会社から突然解雇を告げられた、退職届や合意書への署名を求められている、あるいは反対に、問題のある従業員への対応として解雇を検討している――。「解雇」という言葉は身近に使われますが、法律上は、使用者が労働契約を一方的に終了させる重い行為であり、会社が自由に行えるものではありません。理由の合理性や相当性、そして解雇予告などの手続が、それぞれ別に問われます。
この記事では、解雇とは何か、退職勧奨や雇止めとの違い、普通解雇・整理解雇・懲戒解雇・試用期間中の解雇・有期契約の途中解雇といった種類、有効性を判断するときの確認事項、法律上の解雇制限、解雇予告や解雇理由証明書などの手続、そして解雇を告げられた労働者と、解雇を検討する会社が、それぞれ最初に確認すべきことを、労働契約法・労働基準法その他の関係法令と公的資料に沿って整理します。個別の事情によって結論は変わりますので、最終的な判断は資料を確認したうえで弁護士にご相談ください。
この記事で分かること
- 解雇は使用者による一方的な労働契約の終了であり、自由に行えるものではないこと
- 「解雇理由の合理性・相当性」と「解雇予告などの手続」は、別々に確認する必要があること
- 解雇予告手当を支払えば、解雇そのものが当然に有効になるわけではないこと
- まず「解雇されたのか」「退職を勧められているだけなのか」を確認する必要があること
- 有効性の判断には、雇用契約書・就業規則・解雇通知書・解雇理由証明書・評価や指導の記録などの確認が必要であること
- 労働者と会社が、署名・回答・通知の前にそれぞれ確認しておきたいこと
まずは、解雇通知書・就業規則・雇用契約書などの資料を確認することから始まります。
解雇に納得できない場合も、これから解雇を検討する場合も、手元の資料を確認することで、解雇の有効性や手続、次にとれる対応を整理できます。署名や通知の前に、一度ご相談ください。
この記事の対象
本記事は、主として民間の会社と労働契約を結んでいる労働者と、その使用者である会社を対象としています。国家公務員・地方公務員、会社の取締役などの役員、業務委託・請負として働く方には、異なる規律が適用される場合があります。ご自身の立場によって結論が変わることがありますので、その点はご注意ください。
Contents
まず結論|解雇の有効性は何で決まるのか
先に要点をお示しします。解雇をめぐる問題は、次のように分けて考える必要があります。ひとつの事実だけで、すべての結論が自動的に決まるわけではありません。
第一に、解雇は使用者が労働契約を一方的に解約する行為であり、会社が自由に行えるものではありません。労働契約法第16条は、解雇は客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、権利を濫用したものとして無効になると定めています。理由があいまいであったり、程度に見合わない重い処分であったりすれば、解雇が無効と判断される余地があります。
第二に、「解雇に合理的な理由と相当性があるか」という有効性の問題と、「解雇予告などの手続がとられているか」という手続の問題は、別のものです。解雇予告手当(30日分以上の平均賃金)を支払ったとしても、それは労働基準法第20条の手続を満たすかどうかの話であり、解雇そのものが当然に有効になるわけではありません。
第三に、そもそも「解雇されたのか」「退職を勧められているだけなのか」を最初に確認する必要があります。退職届や合意書に署名すると、後から「自分の意思で辞めた(合意退職・辞職)」と扱われ、解雇を争いにくくなることがあります。
第四に、有効性を検討するには資料が欠かせません。雇用契約書、労働条件通知書、就業規則、解雇通知書、解雇理由証明書、人事評価や指導の記録などを確認してはじめて、見通しを立てられます。以下では、これらを順に整理します。
解雇とは|退職勧奨・辞職・雇止めとの違い
「会社を辞めることになりそうだ」という状況でも、法律上の性質はさまざまです。まず、自分の置かれた状況がどれに当たるのかを確認することが出発点になります。特に、使用者から一方的に告げられた「解雇」なのか、労働者の同意を求める「退職勧奨」なのかは、大きく意味が異なります。
| 場面 | だれの意思で終了するか | おさえておきたい点 |
|---|---|---|
| 解雇 | 使用者の一方的な意思表示 | 労働契約法第16条により、合理的理由と社会通念上の相当性がなければ無効になり得る |
| 退職勧奨 | 使用者が働きかけ、最終的に労働者が判断 | あくまで「お願い」であり、応じる義務はない。断ることができる |
| 合意退職 | 使用者と労働者の合意 | 双方が合意して契約を終了させるもの。署名した書面の意味を確認する必要がある |
| 辞職(自己都合退職) | 労働者の一方的な意思表示 | 労働者側から退職を申し出るもの。退職届の記載内容に注意する |
| 定年 | 就業規則等で定めた年齢到達 | 制度としての定年。継続雇用の取扱いは別に確認する |
| 有期契約の期間満了・雇止め | 期間の満了と、使用者が更新しない判断 | 期間満了による終了だが、更新の実態によっては雇止め法理(労働契約法第19条)で保護される場合がある |
| 休職期間満了 | 就業規則等の定めによる終了 | 私傷病休職などの期間満了。就業規則の定めと運用を確認する |
このように、「会社から辞めてほしいと言われた」というだけでは、解雇と決まるわけではありません。逆に、退職届を書けば会社都合にすると言われても、書面の書き方によっては自己都合退職として扱われることもあります。まずは、何が起きているのかを正確に整理することが大切です。
解雇の主な種類
解雇は、その理由や場面によっていくつかに分けて説明されるのが一般的です。ここでいう「普通解雇」「整理解雇」「懲戒解雇」などは、法律が定めた固定的な区分というより、実務上の分類です。もっとも、種類によって問われる点や手続が変わるため、区別しておくと理解しやすくなります。
普通解雇
普通解雇は、勤務成績や能力の不足、健康上の理由など、労働者側の事情を理由とする解雇のうち、懲戒解雇に当たらないものを広く指す言い方です。就業規則に解雇事由が定められていることが多いですが、就業規則に該当すれば当然に有効になるわけではなく、労働契約法第16条により、客観的合理的理由と社会通念上の相当性が必要です。
整理解雇
整理解雇は、経営上の必要性から人員を削減するために行う解雇で、労働者側に落ち度がない点に特徴があります。裁判例では、その有効性を判断するにあたって、後述する複数の事情(人員削減の必要性、解雇を回避する努力、人選の合理性、手続の妥当性)が重視されています。
懲戒解雇
懲戒解雇は、重大な規律違反などに対する懲戒処分として行われる、最も重い解雇です。懲戒処分としての有効性(労働契約法第15条)と、労働契約を終了させる解雇としての有効性の双方が問題になります。「懲戒解雇だから退職金は当然に支払われない」「懲戒解雇だから解雇予告はいらない」と当然に結び付くわけではない点に注意が必要です。
試用期間中の解雇・本採用拒否
試用期間中であっても、労働契約はすでに成立しています。試用期間は、採用後に適性を見極めるために設けられることが多く、その法的性質は契約内容によって判断されますが、本採用の拒否(試用期間中の解雇)も自由に認められるわけではありません。採用時に知ることができなかった事情など、留保された解約権の趣旨に照らして、客観的合理的理由と社会通念上の相当性があるかが問われます。
有期労働契約の途中解雇
契約期間の定めのある有期労働契約では、期間の途中で解雇するには、労働契約法第17条第1項の「やむを得ない事由」が必要です。これは、期間の定めのない契約の解雇よりも、狭い範囲でしか認められないと解されています。なお、契約期間の満了によって契約が終了する「雇止め」は、途中解雇とは別の問題であり、後述します。
解雇が有効かを判断するときの確認事項
解雇が有効かどうかは、ひとつの基準だけで決まるものではありません。次のように、いくつかの層に分けて確認していくことになります。これは法律が定めた単一のチェックリストではなく、複数の法的な観点を漏れなく確認するための、記事上の整理としてご覧ください。
| 観点 | 確認すること |
|---|---|
| 法令上の制限 | 法律で解雇が禁止・制限される場合(労災療養中、産前産後、妊娠・出産、育児介護休業、組合活動など)に当たらないか |
| 客観的に合理的な理由 | 解雇の理由が具体的で、証拠によって裏づけられているか |
| 社会通念上の相当性 | その理由に照らして、解雇という重い処分が行き過ぎでないか。より軽い対応の余地はなかったか |
| 就業規則・契約との整合 | 就業規則の解雇事由・懲戒事由や、労働契約・労働協約の定めと整合しているか |
| 理由に応じた手続・証拠 | 指導・改善機会、弁明の機会、人選の合理性など、解雇の種類に応じた手続や記録が備わっているか |
| 解雇予告などの手続 | 労働基準法第20条の解雇予告や、解雇理由証明書の交付など、手続がとられているか |
これらは重なり合う部分もありますが、それぞれ別の観点です。たとえば、解雇予告の手続が守られていても、理由に合理性・相当性がなければ解雇は無効になり得ます。逆に、理由に問題がなくても、法令上の解雇制限に当たれば解雇はできません。ひとつの観点だけで「有効」「無効」と決めつけないことが大切です。
解雇の有効性は、資料を確認してはじめて検討できます。
解雇通知書、就業規則、雇用契約書、評価・指導の記録などを確認することで、解雇の理由・相当性・手続を切り分けて検討できます。労働者の方も、会社の方も、対応方針を整理しやすくなります。
理由別に見る解雇の注意点
ここでは、実務で問題になりやすい理由ごとに、確認したい点を整理します。いずれも、事案の具体的な事情によって結論が変わるため、一律の基準として当てはめるものではありません。
能力不足・勤務成績不良
能力不足や成績不良を理由とする普通解雇では、採用時にどのような職種・地位・能力が予定されていたか、会社が指導や改善の機会を与えたか、配置転換など他の対応の余地がなかったかといった事情が考慮される傾向にあります。抽象的に「能力が低い」というだけでなく、具体的な事実と記録が重要になります。
勤務態度・欠勤・協調性
遅刻・欠勤の多さ、業務命令違反、協調性の欠如などを理由とする場合も、その頻度や程度、会社の注意・指導の経過、改善の見込みなどが検討されます。一度の問題行動だけで直ちに解雇が有効になるとは限りません。
重大な規律違反
横領、暴力、重大な経歴詐称など、重大な規律違反を理由とする懲戒解雇では、就業規則の懲戒事由に該当するか、行為の性質・態様・結果、過去の同種事案との均衡、本人への弁明の機会などが問題になります。処分の重さと行為の重さが釣り合っているか(相当性)が重要です。
経営不振・人員削減(整理解雇)
経営上の理由による整理解雇では、裁判例上、次の四つの事情が重視されています。これらは「4要件」または「4要素」と呼ばれ、行政の説明では四つすべてを満たすことが求められると整理される一方、裁判例には総合的に考慮する枠組みもみられます。いずれにしても、労働者側に落ち度がない解雇であるだけに、慎重な検討が必要です。
| 事情 | 主に問われること |
|---|---|
| 人員削減の必要性 | 人員削減をしなければならない経営上の必要性が、客観的に認められるか |
| 解雇回避の努力 | 配置転換、出向、希望退職の募集など、解雇を避けるための努力を尽くしたか |
| 人選の合理性 | 解雇の対象者を選ぶ基準が合理的で、その基準に沿った運用がされているか |
| 手続の妥当性 | 必要性や時期、方法、人選の基準などについて、労働者や労働組合に説明・協議を尽くしたか |
病気・休職・健康上の問題
私傷病による欠勤や休職を理由とする場合は、就業規則の休職・復職の定め、療養の状況、他の業務への配置の可能性などが検討されます。なお、業務上の傷病による療養で休業している期間などは、後述のとおり法律上の解雇制限がある点にも注意が必要です。
試用期間・有期契約
試用期間中の本採用拒否や、有期契約の途中解雇・雇止めは、通常の解雇とは別の枠組みで判断されます。試用期間中でも解雇が自由に認められるわけではなく、有期契約の途中解雇には「やむを得ない事由」が必要です。詳しくは前述の「解雇の主な種類」もあわせてご確認ください。
法律上、解雇が制限・禁止される主な場合
解雇の理由に合理性・相当性があるかどうかとは別に、法律が特定の理由による解雇を禁止・制限している場合があります。次の表は、そのうち主なものです。網羅的な一覧ではなく、正確な対象や例外は、それぞれの法令や個別の事情によって異なります。
| 主な根拠 | 制限・禁止される主な内容 |
|---|---|
| 労働基準法第3条 | 国籍・信条・社会的身分を理由とする労働条件の差別的取扱いの禁止 |
| 労働基準法第19条 | 業務上の傷病による療養のための休業期間とその後30日間、産前産後の休業期間とその後30日間の解雇制限(打切補償や、天災事変等で事業継続が不可能な場合の例外あり) |
| 男女雇用機会均等法第6条・第9条 | 性別、婚姻・妊娠・出産・産前産後休業等を理由とする解雇その他不利益取扱いの禁止。妊娠中および出産後1年以内の解雇は無効(事業主が妊娠等が理由でないことを証明した場合を除く) |
| 育児・介護休業法第10条・第16条ほか | 育児休業・介護休業などの申出・取得を理由とする解雇その他不利益取扱いの禁止 |
| 労働組合法第7条 | 労働組合の組合員であることや正当な組合活動などを理由とする解雇その他不利益取扱いの禁止 |
| 労働基準法第104条 | 労働基準監督機関へ申告したことを理由とする不利益取扱いの禁止 |
| 公益通報者保護法第3条・第5条 | 保護の要件を満たす公益通報をしたことを理由とする解雇の無効・不利益取扱いの禁止 |
| 障害者雇用促進法 | 障害を理由とする不当な差別的取扱いの禁止 |
このほか、都道府県労働局による紛争解決援助を求めたことなどを理由とする不利益取扱いを禁止する定めもあります。これらの規定は、それぞれ保護される行為や例外が細かく定められているため、当てはまりそうな場合は、資料を確認したうえで個別に検討する必要があります。
解雇予告・解雇予告手当・証明書
ここまでは解雇の「有効性」の話でしたが、これとは別に、解雇には手続上のルールがあります。有効性と手続を混同しないことが大切です。
解雇予告の基本
労働基準法第20条第1項は、使用者が労働者を解雇しようとする場合には、少なくとも30日前に予告をしなければならないと定めています。30日前に予告をしないときは、30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払わなければなりません。予告の日数は、平均賃金を支払った日数分だけ短縮することができます。
予告日数と解雇予告手当・平均賃金
たとえば、予告が20日分しかない場合には、不足する10日分以上の平均賃金を支払う、といった組合せになります。ここでいう「平均賃金」は労働基準法上の計算方法によるもので、単純な日給とは異なる場合があります。なお、解雇予告手当は、解雇の手続に関するものであり、これを支払ったからといって、解雇そのものの有効性(労働契約法第16条の合理性・相当性)が当然に認められるわけではありません。
適用除外と解雇予告除外認定
解雇予告の規定には、適用が除外される場合があります。労働基準法第21条は、日々雇い入れられる者、2か月以内の期間を定めて使用される者、季節的業務に4か月以内の期間を定めて使用される者、試用期間中の者について、原則として解雇予告の規定を適用しないとしつつ、たとえば試用期間中の者でも14日を超えて引き続き使用されるに至った場合には適用されるとしています。
また、天災事変その他やむを得ない事由で事業の継続が不可能となった場合や、労働者の責に帰すべき事由に基づいて解雇する場合には、予告なく解雇できるとされていますが、これらの場合には、所轄の労働基準監督署長による認定(解雇予告除外認定)を受ける必要があります。「懲戒解雇」という名称であるというだけで、当然に予告が不要になるわけではありません。
解雇理由証明書・退職時証明書
労働基準法第22条は、労働者が請求した場合に、使用者が証明書を交付すべきことを定めています。解雇の予告がされた日から退職の日までの間に、労働者がその解雇の理由について証明書を請求したときは、使用者は遅滞なくこれを交付しなければなりません(同条第2項)。また、退職した場合に、使用期間・業務の種類・地位・賃金・退職の事由(解雇の場合はその理由を含む)について証明書を請求したときも、交付が必要です(同条第1項)。
これらの証明書は、解雇の理由を書面で確認するために役立ちます。なお、雇用保険の離職票や離職証明書は、これらとは別の書類であり、記載される「離職理由」が、会社の主張する解雇理由と一致するとは限りません。混同しないよう注意が必要です。
解雇理由が書面で示されていない場合は、証明書の請求を検討できます。
解雇理由証明書などを確認することで、会社がどのような理由で解雇したのかを把握し、対応方針を検討しやすくなります。会社の方も、通知の前に手続や証拠を確認しておくことで、後のトラブルを避けやすくなります。
解雇を告げられた労働者が最初にすること
解雇を告げられたときは、動揺してしまうものですが、次のような点を落ち着いて確認しておくと、その後の対応の見通しを立てやすくなります。以下は、署名や回答の前に確認しておきたいことのチェックリストです。
- それが「解雇」なのか、「退職勧奨」なのかを確認する。退職を勧められているだけなら、応じる義務はない
- 内容を理解しないまま、退職届・退職合意書・確認書などに署名しない。署名の法的な意味を確認してから判断する
- 解雇日、解雇の理由、通知の方法(口頭か書面か)を確認する
- 解雇理由が書面で示されていない場合は、解雇理由証明書の請求を検討する
- 雇用契約書、労働条件通知書、就業規則、給与明細、勤怠記録、人事評価、注意書・指導書などを確保する
- いつ、だれから、どのように言われたかなど、経緯を時系列で整理しておく
- 復職を希望するのか、金銭的な解決を希望するのか、自分の意向を整理する
- 早めに相談先を検討する
特に、退職届や合意書への署名は、後から「自分の意思で辞めた」と扱われる原因になり得ます。「絶対に署名してはいけない」という一律の話ではありませんが、署名がもつ意味を理解したうえで判断することが大切です。
会社が従業員の解雇を検討するときの手順
会社側で解雇を検討する場合も、通知の前に確認しておきたい事項があります。次の順序で確認しておくと、後の紛争リスクを抑えやすくなります。ただし、この手順を踏めば必ず有効な解雇になる、というものではありません。
- 解雇の理由を具体的に特定し、それを裏づける事実と証拠(記録)を整理する
- 雇用契約書、就業規則、懲戒規程、賃金規程、退職金規程を確認し、規程が労働者に周知されているかを確認する
- 法令上の解雇制限(労災療養中、産前産後、妊娠・出産、育児介護休業、組合活動、公益通報など)に当たらないかを確認する
- 指導・改善の機会、配置転換など、解雇以外の対応の余地がなかったかを確認する
- 過去の同種事案に対する処分との均衡を確認する
- 無期契約か有期契約か、試用期間中かなど、契約の類型を確認する
- 解雇予告や解雇理由証明書などの手続を確認する。整理解雇の場合は、経営資料・回避策・人選基準・説明の記録も確認する
- 本人へ通知する前に、法的な評価を行い、退職勧奨など他の方法とも比較する
よく問題になるケース
相談の場面でよく問題になるのは、次のような場面です。いずれも、個別の事情によって結論が変わるため、ここでは一般的な検討の視点として整理します。
- 口頭で「明日から来なくていい」と言われたが、書面が何もない
- 退職届を書けば会社都合にする、と言われている
- 解雇予告手当を払うから、明日で退職してほしいと言われた
- 能力不足を理由に、指導や改善の機会がないまま突然解雇された
- 試用期間中だから、理由を告げずに辞めてもらう、と言われた
- 有期契約の期間の途中で、契約を打ち切ると言われた
- 経営不振を理由に、一部の従業員だけが解雇の対象に選ばれた
- 懲戒解雇とあわせて、退職金を支払わないと告げられた
- 育児休業や妊娠・労災などのあとに、解雇や雇止めを告げられた
これらは、解雇の有効性、解雇予告手続、退職金の取扱い、法律上の解雇制限など、複数の論点が組み合わさっていることが少なくありません。表面的な言葉だけで判断せず、事実関係と資料を確認することが重要です。
解雇をめぐる主な相談先・手続
解雇について相談・対応できる窓口や手続には、いくつかの種類があり、それぞれ役割が異なります。特に、労働基準監督署は、解雇そのものが有効か無効かを判断してくれる機関ではない、という点は誤解されやすいところです。
| 相談先・手続 | 主な役割・特徴 |
|---|---|
| 会社との交渉 | 当事者間で解決を図る。弁護士が代理して交渉することもできる |
| 都道府県労働局(総合労働相談・助言指導・あっせん) | 個別労働紛争について、相談、助言・指導、あっせんを行う。利用は任意で、あっせんに強制力はない |
| 労働審判 | 裁判所で、原則3回以内の期日で話合いや審判により解決を図る手続 |
| 民事訴訟 | 裁判所で、地位確認や賃金・損害賠償などを求めて判決を得る手続 |
| 労働基準監督署 | 労働基準法違反(解雇予告手当の不払など)についての監督を担う。解雇の有効・無効そのものを判断する機関ではない |
| 労働組合 | 団体交渉などを通じて解決を図る。合同労組に個人で加入できる場合もある |
どの手続が適しているかは、復職を望むのか金銭的な解決を望むのか、証拠がどの程度そろっているか、相手方の対応などによって変わります。手続の平均的な期間や費用、解決の割合といった数値は、事案や時期によって異なるため、この記事では断定しません。
弁護士に相談するタイミング
解雇の問題は、早い段階で相談することで、資料の保全や対応方針の整理がしやすくなります。相談は結果を保証するものではありませんが、判断材料を整えるために役立ちます。
労働者の方の場合
- 退職届・退職合意書・確認書などへの署名を求められているとき(署名の前)
- 口頭で解雇を告げられ、書面がない段階
- 解雇の理由に納得できないとき
- 会社とのやり取りを本格的に始める前
- 労働審判や訴訟などを検討する段階
会社の方の場合
- 最終的な解雇の方針を決める前
- 解雇通知書を交付する前
- 懲戒解雇・整理解雇・試用期間中の本採用拒否を検討するとき
- 妊娠・育児介護休業・労災・公益通報・組合活動などの事情が関係するとき
- 有期契約を期間の途中で終了しようとするとき
相談によって、資料の整理、法的な論点の把握、とり得る選択肢、対応方針を整理しやすくなります。労働者の方も会社の方も、重要な署名・通知の前に確認しておくことをおすすめします。
よくある質問
解雇予告手当を支払えば、解雇は有効になりますか。
そうとは限りません。解雇予告手当(労働基準法第20条)は、解雇の手続に関するものです。これを支払っても、解雇そのものに客観的合理的理由と社会通念上の相当性(労働契約法第16条)がなければ、解雇は無効と判断される余地があります。有効性と手続は別に確認する必要があります。
解雇理由証明書は請求できますか。
請求できます。労働基準法第22条により、解雇の予告がされた日から退職の日までの間に解雇の理由について証明書を請求した場合や、退職後に退職の事由(解雇の理由を含む)について請求した場合、使用者は遅滞なく交付しなければなりません。
退職届への署名を求められたら、どうすればよいですか。
内容を理解しないまま署名しないことが大切です。署名すると「自分の意思で辞めた」と扱われ、解雇を争いにくくなることがあります。「絶対に署名してはいけない」という一律の話ではありませんが、署名の意味を確認してから判断することをおすすめします。
試用期間中なら、会社は自由に解雇できますか。
自由にできるわけではありません。試用期間中もすでに労働契約は成立しており、本採用の拒否にも、留保された解約権の趣旨に照らした合理的理由と相当性が必要です。なお、試用期間中の者でも、14日を超えて使用されると解雇予告の規定が適用されます。
能力不足を理由に解雇できますか。
直ちに有効になるとは限りません。採用時に予定された職務や能力、会社が指導・改善の機会を与えたか、配置転換など他の対応の余地がなかったかなどが考慮される傾向にあります。具体的な事実と記録が重要です。個別事情により結論は変わります。
有期契約の途中でも、解雇できますか。
期間の途中での解雇には、労働契約法第17条第1項の「やむを得ない事由」が必要で、期間の定めのない契約の解雇よりも狭い範囲でしか認められないと解されています。なお、期間満了による雇止めは、これとは別の枠組み(労働契約法第19条)で判断されます。
解雇された場合、どこへ相談できますか。
会社との交渉のほか、都道府県労働局の総合労働相談・あっせん、労働審判、民事訴訟、弁護士への相談などがあります。労働基準監督署は労働基準法違反の監督を担う機関で、解雇の有効・無効そのものを判断する機関ではない点に注意が必要です。
会社は、何日前に解雇を通知すればよいですか。
労働基準法第20条により、少なくとも30日前に予告するか、30日分以上の平均賃金を支払う必要があります(不足する日数分の平均賃金を支払う組合せも可能です)。ただし、これは手続のルールであり、解雇そのものの有効性は別に検討する必要があります。
まとめ
- まず「解雇なのか、退職勧奨なのか」を確認する。退職を勧められているだけなら、応じる義務はない
- 解雇の「理由の合理性・相当性」と「解雇予告などの手続」は、別々に確認する
- 解雇予告手当を支払っても、それだけで解雇が当然に有効になるわけではない
- 雇用契約書・就業規則・解雇通知書・解雇理由証明書・評価や指導の記録などの資料と、経緯の時系列を確保する
- 労働者も会社も、重要な署名・通知の前に、いったん確認する
- 個別の事情によって結論は変わるため、迷ったときは早めに相談を検討する
解雇について、労働者側・会社側のどちらの立場でもご相談いただけます。
当事務所では、労働者側の労働問題と、会社側の労務管理の双方に対応しています。ご相談の際は、雇用契約書、就業規則、解雇通知書、解雇理由証明書、評価・指導の記録、経緯を整理したメモなどをお持ちいただくと、資料・論点・対応方針を整理しやすくなります。初回のご相談は無料です(予約制)。受付時間は9時から20時です。
お電話でのご予約は 0799-53-6782 へ。関連する取扱業務や費用は、労働問題(労働者側)、会社の労務管理・労働問題対応、弁護士費用の各ページをご確認ください。
監修者・執筆者
藤井 貴之(ふじい たかゆき)
弁護士・公認会計士(兵庫県弁護士会所属)
弁護士法人ひょうご あわじみらい法律会計事務所 代表弁護士・公認会計士
当事務所では、労働者側の労働問題と、会社側の労務管理の双方について相談に対応しています。解雇の問題は、雇用契約書・就業規則・評価や指導の記録などの資料を確認したうえで、有効性・手続・対応方針を切り分けて検討する必要があります。
参考資料
本記事は一般的な情報提供であり、具体的な結論は事実関係と資料によって異なります。個別の事案については、資料を確認したうえで弁護士にご相談ください。

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