改正公益通報者保護法とは|令和8年施行と企業の対応 |淡路島(淡路・洲本・南あわじ)の弁護士|初回相談無料|弁護士法人ひょうご あわじみらい法律会計事務所

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改正公益通報者保護法とは|令和8年施行と企業の対応

「公益通報者保護法が改正されたと聞いたが、自社は何を、いつまでに準備すればよいのか」「内部通報の窓口はすでにあるが、これで十分なのか」「令和8年12月1日に施行される改正で、罰則が新しく設けられると聞いて不安だ」。人事、総務、法務、コンプライアンスのご担当者や経営者の方から、こうしたご相談が増えています。

公益通報者保護法は、令和4年6月1日に施行された改正で内部通報体制の整備が義務づけられ、さらに令和7年に成立した改正法(令和7年法律第62号)が、令和8年12月1日から施行されます。新しい改正では、公益通報を理由とする解雇や懲戒に対する刑事罰の新設、立証負担を軽くする推定規定、通報を妨げる行為や通報者を探索する行為の禁止、フリーランスへの保護拡大などが盛り込まれています。

この記事では、公益通報者保護法の基本的な仕組み、現行法(令和4年施行)で企業に求められている対応、令和7年改正・令和8年12月1日施行で何が変わるのか、施行に向けて企業が確認すべき社内体制、内部通報を受けたときの初動、そして公益通報を検討している方が確認すべき点を、法人側と通報者側の立場を分けて整理します。制度は個別の事情によって結論が変わる部分が多いため、最終的な判断は、規程や資料を確認したうえで弁護士にご相談ください。

この記事で分かること

  • 令和7年改正・令和8年12月1日施行で、公益通報者保護法の何が変わるのかの全体像
  • 公益通報を理由とする解雇・懲戒に、新たに刑事罰(直罰)が設けられること
  • 通報から1年以内の解雇・懲戒は、公益通報を理由とすると推定される方向であること
  • フリーランス(業務委託先)も、施行後は公益通報者として保護され得ること
  • 「常時使用する労働者が300人以下なら何もしなくてよい」わけではないこと
  • 施行に向けて企業が点検すべき規程・窓口・周知・記録の具体的な確認項目

まずは、現在の内部通報規程と窓口の運用状況を確認することから始まります。

社内規程、窓口の運用ルール、従事者の指定状況、周知や研修の記録などを確認することで、令和8年12月の施行までに何を見直すべきかを整理できます。改正対応の優先順位を整理したいときは、一度ご相談ください。

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Contents

結論|令和7年改正の全体像と、企業がまず確認すべきこと

先に全体像をお示しします。令和7年改正(令和8年12月1日施行)では、公益通報者を保護する仕組みが強化され、企業に求められる対応も重くなります。ただし、すべての会社に同じ義務が一律に課されるわけではなく、事業規模、雇用や業務委託の形態、現在の通報体制、個別の事情によって、確認すべき事項は変わります。

令和7年改正の主な変更点(現行法と改正後の比較)
改正項目 現行(令和4年〜) 改正後(令和8年12月1日〜) 企業が確認すること
通報を理由とする解雇・懲戒 無効・禁止(民事上の効果) 民事上の効果に加え、刑事罰(直罰)を新設 処分の判断過程と記録の整備
解雇・懲戒の立証 通報者側が理由を主張・立証 通報後1年以内の処分は通報を理由とすると推定 処分理由を裏づける客観的資料
通報妨害・通報者探索 明文の禁止規定なし 妨害行為・探索行為を禁止 誓約書・調査運用の見直し
通報できる人の範囲 労働者・退職者・役員 フリーランス(業務委託先)も追加 委託先への周知・契約の確認
周知・体制の実効性 体制整備義務(300人超) 周知の義務化・行政措置の強化 規程・窓口・周知状況の点検

この記事の前提

本記事は一般的な情報提供です。自社が義務の対象か、どこまでの対応が必要かは、常時使用する労働者の数、業務委託の実態、現在の規程や運用によって変わります。具体的な対応は、規程や資料を確認したうえで個別に判断する必要があります。また、令和8年12月1日より前の時点では、後述する令和7年改正の内容は施行前であり、現行法と施行後の規律を区別して確認することが大切です。

公益通報者保護法とは|制度の目的と「公益通報」の基本

公益通報者保護法(平成16年法律第122号)は、事業者の法令違反を、その組織で働く人などが通報したことを理由に、解雇その他の不利益な取扱いを受けないように保護する法律です。通報した人を守ることで、組織内部からの是正を促し、国民の生命、身体、財産などにかかわる法令違反を早期に正すことを目的としています。

公益通報の定義と通報できる人(通報主体)

法律上の「公益通報」は、日常語の「内部告発」や「会社への苦情」とは範囲が異なります。おおまかにいえば、労働者などが、不正の目的でなく、勤務先(役務提供先)について一定の法令違反(通報対象事実)が生じ、またはまさに生じようとしている旨を、定められた通報先に通報することをいいます。

通報できる人(通報主体)は、現行法では、その事業者で働く労働者のほか、退職後1年以内の退職者、役員が含まれます。令和7年改正により、施行後は、事業者と業務委託の関係にあるフリーランス(特定受託業務従事者)や、業務委託が終了してから1年以内のフリーランスも、公益通報者として保護される方向です。

通報対象事実|どのような法令違反が対象か

通報の対象となるのは、あらゆる社内ルール違反や不満ではなく、法律で定められた「通報対象事実」です。具体的には、国民の生命、身体、財産などの利益の保護にかかわる法律に規定された、刑罰や過料の対象となる行為などが対象とされ、対象となる法律は法令で定められています。どの法令違反が対象になるかは、消費者庁が公表する対象法律の一覧などで確認できます。

通報先は3種類|通報先ごとに保護の要件が異なる

公益通報には、大きく分けて次の3つの通報先があります。重要なのは、どこに通報するかによって、保護されるための要件が異なる点です。「社外に通報すれば必ず守られる」「上司に話せば必ず法律上の公益通報になる」といった理解は正確ではありません。

通報先の区分と、保護される主な要件(現行法)
通報先 主な例 保護される主な要件(概要)
事業者内部(1号) 社内窓口、上司など 通報対象事実が生じ、またはまさに生じようとしていると思料すること
権限を有する行政機関(2号) 監督官庁など 上記に加え、真実と信じる相当の理由があること、または氏名等を記載した書面を提出することなど
その他外部(3号) 報道機関、消費者団体など 真実と信じる相当の理由に加え、内部では是正されない、証拠隠滅のおそれ、生命・身体への危害のおそれなど一定の事情

大まかにいえば、内部への通報がもっとも要件が緩やかで、行政機関、その他外部へと進むにつれて、通報内容の裏づけなど求められる要件が加わっていきます。個別の事案でどの要件を満たすかは、資料と経緯に即した検討が必要です。

保護の内容|解雇の無効・不利益取扱いの禁止・損害賠償責任の制限

保護要件を満たす公益通報をした人については、主に次の保護が及びます。第一に、公益通報を理由とする解雇は無効となります。第二に、降格、減給、退職金の不支給、契約の解除など、解雇以外の不利益な取扱いも禁止されます。第三に、公益通報によって事業者に損害が生じても、事業者は公益通報者に対して、その損害の賠償を請求できないものとされています。役員については、解任に伴う損害賠償請求など、立場に応じた保護の規定が置かれています。

社内の苦情・ハラスメント相談との違い

勤務先への苦情、人間関係の不満、社内規程だけに違反する行為、倫理上の問題、ハラスメントの申告などが、当然にすべて法律上の「公益通報」に当たるわけではありません。もっとも、法律上の公益通報に当たらない申告であっても、会社の内部通報規程、ハラスメント相談制度、就業規則、契約などにより、会社が調査や対応をすべき場合はあります。両者を混同せず、「公益通報者保護法上の保護が及ぶか」と「社内制度として対応すべきか」を分けて考えることが大切です。

令和4年施行改正(現行法)の要点|まず現行の義務を確認する

令和8年12月の施行を理解する前提として、まず現在すでに施行されている令和4年6月1日施行の改正(令和2年改正)の内容を確認しておく必要があります。この改正で、企業には次のような対応が求められるようになりました。これらは過去の改正であり、令和7年改正とは区別して理解してください。

第一に、保護される通報者の範囲が広がり、労働者に加えて、退職後1年以内の退職者と役員が保護対象に含まれました。第二に、通報対象事実の範囲が広がり、刑罰の対象だけでなく、過料の対象となる行為も含まれるようになりました。第三に、常時使用する労働者の数が300人を超える事業者に対して、内部公益通報に適切に対応するための体制を整備する義務が課されました(300人以下の事業者は努力義務)。

あわせて、事業者は、公益通報に対応する業務に従事する人(公益通報対応業務従事者)を定める義務を負い、この従事者や従事者であった人には、通報者を特定させる情報についての守秘義務が課され、違反には罰則(30万円以下の罰金)が定められています。行政機関へ通報する場合の保護要件も緩和されました。現在すでに義務の対象となっている企業は、まずこれらの現行の義務を満たしているかを確認することが出発点になります。

令和7年改正・令和8年12月1日施行のポイント

ここからが、今回の中心である令和7年改正(令和7年法律第62号)の内容です。この改正法は令和7年6月11日に公布され、令和8年12月1日から施行されます。現時点では施行前ですので、施行日までに社内体制を点検しておくことが、企業にとって現実的な備えになります。主な変更点を順に見ていきます。

公益通報を理由とする解雇・懲戒に対する刑事罰(直罰)の新設

もっとも注目される変更が、公益通報を理由とする解雇・懲戒に対する刑事罰の新設です。施行後は、公益通報を理由として解雇や懲戒をした者に対し、6月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金という罰則が設けられます。あわせて、法人に対する両罰規定として、3,000万円以下の罰金が定められます。これまで公益通報を理由とする不利益取扱いは民事上の無効・禁止にとどまっていましたが、施行後は刑事責任も問われ得ることになります。

企業側としては、解雇や懲戒を含む人事上の処分を行う際に、その理由が公益通報と無関係であることを、客観的な資料に基づいて説明できるようにしておくことの重要性が高まります。

解雇・懲戒の「推定」規定|通報から1年以内の処分

施行後は、公益通報をした日から1年以内にされた解雇や懲戒については、公益通報をしたことを理由としてされたものと推定される方向で、規定が新設されます。これは、通報者の立証負担を軽くするものです。

この推定が働くと、通報から1年以内に解雇・懲戒を行った事業者側が、その処分が公益通報を理由とするものではないこと(別の正当な理由に基づくこと)を、資料で説明する必要が生じ得ます。処分の理由、時期、手続、他の従業員との取扱いの均衡などを示す記録が、これまで以上に重要になります。もっとも、推定が及ぶ範囲や、どのような資料で覆せるかは個別の事案によります。

公益通報を妨げる行為の禁止

施行後は、事業者が、正当な理由なく、公益通報をしない旨の合意を求めることなど、公益通報を妨げる行為をしてはならないものとされます。入社時や退職時の誓約書、和解や示談の合意書などに、公益通報を一律に禁じるような条項が含まれていないかを見直す必要が生じ得ます。守秘義務契約があることだけを理由に、公益通報が一切できなくなるわけではない点にも注意が必要です。

通報者を特定するための探索行為の禁止

施行後は、事業者が、正当な理由なく、公益通報者が誰であるかを明らかにするよう要求することなど、通報者を特定することを目的とする行為(いわゆる通報者探索)をしてはならないものとされます。通報を受けた企業が、調査よりも先に「誰が通報したのか」を突き止めようとする動きは、施行後は問題となり得ます。調査の際に、通報者の特定につながる情報の取扱いをどう管理するかが問われます。

フリーランス(特定受託業務従事者)等への保護拡大

施行後は、公益通報者の範囲に、事業者と業務委託の関係にあるフリーランス(特定受託業務従事者)や、業務委託が終了してから1年以内のフリーランスが加わります。従業員だけでなく、業務委託先との関係でも、通報を理由とする契約解除その他の不利益な取扱いが問題となり得ます。委託先への制度の周知や、業務委託契約の内容を確認しておくことが考えられます。

内部通報制度の周知の義務化

施行後は、労働者などに対して、公益通報に対応する体制について周知することが、明確に事業者の義務として位置づけられます。規程を整えるだけでなく、その内容を従業員、役員、さらには業務委託先に対して実際に伝え、利用できる状態にしておくことが求められます。

体制整備義務の実効性確保|報告徴収・立入検査・勧告・命令

施行後は、体制整備義務の実効性を確保するため、行政による監督が強化されます。具体的には、事業者に対する報告の徴収、立入検査、勧告に加え、勧告に従わない場合の命令の仕組みが設けられます。命令に違反した場合や、報告をせず、または立入検査を拒むなどした場合には、30万円以下の罰金(両罰規定)が定められます。窓口を設置したこと自体で体制整備が完了するわけではなく、実際に機能しているかが問われる点に注意が必要です。

改正指針・指針解説と企業実務への影響

企業が実際に何をすべきかを検討する際には、法律本文だけでなく、内閣総理大臣が定める指針や、その指針の解説もあわせて確認する必要があります。整理すると、「法律上求められること」「指針で示される措置」「指針の解説で例示される運用」「消費者庁のQ&Aで示される考え方」「実務上さらに検討し得る予防的な対応」は、それぞれ位置づけが異なります。本記事では概要を示していますが、自社の規程に落とし込む際は、最新の指針・指針解説・Q&Aを確認したうえで、個別に検討することをおすすめします。

解雇・懲戒・配置転換など、人事上の処分を検討する前に確認できます。

施行後は、通報から1年以内の処分について推定規定が働き得るほか、刑事罰も設けられます。処分の理由づけや記録の整え方、規程・誓約書の見直しについて、相談により法的な留意点を整理できます。

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企業規模によって義務はどう違うか|「300人」の意味

内部公益通報に対応する体制の整備が「義務」となるか「努力義務」となるかは、事業者の規模によって異なります。分かれ目となるのは、常時使用する労働者の数が300人を超えるかどうかです。

常時使用する労働者の数が300人を超える事業者は、体制整備が義務となり、従事者の指定や、周知(施行後)などの対応が求められます。これに対し、300人以下の事業者は、体制整備は努力義務とされています。この人数の区分は、令和7年改正でも維持されています。

ここで誤解しやすいのが、「常時使用する労働者が300人以下なら、何も対応しなくてよい」という理解です。これは正確ではありません。第一に、体制整備が努力義務にとどまる場合でも、公益通報を理由とする解雇の無効や不利益取扱いの禁止、施行後の刑事罰や推定規定、通報妨害・探索の禁止は、規模にかかわらず及び得ます。第二に、「常時使用する労働者の数」の数え方は、雇用形態などによって判断が分かれることがあり、自社が義務の対象かどうかは実態に即して確認する必要があります。医療法人、社会福祉法人、学校法人などの組織も含め、まずは自社の人数と体制を確認することが出発点になります。

施行に向けて企業が確認すべき事項

令和8年12月の施行に向けて、企業が点検しておきたい主な項目を整理します。それぞれ、「確認する資料」と「確認する内容」をあわせて確認すると、見直しの優先順位を付けやすくなります。数値や期限にかかわる部分は、最新の法令・指針・指針解説で確認することを前提としてください。

施行に向けた社内点検チェック表
確認する対象 確認する資料 確認する内容
内部通報規程 規程本文・改定履歴 従事者・周知・探索禁止など改正内容を反映しているか
従事者の指定 指定記録・本人への通知 従事者を定め、本人に通知しているか
窓口の独立性・利益相反 窓口運用マニュアル 経営幹部が関係する通報で利益相反を排除できるか
通報者情報の管理 アクセス権限・保管ルール 通報者を特定し得る情報の共有範囲を限定しているか
周知・研修 周知資料・研修記録 労働者・役員・業務委託先に制度を周知しているか
フリーランス対応 業務委託契約・委託先一覧 委託先への周知や契約上の取扱いを整えているか
記録の保存 受付・調査・是正の記録様式 受付から是正まで記録・保存する仕組みがあるか

内部通報を受けた場合の対応の流れ

実際に内部通報を受けた場合の初動は、その後の調査や是正、そして通報者の保護に大きく影響します。以下は一般的な流れの例です。事案の性質によって順序や重点は変わりますので、最新の法令・指針・自社の規程に照らして調整してください。

  1. 通報の内容と、緊急性・重大性を確認する。
  2. 証拠が失われるおそれ、被害が拡大するおそれ、通報者への報復のおそれなどのリスクを確認する。
  3. 利益相反のない担当者を選び、経営幹部が関係する場合の対応を検討する。
  4. 通報者を特定し得る情報について、共有する範囲をあらかじめ限定する。
  5. 調査の計画を立て、関係する資料を保全する。
  6. 関係者へのヒアリングと事実確認を行う。
  7. 法令違反の有無と、是正・再発防止の方針を検討する。
  8. 通報者へ、対応の状況を可能な範囲でフィードバックする。
  9. 受付から是正までの対応過程を記録し、保存する。

通報を受けた企業が、事実確認よりも先に「誰が通報したのか」を突き止めようとしたり、十分な調査をしないまま通報者を配置転換・懲戒したりすることは、施行後は通報者探索の禁止や不利益取扱いの禁止、推定規定との関係で問題となり得ます。経営幹部が関与する事案、証拠が失われるおそれのある事案、重大な法令違反や重大事故に関係する事案などでは、通常の社内処理だけで足りるとは限りません。

公益通報を検討している方が確認すべきこと(通報者側)

ここまでは主に企業側の視点で整理してきましたが、勤務先などの法令違反について通報を検討している方は、立場によって確認すべき点が異なります。次のような点を、通報の前に整理しておくことが役立ちます。

  • 自分の立場(労働者、退職者、役員、施行後はフリーランスなど)が保護の対象となり得るか。
  • 通報しようとする事実が、法律上の通報対象事実に当たるか。
  • どの通報先(内部、行政機関、その他外部)を選ぶか。通報先ごとに保護の要件が異なる。
  • いつ、どこで、誰が、どのような行為をしたのかを、時系列で整理する。
  • 根拠となる資料を確認し、勤務先の通報規程や受付方法を確認する。
  • 通報後のやり取りや、不利益な取扱いが疑われる出来事を記録しておく。

証拠を整えることは大切ですが、その方法には注意が必要です。アクセス権限のない社内システムへの侵入、他人のID・パスワードの利用、大量の個人情報や営業秘密の無断持ち出し、無断の録音・撮影、SNSなどへの無計画な投稿は、かえって不利になったり、別の法的責任を問われたりするおそれがあります。資料の取得・持ち出し・提出が適法かどうかは、方法や状況によって異なります。判断に迷う場合は、行動する前に相談することをおすすめします。

よく問題になるケース

実務では、次のような場面で判断に迷うことが少なくありません。いずれも、一律の結論を示すことは難しく、確認すべき資料と判断の要素を押さえることが大切です。

  • 経営幹部が通報の対象者である場合。窓口の独立性や利益相反の排除、調査体制の中立性をどう確保するかが問題になります。
  • 通報者が匿名を希望している場合。匿名でも対応が求められる場面はありますが、連絡方法やフィードバックの範囲を工夫する必要があります。
  • 通報内容がハラスメントと法令違反の双方に関係する場合。公益通報としての対応と、社内のハラスメント相談としての対応を整理する必要があります。
  • 通報者の主張と関係者の説明が食い違う場合。どちらか一方の言い分だけで結論を出さず、客観的な資料で確認します。
  • 通報の後に配置転換や評価の変更を行う場合。施行後は通報から1年以内の処分に推定が働き得るため、理由の客観的な裏づけが重要になります。
  • フリーランスから通報があった場合。施行後は保護の対象となり得るため、契約解除などの取扱いに注意が必要です。
  • 社内で通報者を推測する動きが生じた場合。施行後は通報者探索の禁止との関係で問題となり得ます。
  • 外部(行政機関や報道機関)への通報が行われた場合。通報先ごとの保護要件を踏まえた対応が必要です。
  • 調査資料に個人情報や営業秘密が含まれる場合。個人情報保護や秘密管理との関係を整理する必要があります。

手続前チェックリスト

相談や社内対応をスムーズに進めるために、あらかじめ確認・整理しておきたい資料を、企業側と通報者側に分けて整理します。

企業側が確認・整理したい資料

  • 現行の内部通報規程、就業規則、懲戒規程
  • 窓口の運用マニュアル、従事者の指定記録
  • 研修記録、周知に用いた資料
  • 通報の受付記録、調査記録、是正措置の記録
  • 業務委託契約、個人情報の取扱いに関する規程
  • 取締役会その他の機関への報告に関する記録

通報を検討している方が整理したい資料

  • 通報しようとする事実の時系列(日時・場所・関係者・行為)
  • 根拠となる資料と、その入手方法
  • 勤務先の通報規程、通報先の受付方法
  • 通報後の連絡ややり取りの記録
  • 人事評価、配置転換、契約更新などに関する資料
  • 雇用契約書または業務委託契約書、会社から署名を求められている書面

弁護士に相談するタイミング

次のような場面では、早めに相談することで、資料の整理や対応方針の検討がしやすくなります。相談は結果を保証するものではありませんが、判断の材料を整えるうえで役立ちます。

企業側

  • 内部通報規程を改定する前や、窓口・従事者の体制を決める前
  • 経営幹部に関係する通報を受けたときや、重大な法令違反の疑いがあるとき
  • 通報者への人事上の措置や、フリーランスとの契約解除などを検討するとき
  • 社内調査の中立性や証拠の保全に不安があるとき、外部通報や行政対応が想定されるとき

通報者側

  • どの通報先を選ぶべきか迷うときや、社外への通報を検討しているとき
  • 資料の取得・持ち出し・提出の方法に不安があるとき
  • 秘密保持に関する書面への署名を求められたとき
  • 解雇、懲戒、配置転換、契約解除などを受けたとき

よくある質問

改正公益通報者保護法はいつから施行されますか。

令和7年改正法(令和7年法律第62号)は、令和8年12月1日から施行されます。現時点では施行前ですので、現行法の内容と、施行後に適用される内容を区別して確認する必要があります。

常時使用する労働者が300人以下の会社も、内部通報制度は必要ですか。

300人を超える事業者は体制整備が義務、300人以下は努力義務とされています。ただし、通報を理由とする解雇の無効や不利益取扱いの禁止、施行後の刑事罰や推定規定などは規模にかかわらず及び得ます。「300人以下なら対応不要」とはいえません。

フリーランスも公益通報者として保護されますか。

令和7年改正の施行後は、事業者と業務委託の関係にあるフリーランスや、業務委託が終了してから1年以内のフリーランスも、公益通報者として保護される方向です。委託先への周知や契約の確認が課題になります。

匿名の内部通報でも、対応する必要がありますか。

匿名の通報でも、内容や規程・指針の内容によっては対応が求められる場面があります。連絡方法やフィードバックの範囲を工夫しつつ、事実確認を行うことが考えられます。対応の要否は個別の事情によります。

通報者を特定するための調査はできますか。

令和7年改正の施行後は、正当な理由なく通報者を特定することを目的とする行為(通報者探索)は禁止されます。調査は、通報者の特定ではなく、通報対象事実の有無の確認を目的として行う必要があります。

通報した従業員を配置転換すると違法になりますか。

一律に違法とも適法ともいえません。公益通報を理由とする不利益取扱いは禁止され、施行後は通報から1年以内の処分に推定が働き得ます。処分の理由を客観的資料で説明できるかが重要になります。個別事情により結論は異なります。

通報内容を裏づける証拠がなくても通報できますか。

内部への通報では、通報対象事実が生じ、またはまさに生じようとしていると思料することが基本的な要件とされます。もっとも、行政機関やその他外部への通報では、真実と信じる相当の理由など追加の要件が求められます。通報先によって必要な裏づけが異なります。

会社の外部(行政機関や報道機関)に通報しても保護されますか。

保護され得ますが、通報先ごとに保護の要件が異なります。その他外部への通報では、真実と信じる相当の理由に加え、内部では是正されない、証拠隠滅のおそれ、生命・身体への危害のおそれなど一定の事情が求められます。資料を確認して個別に判断する必要があります。

まとめ

  • 令和7年改正(令和7年法律第62号)は、令和8年12月1日から施行されます。現行法と施行後の規律を区別して確認することが大切です。
  • 施行後は、公益通報を理由とする解雇・懲戒への刑事罰、通報から1年以内の処分の推定、通報妨害・通報者探索の禁止、フリーランスへの保護拡大などが加わります。
  • 常時使用する労働者が300人を超える事業者は体制整備が義務、300人以下は努力義務ですが、「300人以下なら対応不要」とはいえません。
  • 企業は、規程、従事者の指定、窓口の独立性、通報者情報の管理、周知、記録の保存などを、施行までに点検しておくことが考えられます。
  • 通報を検討している方は、自分の立場、通報対象事実、通報先ごとの保護要件、資料の整理を確認し、必要に応じて相談を検討してください。

改正対応の優先順位を、規程と運用状況を確認しながら整理しましょう。

ご相談の際は、内部通報規程、就業規則、窓口の運用マニュアル、従事者の指定記録、業務委託契約などをご用意いただくと、確認がスムーズです。初回の法律相談は無料です(予約制)。ご予約は、お電話(0799-53-6782、受付9時〜20時)、相談予約フォーム、LINEから承ります。

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監修者・執筆者

藤井 貴之(ふじい たかゆき)
弁護士・公認会計士(兵庫県弁護士会所属)
弁護士法人ひょうご あわじみらい法律会計事務所 代表弁護士・公認会計士

企業法務・労務問題などを取り扱い、顧問対応の一環として、社内規程の整備や労務管理に関するご相談に対応しています。公益通報・内部通報にかかわる問題は、法令・指針の確認と、社内体制・記録の整備の双方が必要になります。

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参考資料

本記事は一般的な情報提供であり、具体的な結論は事実関係と資料により異なります。個別の事案については、規程や資料を確認したうえで弁護士にご相談ください。

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