は、申立ての時点で確認する必要があります。
自分で同時廃止を選ぶことはできますか?
できません。同時廃止か管財事件かは、申立てを受けた裁判所が判断します。弁護士は資料を整理して見通しを検討し、申立ての方針を整える役割を担います。
管財事件になると予納金はいくら必要ですか?
管財事件では引継予納金が必要となり、一般的には最低20万円程度とする裁判所が多いとされますが、金額は管轄裁判所の運用、代理人の有無、事案の内容によって異なります。具体的な金額は申立ての時点で確認が必要です。
予納金をすぐに準備できない場合はどうすればよいですか?
弁護士に依頼して受任後に積み立てる、分納の可否を確認する、資力が一定基準以下であれば法テラスの民事法律扶助を利用できる場合があるなど、状況に応じた方法があります。利用できるかは事案によりますので、早めにご相談ください。
財産がほとんどなくても管財事件になることはありますか?
あります。財産が少ない場合でも、免責に関する調査や財産の流れの調査が必要と判断されると、管財事件として進められることがあります。
ギャンブルや浪費があると必ず管財事件になりますか?
必ずそうなるとは限りません。免責に関する調査の要否という観点で管財事件につながり得る事情ではありますが、結論は事案により異なります。
予納金と弁護士費用は別ですか?
別です。予納金は裁判所に納める手続費用で、弁護士費用は依頼した弁護士に支払う費用です。どちらも同時廃止か管財事件かによって変わることがあります。
まとめ
- 自己破産は「破産手続」と「免責手続」に分かれ、個人は免責許可を受けて初めて支払義務を免れます。
- 手続の進み方は同時廃止と管財事件に分かれ、最大の違いは破産管財人が選任されるかどうかです。
- 「少額管財」は運用上の呼び方で、採否・金額・条件は裁判所によって異なります。
- 予納金は裁判所に納める費用で、弁護士費用とは別です。管財事件では引継予納金が必要になります。
- どちらの手続になるかは裁判所が判断します。本人が選ぶことはできません。
- 具体的な金額や運用は管轄裁判所と事案により異なるため、申立て前に資料を整理し、見通しを確認しておくことが大切です。
次の一歩として、まずは債権者一覧や通帳、保険・車・不動産・退職金に関する資料を整理することから始めてみてください。資料がそろうほど、手続類型や費用の見通しを具体的に検討しやすくなります。
監修者・執筆者
神戸みらい法律会計事務所(弁護士法人ひょうご支所)
弁護士・公認会計士 藤井貴之(兵庫県弁護士会所属/日本公認会計士協会兵庫会)
参考資料

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