淡路島で観光・宿泊業を営むなかで、長時間の電話や対面での拘束、大声での罵倒、土下座や過剰な割引・返金の要求、「SNSに悪い口コミを書く」といった圧力に直面し、現場の従業員に過度な負担がかかってはいないでしょうか。少人数で運営する旅館・民宿や、繁忙期・夜間の対応が避けられない施設では、一件のクレーム対応に担当者がつきっきりになり、ほかの宿泊客対応まで滞ってしまう場面も少なくありません。
本記事では、正当な苦情とカスタマーハラスメント(以下「カスハラ」といいます。)の違い、旅館業法上の宿泊拒否の可否、従業員を守る社内体制、記録の残し方、警察・弁護士に相談すべき場面、そして令和8年10月1日から義務化されるカスハラ対策への備えを、観光地・小規模事業者の実情に即して整理します。要点を先に述べると、重要なのは「顧客を排除すること」ではなく、「正当な苦情には誠実に向き合いつつ、不当な要求・不相当な言動から従業員と事業を守る体制」を整えることです。
カスハラへの対応方針や社内ルールの整備でお悩みの場合、資料を確認したうえで見通しや進め方を整理できます。まずはお気軽にご相談ください。
Contents
結論:カスハラ対策は「方針・判断基準・記録・現場対応・外部相談」の五点
観光・宿泊業のカスハラ対策は、次の五点を整えることが基本になります。いずれも、明日からの社内整備に直結する項目です。
- 方針の明確化:カスハラには毅然と対応し、従業員を守るという事業者としての姿勢を明文化し、現場に周知すること。
- 判断基準:正当な苦情・合理的配慮の求めと、不当な要求・不相当な言動とを切り分ける基準を持つこと。
- 記録:日時・場所・対応者・要求内容・経過などを、その都度残せる様式を用意すること。
- 現場対応:一人で抱え込ませない体制、上長への交代基準、二名対応、録音・録画などを準備すること。
- 外部相談:警察への通報・相談、弁護士相談につなぐ判断基準と連絡体制を整えること。
大前提として、すべての苦情がカスハラになるわけではありません。商品・サービスに理由のある指摘や改善の求めは、正当な申入れであってカスハラには当たりません。この切り分けを欠いたまま「クレーム=排除」と運用すると、後述する旅館業法上の宿泊拒否制限に反するおそれがあります。なお、ここで示すのは一般的な整理であり、具体的な対応の可否は、要求内容・態様・繰り返しの有無・他の宿泊者や従業員への影響など、事案により異なります。資料を確認したうえで判断する必要があります。
カスタマーハラスメントとは何か
法律・指針上の三要素
令和7年に改正された労働施策総合推進法と、これに基づく指針(令和8年厚生労働省告示第51号、令和8年2月26日告示)は、職場におけるカスタマーハラスメントを、次の三つの要素をすべて満たすものと整理しています。
- ①顧客、取引の相手方、施設の利用者その他その事業に関係を有する者の言動であって、
- ②その雇用する労働者が従事する業務の性質その他の事情に照らして、社会通念上許容される範囲を超えたものにより、
- ③労働者の就業環境が害されるもの
電話やSNSなど、インターネット上で行われるものも対象に含まれます。逆に言えば、客観的にみて社会通念上許容される範囲で行われた申入れは、②を満たさず、カスハラには当たりません。
正当な苦情とカスハラの違い
厚生労働省の資料では、「言動の内容」が許容範囲を超える例として、要求に理由がない又は商品・サービスと全く関係のない要求、契約等で想定するサービスを著しく超える要求、対応が著しく困難又は不可能な要求、不当な損害賠償要求などが挙げられています。また、「手段・態様」が許容範囲を超える例として、暴行・傷害等の身体的攻撃、脅迫・中傷・名誉毀損・侮辱・暴言・土下座の強要等の精神的攻撃、威圧的な言動、継続的・執拗な言動、不退去・居座り・監禁などの拘束的な言動が挙げられています。
つまり、「何を求めているか(内容)」と「どのように求めているか(手段・態様)」の両面から、社会通念上許容される範囲を超えているかを見ることになります。料理の品質や清掃状態への指摘そのものは正当な苦情であり、これに長時間の罵倒や土下座要求が伴えば、態様の面でカスハラに転じ得る、という整理です。
合理的配慮・不当な差別的取扱いとの違い
注意が必要なのは、障害のある方からの合理的配慮の求めや、不当な差別的取扱いの是正を求める申出は、カスハラには当たらないという点です。障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(障害者差別解消法)は、事業者に対し、障害を理由とする不当な差別的取扱いを禁じ、令和6年4月からは合理的配慮の提供を義務付けています。言語・文化・障害特性による行き違いを、カスハラと即断しないことが重要です。外国人観光客、障害のある方、高齢者、子ども連れなどの属性を理由に不利益に扱うことは避けてください。
観光・宿泊業で問題になりやすいカスハラ
現場で迷いやすい場面を、行為例・現場リスク・初動対応・記録すべき事項の観点で整理します。いずれも、該当性は最終的に事案により異なります。
| 行為例 | 現場リスク | 初動対応の方向性 | 記録すべき事項 |
|---|---|---|---|
| 長時間の電話・対面での拘束 | 担当者の業務停止、他の宿泊客対応の遅延 | 対応時間・場所・担当者を区切り、上長へ引き継ぐ | 開始・終了時刻、対応者、要求内容 |
| 大声での罵倒・侮辱・威圧 | 従業員の心理的負担、他の宿泊客への影響 | 二名対応へ切替、録音・防犯カメラ、退去要請の検討 | 発言内容、目撃者、他の宿泊客の状況 |
| 土下座・謝罪の強要 | 強要罪等に発展し得る | 応じない、上長対応、安全確保、警察相談の検討 | 要求の文言、態様、対応経過 |
| 契約にない送迎・部屋変更・割引・返金の要求 | 過剰要求の常態化 | 契約・約款の範囲を説明し、即答せず持ち帰る | 要求内容、予約・契約条件、回答 |
| 従業員個人への執拗な要求・個人情報やSNSの特定 | 個人への攻撃、二次被害 | 個人対応を避けて組織対応、名札表記を工夫 | 接触の経緯、特定の手段、被害の有無 |
| 無断撮影・録音・SNS投稿を示唆した圧力 | 名誉・信用の毀損、従業員のプライバシー侵害 | 施設内ルールの掲示・説明、記録、削除請求等の検討 | 撮影・投稿の有無、文言、投稿先 |
| 夜間・酔客・団体客への対応 | 少人数体制での安全確保が困難 | 複数名・上長対応、必要に応じ110番 | 時間帯、人数、酩酊の有無、対応者 |
| 「悪評を書く」と告げての要求 | 脅迫罪・恐喝未遂罪に発展し得る | 要求に即応せず記録、警察・弁護士へ相談 | 告知の文言、要求内容、証拠 |
宿泊拒否・対応打切りはできるか(旅館業法第5条)
原則:みだりに宿泊を拒めない
旅館業の営業者は、旅館業法第5条第1項各号のいずれかに該当する場合を除き、宿泊を拒んではならないとされています。さらに同条第2項は、旅館業の公共性を踏まえ、宿泊しようとする者の状況等に配慮して、みだりに宿泊を拒むことがないようにすること、宿泊を拒む場合には拒否事由のいずれかに該当するかを客観的な事実に基づいて判断すること、求めに応じてその理由を丁寧に説明できるようにすることを営業者に求めています。「クレームを言われたから即拒否」という運用は、この枠組みになじみません。
宿泊拒否が検討される場面(第1項各号)
令和5年の改正旅館業法(令和5年法律第52号、令和5年12月13日施行)により、宿泊を拒むことができる事由が整理されました。概要は次のとおりです(詳細な文言・解釈は公開前に弁護士が確認します)。
- 第1号:特定感染症の患者等であるとき。
- 第2号:宿泊しようとする者が、賭博その他の違法行為又は風紀を乱す行為をするおそれがあると認められるとき。暴力団員等であるとき、他の宿泊者に著しい迷惑を及ぼす言動をしたときなどが該当し得ます。
- 第3号:いわゆる特定要求行為(カスハラに当たる一定の要求)を繰り返したとき。
- 第4号:宿泊施設に余裕がないとき、及び都道府県等の条例で定める事由に該当するとき。
特定要求行為(カスハラ)による宿泊拒否
第3号の「特定要求行為」は、旅館業法施行規則第5条の6で定義されており、他の宿泊者に対するサービスの提供を著しく阻害するおそれのある次の要求を繰り返す行為を指します。
- 宿泊料の減額その他、その内容の実現が容易でない事項の要求(障害を理由とする社会的障壁の除去を求める場合を除く。)
- 粗野又は乱暴な言動その他、従業者の心身に負担を与える言動を交えた要求であって、その者の接遇に通常必要とされる以上の労力を要することとなるもの(営業者が不当な差別的取扱いを行ったことに起因するもの等を除く。)
ポイントは、第3号が「繰り返し」を要件としていることです。一回の言動のみで直ちに第3号により拒否できるとは限らず、態様によっては第2号(風紀を乱す行為等のおそれ)の検討になる場合もあります。いずれに当たるか、また拒否が適法かは、客観的事実と個別事情により異なり、資料を確認したうえで判断する必要があります。
宿泊約款・利用規約だけでは拒否事由を増やせない
重要な注意点として、旅館業法第5条第1項各号に規定されていない宿泊拒否事由を宿泊約款や利用規約に書いても無効であり、同項にない事由による宿泊拒否は旅館業法違反となり得ます。また、同法第5条は障害があることを宿泊拒否事由として定めていないため、障害を理由とする宿泊拒否はできません。「迷惑な客は断れるように約款へ書いておけばよい」という発想は通用しない、という点をおさえる必要があります。
理由説明と記録(3年間保存)
営業者は、当分の間、第1項第1号(特定感染症の患者等)又は第3号(特定要求行為)に該当することを理由に宿泊を拒んだときは、書面又は電磁的記録に、拒んだ理由・日時・拒否された者・対応した責任者の氏名、第3号の場合は拒むまでの経過の概要等を記載し、作成日から3年間保存する必要があるとされています。現場の判断を後から検証できるよう、理由の記録は欠かせません。なお、記録様式や保存期間の運用は更新され得るため、最新の様式・取扱いは公開前に確認します。
宿泊拒否や退去要請を検討する場面では、事実関係と記録を整理したうえで、適法性や進め方を検討できます。判断に迷う段階での相談が、後のトラブル防止につながります。
従業員を守るために整備すべき体制
カスハラ対策の中心は、現場の従業員を一人にしない仕組みづくりです。少人数の施設でも、次の要素を「決めておく」ことが重要です。
- 基本方針:カスハラには毅然と対応し、従業員を守るという方針を明文化し、朝礼・掲示・社内資料で周知する。
- 対応マニュアル:正当な苦情と不当要求の切り分け、対応時間・場所・担当者の区切り方、退去要請や電話の打切りの基準などを、現場で即座に参照できる形にする。
- 相談窓口:被害が生じた場合だけでなく、発生のおそれや判断に迷う場合にも相談できる窓口を定め、周知する。既存のハラスメント相談窓口と統合することも考えられる。
- 上長交代基準:一定時間を超えた、要求がエスカレートした、安全に懸念がある、といった基準で管理者へ交代する。
- 二名対応:可能な限り従業員を一人で対応させない。夜間・酔客・団体客対応では特に意識する。
- 録音・録画・インシデント報告書:防犯カメラの設置・掲示、対応場面の録音、報告書様式の整備により、客観的な記録を残せるようにする。
- 名札・個人情報・SNS対策:名札の表記(氏名のフルネーム表示を避ける等)を見直し、従業員個人が特定・攻撃されないよう配慮する。
- 警察・弁護士連携:犯罪に該当し得る言動は110番通報、悪質・継続するものは弁護士相談につなぐ判断基準と連絡先を共有しておく。
- 研修:定義・切り分け・初動・記録・エスカレーションを、現場目線で繰り返し共有する。
悪質クレーム発生時の対応フロー
発生時の動きは、次の順序で整理しておくと現場が迷いません。安全確保が最優先です。
- 初動・安全確保:暴行・脅迫・器物損壊等が疑われる場合は、まず従業員と他の宿泊客の安全を確保し、必要に応じて110番通報する。
- 要求内容の確認:相手が何を求めているかを確認し、正当な苦情か、不当要求か、手段・態様が不相当かを切り分ける。
- エスカレーション:一人で抱え込ませず、上長・管理者へ交代する。対応時間・場所・担当者を区切る。
- 警告:不相当な言動が続く場合、対応を続けられない旨や退去を求める可能性を、冷静に伝える。
- 対応打切り:電話・面談対応を打ち切る判断をする。打ち切った経緯を記録する。
- 宿泊拒否・退去要請:旅館業法第5条の枠組みに照らし、客観的事実に基づいて検討する。理由を説明できるようにし、記録を残す。
- 警察相談:犯罪に該当し得る場合は、通報・相談を行う。
- 弁護士相談:悪質・継続・高額要求・SNS投稿などがある場合、資料を整理して相談し、法的措置の要否を検討する。
謝罪・返金・割引・宿泊拒否・退去要請・出入禁止・法的措置は、いずれも事実確認と法的検討を経て行うべきものです。その場の勢いでの確約は避け、持ち帰って判断する運用が安全です。
記録・証拠化のポイント
後日の検証や法的対応に備え、次の事項を記録しておくと有効です。録音・録画や個人情報の取扱いには、目的の範囲内での管理とプライバシーへの配慮が必要です。
- 日時(開始・終了)
- 場所(フロント、客室、電話など)
- 対応者・交代した責任者
- 相手方の情報(予約名・部屋番号など、把握できる範囲)
- 要求内容と、その変遷
- 具体的な発言内容(可能な範囲で逐語的に)
- 対応経過(説明した内容、相手の反応)
- 録音・録画・防犯カメラ映像の有無
- 他の宿泊者・従業員への影響、目撃者
- 上長・警察・弁護士への相談履歴
- 宿泊を拒否した場合は、その理由と経過の概要
- 記録・映像の保管場所と管理方法(個人情報の管理に留意)
令和8年10月1日のカスハラ対策義務化に向けた準備
改正労働施策総合推進法により、令和8年10月1日から、事業主にはカスハラ防止のための雇用管理上の措置が義務付けられます。従業員が一人でもいれば対象と考えられ、中小・小規模の事業者も含まれます。措置義務違反そのものへの直接の罰則は定められていませんが、報告徴収・助言・指導・勧告・公表の対象となり得ます。指針が定める措置の柱は、おおむね次のとおりです。
- 方針の明確化と周知・啓発:カスハラには毅然と対応し従業員を守る方針を明確化し、あらかじめ定めた対処の内容(管理監督者へ指示を仰ぐ、可能な限り一人で対応させない、犯罪に該当し得る言動は警察へ通報する、本社・本部等へ情報共有する等)とあわせて周知する。
- 相談体制の整備:相談窓口をあらかじめ定めて周知し、担当者が適切に対応できるようにする。
- 事後の迅速かつ適切な対応:事実関係を迅速・正確に確認し、被害者への配慮の措置を行い、再発防止に向けた措置を講じる。
- 悪質なカスハラの抑止:特に悪質と考えられるカスハラへの対処方針をあらかじめ定め、周知し、対処できる体制を整える。
- プライバシー保護・不利益取扱いの禁止:相談者等のプライバシーを保護し、相談したこと等を理由に不利益な取扱いをしない旨を定めて周知する。
観光・宿泊業では、これらに加えて、宿泊約款・利用規約・施設内掲示・予約ページの表現の見直しも検討課題になります。ただし前述のとおり、約款で旅館業法にない宿泊拒否事由を自由に追加することはできません。約款・掲示の見直しは、旅館業法・障害者差別解消法との整合を確認しながら進める必要があります。指針の細目や運用は更新され得るため、整備内容は最新の公的資料に照らして確認することをおすすめします。
弁護士に相談するタイミング
次のような場面では、早めに相談することで、判断材料と対応方針を整理できます。弁護士への相談は、結果を保証するものではなく、事実関係と資料を踏まえて取り得る選択肢と見通しを整理するためのものです。
- 宿泊拒否・退去要請・出入禁止を検討するとき
- 返金・割引の拒否や、高額・不当な損害賠償要求への対応に迷うとき
- 警察への通報・相談の要否を判断するとき
- SNS・口コミでの投稿や、その示唆を伴う要求があったとき
- 従業員が休職するなど、被害が顕在化したとき
- 宿泊約款・利用規約の改定、対応マニュアルの作成、研修の実施を検討するとき
- 継続的な体制整備のため、法律顧問契約を検討するとき
手続前チェックリスト
現場責任者向けに、行動の前に確認したい事項を整理します。
- 宿泊拒否の前:旅館業法第5条第1項各号のどれに当たるか、客観的事実があるか、繰り返しの有無、他の宿泊者・従業員への影響、理由を説明できるか、記録を残せるか。
- 警察相談の前:暴行・脅迫・恐喝・強要・器物損壊・威力業務妨害等に当たり得る事実があるか、安全確保ができているか、記録・映像があるか。
- 返金・謝罪の前:施設側に落ち度があるか、要求内容と契約・約款の範囲、その場で確約していないか。
- SNS対応の前:投稿・告知の文言、要求との関連、証拠の保全、削除請求等は別途検討が必要であること。
- 弁護士相談の前:時系列メモ、録音・録画、報告書、約款・規約、予約情報など、関連資料を整理できているか。
クレームはすべてカスハラになりますか。
いいえ。商品・サービスに理由のある指摘や改善の求めは正当な申入れであり、カスハラには当たりません。前述の三要素(顧客等の言動・社会通念上許容される範囲を超えるか・就業環境が害されるか)で判断します。該当性は事案により異なります。
暴言を受けたら、すぐ宿泊を拒否できますか。
直ちにとは限りません。旅館業法第5条第1項各号への該当性を客観的事実に基づいて判断する必要があります。特定要求行為(第3号)は「繰り返し」が要件であり、態様によっては風紀等に関する第2号の検討となる場合もあります。みだりな拒否は違法となり得るため、理由の説明と記録が重要です。
土下座を求められた場合はどう対応すべきですか。
応じる義務はありません。態様によっては強要罪等に当たり得ます。個人で抱え込まず組織として対応し、安全を確保し、経過を記録し、必要に応じて警察に相談することが考えられます。
従業員が録音してもよいですか。
自らの対応場面を記録する録音は、証拠化の観点で有効に機能する場面があります。施設として録音・防犯カメラの運用をルール化し、掲示等で周知しておくことが望ましいといえます。個人情報・プライバシーへの配慮が必要であり、具体的な運用は事案により検討する必要があります。
口コミサイトに悪評を書くと言われた場合はどうすべきですか。
正当な感想・批判の投稿と、対価を引き出すための威迫とは区別されます。「料金をタダにしなければ悪評を書く」といった言動は、文言次第で脅迫罪や恐喝未遂罪に当たり得ます。要求に即応せず、文言や経緯を記録してください。投稿の削除請求や発信者情報の開示は、別途の手続として検討します。
障害のある宿泊者から配慮を求められた場合もカスハラですか。
いいえ。合理的配慮を求める申出や、不当な差別的取扱いの是正を求める行為はカスハラ・特定要求行為に当たりません。障害を理由とする宿泊拒否はできません。障害特性による行き違いをカスハラと即断しないよう注意が必要です。
令和8年10月1日までに何を準備すべきですか。
方針の明確化と周知、相談窓口の設置、対処方針の整備、事後対応の手順、再発防止、従業員教育が基本です。あわせて、宿泊約款・利用規約・掲示・予約ページの表現を、旅館業法・障害者差別解消法との整合を確認しながら見直すことが考えられます。最新の公的資料に照らして整備内容を確認してください。
弁護士にはどの段階で相談すべきですか。
宿泊拒否・退去要請・返金拒否・警察相談・SNS対応・約款改定・マニュアル作成・研修・顧問契約を検討する場面が目安です。早い段階で資料を整理して相談することで、取り得る選択肢と見通しを整理できます。
まとめ
- カスハラ対策の要は、方針・判断基準・記録・現場対応・外部相談の五点です。
- すべての苦情がカスハラではなく、正当な苦情・合理的配慮の求めとの切り分けが前提です。
- 宿泊拒否は旅館業法第5条の枠組みに従い、客観的事実に基づいて判断し、理由を説明できるようにし、記録を残す必要があります。約款で拒否事由を自由に増やすことはできません。
- 従業員を一人にしない体制、録音・記録、名札・SNS対策、警察・弁護士連携を整えることが重要です。
- 令和8年10月1日の義務化に向け、方針・相談窓口・対処方針・事後対応・研修・各種文書の見直しを進めましょう。
- 宿泊拒否・警察相談・返金・SNS対応の前に、事実関係と資料を整理することをおすすめします。具体的な結論は事案により異なります。
淡路島・南あわじ市・洲本市・淡路市の観光・宿泊業の皆さまに向けて、カスハラ対応の体制づくり、宿泊約款・マニュアルの見直し、研修、継続的な法律顧問のご相談に対応しています。資料を確認したうえで、貴施設に即した進め方を整理します。
監修者・執筆者
弁護士法人ひょうごあわじみらい法律会計事務所 代表弁護士・公認会計士 藤井 貴之【氏名・肩書は公式サイトの表記に合わせて要確認】
所属弁護士会・登録番号【要確認】。企業法務・労働法務・契約法務等に対応しています。取扱分野・経歴の詳細は、担当弁護士の紹介ページをご確認ください。
参考資料(いずれも公的機関・公式資料)

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