交通事故でお子さんが頭を打った後、退院して見た目は元気そうなのに、「以前より集中が続かない」「忘れ物や提出忘れが増えた」「怒りっぽくなった」「友だちとの関係が変わった」といった変化に気づき、不安を感じていませんか。
こうした変化は、時間の経過や生活環境の変化とともに少しずつ表れることがあり、家庭でも学校でも「性格の問題」「勉強不足」「反抗期」と受け止められて、事故との関係が見えにくいことがあります。
この記事では、交通事故で頭部外傷を負ったお子さんについて、子どもに特有の高次脳機能障害の表れ方、学校生活に出やすい変化、保護者が残しておきたい記録、学校との連携、そして後遺障害の申請や示談の前に確認しておきたい資料を整理します。神戸市内で通学中・登下校中や、自転車・歩行者の事故に不安を感じている保護者の方にも参考になる内容です。
なお、高次脳機能障害に当たるかどうかや治療方針は医師などが判断します。この記事は一般的な情報の整理であり、個別の事案では、医療記録や学校資料などを確認したうえで検討する必要があります。
お子さんの事故後の変化について、「何を確認し、何を記録しておけばよいか」を整理したい方は、弁護士へのご相談で、医療記録・学校資料・家庭での記録・保険会社からの書類をもとに、今後の見通しや対応の進め方を検討することができます。
Contents
まず押さえておきたい3つのポイント
1.変化は学校生活にも表れます。事故後の変化は、家庭だけでなく、成績・集中力・忘れ物・感情面・友人関係・疲れやすさなど、学校生活の場面に表れることがあります。
2.診断は医師が行います。高次脳機能障害があるかどうかは、意識障害の経過や画像検査などを踏まえて医師が判断します。心配な変化があるときは、医療機関や地域の相談窓口にも相談することが大切です。
3.記録が資料になります。事故前と比べてどう変わったかを示す記録(家庭のメモ、通知表、連絡帳、医療記録など)は、後遺障害の申請や損害賠償の検討で重要になる場合があります。
結論と全体像
子どもの高次脳機能障害は、身体のけがと違って外見からは分かりにくく、事故直後には目立たなくても、時間の経過や進級・進学によって学校生活の変化として表れることがあります。だからこそ、保護者が家庭と学校の両面から変化を把握し、記録として残しておくことが、その後の医療・教育・法律のいずれの場面でも役立ちます。
結論として、まずは医療機関で医学的な評価を受けつつ、学校と情報を共有し、事故前後の変化が分かる資料を整理することが出発点になります。損害賠償や後遺障害の申請は、これらの資料をもとに、個別事情を踏まえて検討することになります。
| 整理したいこと | 具体的な内容 |
|---|---|
| 医療面 | 受診状況、意識障害の有無や経過、検査結果、診断や治療方針(医師の判断による) |
| 家庭面 | 事故前後で変わった様子、生活・学習・感情面の記録 |
| 学校面 | 成績、提出物、行事や友人関係、欠席・遅刻、面談での指摘 |
| 手続面 | 保険会社からの連絡、示談や治療終了の打診、後遺障害の見通し |
高次脳機能障害とは
主な症状
高次脳機能障害とは、病気や事故などで脳が損傷したことにより、記憶・注意・段取り・感情のコントロールといった、より高度な脳の働きに支障が生じた状態をいいます。行政上は、記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などが主な症状として整理され、このほか失語・失行・失認といった症状が問題になることもあります。
具体的には、新しいことを覚えにくい、気が散りやすく集中が続かない、順序立てて物事を進めにくい、感情のコントロールが難しくなる、といった形で表れることがあります。身体のまひなどを伴わないこともあるため、外見からは分かりにくく、本人も自覚しにくいことが指摘されています。
診断や治療方針は医師が判断します
ここで挙げた症状は一般的な説明です。実際に高次脳機能障害に当たるかどうか、どのような治療やリハビリテーションが必要かは、脳の損傷の原因や画像所見、経過などをもとに、医師などの専門職が判断します。この記事の内容で自己判断せず、心配な変化があるときは、まず医療機関や地域の相談窓口にご相談ください。
令和8年4月に施行された高次脳機能障害者支援法
令和7年(2025年)に高次脳機能障害者支援法(令和7年法律第96号)が成立・公布され、令和8年4月1日から施行されています。この法律は、都道府県や指定都市が高次脳機能障害者支援センターを指定・設置して支援コーディネーターを配置することや、医療・保健・福祉・教育・労働などの関係機関からなる地域協議会の設置に努めることなどを定め、相談・情報提供や関係機関の連携を進める枠組みを整えるものです。
もっとも、この法律は生活支援の枠組みを整えるもので、賠償や給付を保証するものではありません。また、法律上の高次脳機能障害の定義からは、発達障害や先天性の疾病、周産期の脳の損傷、認知症などが除かれています。交通事故による外傷性脳損傷を原因とする場合は対象に含まれ得ますが、実際の支援やサービスは、従来から障害者総合支援法に基づく相談支援や地域生活支援事業などを通じても行われています。詳しくは、国立障害者リハビリテーションセンター 高次脳機能障害情報・支援センターや厚生労働省の関係通知をご確認ください。
子どもに特有の表れ方と気づきにくさ
発達の途中だからこそ、後から見えてくることがあります
子どもの場合、脳や心身が発達の途中にあるため、事故直後には大きな問題が目立たなくても、学年が上がって学習内容が高度になったり、集団生活や人間関係が複雑になったりする中で、困りごとが見えやすくなることがあります。子どもの高次脳機能障害の原因としては、交通事故などによる外傷性脳損傷が多いとされ、もともとの発達の課題とは異なり、ある時点を境に「以前できていたことがしにくくなる」という中途障害である点が特徴です。
そのため、「今は落ち着いているから大丈夫」と即断せず、進級・進学などの節目で様子を見守り、変化があれば記録しておくことが大切です。
学校生活に表れやすい変化
次のような変化は、家庭よりも学校生活の中で先に気づかれることがあります。当てはまるものがあれば、事故前と比べてどう変わったかをメモしておくと、後の相談で役立ちます。
| 場面 | 表れやすい変化の例 |
|---|---|
| 学習面 | 成績の低下、集中が続かない、板書や説明についていきにくい |
| 提出物・持ち物 | 忘れ物や提出忘れが増える、宿題の段取りがつきにくい |
| 感情面 | 怒りっぽい、泣きやすい、気持ちの切り替えが難しい |
| 対人面 | 友人関係の変化、集団行動や行事への参加のしにくさ |
| 体調面 | 疲れやすい、頭痛や眠気、登校しぶり |
「反抗期」「勉強不足」と見過ごされやすい点
これらの変化は、成長に伴う一時的なものや、性格・環境によるものであることも少なくありません。逆に、事故と関係する可能性があっても「反抗期」「勉強不足」「気のせい」と受け止められ、見過ごされてしまうこともあります。大切なのは、原因を保護者が決めつけることではなく、事故前後の変化を客観的に記録し、医療機関や学校と共有して、必要な評価につなげることです。
学校との連携で確認したいこと
相談できる学校の窓口
学校には、担任のほかにも相談できる窓口があります。健康面は養護教諭、心理面はスクールカウンセラー、学習上・生活上の支援や関係機関との連絡調整は特別支援教育コーディネーターが担うことがあります。特別支援教育コーディネーターは、保護者の相談窓口として、また合理的配慮について相談する窓口としての役割も果たします。必要に応じて、個別の教育支援計画が作成され、進学時の引継ぎに活用されることもあります。
これは学校の責任を追及するための連携ではなく、お子さんの学校生活を支え、事故後の変化を把握するための連携です。学校で表れている変化を医療機関に伝えることが、医学的な評価にもつながります。特別支援教育の仕組みについては、文部科学省 特別支援教育のページも参考になります。
学校と共有したい情報・受け取りたい情報
| 方向 | 内容の例 |
|---|---|
| 学校へ伝えたい情報 | 事故と受傷の概要、通院・入院やリハビリの状況、家庭で気づいた変化、配慮してほしいこと |
| 学校から受け取りたい情報 | 授業や提出物の様子、テストや成績の推移、行事・友人関係での様子、面談での気づき |
あとで資料になり得る学校の記録
通知表、テストの答案、連絡帳、欠席・遅刻・早退の記録、保健室の利用状況、面談の記録などは、事故前後の変化を示す資料になり得ます。処分せずに保管し、面談の際はいつ・どのような指摘があったかを控えておくと、後の整理がしやすくなります。
発達段階に応じた評価の難しさ
学年・進学で表れ方が変わります
困りごとの表れ方は、幼児、小学生、中学生、高校生で異なることがあります。就学前や低学年では目立たなかった課題が、学習内容が抽象的になる高学年や中学以降で顕在化することもあります。進学によって環境や求められる力が変わると、それまで見えていなかった困難が表れる場合があるため、節目ごとに様子を確認することが大切です。
「事故前との比較」が判断材料になります
子どもは成長の途中にあるため、その時点の状態だけを見ても、事故の影響なのか成長の過程なのかを見分けにくいことがあります。そこで、事故前の様子(成績、生活、性格など)と事故後の変化を比べる視点が重要になります。医学的な評価や心理検査、学校での観察、家庭での記録を組み合わせて確認することが望まれます。なお、症状固定(これ以上の改善が見込みにくい状態)の時期をいつと考えるかも、子どもの場合は経過を見ながら慎重に判断されることがあり、これも医師が判断します。
交通事故の損害賠償・後遺障害申請との関係
後遺障害の申請と自賠責の認定の仕組み
交通事故で高次脳機能障害が問題となる場合、後遺障害の申請を検討することがあります。自賠責保険では、後遺障害の等級は自動車損害賠償保障法施行令の別表に基づいて判断され、重い順に別表第1(1級・2級)と別表第2(1級から14級)が定められています。脳外傷による高次脳機能障害は「特定事案」として扱われ、損害保険料率算出機構において、専門医を中心とする専門部会が、意識障害の経過、画像所見、日常生活の状況などをもとに審査します。認定にあたっては、これらを裏づける客観的な資料が重要になります。
子どもの交通事故と高次脳機能障害については、損害保険料率算出機構も事例を集計・公表しています。認定の見通しは事案ごとに大きく異なるため、詳しくは損害保険料率算出機構の資料もご確認ください。
問題になり得る損害項目
高次脳機能障害が残った場合、後遺障害慰謝料、逸失利益(将来得られたはずの収入の減少)、将来の介護や支援に関する費用、付添いに関する費用、通院交通費などが論点になり得ます。子どもの場合、現在の収入がないため、逸失利益をどのように考えるかについて特有の検討が必要になります。もっとも、後遺障害に当たるかどうか、等級や金額がどうなるかは、症状の程度、証拠、事故前後の状況、医療記録などの個別事情によって異なります。この記事では具体的な金額や等級には触れません。実際の見通しは、資料を確認したうえで検討する必要があります。
示談を急ぐ前に確認したいこと
示談は、一度成立すると原則としてやり直すことができません。子どもの高次脳機能障害は、影響が後から見えてくることがあるため、症状が固定したといえるか、後遺障害の見通しをどう考えるか、学校生活・家庭生活への影響をどう整理するかを確認しないまま示談を急ぐと、後で不利になるおそれがあります。保険会社から示談や治療終了の話が出た場合は、署名の前に一度、資料をもとに見通しを確認することをおすすめします。
後遺障害の申請や示談を検討する前に、学校生活・家庭生活の変化をどのように資料として整理すればよいか迷う場合は、弁護士がこれまでの経過や書類を確認し、対応の方針を一緒に整理することができます。結果をお約束するものではありませんが、手続の前に見通しを検討しやすくなります。
保護者が残しておきたい記録
次のような記録は、医療機関・学校・保険会社・弁護士のいずれに相談する場面でも役立ちます。できる範囲で、日付とともに残しておきましょう。
- 事故前後の変化に気づいた日付と、具体的な様子のメモ
- 家庭での学習・生活・感情面の記録(気づいたときに短くで可)
- 通知表、テストの答案、連絡帳、学校からのお便り
- 欠席・遅刻・早退、保健室利用の記録
- 担任や養護教諭などとの面談で指摘された内容
- 受診やリハビリの記録、診断書や検査結果(医療機関から受け取ったもの)
- 保険会社とのやり取り(連絡日、内容、届いた書類)
手続の前に確認したい資料(場面別)
| 場面 | 確認・準備したい資料 |
|---|---|
| 示談の前 | 症状固定や後遺障害の見通し、医療記録、学校資料、家庭の記録、保険会社からの書類 |
| 後遺障害申請の前 | 意識障害の経過や画像に関する資料、日常生活・学校生活の状況が分かる記録、後遺障害診断書の記載内容 |
| 学校面談の前 | 事故と受傷の概要、家庭で気づいた変化、配慮してほしいことの整理 |
| 医師への相談の前 | 事故前との比較メモ、学校で表れている変化、家庭での記録 |
| 弁護士相談の前 | 上記の医療記録・学校資料・家庭の記録・保険会社からの書類一式 |
弁護士に相談するタイミング
相談のタイミングに決まりはありませんが、次のような場面では、資料の整理や今後の進め方を検討しておくと安心です。弁護士への相談は、結果をお約束するものではなく、資料をもとに見通しや対応方針を整理するためのものです。
- 事故直後で、今後どう記録を残せばよいか知りたいとき
- 退院・学校復帰の後に、成績や行動の変化が見えてきたとき
- 保険会社から治療終了や示談を打診されたとき
- 後遺障害診断書の作成前や、後遺障害の申請を検討するとき
- 非該当や想定より低い等級の結果が出たとき
- 学校生活の記録をどう整理すればよいか迷うとき
よくある質問
- Q.事故後に成績が下がっただけでも、高次脳機能障害の可能性はありますか。
- A.成績の低下だけで高次脳機能障害と判断することはできません。成長や環境など他の要因のこともあります。一方で、事故と関係する可能性もあるため、決めつけずに変化を記録し、医療機関や学校に相談して評価につなげることが大切です。
- Q.子供の高次脳機能障害は、事故の直後に分かりますか。
- A.事故直後に分かることもありますが、子どもの場合は発達の途中にあるため、進級・進学などで学習や生活が変わる中で、後から困りごとが見えてくることもあります。時間が経ってからの変化も見過ごさないことが大切です。
- Q.学校には、事故後の変化をどのように伝えればよいですか。
- A.事故と受傷の概要、通院やリハビリの状況、家庭で気づいた変化、配慮してほしいことを整理して伝えると、学校も対応を検討しやすくなります。担任のほか、養護教諭や特別支援教育コーディネーターも相談先になります。
- Q.担任やスクールカウンセラーに相談してもよいですか。
- A.はい。健康面は養護教諭、心理面はスクールカウンセラー、学習・生活面や関係機関との連絡は特別支援教育コーディネーターが相談先になります。まずは相談しやすい窓口から声をかけてみてください。
- Q.画像検査で異常がないと言われた場合でも、記録は必要ですか。
- A.画像検査の結果だけで影響の有無が決まるわけではありません。心配な変化があるときは、画像所見にかかわらず、事故前後の変化を記録し、医師に相談することが大切です。記録は後の検討でも役立つ場合があります。
- Q.後遺障害の申請の前に、保護者が準備しておくとよい資料は何ですか。
- A.意識障害の経過や画像に関する資料のほか、日常生活・学校生活の状況が分かる記録(通知表、連絡帳、家庭のメモなど)が役立つことがあります。何が必要かは事案により異なるため、資料を確認したうえで検討することになります。
- Q.保険会社から示談案が届いたら、すぐ署名してよいですか。
- A.示談は原則としてやり直せません。子どもは影響が後から見えることがあるため、症状固定や後遺障害の見通し、学校生活への影響を確認しないまま署名するのは慎重に考えるべきです。署名の前に一度、資料をもとに見通しを確認することをおすすめします。
- Q.弁護士に相談するとき、学校の資料も持参した方がよいですか。
- A.はい。医療記録に加えて、通知表・連絡帳・面談の記録などの学校資料や家庭での記録があると、事故前後の変化を整理しやすくなります。手元にあるものをそろえてご相談いただくと、見通しの検討に役立ちます。
まとめ
- 子どもの高次脳機能障害は外見から分かりにくく、学校生活の変化として表れることがあります。
- 診断や治療方針は医師が判断します。心配な変化があるときは医療機関や地域の相談窓口に相談しましょう。
- 事故前後の変化を、家庭と学校の両面から記録しておくことが大切です。
- 示談や後遺障害申請の前に、医療記録・学校資料・家庭の記録・保険会社からの書類を整理しましょう。
- 法律面の見通しは、これらの資料をもとに、個別事情を踏まえて検討することになります。
交通事故によるお子さんの高次脳機能障害が心配な場合は、まず医療機関や地域の相談窓口で医学的な評価を確認しつつ、法律面では、後遺障害の申請や損害賠償の見通しを資料に基づいて検討することが大切です。神戸みらい法律会計事務所では、交通事故を取り扱う弁護士が、医療記録・学校資料・家庭での記録・保険会社からの書類をもとにご相談をお受けしています。
参考資料(本文で参照した公的機関の資料)

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