住宅ローンを払い続けながら、カードローンやリボ払い、消費者金融などの返済が重くなり、「マイホームを手放さずに借金を整理できないか」と悩む方は少なくありません。個人再生という裁判所を利用する手続には、住宅資金特別条項(いわゆる住宅ローン特則)という仕組みがあり、一定の条件を満たせば、住宅ローンの支払いを続けながら、それ以外の借金を整理できる可能性があります。
もっとも、これは「家を必ず残せる制度」でも「住宅ローンそのものを減らす制度」でもありません。利用できるかどうかは、住宅や住宅ローンの内容、抵当権の状況、滞納の有無、家計の状況などを、契約書や登記事項証明書といった資料で確認したうえで判断する必要があります。
この記事では、神戸市内や周辺で戸建て・分譲マンションを保有する方に向けて、住宅資金特別条項の基本的な仕組み、利用できるか確認すべき条件、戸建て・分譲マンションで特に注意したい点、滞納や代位弁済が進んでいる場合の考え方、相談前に準備しておきたい資料を整理します。
住宅ローンと他の借入れが重なり、家を残せるか悩んでいる場合は、契約書や資料を確認しながら、利用できる手続や見通しを整理することができます。
Contents
結論|マイホームを残しながら整理できる可能性と、確認が必要な点
はじめに要点を整理します。住宅資金特別条項を使える場合、住宅ローンは原則として従来どおり支払いを続けながら、住宅ローン以外の借金を個人再生で整理できる可能性があります。ただし、住宅ローンそのものが当然に減額されるわけではなく、利用できるかどうかは、要件の充足、資料による裏づけ、そして家計全体での返済可能性によって変わります。
住宅ローン特則は「住宅ローン以外の借金を整理する」仕組みであり、住宅ローン自体を当然に減らす制度ではありません。住宅を残せること自体も保証されるものではなく、要件と履行可能性を資料で確認したうえで判断します。
| 確認の視点 | ポイント |
|---|---|
| 制度の性質 | 住宅ローンは原則そのまま支払い、住宅ローン以外の借金を整理する仕組みです。住宅ローン自体を当然に減らす制度ではありません。 |
| 利用の可否 | 本人所有・居住・抵当権の状況など、複数の条件を満たす必要があります。資料を確認したうえで判断します。 |
| 家計の視点 | 住宅を残せるかだけでなく、残した後に住宅ローンと再生計画の返済を続けられるかを、家計全体で検討する必要があります。 |
| 時間の視点 | 滞納や代位弁済、競売が進んでいる場合は、時間的な制約が問題になることがあります。早めの資料確認をおすすめします。 |
個人再生と住宅資金特別条項(住宅ローン特則)の基礎知識
個人再生とはどのような手続か
個人再生は、裁判所を利用して、再生計画に従い借金を整理する手続です。継続的または反復して収入を得る見込みがあることが前提となり、借金の総額には法律上の上限が定められています。減額後に残った金額は、原則として一定期間で分割して返済していくことになります。具体的な上限額や返済期間、減額の基準は、契約内容や資産状況によって変わり、法律および管轄裁判所の運用で定まりますので、資料を確認したうえで判断する必要があります。
小規模個人再生と給与所得者等再生の違い
個人再生には、大きく分けて小規模個人再生と給与所得者等再生の二つの類型があります。返済の総額は、最低弁済額の基準、保有資産に相当する清算価値、そして給与所得者等再生の場合の可処分所得などのうち、いずれか高い額を基礎として決まります。とくに清算価値保障原則により、自己破産をしたと仮定した場合の配当額を下回る返済計画は認められません。住宅に住宅ローン残高を上回る価値がある場合には、この清算価値が高くなり、返済総額に影響することがあります。どの類型が適するか、清算価値がどの程度になるかは、個別事情により異なります。
住宅資金特別条項(住宅ローン特則)とは何か
住宅資金特別条項は、住宅ローンについては原則として従来どおり支払いを続け、その代わりに住宅を手元に残しながら、住宅ローン以外の借金を個人再生で整理することを可能にする仕組みです。手続の中では、住宅ローン債権者の取扱いや、提出する再生計画案、添付資料などについて、通常の個人再生とは異なる配慮が必要になります。
「住宅ローンが減る制度」ではないことへの注意
住宅資金特別条項は、住宅ローンそのものを減額する制度ではありません。減額の対象となるのは、原則として住宅ローン以外の借金です。また、住宅を残すこと自体が保証される制度でもありません。要件を満たし、再生計画の認可を得られる見込みがあるかどうかを、資料を確認したうえで検討することになります。
住宅資金特別条項を使えるか確認する条件
住宅資金特別条項を利用できるかどうかは、住宅と住宅ローンそのものに関する条件と、抵当権・担保に関する条件の両面から確認します。とくに抵当権に関する条件は、登記事項証明書を確認しないと判断できないことが多く、つまずきやすい点です。
住宅・住宅ローンそのものに関する条件
一般に、対象となる住宅が本人の所有(共有持分を含む)であること、本人の居住用の建物であること、住宅の建設・購入・改良のための借入れであること、分割払いの定めがあること、そしてその住宅ローンを担保する抵当権が住宅に設定されていることなどが確認の対象となります。これらの具体的な要件は法律で定められていますので、契約書と登記事項証明書で裏づけを確認する必要があります。
抵当権・担保に関する条件(つまずきやすい点)
住宅ローンを担保する抵当権以外の担保権が住宅に設定されている場合や、住宅以外の不動産にも住宅ローンの抵当権が及んでおり、その不動産に後順位の担保権が存在する場合などには、住宅資金特別条項を利用できないことがあります。住宅に住宅ローン以外の借入れの担保(いわゆる二番抵当や根抵当権など)が付いていないかは、とくに重要な確認点です。利用できるかどうかは登記内容により異なりますので、登記事項証明書の確認が欠かせません。
| 確認項目 | 内容・注意点 |
|---|---|
| 所有・居住 | 本人所有(共有持分を含む)で、本人の居住用の建物か。単身赴任・転勤など居住の実態は個別に確認します。 |
| 借入れの目的 | 住宅の建設・購入・改良のための借入れか。借換えや住み替えが絡む場合は取扱いが分かれることがあります。 |
| 分割払い・抵当権 | 分割払いの定めがあり、住宅ローンを担保する抵当権が住宅に設定されているか。 |
| 他の担保権 | 住宅に住宅ローン以外の担保(二番抵当・根抵当権など)が付いていないか。付いていると利用できない場合があります。 |
| 共同担保 | 住宅以外の不動産にも抵当権が及び、その不動産に後順位担保が存在しないか。 |
| 滞納・代位弁済 | 滞納や保証会社の代位弁済、競売の進行状況。時間的な制約が問題になることがあります。 |
戸建て・分譲マンションでよく問題になるケース
戸建てで確認したい点
戸建ての場合、土地と建物の登記がそれぞれどうなっているか、複数の不動産に共同担保が設定されていないか、私道の持分や別棟の有無、店舗や事務所など事業用部分の有無、親族との共有、後順位の抵当権などが確認の対象になります。土地建物の権利関係が複雑なときほど、登記事項証明書での確認が重要になります。
分譲マンションで確認したい点
分譲マンションの場合、管理費や修繕積立金の滞納がないか、管理組合から請求や法的手続が予定されていないか、固定資産税の納付状況、専有部分と敷地権の関係などが問題になりやすい点です。管理費・修繕積立金の滞納は、住宅を維持するうえでも、手続を進めるうえでも確認しておきたい事項です。
共有名義・ペアローンの場合
配偶者などとの共有名義や、夫婦それぞれが借入れを行うペアローン、連帯債務・連帯保証が絡む場合には、誰がどの債務を負っているか、抵当権がどのように設定されているかによって、取扱いや検討すべき点が変わります。共有者・連帯債務者・保証人が関係する場合は、それぞれの契約書を確認したうえで方針を整理する必要があります。
住宅ローンの滞納・代位弁済・競売が進んでいる場合
届いた通知や書類は捨てない
住宅ローンの返済が滞ると、期限の利益の喪失を知らせる通知、保証会社による代位弁済の通知、さらに進むと競売の開始決定などの書類が届くことがあります。これらは今後の方針を判断するうえで重要な資料ですので、捨てずに保管してください。届いた日付も、後の検討に影響することがあります。
時間的な制約があること
滞納や代位弁済が進んでいる場合、住宅を残す方向で手続を検討できるかどうかは、時間的な制約を受けることがあります。代位弁済の後に一定の期間が経過すると取扱いが変わる場合があるとされ、競売手続の進行状況も関係します。具体的な期間や取扱いは法律と裁判所の運用により異なりますので、通知や書類が届いた段階で、早めに資料を確認することをおすすめします。なお、住宅資金特別条項を使えば必ず競売を止められる、というものではありません。
代位弁済や競売の通知が届いている場合は、書類を保管したうえで、利用できる手続があるかを早めに確認することができます。
住宅を「残した後」に支払い続けられるかを家計で確認する
住宅を残せるかどうかと同じくらい重要なのが、住宅を残した後に支払いを続けられるかという視点です。住宅ローンに加えて、固定資産税、管理費・修繕積立金、火災保険料といった住宅の維持費、さらに教育費や医療費などの生活費、そして再生計画に基づく返済を、家計全体で無理なく続けられるかを検討する必要があります。住宅を残すことだけを目的にすると、かえって再生計画の履行が難しくなる場合があります。
| 費目 | 確認の視点 |
|---|---|
| 住宅ローン | 毎月の返済額と、ボーナス返済の有無。今後の金利・返済額の見通し。 |
| 税・公的負担 | 固定資産税、住民税、国民健康保険料・社会保険料などの納付状況。 |
| 維持費 | 管理費・修繕積立金(分譲マンション)、火災保険料、修繕費など。 |
| 生活費 | 教育費、医療費など、今後増減が見込まれる支出。 |
| 再生計画の返済 | 減額後に分割で返済していく金額を、上記と合わせて負担できるか。 |
相談前に準備しておきたい資料
相談の際に次のような資料があると、住宅資金特別条項を利用できそうか、家計全体で無理がないかを、より具体的に検討しやすくなります。すべてが手元になくても構いません。
- 住宅ローン契約書、金銭消費貸借契約書、保証委託契約書、抵当権設定契約書
- 返済予定表・償還表、残高証明書
- 不動産登記事項証明書、固定資産評価証明書、不動産の査定書
- 売買契約書、重要事項説明書
- 管理費・修繕積立金の明細、固定資産税の納税通知書
- 滞納の通知、期限の利益喪失の通知、保証会社の代位弁済の通知、競売開始決定
- 債権者一覧、督促状・催告書、訴状・支払督促・差押命令
- 給与明細、源泉徴収票、課税証明書、確定申告書
- 家計収支表・家計簿、預貯金通帳、保険証券、退職金見込額の資料、車検証・自動車ローンの資料
- 共有者・連帯債務者・保証人が分かる契約書
弁護士に相談するタイミング
住宅資金特別条項を利用できるか、利用できる場合にどの手続が適しているかは、契約書や登記事項証明書、家計の状況などを確認したうえで判断する必要があります。弁護士への相談は、結果を保証するものではありませんが、住宅ローン・他の借入れ・家計・住宅の評価を合わせて確認し、任意整理、個人再生、自己破産、任意売却などを比較しながら、対応方針を整理する場になります。
手続に悪影響を及ぼすおそれがあるため、自己判断で住宅の名義を変更したり、特定の債権者にだけ返済したり、新たな借入れやクレジットカードの現金化を行ったり、任意売却やリースバックの契約を急いで結んだりすることは、事前に専門家へ確認することをおすすめします。住宅を残すことだけを目的にせず、家計全体で返済を続けられるかという視点を持つことが大切です。
住宅ローン、他の借入れ、家計、住宅の評価を合わせて確認することで、利用できる手続や見通しを整理しやすくなります。費用や手続の進め方も含めて確認できます。
よくある質問(FAQ)
住宅ローンが残っていても、個人再生で家を残せますか。
住宅資金特別条項を利用できる場合には、住宅ローンを支払いながら住宅を残せる可能性があります。ただし、要件の充足や家計全体での返済可能性によるため、資料を確認したうえで判断する必要があります。家を必ず残せるわけではありません。
住宅資金特別条項とは何ですか。
住宅ローンは原則として従来どおり支払い、住宅ローン以外の借金を個人再生で整理することを可能にする仕組みです。個別事情により利用できるかが変わります。
住宅ローン特則を使うと、住宅ローンも減額されますか。
住宅資金特別条項は、住宅ローンそのものを減額する制度ではありません。減額の対象は原則として住宅ローン以外の借金です。
住宅ローンを滞納していても使えますか。
滞納や代位弁済が進んでいる場合は、時間的な制約などにより取扱いが変わることがあります。通知や書類が届いた段階で早めに確認することをおすすめします。
保証会社から代位弁済の通知が届きました。どうすればよいですか。
通知は捨てずに保管してください。代位弁済の後は時間的な制約が問題になることがあるため、早めに資料を持って相談されることをおすすめします。取扱いは個別事情により異なります。
分譲マンションの管理費や修繕積立金の滞納は問題になりますか。
管理費・修繕積立金の滞納は、住宅を維持するうえでも手続を進めるうえでも確認しておきたい事項です。滞納がある場合は、その状況を含めて方針を検討します。
ペアローンや共有名義でも利用できますか。
誰がどの債務を負い、抵当権がどう設定されているかによって取扱いが変わります。共有者・連帯債務者・保証人が関係する場合は、契約書を確認したうえで判断する必要があります。
相談前には何を準備すればよいですか。
住宅ローン契約書、返済予定表、残高証明書、登記事項証明書、固定資産税の納税通知書、家計収支が分かる資料などがあると検討しやすくなります。すべて揃っていなくても構いません。
まとめ
- 住宅資金特別条項を使える場合、住宅ローンを支払いながら、住宅ローン以外の借金を整理できる可能性があります。
- 住宅ローンそのものが当然に減額されるわけではなく、住宅を残せること自体も保証されるものではありません。
- 利用できるかは、所有・居住・抵当権などの要件と、登記事項証明書などの資料による裏づけによって判断します。
- 住宅を残した後に、住宅ローン・税・維持費・再生計画の返済を家計全体で続けられるかも検討が必要です。
- 滞納や代位弁済、競売が進んでいる場合は時間的な制約があるため、通知が届いた段階で早めに資料を確認しましょう。
- 次の行動として、契約書・登記事項証明書・返済予定表・家計資料などを準備し、方針の整理を相談することが考えられます。
住宅を残せるか、どの手続が適しているかは、資料を確認したうえで判断します。住宅ローンと他の借入れ、家計の状況を合わせて整理することで、今後の見通しを検討しやすくなります。
監修・執筆
本コラムは、神戸みらい法律会計事務所に所属する弁護士が、債務整理に関する一般的な情報として監修・作成しています。担当弁護士の経歴や取扱分野は、弁護士紹介ページをご覧ください。

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