「詐欺の疑いがあると警察から連絡が来た」「取調べのために来るよう言われた」「家族が詐欺事件で逮捕され、これからどうなるのか分からない」――。詐欺事件は、ある日突然、本人やご家族の生活に関わってきます。いま手続のどの段階にいるのか、何をして、何をしてはいけないのかによって、その後の見通しは大きく変わります。
この記事では、詐欺の疑いで警察から連絡を受けた本人や、詐欺事件で身柄を拘束された方のご家族に向けて、詐欺罪の成立要件、現在の刑罰、逮捕から起訴までの流れ、示談・被害弁償の意味、事実を認める場合と否認する場合の違い、いわゆる特殊詐欺・闇バイトへの関与を疑われた場合の注意点、起訴後の保釈、そして相談時に準備したい資料を、一般の方向けに整理します。
先に結論の方向性をお伝えします。詐欺事件では、必ず逮捕されるとは限らず在宅で捜査が進むこともあり、示談や被害弁償が処分の判断で考慮される可能性がある一方で、それだけで不起訴や執行猶予が保証されるわけではありません。結論は、被害の内容、本人の関与の程度、証拠、認否といった個別事情によって変わります。なお、本文の法令・手続の記載は2026年(令和8年)7月時点の法令・公的資料に基づくものです。
いま、警察から出頭や取調べの連絡を受けている、あるいはご家族が逮捕されたという段階であれば、まず「どの手続段階にいるか」を整理することが出発点になります。警察・検察からの書面や連絡内容、事件名、日時などをお手元にご準備ください。取調べの前に、確認できることを一緒に整理できます。
Contents
まず結論:段階ごとに「最初にすること・避けること」を確認する
詐欺事件では、いまご本人(またはご家族)がどの段階にいるかによって、優先すべき対応が異なります。まず全体像として、段階別に「最初に確認すること」「避けたい行動」「準備・相談の意味」を整理します。
| いまの段階 | 最初に確認すること | 避けたい行動 | 準備・相談の意味 |
|---|---|---|---|
| 警察から任意で出頭・取調べを求められた | 事件名、日時、担当部署、呼び出しの理由 | 推測で話す、端末やデータを消す | 供述方針と資料を整理してから臨む |
| 逮捕された | 逮捕された日時・場所、事件名(被疑事実) | 家族が被害者へ直接連絡する | 早期の接見と今後の見通しの整理 |
| 勾留された・されそう | 勾留の理由と期間、接見禁止の有無 | 関係者と口裏合わせと疑われる連絡 | 勾留への意見・不服申立ての検討 |
| 被害弁償・示談を考えている | 被害者の人数・被害額、連絡の手段 | 本人・家族が独断で支払いを提案する | 連絡方法と示談条件を確認してから進める |
| 関与・故意を否認している | 供述調書の内容、署名・押印の意味 | 分からないことを推測で認める | 証拠の保全と供述方針の整理 |
| 起訴された | 起訴状の内容、勾留が続くかどうか | 期限を意識せず放置する | 保釈と公判に向けた準備 |
| 保釈を検討している | 身元引受人、住居、保証金の準備 | 関係者へ働きかけと疑われる連絡 | 保釈請求の時期と資料の検討 |
大切なのは二点です。第一に、詐欺事件の見通しは、段階と個別事情によって変わり、「初犯だから」「末端だから」といった理由だけで結論が決まるものではありません。第二に、弁護士に相談しても、不起訴・釈放・執行猶予といった結果が保証されるわけではありません。相談の意味は、いまの段階で取り得る選択肢と、その判断材料を早い段階で整理できる点にあります。
詐欺罪とは:刑法第246条の成立要件
詐欺罪は、刑法第246条に定められています。人をだまして財物や財産上の利益を得る犯罪で、条文上は第1項(財物)と第2項(利益)に分かれています。
詐欺罪が成立するための基本的な要素
詐欺罪が成立するには、一般に次の流れが原因と結果としてつながっている必要があると説明されます。
- 人をだます行為(欺罔(ぎもう)行為)があること
- その行為によって、相手がだまされ、事実を誤って信じること(錯誤)
- 誤信した相手が、財物を渡すなどの行為をすること(処分行為)
- 財物や財産上の利益が移転すること
- だます意思など、故意があること
このため、契約の不履行や事業の失敗が、ただちに詐欺罪になるわけではありません。返済や履行ができなかったという結果だけでなく、契約や取引の時点で、だます意思や支払能力・履行の意思がなかったといえるかが問題になります。実際の判断は、契約書、説明の内容、当時の資金の状況、やり取りの記録などの資料を確認しなければできず、個別事情により結論は異なります。
| 区分 | 条文 | 対象 | 一般的な説明 |
|---|---|---|---|
| 財物の詐欺 | 第246条第1項 | 金銭や物などの財物 | 代金を支払う意思がないのに商品を受け取る、など |
| 利益の詐欺 | 第246条第2項 | 財産上の利益(債務の免除、役務など) | 支払を不正に免れる、サービスを不正に受ける、など |
未遂・共犯が問題になる場合
詐欺罪には、未遂を処罰する規定があります(刑法第250条)。また、複数の人が関与した場合には、共同正犯(第60条)、教唆(第61条)、幇助(第62条)といった形で、実際に金銭を受け取った人以外も責任を問われることがあります。だれが、どのような認識で、どの範囲に関わったかが重要になります。事案によっては、電子計算機使用詐欺(第246条の2)や準詐欺(第248条)など、別の条文が問題になることもあります。
詐欺罪の刑罰:拘禁刑・罰金の有無・執行猶予
「詐欺罪ではどのくらいの刑になるのか」「罰金で済むのか」は、多くの方が最初に気にされる点です。まず、現行の法定刑を確認します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 法定刑 | 十年以下の拘禁刑(刑法第246条) |
| 罰金刑 | 詐欺罪そのものには定めがない |
| 略式手続(罰金での終結) | 詐欺罪だけでは予定されていない |
| 想定される処分 | 公判請求(正式な起訴)または不起訴(起訴猶予など) |
詐欺罪の法定刑は十年以下の拘禁刑で、罰金刑は定められていません。罰金だけで手続を終える略式命令は、100万円以下の罰金または科料に当たる事件が対象です(刑事訴訟法第461条)。そのため、詐欺罪だけで起訴される場合には、罰金で完結する略式手続は予定されておらず、起訴されるとすれば公開の法廷で審理される公判請求になるのが原則です。もっとも、「起訴=有罪・実刑」というわけではなく、検察官の判断で不起訴(起訴猶予など)となる場合もあります。
「懲役」と「拘禁刑」について。2025年(令和7年)6月1日に施行された刑法改正により、それまでの「懲役」と「禁錮」は「拘禁刑」に一本化されました。現在の詐欺罪の法定刑は十年以下の拘禁刑です。他方で、施行日より前の行為については、経過措置により従来の「懲役」を前提とした取扱いになる場合があります。古い解説やご記憶にある「懲役」の表記が、いまの事件にそのまま当てはまるとは限らないため、時期に応じた確認が必要です。
執行猶予・前科について
一定の要件を満たす場合には、刑の全部または一部の執行が猶予されることがあります。ただし、執行猶予が付くかどうかは、被害の程度、被害弁償・示談の有無、前科の有無、反省や再発防止の状況などを踏まえた個別の判断です。「初犯だから必ず執行猶予」「少額だから起訴されない」と決まっているわけではありません。有罪が確定すれば前科となり、その後の生活や一部の資格などに影響する場合があります。
量刑で考慮される主な事情
詐欺事件で刑の重さ(量刑)が問題になるとき、裁判所は多くの事情を総合して判断します。代表的なものは次のとおりです。
- 被害額、被害の件数、被害者の人数
- 犯行の期間、計画性、組織性
- 本人が果たした役割、得た利益
- 前科・前歴、同種前科の有無
- 被害弁償・示談の状況、被害者の処罰感情
- 事実を認めているか、反省や再発防止、監督してくれる人の有無
よく「相場」という言葉が使われますが、事件ごとに事情が異なるため、少数の事例や一般論から個別の刑を見通すことには限界があります。ここでも、結論は個別事情によって変わります。
警察から連絡を受けてから起訴までの流れ
詐欺事件で身柄を拘束されるのか、どのくらいの期間拘束されるのかは、ご家族にとって大きな不安です。基本的な流れを確認します。
| 段階 | 期間の目安 | 主な根拠 |
|---|---|---|
| 逮捕・警察での留置 | 警察は原則として48時間以内に検察官へ送致 | 刑事訴訟法第203条 |
| 検察官による勾留請求 | 送致から24時間以内、かつ逮捕から72時間以内 | 刑事訴訟法第205条 |
| 勾留 | 原則として10日間 | 刑事訴訟法第208条第1項 |
| 勾留の延長 | やむを得ない場合、さらに最大10日間 | 刑事訴訟法第208条第2項 |
| 起訴・不起訴の判断 | 勾留の期間内に検察官が判断 | ― |
この流れをまとめると、逮捕から起訴・不起訴の判断まで、一つの事件では最大でおおむね23日間程度、身柄を拘束され得ることになります。ただし、これは一つの被疑事実を前提とした目安です。別の事件で再逮捕されたり、複数の事実について捜査が続いたりする場合には、拘束される期間がさらに長くなることがあります。数字だけを見て過度に不安になる必要はありませんが、期間の見通しは事件ごとに確認する必要があります。
逮捕されない「在宅事件」もある
詐欺の疑いがあっても、必ず逮捕されるわけではありません。逃亡や証拠隠滅のおそれが小さいと判断されれば、逮捕されずに在宅のまま捜査が進むこともあります。任意の出頭や取調べを求められている段階は、この在宅捜査に当たることが多いといえます。在宅事件でも捜査は行われ、後に起訴・不起訴が判断されます。
「起訴前の身柄解放」と「起訴後の保釈」は別のもの
ここは特に誤解が多いところです。「保釈」は、起訴された後の被告人について、保証金を納めるなどして身柄の拘束を解く制度です(刑事訴訟法第89条・第90条など)。したがって、逮捕・勾留されている起訴前の段階では、保釈を請求することはできません。
起訴前の段階で身柄の解放を目指す活動は、保釈とは別のものです。たとえば、検察官に勾留を請求しないよう意見を述べる、勾留の決定に対して不服を申し立てる(準抗告。刑事訴訟法第429条)、勾留の取消しを求める、身元引受人や生活環境に関する資料を提出する、といった対応が考えられます。どの段階にいるかによって取り得る手続が異なるため、まず現在の段階を正確に把握することが重要です。
事実を認める場合と否認する場合で、対応は大きく変わる
詐欺事件では、本人が事実関係を認めているのか、関与や故意を否認しているのかによって、優先すべき対応が大きく異なります。両者を混同すると、かえって不利になることがあります。
事実関係を認めている場合
事実を認めている場合には、被害の回復と再発防止に向けた対応が中心になります。具体的には、取調べで説明する内容の整理、被害弁償や示談の検討、謝罪、生活環境の調整、本人が果たした役割や得た利益の確認などです。これらは、検察官の処分の判断や裁判での量刑で考慮される可能性があります。ただし、後述のとおり、それだけで結果が保証されるわけではありません。
関与・故意を否認している場合
「頼まれた仕事の中身が詐欺だとは知らなかった」「だますつもりはなかった」など、関与や故意を否認する場合には、別の注意が必要です。
- 分からないことを、推測で「認める」供述をしない
- 供述調書の内容をよく確認し、署名・押印の意味を理解する
- 契約書、メッセージ、通話履歴、送金の記録などの証拠を保存する
- スマートフォンやデータを削除・初期化・変更しない
- 共犯を疑われる人との連絡は、慎重に検討する
- 被害者への謝罪や支払いの提案を、独断で進めない
- できるだけ早く弁護士に相談し、供述の方針を整理する
取調べへの対応について。取調べでは黙秘権があり、弁護人を選任する権利も保障されています。もっとも、「一切話さなければ釈放される」「すべて話せば必ず軽くなる」といった一律の対応が正しいとは限りません。どの事実をどのように説明するかは、事件の内容と証拠を踏まえて検討する必要があります。特に否認事件では、独断の謝罪や支払いの提案が、後に「だます意思を認めた」かのように受け取られるおそれもあり、慎重な判断が求められます。
示談・被害弁償の意味と注意点
詐欺事件では、被害者への被害弁償や示談が重要な意味を持つことがあります。ただし、その効果や進め方には注意が必要です。
被害弁償・示談・宥恕の違い
被害弁償は、被害者に生じた損害を金銭などで回復することです。示談は、被害者との間で賠償や解決の条件について合意することをいい、被害者が加害者を許す意思(宥恕(ゆうじょ))が示されることもあります。これらは、検察官が起訴・不起訴を判断する際や、裁判所が量刑を判断する際に、有利な事情として考慮される可能性があります。
示談をしても、結果が保証されるわけではありません。「示談すれば必ず不起訴になる」「被害弁償すれば釈放される」というものではありません。また、詐欺罪は、被害者の告訴がなければ起訴できない「親告罪」ではないため、被害者が告訴を取り下げても、それだけで当然に事件が終わるわけではありません。示談は考慮され得る重要な事情の一つですが、処分は検察官・裁判所が総合的に判断します。
被害者が複数いる場合・連絡が難しい場合
被害者が多数にのぼる事件では、全員との示談が現実的でないことがあります。また、被害者が示談に応じない、連絡先が分からない、被害額や被害の内容に争いがある、といった場合もあります。こうした事情によって、示談の可否や進め方は変わります。
本人・家族が被害者へ直接連絡することの危険
被害者への謝罪や弁償を急ぐあまり、本人やご家族が直接連絡を取ろうとすることがあります。しかし、これには次のような危険があります。
- 被害者に、さらに心理的な負担を与えてしまう
- 口裏合わせや証拠隠滅、働きかけと受け取られる
- 捜査上の接触の制限に触れるおそれがある
- 示談の条件ややり取りの内容が、後に争点になる
- 否認事件では、謝罪や支払いの提案が事実認定に影響し得る
被害者との連絡は、弁護士を介して行うことを検討すべき場面が多くあります。具体的な連絡の方法は、事件の内容を確認したうえで判断する必要があります。
被害者への連絡や示談を考えている、あるいは関与を否認していて何をすべきか迷っている――こうした場面では、動く前に確認することが大切です。示談書に署名する前、被害者へ連絡する前に、条件や連絡の方法、証拠の保全について整理できます。契約書、メッセージ、送金の記録などの資料をお手元にご準備ください。
特殊詐欺・いわゆる「闇バイト」への関与を疑われている場合
近年、いわゆる「闇バイト」をきっかけに、特殊詐欺への関与を疑われるご相談がみられます。まず前提として、「闇バイト」は法律上の罪名ではありません。実際に問題となるのは、詐欺罪や窃盗罪、電子計算機使用詐欺罪などの個別の犯罪です。
受け子、出し子、かけ子、リクルーター、運転役、口座や携帯電話の提供者など、さまざまな役割が語られますが、役割の名前だけで刑事責任の重さが決まるわけではありません。警察も、これらの行為を犯罪として扱っています。責任の有無や程度を考えるうえでは、次のような事情が重要になります。
- その仕事が犯罪だと認識していたか(故意)
- 具体的に、どのような指示を受けていたか
- 他の関係者と、どのように連絡していたか
- 報酬の有無・金額、参加した回数
- 被害の件数・金額、組織の中での役割
- 犯罪による収益を受け取っていたか
- 途中で犯罪だと気づいた後も、関与を続けたか
- 証拠の隠滅や、関係者への連絡をしていないか
- 自首・出頭・申告の時期、被害弁償・示談の状況
証拠と自首について。特殊詐欺の事件では、スマートフォン、SNSやチャットのやり取り、通話履歴、口座・送金の記録、配送の記録などが確認されやすい資料です。これらを削除・初期化したり、関係者に連絡を取ったりすることは、かえって不利に働くおそれがあります。また、警察に出頭すれば当然に刑法上の「自首」(刑法第42条)が成立するわけではありません。自首の成否や、出頭のタイミング・方法は、事件の内容を踏まえて慎重に検討する必要があります。「末端だから」「被害金を受け取っていないから」といった理由だけで、責任が軽くなると決まっているわけではありません。
起訴後の保釈と刑事裁判
起訴された後は、保釈によって身柄の拘束を解くことを検討できます。前述のとおり、保釈は起訴後の制度です。
保釈には、一定の除外事由に当たらない限り認められる権利保釈(刑事訴訟法第89条)と、裁判所の裁量による裁量保釈(同第90条)などがあります。裁判所は、逃亡や証拠隠滅のおそれ、被害者や関係者への働きかけのおそれ、事件の内容、本人の生活環境などを踏まえて判断します。保釈が認められる場合には、保証金を納める必要があり(同第93条)、身元引受人や住居、関係者と接触しないことなどが条件とされることがあります。余罪や追起訴がある場合には、保釈の判断がより慎重になることもあります。
保釈についても、認められることが保証されているわけではありません。保釈が認められるかどうか、保証金がいくらになるかは、事件の内容や本人の事情によって異なります。認められる割合や金額について、確認できない数値をここで断定することはできません。保釈を検討する場合は、時期や必要な資料を含めて、個別に検討する必要があります。
家族ができること
ご家族が逮捕された場合、家族にできることも少なくありません。落ち着いて、次の点を確認してください。
- 逮捕・勾留されている場所、事件名(被疑事実)を確認する
- できるだけ早く弁護士に相談する
- 面会(接見)や差入れができるかを確認する(接見禁止が付いている場合もあります)
- 勤務先や学校への対応を検討する
- 身元引受人になれるかを検討する
- 事件に関係し得る資料を保全する(削除・処分しない)
- 被害者へ直接連絡することは避ける
なお、面会や差入れの可否、時間帯、方法などは、留置されている施設や事件の状況によって運用が異なります。一律に「いつでも面会できる」「必ず差入れできる」とはいえないため、実際の可否は施設や担当者に確認する必要があります。
相談前に確認したい資料(手続前チェックリスト)
取調べの前、示談や書面への署名の前に、次のような資料を確認・保全しておくと、方針の検討がスムーズになります。ご自身の事件に関係するものを中心に、そろえられる範囲で構いません。
- 警察・検察・裁判所から届いた書面(呼出状、勾留に関する書面など)
- 出頭を求められた日時、担当の部署・担当者
- 逮捕・勾留された日時、事件名(被疑事実)
- 契約書、申込書、請求書、領収書
- 事業計画や、説明に使った資料
- メール、SNS・チャットのやり取り、通話履歴、録音
- 送金・振込の記録、銀行口座の入出金履歴、暗号資産の取引履歴
- 商品の配送記録、報酬を受け取った記録
- 指示役や関係者とのやり取り
- スマートフォン、パソコン、記録媒体(初期化・削除をしない)
- 被害弁償として支払った記録、示談書の案
- 前科・前歴に関する情報
- 家族構成、勤務先、住居に関する情報、身元引受人の候補
証拠となり得るデータを、削除・変更・初期化しないでください。不利に見える資料であっても、自己判断で処分することは、証拠隠滅と受け取られたり、かえって説明を難しくしたりするおそれがあります。取扱いに迷う場合は、そのままの状態で保全し、弁護士に相談してください。
弁護士に相談するタイミング
詐欺事件では、段階が進むほど、取り得る選択肢が限られていくことがあります。次のような場面では、早い段階で確認することが役立ちます。
- 警察から出頭や取調べの連絡を受けたとき
- 逮捕される可能性を心配しているとき
- 本人またはご家族が逮捕されたとき
- 勾留される前、または勾留が決まった後
- 供述調書に署名する前
- 被害者へ連絡する前、示談金を支払う前、示談書に署名する前
- 関与や故意を否認しているとき
- 特殊詐欺への関与を疑われているとき
- 起訴されたとき、保釈を検討するとき
弁護士に相談しても、不起訴や執行猶予などの結果が保証されるわけではありません。もっとも、相談によって、適用される可能性のある罪名、証拠の状況、供述の方針、身柄に関する手続、被害弁償や示談の進め方、起訴・不起訴の検討材料、起訴後の対応、家族としての対応、そして今後の優先順位を整理することができます。
よくある質問(FAQ)
- 詐欺罪では必ず逮捕されますか。
- 必ず逮捕されるわけではありません。逃亡や証拠隠滅のおそれが小さいと判断されれば、在宅で捜査が進むこともあります。逮捕されるかどうかは、事件の内容や本人の状況などの個別事情により異なり、資料を確認したうえで検討する必要があります。
- 警察から電話が来たら、すぐに逮捕されるのですか。
- 出頭や取調べを求める連絡が来た段階では、在宅で捜査が進んでいることもあり、連絡が来たこと自体が逮捕を意味するわけではありません。ただし、対応の仕方によって状況が変わることもあるため、出頭の前に確認しておくことをおすすめします。
- 詐欺罪に罰金刑はありますか。
- 詐欺罪(刑法第246条)の法定刑は十年以下の拘禁刑で、罰金刑は定められていません。そのため、罰金で手続を終える略式命令は予定されておらず、起訴される場合は公判請求が原則です。もっとも、起訴されず不起訴となる場合もあり、結論は個別事情により異なります。
- 初犯なら執行猶予になりますか。
- 初犯であることは有利な事情として考慮され得ますが、初犯だからといって必ず執行猶予になるわけではありません。被害額、被害弁償や示談の有無、反省や再発防止の状況などを踏まえた個別の判断であり、資料の確認が必要です。
- 被害者と示談すれば不起訴になりますか。
- 示談は、処分の判断で有利に考慮される可能性がありますが、示談によって不起訴や執行猶予が保証されるわけではありません。詐欺罪は親告罪ではないため、告訴の取下げだけで当然に事件が終わるものでもありません。個別事情により結論は変わります。
- 家族が被害者へ直接謝罪してもよいですか。
- 独断での直接連絡はおすすめできません。被害者への負担や、口裏合わせ・働きかけと受け取られるおそれがあり、否認事件では事実認定に影響することもあります。連絡は、弁護士を介する方法を含めて、慎重に検討する必要があります。
- 受け子でも実刑になることがありますか。
- 役割の名前だけで刑が決まるわけではありませんが、受け子とされる関与でも、被害の規模や認識、回数などの事情によっては、重い処分となることがあります。「末端だから軽い」と決まっているわけではなく、個別事情により結論は変わります。
- 家族が逮捕されました。まず何を確認すべきですか。
- 逮捕・勾留されている場所、事件名(被疑事実)、日時をまず確認してください。そのうえで、できるだけ早く弁護士に相談し、面会や差入れの可否、今後の見通しを整理することが役立ちます。被害者への直接連絡や、証拠となり得る資料の処分は避けてください。
まとめ
- 詐欺事件では、いまどの段階にいるか(連絡・逮捕・勾留・起訴・保釈)によって、優先すべき対応が異なります。
- 詐欺罪(刑法第246条)の法定刑は十年以下の拘禁刑で、罰金刑の定めはなく、詐欺罪だけでは略式手続は予定されていません。
- 必ず逮捕されるとは限らず在宅事件もあり、起訴前の身柄解放と起訴後の保釈は別の手続です。
- 示談・被害弁償は考慮され得る重要な事情ですが、それだけで不起訴・執行猶予が保証されるわけViewById。
- 「初犯だから」「末端だから」といった理由だけで結論は決まらず、個別事情により変わります。
- 証拠となり得る資料や端末を処分せず、被害者への独断の連絡は避け、早い段階で確認することが大切です。
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執筆者・監修者
藤井 貴之(ふじい たかゆき)
弁護士法人ひょうご あわじみらい法律会計事務所 代表弁護士・公認会計士
兵庫県弁護士会所属・日本公認会計士協会兵庫会所属
2012年(平成24年)司法試験合格、2013年弁護士登録。2020年(令和2年)公認会計士試験合格。兵庫県・山口県・東京都での実務経験を経て、2023年に淡路島(南あわじ市)へ事務所を開設。刑事事件をはじめ、相続・交通事故・離婚・労働問題などの個人のご相談から、企業法務・事業承継まで対応しています。

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