賃料不払による建物明渡しについて |淡路島(南あわじ 洲本)の弁護士 あわじみらい法律会計事務所

あわじみらい法律会計事務所

初回相談無料

兵庫県南あわじ市市福永563-22

 0799-53-6782

受付時間 : 9:00〜20:00

賃料不払による建物明渡しについて

賃料不払による建物明渡し

はじめに

 賃貸人は賃借人からの賃料収益を得ることを目的として不動産賃貸業を営んでいます。
 したがって、賃借人の賃料不払が生じ、今後の賃料の支払が見込めなくなった場合、賃貸人としては一日も早く賃借人を賃貸物件から退去させ、新たな賃借人に賃貸し、賃料収益を得る必要があります。
 賃料不払による建物明渡請求基本的な流れは、
 ➀未払賃料につき相当期間を定めて催告し、催告期間内に支払がなされなければ賃貸借契約を終了させる旨の解除通知をし、
 ➁催告期間内に弁済がなかったときに訴訟を提起して判決(債務名義)を取得し
 ➂強制執行により、物件の明渡しを完了させる
というものになります。
 本コラムでは、以下、各段階ごとに賃料不払による建物明渡しについて、淡路島の弁護士が解説いたします。

1 任意交渉(催告・解除通知)

1 任意交渉によって解決を図ることのメリット・デメリット

 任意交渉により賃借人が退去するならば、賃貸人としては、訴訟費用・執行費用を掛けることなく解決でき、新たに賃貸物件を賃貸することができます。これが任意交渉によって解決を図ることができた場合のメリットになります。
 もっとも、任意交渉により退去させようとした場合、交渉が失敗に終わりただ漫然と時間を経過させ、未払賃料を増加させるだけになってしまう可能性があります。
 また、裁判外で明渡しを合意したとしても、実際には明渡しをしなかった場合、強制執行を申し立てることができません。
 これが任意交渉によって解決を図ろうとすることのデメリットです。
 なお、後者のデメリットを克服する方法としては、明渡し及び明渡しに関する諸条件について合意した場合、即決和解(訴え提起前の和解手続の申立て)を申し立て、明渡義務に関する債務名義を取得する方法が考えられます。

2 催告・解除通知

 賃借人の賃料不払に対し、賃貸人は原則として、直ちに賃貸借契約を解除することはできず、まず、催告する必要があります。
 催告は賃借人に到達しなければその効力が生じないため、催告が到達したことを証明するため、配達記録付内容証明郵便を送付して行うことが必要です。
 催告には、少なくとも1週間程度の相当な期間(催告期間)を指定して行うことが望ましいです。
 なお、内容証明郵便を発送しても受取人が不在のため配達されず、受取人が受領しないまま保管期間が経過し、発送者に不在返戻されることがありますが、このような内容証明郵便の不在返戻の場合は、通常、最初の不在配達通知書が差し置かれた時点又は保管期間経過の時点で催告の到達が認められるものと考えられます。
 賃借人としては、返戻された内容証明郵便については、特定記録郵便などの配達状況を追跡可能な形で受取人の郵便受箱に配達しておくことが望ましいです。
 賃貸人としては、本来、催告期間経過後にあらためて解除通知を行うことが原則ですが、実務上は、催告時に「催告期間内に履行(賃料の支払)が行われなければ賃貸借契約を解除する」旨の(停止期限付)解除の意思表示が行われ、あらためての解除通知は省略されることが多いです。

3 自力救済の禁止

 賃貸人が賃借人に退去を促す任意交渉を行うことは違法ではありません。
 もっとも、社会通念上相当な範囲を逸脱するような方法に及んだ場合、違法なものとして、賃貸人側が損害賠償責任を追及されるおそれがあるだけでなく、強要罪や不退去罪などの刑事責任を問われるおそれがあります。
 このことを「自力救済の禁止」といいます。
 例えば、電気・ガス・水道といったライフラインを停止させることは、明らかに社会通念上相当な範囲を逸脱していますので、賃貸員は賃借人から賃料相当額の損害が発生したとして不法行為に基づく損害賠償請求をされることを免れないと考えられます。
 つまり、賃貸人が自らの権利を強制的に実現するためには裁判所の手続を経なければならず、建物明渡請求訴訟を提起して債務名義を取得し、強制執行を行うことが予定されています。 

4 立退料の支払

 原則として、賃貸人賃借人に対する立退料を支払う義務生じることはありません。
 ただし、立退料の金額次第では、債務名義を取得して強制執行による断行をした場合に比べて、短期間かつ安価に明渡しを完了することができる可能性があります。
 したがって、合理的な立退料の支払により早期解決が期待できる場合、賃貸人から相当額の立退料を支払うことを条件として賃借人の明渡しを完了させることも検討すべきです。

5 保証人

 保証人は、賃借人の賃料が未払になった場合、原則として未払賃料を負担すべき立場にあり、かつ、保証人は、賃借人と家族、親族、友人、同僚などの人間関係があることが通常です。
 すなわち、保証人は賃貸人の任意退去が遅れるほど、自身の経済的負担が増加することになるため、保証人から賃貸人に直接連絡をして、任意の退去を説得してもらえる可能性があります。
 したがって、賃貸人としては、任意交渉が功を奏しない状況では、訴訟提起するほか、保証人に対して賃借人が早期に賃貸物件から退去するようはたらきかけてもらうなどの協力を求めることが考えられます。
 なお、民法改正により、令和2年(2020年)4月1日以降に締結した保証契約については、極度額を定めなければ保証契約は無効になります。

6 即決和解(訴え提起前の和解手続の申立て)

 即決和解(訴え提起前の和解手続の申立て)とは、裁判上の和解の一種で、民法上の争いのある当事者が訴訟を提起する前に簡易裁判所に和解の申立てをし、紛争を解決する手続です。
 当事者間に合意があり、かつ、裁判所がその合意を相当と認めた場合、和解が成立し、合意内容が和解調書に記載されることにより、確定判決と同一の効力を有することになります。
 なお、訴え提起前の和解の申立てから和解期日指定までには、平均1か月程度を要しますので、留意する必要があります。
 前述したとおり、裁判外で明渡しを合意したとしても、実際には明渡しをしなかった場合、強制執行を申し立てることができないことが、任意交渉の弱点です。
 このような弱点を克服する方法として、明渡し及び明渡しに関する諸条件について合意した場合、即決和解(訴え提起前の和解手続の申立て)を申し立てて、明渡義務に関する債務名義を取得する方法が考えられ、これによって、賃貸人としてはいざというときに、強制執行を申し立てることができるようになります。

2 建物明渡請求訴訟

1 任意交渉と裁判手続の平行・訴訟提起のタイミング

 前述したとおり、賃借人が任意交渉により退去するならば、訴訟費用・執行費用を掛けることなく解決できる可能性がある一方で、漫然と交渉を重ねることで未払賃料を増加させるだけで終わってしまう可能性もあります。
 したがって、賃貸人としては賃借人との任意交渉を継続して実施する一方で、建物明渡請求訴訟の提起などの裁判手続を並行して行うことを検討すべきです。
 一方で、後述する「信頼関係破壊の法理」との関係でいれば、賃料不払が3か月生じた時点でなければ賃貸借契約の解除が認められない可能性があるため、3か月の不払が生じてから訴訟提起することも考えられます。
 しかしながら、裁判所は、通常、訴訟提起後、少なくとも1か月以上の期間経過後に第1回口頭弁論期日を指定します
 したがって、訴訟提起するタイミングとしては、スピードを重視する場合2か月目の賃料不払いが生じた時点で、相当期間を定めた催告及び催告期間内に支払がなければ賃貸借契約を解除する旨の意思表示を同時に行う内容証明郵便等を発送するとともに、訴訟も提起するという流れで明渡しを請求することが考えられます。

2 未払賃料・遅延損害金の請求

 実務上、訴訟を提起するにあたって、賃貸人は賃借人に対する明渡し請求を行うとともに、未払賃料・遅延損害金の請求を併せて実施すること通常です。
 一方で、賃借人の賃料不払が生じているのは、賃借人の経済状況の悪化によるものであることから、現実的には未払賃料を回収することは難しいことが多いです。
 ただし、賃借人自身が任意に支払う可能性や、親族が本人に代わって支払う可能性、市町村役場や社会福祉協議会等による支援によって支払が行われる可能性などもあります。
 未払賃料・遅延損害金の請求は、必ずしも訴訟提起の負担を増加させたり、訴訟提起に必要な印紙代の負担を増加させたりするものではありません。
 また、和解協議の交渉材料として、未払賃料の減免ないし分割の条件として早期の明渡しを求めることも状況によって考えられます。
 訴訟提起にあたって、未払賃料・遅延損害金の請求を行うことで最終的に回収不能になった未払賃料を損金として税務処理することもできます。
 以上から、訴訟提起にあたっては、建物明渡請求を行うとともに、未払賃料・遅延損害金併せて請求することが通常です。

3 損害金の請求

 賃貸借契約終了後から明渡しが完了するまでの間賃借人には不法占有の不法行為責任の賃料相当額の損害金の支払義務が生じます。
 この点、賃料相当額の損害金に関しては、賃貸借契約で賃料粗糖額の倍額を支払うとの条項(いわゆる倍額特約が定められていることがあります。
 いわゆる倍額特約は、
➀賃借人において賃貸借契約終了後に経済的負担が増加することを避け、早期に任意退去することを促せること➁賃借人が任意退去しない場合の強制執行の執行費用を回収することなどを目的とする規定です。
 なお、賃料相当額を上回る使用損害金を定める条項について、消費者契約法第10条(「消費者の利益を一方的に害する条項は無効とする」)に違反しないかどうかが争われた裁判例(東京地裁平成20年12月24日判決)は、強制執行手続き費用の回収の意味合いがあること、占有継続による経済的不利益を科すことで賃借人の退去を促すことができることなどから、消費者契約法第10条に違反しない(有効)と判断しました。

4 信頼関係破壊の法理・賃料不払の正当化事由

 賃貸借契約書上、賃料を1か月でも遅滞した場合、当然に解除できるとの条項が定められていることがありますが、賃貸借契約の解除のためには、契約書においてそのような条項があるとしても、賃貸人と賃借人との間の信頼関係が破壊されているものと評価できる事情がなければならないというのが判例上確立しています。
 これを信頼関係破壊の法理といいます。
 過去の裁判例などに照らせば、3か月分の賃料滞納であれば、信頼関係の破壊があるものとして、明渡請求が認められる傾向にあります。
 このほか、信頼関係が破壊されているかどうかの考慮要素としては、➀賃料不払の程度・金額、➁不払に至った経緯、➂契約締結時の事情、④過去の賃料支払状況等、➄賃借人の支払能力・支払意思、⑥催告の有無・内容、⑦催告後あるいは解除の意思表示後の賃借人の対応・態度などを総合的に考慮して判断します。

5 訴訟上の和解

 訴訟提起後、賃借人が未払賃料の全額を支払ってきた場合など、裁判所から和解を勧められることがあります。
 訴訟上の和解をする場合➀賃貸借契約書が存続するかどうか、存続する場合の条件に関する条項、➁明渡しをする場合の明渡しに関する条件(明渡し時期、敷金の返還義務の有無・金額、原状回復義務の内容・程度、立退料など)に関する条項、➂未払賃料の支払義務の有無(免除)・程度に関する条項、④和解成立後の明渡義務又は賃料支払義務を懈怠した(怠った)場合のペナルティに関する条項などに留意する必要があります。
 賃貸人にとって、訴訟上の和解をするメリットは、紛争を早期かつ円滑に解決できること以外に、和解が成立することで取得できる和解調書債務名義になるため、和解条項に定める内容に違反した場合、直ちに強制執行することができることです。

3 民事執行手続

1 建物明渡しの強制執行の流れ

 建物明渡しの強制執行は、➀強制執行の申立て➁執行官との打合せ➂明渡催告④断行➄動産の保管という流れで進行します。

1 ➀強制執行の申立て

 ➀強制執行の申立書には、執行文の付与された債務名義(判決・和解調書など)、送達証明を添付する必要があります。
 申立時に納める執行予納金は裁判所により異なりますが、概ね6万円程度が必要になります(なお、強制執行に際しては、執行補助業者の日当、開錠技術者の費用、梱包・搬出作業者費用、車両費用・梱包資材費用、動産保管費用、動産処理費用などで、別途15万円から50万円程度が必要になります。)。

2 ➁執行官との打合せ

 強制執行の申立後、執行の手順について➁執行官との打合せを行います。
 具体的な打合せ事項は、➀明渡催告の日程調整、➁債務者の状況(居住の有無、同居人の有無、粗暴性の有無など)、➂物件の状況(残置物の有無など)、④訴訟の状況(付郵便・公示送達のいずれかなど)、➄執行補助業者の選択、⑥警察上の援助要請の要否などです。

3 ➂明渡催告

 明渡催告後は、明渡し強制執行の予告であり、執行官により行われます。
 ➂明渡催告には、執行官が賃借人に対し、④断行日告知し、その前日までに退去するよう伝え、催告書交付します(不在時掲示又は差し置きします。)。
 なお、断行日は、通常、明渡催告日から1か月以内が告知されます。
 ➂明渡催告は、賃貸物件にて実施し、執行官、立会人、賃貸人(賃貸人代理人=弁護士)、執行補助者、鍵開錠技術者などが立ち会い、対象外動産の保管・処分などの目算を立てることとなります。
 執行官による➂明渡催告は、賃借人にとっての心理上の効果も大きく、④断行によらずに任意に退去することも多いです

4 ④断行

 ④断行では、執行官、立会人、賃貸人(賃貸人代理人=弁護士)執行補助者、鍵開錠技術者らが賃借物件に赴き、残置されている動産(残置物)を搬出します。
 執行官が保管すべきものと判断した残置物については、残置物の保管品目録を作成し、執行調書に添付しなければなりません。
 保管品目録には、個々の保管品の価額が記載されるため、執行補助業者は保管品一つ一つを評価し、価額を記載します。

5 ➄動産の保管

 断行時における賃借物件の残置物は、なお賃借人にあるため、残置物は、段ボールなどで梱包し、保管場所で一定期間保管した上で廃棄処分又は売却処分することになります。
 保管期間中に処分することはできず、保管期間中に所有者である賃借人が返還を求めるならば、引き渡す必要があります。

不動産の明渡請求(任意交渉・訴訟)の弁護士費用

(着手金)
・交渉着手金:22万円~(消費税込)
・訴訟着手金:33万円~(消費税込)
※交渉・調停から訴訟に移行した場合、既にいただいております交渉・調停着手金とは別途、追加着手金(11万円~(消費税込))をいただきます。
(報酬金)
・交渉で解決した場合:22万円~(消費税込)
・訴訟で解決した場合:33万円~(消費税込)
※別途、金銭請求のある場合、判決で確定した金額の17.6%~(税込)をいただきます。

強制執行手続

(着手金)
・不動産明渡し:22万円~(消費税込)
(報酬金)
・不動産明渡し:22万円~(消費税込)

まずはご予約ください。夜間/休日はご予約で相談可能

法律のお悩みは、 相談しやすい
あわじみらい法律会計事務所にお任せください。

(初回相談無料 / 交通事故 債務整理は電話での無料相談が可能)

初回相談無料

ご予約フォームはこちら

お電話でもご予約いただけます

 0799-53-6782

受付時間 : 9:00〜20:00

LINEからの
ご予約はこちら