「役員の人数を1人減らしたい」「名目的に就任してもらっている親族の取締役に退任してもらいたい」「取締役会をやめて、意思決定をもっと簡素にしたい」。会社を経営していると、取締役の人数や機関設計を見直したい場面が出てきます。
もっとも、取締役を減らす手続は「頭数を1人減らす」という単純な作業ではありません。会社が取締役会設置会社かどうか、定款で員数をどう定めているか、各取締役の任期がいつ満了するか、そして任期満了・辞任・解任のどの方法をとるかによって、必要な決議も、登記も、紛争や損害賠償のリスクも変わってきます。
この記事では、株式会社が取締役を減らす前に確認すべき最低人数と定款、任期満了・辞任・解任の違い、取締役会を廃止する場合の注意点、役員変更登記の期限、一人取締役にする場合のリスク、事前に準備すべき資料、弁護士に相談する目安を、会社側の視点を中心に整理します。結論から言えば、まず自社の定款と登記事項証明書を手元に用意し、「どの取締役を、いつ、どの方法で減らすのか」を切り分けることが出発点になります。なお、以下は一般的な整理であり、実際の結論は定款・議事録・株主構成などの個別事情により異なります。
取締役の解任や株主間の対立が絡む場合、あるいは取締役会の廃止・定款変更を伴う場合は、手続を始める前に一度、定款や資料を確認したうえで方針を整理しておくと安心です。法人向けの取扱業務を確認することができます。
Contents
結論:取締役の減員は「機関設計・定款・退任方法」で手続が変わる
取締役を減らす手続を検討するとき、最初に押さえておきたい要点は次のとおりです。人数の問題に見えても、実際には会社の機関設計や定款の定め、退任の方法によって、踏むべきステップが変わります。
最初に確認する3点
- 自社は取締役会設置会社か。取締役会を置いている会社は、原則として取締役が3名以上必要です。2名以下にするには、取締役会の廃止という別の手続が必要になる場合があります。
- 定款で取締役の員数をどう定めているか。「取締役は3名以上とする」といった定めがあると、法律上は減らせても、定款変更をしなければ員数を欠くことになります。
- 各取締役の任期と、減らす方法。任期満了・辞任・解任のどれを選ぶかで、本人の同意の要否、必要な決議、紛争や損害賠償のリスクが変わります。
「取締役会を廃止すれば取締役も自動的に減る」「辞任してもらえば必ず問題がない」といった単純化は禁物です。取締役会の廃止と、個々の取締役の退任は別の法律行為であり、それぞれに手続が必要になります。以下で順に確認します。
取締役を減らす前に確認する6つのポイント
具体的な手続に入る前に、次の点を自社の資料で確認しておくと、選べる方法と必要な手続が見えてきます。定款と登記事項証明書(履歴事項全部証明書)を手元に置いて確認することをおすすめします。
| 確認するポイント | なぜ必要か | 主な確認資料 |
|---|---|---|
| 取締役会設置会社か | 取締役会があると原則3名以上が必要。減員方法が変わる。 | 定款、登記事項証明書 |
| 定款上の員数 | 「取締役は3名以上とする」などの下限の定めがあると定款変更が必要になる場合がある。 | 定款 |
| 各取締役の任期 | 任期満了を待てるか、途中で退任させるかで手続が変わる。 | 定款、選任時の株主総会議事録 |
| 減らす方法 | 任期満了・辞任・解任でリスクと手続が異なる。 | 本人との協議状況、就任承諾の経緯 |
| 株主構成 | 株主総会の決議が通るか、対立がないかを左右する。 | 株主名簿、株主間契約 |
| 代表取締役を変えるか | 代表取締役の変更を伴うと追加の手続・登記が必要。 | 登記事項証明書、定款 |
取締役は何人まで減らせるか(最低人数)
取締役の最低人数は、会社の機関設計によって異なります。ここは減員できる下限を決める前提になるため、最初に確認します。
取締役会を置かない株式会社は1名以上(会社法第326条)
株式会社は、1名以上の取締役を置かなければなりません(会社法第326条第1項)。取締役会を設置していない会社であれば、取締役を1名まで減らすことも法律上は可能です。中小企業や同族会社の多くは、この類型に当てはまります。
取締役会設置会社は3名以上(会社法第331条)
これに対し、取締役会設置会社では、取締役は3名以上でなければなりません(会社法第331条第6項)。したがって、取締役会を置いたまま取締役を2名以下に減らすことはできません。2名以下にしたい場合は、後述するように、取締役会を廃止する定款変更などをあわせて検討する必要があります。
公開会社と非公開会社の違い(公開会社は「上場会社」ではない)
ここで注意したいのが「公開会社」という言葉です。会社法上の公開会社とは、発行する株式の全部または一部について、譲渡による取得に会社の承認を要する旨(譲渡制限)の定款の定めを設けていない会社をいいます(会社法第2条第5号)。上場しているかどうかとは関係がなく、株式の一部にでも譲渡制限が付いていなければ公開会社に当たります。
公開会社は取締役会を置かなければならないため(会社法第327条第1項)、取締役を2名以下にすることはできません。この場合、まず全株式に譲渡制限を付す定款変更(非公開化)を行い、そのうえで取締役会を廃止する、といった段階的な手続が必要になります。自社が公開会社か非公開会社かは、登記事項証明書の「株式の譲渡制限に関する規定」で確認できます。
| 会社の類型 | 取締役の最低人数 | 主な根拠・注意点 |
|---|---|---|
| 取締役会を置かない株式会社 | 1名以上 | 会社法第326条第1項。非公開の中小企業に多い類型。 |
| 取締役会設置会社 | 3名以上 | 会社法第331条第6項。2名以下にするには取締役会の廃止を検討。 |
| 公開会社 | 3名以上 | 取締役会が必須(会社法第327条第1項)。減員には非公開化が前提。 |
| 監査等委員会・指名委員会等設置会社 | 別途の規律 | 監査等委員である取締役の人数など特別のルールがあり、個別確認が必要。 |
なお、旧有限会社(特例有限会社)は株式会社とは規律が異なる部分があります。特例有限会社の役員構成は、本記事の一般的な説明がそのまま当てはまらない場合があるため、個別に確認してください。
取締役を減らす主な方法(任期満了・辞任・解任)
取締役を減らす主な方法は、任期満了時に再任しない、本人に辞任してもらう、株主総会で解任する、の3つです。まずは全体像を比較表で確認し、そのうえで方法ごとの注意点を見ていきます。
| 方法 | 本人の同意 | 主な社内手続 | 主なリスク・注意点 | 向いている場面 |
|---|---|---|---|---|
| 任期満了で再任しない | 不要 | 定時株主総会で改めて選任しない | 任期の満了時期の確認が必要。員数を欠くと権利義務が残る場合がある。 | 近く任期が満了する取締役を、円満に減らしたい場合 |
| 辞任してもらう | 必要(本人の意思) | 辞任届の提出・受領 | 本人が応じない場合は使えない。員数を欠くと退任の効力に影響が出ることがある。 | 本人が退任に納得している場合 |
| 株主総会で解任する | 不要 | 株主総会の決議(原則として普通決議) | 正当な理由がないと損害賠償を請求される可能性がある。紛争化しやすい。 | 本人の協力が得られず、退任させる必要がある場合 |
いずれの方法が適切かは、定款、任期、株主構成、本人との関係、役員報酬の状況によって変わります。表はあくまで一般的な整理であり、「辞任が一番簡単」「任期満了なら必ず問題がない」といった当てはめができるとは限りません。
任期満了で再任しない
取締役の任期は、原則として選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までです(会社法第332条第1項)。非公開会社(監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社を除く)では、定款で最長10年まで任期を伸長できます(同条第2項)。
任期満了時に再任しなければ、その取締役は退任します。本人の同意も解任も不要で、紛争になりにくい方法です。ただし、自社の任期が何年に設定されているかは、定款と過去の選任時の株主総会議事録を確認しないと確定できないことがあります。任期を長く伸長している会社では、満了まで待てないこともあるため、早めの確認が有効です。
辞任してもらう(権利義務取締役に注意)
取締役は、委任契約に基づき、いつでも辞任することができます。辞任は本人の一方的な意思表示で効力が生じるのが原則で、会社の承認は必要ありません。実務上は、辞任の意思と時期を明確にするため、辞任届を作成し、会社が受領した事実を残しておきます。代表取締役を兼ねている場合は、登記手続で追加の書類が必要になることがあります。
権利義務取締役に注意:辞任や任期満了によって、法律または定款で定めた取締役の員数を欠くことになる場合、退任するはずの取締役は、新たな取締役が就任するまで、なお取締役としての権利義務を有します(会社法第346条第1項)。これを権利義務取締役といいます。つまり、後任を決めないまま「辞任届を出せば直ちに責任がなくなる」とは限りません。減員と同時に、残る取締役の員数が定款・法律の要件を満たすかを確認する必要があります。
株主総会で解任する(会社法第339条・第341条)
取締役は、いつでも株主総会の決議によって解任することができます(会社法第339条第1項)。通常の取締役の解任は、原則として株主総会の普通決議で行います(会社法第341条。定足数などに特則があります)。もっとも、累積投票によって選任された取締役や、監査等委員である取締役の解任には特別決議が必要となるなど、例外があります。解任は本人の同意が不要な一方、紛争に発展しやすい方法でもあります。注意点は次の項でくわしく整理します。
取締役会設置会社で3名未満にする場合(取締役会の廃止)
取締役会設置会社が取締役を2名以下にしたい場合、取締役を退任させるだけでは足りません。取締役会は3名以上の取締役で構成する必要があるため、そのままでは員数を欠いてしまうからです。この場合は、取締役会そのものを廃止するかどうかを検討することになります。
取締役会の廃止は、定款に定めた「取締役会を置く」旨を削除する定款変更であり、株主総会の特別決議が必要です(会社法第466条、第309条第2項)。取締役会を廃止しても、それだけで在任中の取締役が当然に退任するわけではない点にも注意が必要です。取締役会の廃止と、個々の取締役の退任は、別々の手続として整理してください。
取締役会を廃止する場合に検討・確認する主な事項
- 公開会社は取締役会が必須のため、先に全株式へ譲渡制限を付す非公開化が必要になる場合がある
- 監査役の設置・権限や、他の機関設計への影響
- 代表取締役の選定方法(取締役会がなくなると、定款・株主総会・取締役の互選など別の方法で定める)
- 株主総会の権限の範囲が広がること
- 取締役会規程・職務権限規程・稟議規程など社内規程の見直し
- 取締役会設置会社の定めの廃止に関する登記
- 金融機関・取引先・許認可・補助金・保険契約などへの届出の要否
- 少数株主がいる場合のガバナンスへの影響
取締役会の廃止は、機関設計の根本的な変更を伴います。人数を減らす目的だけで安易に進めず、監査役や代表取締役の扱いまで含めて全体を確認することが大切です。取締役会設置会社の定めの廃止の登記には、株主総会議事録などの添付書面が必要となり、登録免許税もかかります(詳細は後述)。
取締役を解任する場合の注意点(損害賠償・報酬)
解任は、本人の同意なく取締役を退任させられる反面、争いになりやすい方法です。特に損害賠償と役員報酬の扱いは、誤解されやすい部分です。
会社法上、正当な理由がないのに任期途中で取締役を解任した場合、解任された取締役は、会社に対し、解任によって生じた損害の賠償を請求することができます(会社法第339条第2項)。ここで請求できるのは「解任によって生じた損害」であって、当然に「残任期分の役員報酬の全額」と一致するわけではありません。損害の範囲は、残りの任期や役員報酬の額を一つの手がかりとしつつ、本人が別に得た収入などの事情によって調整され得ます。したがって、「正当な理由がなければ残任期分の報酬を全額支払わなければならない」と一律に考えるのは適切ではありません。
解任をめぐって整理しておきたい点
- 正当な理由の有無:職務上の法令・定款違反、心身の故障、著しい能力不足などが議論されますが、経営方針の対立などが一律に正当な理由になるわけではありません。事実と資料で個別に判断されます。
- 役員報酬・退職慰労金:報酬の決定内容(定款・株主総会決議)や退職慰労金規程の有無を確認します。
- 従業員を兼ねている場合:取締役としての地位(委任)と、従業員としての地位(雇用契約)は別に扱われます。解任しても雇用契約が当然に終了するわけではありません。
- 証拠と議事録:解任の理由となる事実は、時系列や資料とともに記録しておくことが、後日の紛争に備えるうえで重要です。
解任や取締役会の廃止を検討している段階で、一度整理しておくと安心です。
解任の正当な理由や損害賠償が問題になりそうな場合、株主・役員間に対立がある場合は、定款・議事録・株主名簿を確認したうえで、選択肢と手続の順番を整理できます。手続を始める前の確認が、後々のリスクを抑えることにつながります。
取締役を減らす手続の流れ
取締役を減らす手続は、会社の状況によって異なりますが、一般的にはおおむね次の順序で進みます。特に定款変更や取締役会の廃止を伴う場合は、決議と登記の順序を意識することが大切です。
- 現状確認:定款、登記事項証明書、株主名簿、過去の株主総会・取締役会議事録で、機関設計・員数・任期・株主構成を確認する。
- 減員方法の決定:任期満了・辞任・解任のいずれによるか、代表取締役の変更を伴うかを決める。
- 定款変更などの決議:員数の定めの変更や取締役会の廃止が必要な場合は、株主総会の特別決議を行う。解任の場合は株主総会の決議を行う。
- 議事録・辞任届などの作成:株主総会議事録、株主リスト、辞任届など、後の登記や記録に必要な書面を整える。
- 引継ぎ:会社印、銀行印、電子証明書、ネットバンキングや会計システムのアカウント、会社資料などを引き継ぐ。
- 役員変更登記:変更が生じた日から所定の期間内に登記を申請する(次の項参照)。
- 対外的な確認・届出:金融機関、許認可、主要な取引先などへの届出の要否を確認する。
- 社内規程の更新:職務権限規程・稟議規程などを実態に合わせて見直す。
役員変更登記の期限と登録免許税(会社法第915条)
取締役の退任・就任、代表取締役の変更、取締役会設置会社の定めの廃止などが生じたときは、登記事項に変更が生じた日から2週間以内に、本店の所在地を管轄する法務局で変更の登記をしなければなりません(会社法第915条第1項)。この期間を過ぎても登記自体は可能ですが、登記を怠ると過料の対象となる可能性があります。
登記に必要な添付書類(株主総会議事録、辞任届、就任承諾書、印鑑証明書など)は、変更の内容、会社の類型、代表権の有無、本人確認の方法などによって異なります。最新の様式や記載例は法務局の案内で確認し、一律の必要書類として決めつけないようにしてください。
| 変更の内容 | 登記 | 登録免許税の目安 |
|---|---|---|
| 取締役・代表取締役の変更 | 必要 | 役員変更として3万円(資本金の額が1億円以下の会社は1万円) |
| 取締役会設置会社の定めの廃止 | 必要 | 3万円 |
| 株式の譲渡制限に関する規定の変更 | 必要 | 3万円 |
登録免許税は変更の区分ごとに定められており、複数の変更を同時に申請する場合は取扱いが変わることがあります。金額や添付書類の最新の取扱いは、法務局の案内や登録免許税法で確認してください。なお、登記申請そのものの代理は司法書士の業務です。株主・役員間の紛争予防や解任・機関設計変更の是非といった法的判断は弁護士に、登記申請は司法書士にと、役割を分けて進めるのが一般的です。
一人取締役にするメリットと注意点
非公開で取締役会を置かない株式会社であれば、取締役を1名(一人取締役)とすることも可能です。意思決定が速くなる、役員の管理負担が減るといった利点がある一方で、注意すべき点もあります。
| 観点 | メリット | 注意点 |
|---|---|---|
| 意思決定 | 迅速に決められる | チェック機能が働きにくい |
| 管理・コスト | 役員の管理負担・改選手続が減る | 業務が1人に集中する |
| 不在時のリスク | ― | 死亡・病気・事故で業務や代表が止まるおそれ |
| 承継・株主 | ― | 事業承継・BCPや、複数株主がいる場合の運営に配慮が必要 |
一人取締役が死亡・重病などで職務を行えなくなると、業務執行や代表を担う者が不在となり、株主総会を開こうにも招集を決める取締役がいない、という事態が生じ得ます。こうした場合に考えられる対応としては、株主全員の同意による株主総会の招集手続の省略(会社法第300条)や書面等による決議の省略(会社法第319条)、株主による株主総会の招集請求と裁判所の許可を得た招集(会社法第297条)、裁判所に対する一時取締役の選任の申立て(会社法第346条第2項)などがあります。もっとも、どの手続を使えるかは、取締役が死亡したのか一時的に職務を行えないだけなのか、株主構成、定款の定めによって異なります。
一人取締役や代表取締役が不在・死亡となった後の緊急対応の詳細は、別の記事で扱っています。減員を決める前のリスク確認としては、上記のような事態が起こり得ることを理解し、代替の承認手続や後継体制を用意しておくことが重要です。くわしくは代表取締役が不在・死亡となった場合の対応を確認することができます。
よく問題になるケース
取締役の減員では、次のような場面で判断に迷いやすくなります。いずれも一般的なリスクの整理であり、具体的な結論は個別事情によって変わります。
- 名目的な取締役に退任してもらいたい:親族などに名前だけ取締役になってもらっている場合でも、退任には辞任または解任などの手続が必要です。就任の経緯や報酬の有無を確認します。
- 創業者と後継者が対立している:事業承継の過程で経営方針が対立すると、解任や株主総会の運営をめぐって争いになりやすくなります。
- 取締役が辞任に応じない:辞任は本人の意思によるため、応じない場合は解任を検討することになりますが、正当な理由や損害賠償の点を整理する必要があります。
- 代表取締役も変更したい:取締役の減員と代表取締役の変更が重なると、必要な決議・登記が増えます。
- 任期が確認できない:選任時の議事録が見当たらず、任期の起算点が分からないケースがあります。
- 定款と登記の内容が食い違う:定款変更をしたのに登記していない、あるいはその逆といった不整合が見つかることがあります。
- 役員報酬をめぐって対立している:解任・退任に伴う報酬や退職慰労金の扱いが争点になることがあります。
- 一人取締役にした直後の不在リスク:減員直後に取締役が入院・死亡すると、会社の運営が滞るおそれがあります。
- 取締役が従業員も兼ねている:取締役の地位と従業員の地位を分けて考える必要があります。
- 個人保証や許認可の役員要件がある:退任により、金融機関への個人保証や、許認可上の役員要件に影響が出ないかを確認します。
手続前チェックリスト
減員の手続を始める前に、次の資料を確認・準備しておくと、選べる方法や必要な手続、リスクの見通しを立てやすくなります。会社の状況に応じて、必要な資料を追加してください。
減員手続の前に確認・準備したい主な資料
- 現行の定款
- 登記事項証明書(履歴事項全部証明書)
- 株主名簿
- 役員一覧(就任日・任期が分かるもの)
- 過去の役員選任に関する株主総会議事録
- 取締役会議事録
- 辞任届(辞任による場合)
- 役員報酬の決議・契約に関する資料
- 退職慰労金規程
- 株主間契約
- 金融機関との契約、個人保証に関する資料
- 許認可に関する資料
- 取締役会規程・職務権限規程などの社内規程
- 会社印・銀行印・電子証明書・各種アカウントの管理一覧
- 事業承継計画
弁護士に相談するタイミング
取締役の減員は、円満に進む場合もあれば、株主や役員の対立が表面化して紛争になる場合もあります。次のような場面では、手続を始める前に一度、資料を確認したうえで方針を整理しておくと、選択肢と手順を検討しやすくなります。
- 取締役が辞任に応じてくれない
- 解任を検討している、または正当な理由や損害賠償が問題になりそう
- 株主間・役員間で対立がある
- 取締役会の廃止を含む機関設計の変更を伴う
- 定款と登記の内容が一致していない
- 代表取締役も変更する
- 役員報酬・退職慰労金・雇用契約が絡む
- 個人保証・許認可・事業承継が関係する
- 株主総会の手続について争いが生じる可能性がある
弁護士に相談したからといって、必ず紛争を防げる、必ず円満に退任させられる、というわけではありません。もっとも、定款・議事録・株主名簿などの資料を確認することで、法律上の見通しを立て、対応方針を整理しやすくなります。税務・社会保険・許認可・登記など他の資格者や所管官庁の確認が必要になる事項もあるため、必要に応じて連携して進めます。
よくある質問(FAQ)
- 取締役は最低何人必要ですか。
- 株式会社には1名以上の取締役が必要です(会社法第326条第1項)。取締役会設置会社では、原則として3名以上が必要です(会社法第331条第6項)。自社がどちらかは、定款と登記事項証明書で確認できます。
- 取締役会設置会社で取締役を2人にできますか。
- 取締役会を置いたままでは、原則としてできません。取締役会は3名以上で構成する必要があるためです。2名以下にするには、取締役会を廃止する定款変更などをあわせて検討することになります。
- 取締役本人の同意がなくても減員できますか。
- 任期満了で再任しない方法や、株主総会での解任であれば、本人の同意がなくても退任させられる場合があります。ただし解任は、正当な理由がないと損害賠償を請求される可能性があり、紛争化しやすい点に注意が必要です。
- 辞任届を出せばすぐに退任できますか。
- 辞任は本人の意思表示で効力が生じるのが原則です。もっとも、辞任や任期満了によって法律・定款で定めた員数を欠くことになる場合は、後任が就任するまで取締役としての権利義務が残ることがあります(会社法第346条第1項)。後任の手当てとあわせて確認してください。
- 任期途中の取締役を解任できますか。
- 株主総会の決議によって、いつでも解任することができます(会社法第339条第1項)。ただし、正当な理由なく任期途中で解任した場合、解任によって生じた損害の賠償を請求される可能性があります。
- 解任すると残任期分の報酬を全額支払う必要がありますか。
- 必ずしも全額とは限りません。会社法が定めるのは「解任によって生じた損害」の賠償であり(会社法第339条第2項)、その範囲は残任期や報酬額を手がかりにしつつ、本人が別に得た収入などの事情により調整され得ます。個別事情によって結論は変わります。
- 取締役会を廃止すると取締役も自動的に退任しますか。
- 自動的には退任しません。取締役会の廃止(定款変更)と、個々の取締役の退任は別の手続です。人数を減らしたい場合は、廃止とあわせて、どの取締役をどの方法で退任させるかを整理する必要があります。
- 役員変更登記はいつまでに行いますか。
- 登記事項に変更が生じた日から2週間以内に、本店を管轄する法務局で登記を申請する必要があります(会社法第915条第1項)。添付書類や登録免許税は変更の内容によって異なるため、法務局の案内で確認してください。
まとめ
- 取締役を減らせる下限は、取締役会の有無で変わります。取締役会を置かない会社は1名以上、取締役会設置会社は原則3名以上です。
- 減らす方法は、任期満了・辞任・解任の3つが基本で、本人の同意の要否や紛争リスクが異なります。
- 取締役会設置会社で2名以下にするには、取締役会の廃止(定款変更)などが必要です。取締役会の廃止と取締役の退任は別の手続です。
- 解任による損害賠償は「残任期分の報酬全額」と当然に一致するものではなく、個別事情で変わります。
- 辞任・任期満了で員数を欠くと、権利義務取締役として責任が残ることがあります。
- 役員変更登記は、変更から2週間以内が原則です(会社法第915条第1項)。
- まずは定款・登記事項証明書・株主名簿・議事録を用意し、「どの取締役を、いつ、どの方法で減らすのか」を切り分けることが出発点です。
取締役の減員や機関設計の見直しは、手続を始める前の確認が要になります。
任期満了・辞任・解任の選択肢の比較、取締役会の廃止や定款変更に伴う変更事項の確認、株主・役員間の対立を踏まえた方針の検討など、定款や登記事項証明書を確認しながら整理できます。手続前に必要資料をそろえておくことで、選択肢と順番を見通しやすくなります。
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監修者・執筆者
藤井 貴之(弁護士・公認会計士)
弁護士法人ひょうご あわじみらい法律会計事務所 代表弁護士。兵庫県弁護士会所属、日本公認会計士協会兵庫会所属。企業法務や会社の機関設計、事業承継に関する相談に対応しています。
取締役の減員や取締役会の廃止、定款変更については、会社の定款・登記事項証明書・議事録を確認したうえで、選択肢と手続の順番を整理します。弁護士紹介ページを見ることができます。

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