代表取締役が死亡したときの会社手続|後任選任・株式相続・登記 |淡路島(淡路・洲本・南あわじ)の弁護士|初回相談無料|弁護士法人ひょうご あわじみらい法律会計事務所

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代表取締役が死亡したときの会社手続|後任選任・株式相続・登記

会社の代表取締役が突然亡くなると、残された家族や役員、株主、従業員は、契約や給与の支払、銀行取引を止めないために「何から手を付ければよいのか」で戸惑いがちです。とりわけ、社長が一人で取締役を務めていた会社や、社長がほぼすべての株式を持っていた会社では、次の意思決定を誰がどのように行うのかが分からず、時間だけが過ぎてしまうことがあります。

この記事では、代表取締役が死亡した場合に会社を止めないための初動として、まず確認すべき資料、後任の代表取締役を選ぶ手続、株式の相続、役員変更登記、銀行・契約・許認可などの社外対応を整理します。結論の方向性を先にお伝えすると、代表取締役が死亡しても会社が当然に消滅するわけではありません。もっとも、後任を選ぶ手続は、会社が取締役会を置いているか、他に取締役・代表取締役がいるか、亡くなった方が株主でもあったかなどによって大きく変わります。まずは登記事項証明書、定款、株主名簿を手元に用意することが出発点になります。

この記事の要点

  • 代表取締役の死亡によって、会社が当然に解散・消滅することはありません。
  • 代表取締役や取締役という「地位」は相続されませんが、故人が持っていた「株式」は相続財産になります。
  • 後任の代表取締役を選ぶ手続は、会社の機関設計・定款・株主構成によって異なります。
  • まず確認するのは、登記事項証明書・定款・株主名簿です。

「誰が、どの手続で後任を決められるのか」が分からない段階でも、資料を確認すれば道筋を整理できます。

登記事項証明書・定款・株主名簿などを確認することで、後任選任や株式相続、登記の順序を検討しやすくなります。手続を始める前の確認が、後の混乱を抑えることにつながります。

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代表取締役が死亡したときに、まず確認すること

代表取締役が亡くなっても、会社という法人格は消えません。会社は代表取締役個人とは別の存在であり、代表取締役が死亡したからといって、会社が当然に解散したり、これまでの契約や従業員との雇用関係、会社の債務が当然になくなったりするわけではありません。会社を動かし続けるために必要な意思決定を、誰がどのように行うのかを整理することが最初の課題になります。

そのためには、次の点を早い段階で確認します。会社の状況によって、その後に使える手続が変わってくるためです。

最初に確認したい3つのこと

  • 他に代表取締役や取締役がいるか(会社の代表権を持つ人が残っているか)。
  • 取締役会を置いている会社か、置いていない会社か(定款・登記事項証明書で確認)。
  • 亡くなった方が、株主(とくに唯一またはほとんどの株式を持つ株主)でもあったか。

あわせて、次の資料を用意すると、後の判断がしやすくなります。すべての会社で同じ資料が必要になるとは限りませんので、会社の状況に応じて追加してください。

代表取締役の死亡直後に確認したい主な資料
資料 確認できること
登記事項証明書(履歴事項全部証明書) 取締役・代表取締役の構成、取締役会設置の有無、会社の基本事項
定款 取締役の員数、代表取締役の定め方、株主総会・取締役会の運用ルール
株主名簿 誰が何株を持っているか、亡くなった方の持株割合
株主総会・取締役会の議事録 これまでの選任経緯、代表取締役の選定方法
死亡の事実を確認できる資料 戸籍(除籍)関係の資料など、退任登記や相続手続の前提
遺言書・相続関係の資料 株式を含む財産の承継先、相続人の範囲
主要な契約書・借入契約・保証契約 代表者変更の通知条項、解除条項、個人保証の有無
会社実印・印鑑カード・電子証明書 登記・銀行取引・電子申請に必要な権限の所在

死亡によって引き継がれるものと引き継がれないもの

代表取締役の死亡後の手続を考えるうえで、まず「地位」と「財産」を分けて整理することが役立ちます。相続されるものと、相続されないものがあるためです。

代表取締役・取締役の地位

会社と取締役・代表取締役との関係は、法律上「委任」に関する規定に従うものとされています(会社法第330条)。そして、委任は、委任者または受任者の死亡によって終了します(民法第653条第1号)。取締役という地位は、その人個人に専属するものと考えられ、相続の対象にはなりません(民法第896条ただし書)。

したがって、亡くなった代表取締役の配偶者やお子さんが、当然に取締役や代表取締役の地位を引き継ぐわけではありません。後任は、後述する会社法上の手続によって、あらためて選ぶ必要があります。

会社の株式

一方で、亡くなった方が持っていた株式は、財産として相続の対象になります(民法第896条)。会社の経営を実際に左右するのは、多くの場合この株式(議決権)です。誰が株式を承継し、株主として議決権を行使できるのかが、後任選任の手続にも直接影響します。株式の相続については、後の章で詳しく整理します。

会社への貸付金・個人保証など

中小企業では、社長個人が会社にお金を貸している(役員借入金)ことや、会社の借入について社長が個人保証をしていることが少なくありません。故人の会社に対する貸付金は相続財産となり得ますし、会社の債務についての個人保証(連帯保証)も相続の対象となることがあります。金額や保証の内容、相続放棄の要否を含め、影響が大きい場合があるため、資料を確認したうえで個別に検討する必要があります。

既存の契約・従業員・会社債務

会社が当事者となっている取引契約や、従業員との雇用契約、金融機関からの借入などは、代表者が亡くなったことによって当然に終了するわけではありません。ただし、主要な契約の中には、経営者・株主の交代を通知事由や解除事由とする条項(いわゆるチェンジ・オブ・コントロール条項)が入っていることがあります。重要な契約については、条項を確認しておくことが望まれます。

後任の代表取締役を選ぶ手続

後任の代表取締役をどのように選ぶかは、会社の状況によって異なります。まず、代表的な場面ごとの大まかな進め方を整理します。実際にどの手続を使えるかは、定款の定めや株主構成によって変わりますので、下表はあくまで出発点としてご覧ください。

会社の状況別・後任選任の大まかな進め方(個別事情により異なります)
会社の状況 主に検討する手続
他に代表取締役がいる 残る代表取締役が代表権を行使。死亡による退任登記を行う
取締役会非設置・亡くなった人が唯一の取締役 株主総会で新しい取締役を選任。招集が難しい場合は省略・招集請求・裁判所手続などを検討
取締役会非設置・他に取締役がいる 代表取締役の定め方(定款・互選・株主総会)を確認し、代表権の所在を整理
取締役会設置・取締役の員数を満たす 取締役会で新しい代表取締役を選定
取締役会設置・取締役の員数が不足 株主総会で取締役を補充してから代表取締役を選定。一時役員の選任も検討
亡くなった人が唯一の株主でもあった 株式の相続と、株主権を行使する人の確定を先に整理

他に代表取締役がいる場合

代表取締役が複数いる会社で、そのうちの一人が亡くなった場合は、残る代表取締役が引き続き会社を代表できます。会社の代表権がただちに失われるわけではありません。もっとも、亡くなった代表取締役については、死亡による退任の登記が必要です。

取締役会を置かない会社で、亡くなった人が唯一の取締役だった場合

いわゆる一人会社・一人社長のケースです。唯一の取締役が亡くなると、取締役が不在になります。新しい取締役は株主総会の決議で選任しますが(会社法第329条第1項)、その株主総会を招集するのは本来は取締役です(会社法第296条第3項)。招集する取締役がいないため、通常どおりには株主総会を開けない、という状態が生じ得ます。

この場合、株主が生存していれば、株主全員の同意による招集手続の省略(会社法第300条)や、株主全員の書面等による決議の省略(会社法第319条第1項)を利用できることがあります。株主総会を開けない場合には、一定の株主による招集請求と裁判所の許可を得た招集(会社法第297条)や、裁判所に対する一時役員(一時取締役)の選任の申立て(会社法第346条第2項)を検討することになります。

「権利義務取締役」は死亡の場面には当てはまりません

取締役が任期満了や辞任で退任し、員数を欠くことになる場合には、後任が就任するまで退任した人が取締役としての権利義務を持ち続ける仕組みがあります(会社法第346条第1項)。もっとも、この仕組みが対象とするのは「任期の満了または辞任」で退任した人であり、亡くなった人には当てはまりません。死亡によって員数を欠く場合は、新しい取締役の選任や、必要に応じて裁判所による一時役員の選任で対応することになります。

取締役会を置かない会社で、他に取締役がいる場合

取締役会を置かない会社で、亡くなった代表取締役のほかにも取締役がいる場合は、代表取締役をどのように定めていたかを確認します。取締役会を置かない会社では、定款、定款の定めに基づく取締役の互選、または株主総会の決議によって、取締役の中から代表取締役を定めることができます(会社法第349条第3項)。

特に代表取締役を定めていない会社では、各取締役がそれぞれ会社を代表するのが原則です(会社法第349条第1項・第2項)。この場合は、残った取締役が会社を代表し得ます。もっとも、特定の一人を代表取締役と定めていた会社で、その人が亡くなったときに、他の取締役の代表権が当然に復活するかどうかは、定款の定めや選定の経緯によって考え方が分かれ得ます。登記事項証明書と定款、議事録を確認したうえで判断する必要があります。

取締役会を置く会社で、必要な取締役の員数を満たしている場合

取締役会設置会社では、取締役会が取締役の中から代表取締役を選定します(会社法第362条第2項第3号・第3項)。亡くなった代表取締役の後任も、原則として取締役会の決議で選びます。取締役会の決議は、議決に加わることができる取締役の過半数が出席し、その過半数によって行うのが原則です(会社法第369条第1項)。残る取締役でこの定足数を満たせる場合は、取締役会で後任の代表取締役を選定できます。

取締役会を置く会社で、取締役の員数が不足する場合

取締役会設置会社では、取締役は3人以上でなければなりません(会社法第331条第5項)。代表取締役の死亡によって取締役が3人未満になった場合は、員数が不足した状態になります。この場合は、株主総会で新しい取締役を選任して員数を補ったうえで、代表取締役を選定するのが基本の流れです。

「取締役が3人のうち1人が亡くなり、残る2人だけで後任の代表取締役を選定できるか」は、しばしば問題になります。もっとも、これは一律に説明できるものではなく、定款の定めや在任している取締役の人数、決議の要件などによって結論が変わり得ます。員数が不足したままの状態は解消する必要があり、状況によっては裁判所による一時役員の選任(会社法第346条第2項)も検討します。実際の可否は、資料を確認したうえで個別に判断する必要があります。

亡くなった人が唯一の株主でもあった場合

社長が唯一またはほとんどの株式を持ち、かつ唯一の取締役でもあった会社では、後任の取締役を選ぶ株主総会の議決権を、誰が行使するのかがそもそも問題になります。株式は相続財産となり、相続人が複数いる場合には、遺産分割が終わるまで株式は相続人の準共有となります。この場合の株主権の行使には、次章で述べる整理が必要です。

株主総会を通常どおり開けない場合の対応

代表取締役や取締役が不在で株主総会を開きにくい場合には、いくつかの制度が考えられます。ただし、これらは名称も要件も申立てをする人も異なり、どの場面でも常に使えるわけではありません。混同しないように整理します。

以下の各制度は、株主が生存しているか、相続によって株主が確定しているか、会社の機関設計はどうかなどによって、使えるかどうかが変わります。実際にどれを選ぶかは、資料を確認したうえで検討する必要があります。

招集手続を省略できる場合

株主全員の同意があるときは、招集の手続を経ることなく株主総会を開くことができます(会社法第300条)。株主が少数で、全員の意思がまとまる会社では、この方法を使えることがあります。

株主総会の決議自体を省略できる場合

取締役または株主が提案した事項について、議決権を行使できる株主の全員が書面または電磁的記録によって同意したときは、その提案を可決する株主総会の決議があったものとみなされます(会社法第319条第1項)。会議を開かずに決議を成立させる方法で、実務でよく用いられます。

株主による招集請求・裁判所の許可を検討する場合

一定の議決権(総株主の議決権の3%以上。定款で引き下げることも可能)を持つ株主は、取締役に対して株主総会の招集を請求できます(会社法第297条第1項)。公開会社でない会社では、6か月前からの継続保有は求められません(同条第2項)。会社が請求後遅滞なく招集の手続をしない場合や、請求日から8週間以内に招集の通知が発せられない場合には、請求した株主が裁判所の許可を得て自ら招集できます(同条第4項)。

仮取締役(一時役員)を検討する場合

役員が欠けた場合や、法律・定款で定めた員数を欠いた場合において、必要があると認めるときは、裁判所は、利害関係人の申立てにより、一時役員(一時取締役)の職務を行うべき者を選任することができます(会社法第346条第2項)。株主総会をどうしても開けないときの選択肢の一つです。

仮代表取締役(一時代表取締役)を検討する場合

代表取締役が欠けた場合や、定款で定めた代表取締役の員数を欠いた場合において、必要があると認めるときは、裁判所は、利害関係人の申立てにより、一時代表取締役の職務を行うべき者を選任することができます(会社法第351条第2項)。取締役はいるものの代表権を持つ人がいない、といった場面で検討します。

株式の相続と株主権の行使

株式は相続財産になる

前述のとおり、亡くなった方が持っていた株式は相続財産となり、相続人に承継されます(民法第896条)。会社の意思決定は株主総会の議決権によって左右されるため、誰が株式を承継するのかは、後任選任の手続とも密接に関わります。

相続人が複数いる場合

相続人が複数いるときは、遺産分割が終わるまで、株式を含む相続財産は相続人の共有(準共有)となります(民法第898条)。この段階では、特定の相続人が単独で株主として議決権を行使できるわけではありません。

遺言や遺産分割がある場合

遺言によって株式の承継者が定められている場合や、遺産分割によって株式を取得する人が確定した場合には、その人が株主となります。会社に対しては、株主名簿の名義書換などの手続が必要になります。

相続人の間で意見が一致しない場合

株式が複数の相続人の準共有となっている場合、その株式についての権利を行使するには、権利を行使する人を一人定めて、会社に通知しなければなりません(会社法第106条)。相続人の間で誰を権利行使者にするかがまとまらないと、議決権を行使できず、後任の選任などが進まないことがあります。権利行使者をどのように定めるかについては考え方が分かれ得るため、資料を確認したうえで検討する必要があります。

株主名簿と会社への通知

株主名簿の記載と、実際の相続の状況が食い違っていることもあります。名義書換や権利行使者の通知など、会社に対する手続を整えておかないと、株主総会の運営に支障が出ることがあります。株主名簿・定款・議事録を突き合わせて確認しておくことが大切です。

会社の機関設計や株主構成、相続関係によって、進め方は分かれます。

「取締役会を置いているか」「他に取締役・代表取締役がいるか」「株式を誰が承継するか」によって、使える手続や必要な決議が変わります。決議や申立ての前に、定款・登記事項証明書・株主名簿を確認しておくことで、手続の要否と順序を検討できます。

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後任選任後に必要となる登記と社外の手続

死亡・就任に関する役員変更登記

代表取締役の死亡による退任と、後任の就任は、いずれも登記事項の変更にあたります。登記事項に変更が生じたときは、変更が生じた日から2週間以内に、本店の所在地を管轄する法務局で変更の登記をしなければなりません(会社法第915条第1項)。この期間を過ぎても登記自体は可能ですが、登記を怠ったときは過料の対象となることがあります(会社法第976条第1号。100万円以下の過料)。

死亡による退任の登記では、死亡の事実を証する書面(戸籍・除籍に関する資料や、死亡の事実を確認できる公的な資料など)を添付します。具体的にどの書面が必要か、登録免許税がいくらか、後任の就任登記でどの書類が必要かは、会社の規模や機関設計、代表権の有無などによって異なります。最新の様式や必要書類は法務局の案内で確認し、一律に決めつけないようにしてください。なお、登記申請の代理は司法書士の業務です。株主・役員間の紛争予防や手続選択といった法的判断は弁護士に、登記申請は司法書士にと、役割を分けて進めるのが一般的です。

銀行・保険会社・取引先への連絡

法人名義の預金口座は、代表者個人の口座とは別のものです。代表者が亡くなったことによって、法人口座が当然に凍結されるわけではありません。もっとも、金融機関は、新しい代表者や取引権限の確認のために、一定の手続が済むまで取引に制限を設けることがあります。必要書類や取扱いは金融機関ごとに異なるため、取引のある金融機関に早めに確認することが大切です。

保険については、故人個人にかけられた生命保険と、会社が契約者・受取人となっている法人契約の保険、事業用の損害保険などを区別して整理します。取引先に対しては、代表者の変更の連絡や、契約書の通知条項・解除条項の確認が必要になることがあります。

許認可・税務・社会保険などの確認

建設業や運送業、飲食業など、許認可を要する事業では、代表者の変更に伴う届出が必要になることがあり、その要否や期限は業種によって異なります。所管する行政庁の案内で確認してください。税務については、故人の準確定申告や相続税など、期限のある手続が生じることがあり、税理士による対応が必要です。社会保険関係の届出も含め、他の資格者や行政庁と連携して進めることになります。

会社実印・電子証明書・各種アカウントの管理

会社実印や印鑑カード、法人の電子証明書、インターネットバンキングや電子契約、会計システムなどの管理者アカウントは、代表者に紐づいて運用されていることがあります。改印の届出や電子証明書の再取得、各種アカウントの権限移行など、事業を止めないための引継ぎを確認しておく必要があります。

代表取締役が死亡した直後のチェックリスト

手続を検討する前に、次の資料を確認・準備しておくと、使える手続や必要な対応の見通しを立てやすくなります。すべての会社で同じ資料が必要になるとは限りませんので、会社の状況に応じて追加してください。

  • 登記事項証明書(履歴事項全部証明書)
  • 定款
  • 株主名簿
  • 過去の株主総会議事録・取締役会議事録
  • 死亡の事実を確認できる公的な資料
  • 戸籍・相続関係の資料
  • 遺言書
  • 主要な契約書
  • 借入契約・保証契約に関する資料
  • 保険証券
  • 許認可に関する資料
  • 会社実印・印鑑カード・電子証明書
  • 銀行取引・オンラインサービスの管理権限が分かる資料

特に対応が難しくなりやすいケース

次のような事情があると、手続の見通しが立てにくくなったり、相続人・株主の間で対立が生じたりしやすくなります。いずれも一般的な整理であり、具体的な結論は個別事情によって変わります。

相続人同士で意見が一致しない

株式が準共有となっている状態で相続人の意見がまとまらないと、権利行使者を定められず、株主総会の議決権を行使できないことがあります。後任選任が滞る原因になりやすい場面です。

相続人に未成年者がいる

相続人に未成年者が含まれる場合、親権者と未成年者の利益が対立する場面では、特別代理人の選任が必要になることがあります。遺産分割の進め方に影響します。

株主名簿や定款が更新されていない

実際の株主構成と株主名簿が一致していない、過去の定款変更が反映されていないといった不整合があると、誰が議決権を持つのか、どの手続を使えるのかの判断が難しくなります。

会社の資金決済を急ぐ必要がある

給与や税金、社会保険料、取引代金などの支払期限が迫っている場合、代表権や口座の取扱いの整理を急ぐ必要があります。優先順位を付けて対応することが求められます。

個人保証や役員借入金がある

会社の借入に対する故人の個人保証や、故人から会社への貸付金(役員借入金)があると、相続の場面で会社と相続人の利害が複雑に絡みます。相続放棄の要否を含め、慎重な検討が必要です。

会社の継続・事業承継・売却・廃業を同時に検討する

後任を置いて事業を続けるのか、承継や売却を検討するのか、あるいは廃業するのかを、緊急対応と並行して考えなければならない場合があります。判断材料を整理し、順序立てて検討することが大切です。

弁護士への相談を検討するタイミング

次のような場面では、手続を進める前に一度、資料を確認したうえで方針を整理しておくと、選択肢と順序を検討しやすくなります。

  • 誰が後任の代表取締役を選任できるのか、判断が難しい。
  • 株主や相続人の間に対立がある。
  • 取締役や代表取締役が不在で、株主総会・取締役会を開催できない。
  • 裁判所への申立て(一時役員・一時代表取締役の選任など)を検討している。
  • 緊急の契約・支払・許認可への対応が必要になっている。
  • 会社の継続と事業承継を併せて検討している。
  • 役員変更登記の期限の経過が疑われる。

弁護士に相談したからといって、必ずすべてが解決するわけではありません。もっとも、定款・登記事項証明書・株主名簿などの資料を確認することで、法律上の見通しを立て、後任選任・株式相続・登記・社外対応の順序を整理しやすくなります。税務・登記・許認可など、他の資格者や行政庁の関与が必要な事項もあるため、必要に応じて連携して進めます。

よくある質問(FAQ)

代表取締役が死亡すると、会社は解散しますか。
いいえ。会社は代表取締役個人とは別の法人であり、代表取締役の死亡によって当然に解散・消滅することはありません。もっとも、後任の代表取締役を選ぶ手続や、役員変更登記などの対応は必要になります。
亡くなった社長の地位は、家族が引き継ぐのですか。
取締役・代表取締役という地位は、その人に専属するもので相続されません(会社法第330条、民法第653条第1号)。一方で、社長が持っていた株式は相続財産になります。後任の役員は、会社法上の手続であらためて選ぶ必要があります。
社長が持っていた会社の株式は、誰が引き継ぎますか。
株式は相続財産として相続人に承継されます(民法第896条)。相続人が複数いる場合は、遺産分割が終わるまで株式は準共有となり(民法第898条)、権利を行使する人を一人定めて会社に通知する必要があります(会社法第106条)。
一人取締役だった社長が亡くなった場合、誰が株主総会を開くのですか。
本来は取締役が招集しますが(会社法第296条第3項)、その取締役が不在の状態です。株主が生存していれば、株主全員の同意による招集手続の省略や決議の省略(会社法第300条・第319条)を、それも難しい場合は株主による招集請求と裁判所の許可(会社法第297条)や一時役員の選任申立て(会社法第346条第2項)を検討します。
取締役が3人のうち1人亡くなり、残る2人で後任の代表取締役を選べますか。
一律には決められません。取締役会設置会社では取締役は3人以上必要とされるため(会社法第331条第5項)、員数が不足した状態を解消する必要があります。残る取締役だけで選定できるかは、定款や在任している取締役の人数、決議要件によって変わりますので、資料を確認したうえで判断する必要があります。
役員変更登記は、いつまでに行う必要がありますか。
登記事項に変更が生じた日から2週間以内に、本店を管轄する法務局で登記を申請するのが原則です(会社法第915条第1項)。怠ると過料の対象になることがあります(会社法第976条第1号)。必要書類や登録免許税は事案によって異なるため、法務局の案内で確認してください。登記申請の代理は司法書士の業務です。
代表者が亡くなった後も、会社の銀行口座は使えますか。
法人口座は代表者個人の口座とは別で、代表者の死亡によって当然に凍結されるわけではありません。もっとも、金融機関は新しい代表者の確認などのため、一定の手続が済むまで取引を制限することがあります。取扱いや必要書類は金融機関ごとに異なるため、早めに確認することをおすすめします。
会社の契約や、従業員との雇用契約は終了してしまいますか。
会社が当事者である契約や雇用契約は、代表者が亡くなったことで当然に終了するわけではありません。ただし、契約によっては経営者・株主の交代を通知事由や解除事由とする条項が含まれていることがあるため、主要な契約は内容を確認しておくと安心です。

まとめ

  • 代表取締役が死亡しても、会社は当然には解散・消滅しません。まず登記事項証明書・定款・株主名簿を用意します。
  • 取締役・代表取締役の地位は相続されませんが、株式は相続財産になります。
  • 後任の代表取締役を選ぶ手続は、取締役会の有無、他の取締役・代表取締役の有無、株主構成によって異なります。
  • 株主総会を通常どおり開けない場合には、招集手続や決議の省略、招集請求と裁判所の許可、一時役員・一時代表取締役の選任などを、要件を確認したうえで検討します。
  • 後任選任の後は、2週間以内の役員変更登記のほか、銀行・保険・取引先・許認可・社内アカウントの対応を整理します。
  • 相続人・株主の対立や、株主総会を開けない事情がある場合は、手続前に資料を確認して方針を整理しておくと、選択肢と順序を検討しやすくなります。

後任選任・株式相続・登記・社外対応を、まとめて整理したい方へ。

会社の状況によって、誰がどの決議を行い、どの順序で手続を進めるべきかは変わります。定款・登記事項証明書・株主名簿などを確認しながら、会社法上の手続と相続手続の関係、株主総会・取締役会・裁判所手続の要否を整理できます。

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監修者・執筆者

藤井 貴之(弁護士・公認会計士)

弁護士法人ひょうご あわじみらい法律会計事務所 代表弁護士。兵庫県弁護士会所属、日本公認会計士協会兵庫会所属。企業法務や会社の機関設計、事業承継に関する相談に対応しています。

代表取締役の死亡後の対応については、定款・登記事項証明書・株主名簿・議事録を確認したうえで、後任選任・株式相続・登記・社外対応の順序を整理します。所属弁護士の紹介を見ることができます。

参考資料

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