店舗・医院の立退料交渉|営業補償・移転費用を示す資料 |神戸市(須磨・垂水・西神・北神)の弁護士|初回相談無料|

弁護士法人ひょうご支所神戸みらい法律会計事務所

初回相談無料

兵庫県神戸市須磨区中落合2丁目2−5
名谷センタービル7階

 078-797-5227

受付時間 : 9:00〜20:00

店舗・医院の立退料交渉|営業補償・移転費用を示す資料

貸主から店舗や医院(診療所)、事務所の立退きを求められると、提示された立退料が妥当か、断ることはできるのか、移転や休業による損失をどう説明すればよいのかが問題になります。立退料は、家賃の何か月分という一律の基準で決まるものではありません。まず契約と通知から退去に応じる義務があるかを確認し、そのうえで、立退料の金額だけでなく、移転後も事業を続けられるか、原状回復や保証金を含めた負担全体がどうなるかを比べることが大切です。

この記事では、貸主の都合で普通建物賃貸借の更新を拒絶され、又は解約を申し入れられた借主の立場から、確認の順序、損失を説明する資料、合意すべき条件、交渉の費用対効果を整理します。結論は、契約の内容や通知までの経緯などの個別事情によって異なります。

まず立退きに応じる必要があるかを確認する

立退きを求める通知を受けても、直ちに退去しなければならないとは限りません。どの契約に基づき、どのような根拠で契約の終了を求められているかによって、確認すべき点が変わります。

普通借家では通知と正当事由を確認する

定期借家ではない通常の建物賃貸借(以下「普通借家」といいます)で期間の定めがある場合、貸主が更新を拒むには、期間満了の1年前から6か月前までの間に、更新をしない旨などを借主に通知する必要があります。この期間内に通知がなければ、原則として、従前と同じ条件で契約を更新したものとみなされ、更新後は期間の定めのない契約になります。通知があっても、期間満了後に借主が使用を続け、貸主が遅滞なく異議を述べなかったときも同様です(借地借家法第26条)。

期間の定めのない契約では、貸主の解約の申入れに次に述べる正当事由があることを前提として、申入れの日から6か月を経過すると契約が終了します(同法第27条・第28条)。期間の途中で解約を求められた場合は、契約書に期間内の解約を認める条項があるかも確認します。同法第27条だけを根拠として、どの契約でも期間の途中で解約できるわけではありません。

貸主による更新拒絶の通知や解約の申入れには、いずれも正当事由(条文上は「正当の事由」)が必要です(同法第28条)。正当事由の有無は、貸主と借主のそれぞれが建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況と建物の現況、貸主が明渡しの条件として又は明渡しと引換えに借主に対して財産上の給付(立退料など)をする旨を申し出た場合のその申出を考慮して判断されます。「建物が古い」「建て替えたい」「6か月前に通知した」という事情だけで結論は出ません。建物の危険性や修繕の可能性、建替え計画の具体性と、借主が営業を続ける必要性や代わりの物件の事情を、資料に基づいて比べることになります。また、更新や解約の申入れに関するこれらの規定に反する特約で借主に不利なものは無効とされているため(同法第30条)、契約書の条項の文言だけで退去の要否が決まるわけではありません。条文は借地借家法第26条~第28条・第38条で確認できます。

立退料は、この正当事由を補う判断要素の一つです。通常の貸主都合の立退きでは、借主が同法第28条を根拠として一定額の立退料を当然に請求できるわけではなく、交渉で合意する金額と裁判所が判断する金額も区別して考えます。旧借家法の下で店舗の明渡しが争われた事件で、最高裁昭和46年11月25日判決(PDF)(第一小法廷・昭和41年(オ)第1005号)は、金銭の提供はそれだけで正当事由の根拠となるものではなく、ほかの事情と総合して考慮され、互いに補い合って正当事由の判断の基礎となるものであると述べています。そのうえで、金銭の提供を伴うことによって初めて正当事由が認められる場合であっても、その金額が、明渡しによって借主の被る損失のすべてを補償するに足りるものでなければならない理由はないと判断しています。現行の借地借家法第28条も、財産上の給付の申出を考慮される事情の一つとして定めています。移転に伴う費目を積み上げた合計が、そのまま法的に請求できる額や裁判所が認める額になるわけではありません。

通知書に書かれた回答期限や退去希望日は、法律上の期間(更新拒絶の通知期間や、解約申入れから6か月)とは別のものです。裁判所から書類が届いた場合の期限も、これらとは分けて管理します。また、借地借家法の施行前から続く古い契約であっても、それだけで旧借家法が適用されるわけではありません(同法附則第4条)。同法附則第12条は、施行前にされた更新拒絶の通知や解約の申入れについて従前の例によると定めているため、古い契約では、いつ、どの通知がされたかを確かめます。

定期借家・契約違反・建替えの特別な制度を分ける

契約書の表題や通知の文言だけで、どの制度の問題かを決めることはできません。次の場合は、一般の更新拒絶とは分けて、終了の根拠を確認します。

定期建物賃貸借(定期借家) 有効な定期借家であれば、期間の満了による終了に、普通借家のような正当事由は必要ありません。ただし、契約書に「定期借家」と書かれているだけでは足りません。期間の定めがあり、更新がない旨を定めた書面による契約(契約の内容を記録した電磁的記録による契約を含みます)であること(借地借家法第38条第1項・第2項)を確認します。また、貸主が契約の前に、更新がなく期間の満了によって終了することを記載した書面を交付して説明したことも必要です(同条第3項。借主の承諾を得て電磁的方法で提供することもできます。同条第4項)。この説明がなかったときは、更新がない旨の定めは無効です(同条第5項)。さらに、期間が1年以上の場合、貸主は、期間満了の1年前から6か月前までの間に終了の通知をしなければ、終了を借主に対抗できません。この期間の経過後に通知した場合は、その通知の日から6か月を経過した後に対抗できるようになります(同条第6項)。期間の途中で退去を求められた場合は、その根拠を契約書に照らして別に確認します。

契約違反を理由とする解除 賃料の滞納など、契約違反を理由に契約の解除を通知された場合は、正当事由ではなく、解除の要件を満たしているかどうかが問題になります。

すでに合意した退去 退去について合意書や覚書を交わしている場合は、まずその内容と効力を確認します。

公共事業・再開発・区分所有建物の建替え 公共事業や、法律に基づく再開発事業に伴って移転を求められた場合は、一般の更新拒絶とは根拠が異なることがあるため、通知がどの法律や手続に基づくものかを確認します。貸主が建替えや再開発を計画しているというだけであれば、普通借家の更新拒絶や解約の申入れとして、正当事由の有無が問題になります。また、分譲マンションなどの区分所有建物で建替え決議がされた場合について、建物の区分所有等に関する法律(区分所有法)に、賃貸借の終了を請求できる制度が設けられ、2026年4月1日から施行されています(区分所有法第64条の2)。この制度の要件を満たす請求であれば、請求から6か月を経過すると賃貸借が終了し、請求をした者は借主に通常生ずる損失の補償金を支払う義務を負い、借主は補償金の提供を受けるまで明渡しを拒むことができると定められています。請求できる者などの要件や、施行前にされた決議などへの適用関係は、個別に確認が必要です。一棟の建物の所有者が建替えを希望して更新を拒む場合とは、根拠も手続も異なります。

移転・内装・休業・顧客流出は何で説明するか

立退きの交渉では、移転や休業による営業上の損失(いわゆる営業補償として問題になる部分)を含め、借主が受ける負担を具体的な資料で示すことが重要になります。ただし、資料は多ければよいわけではありません。説明したい事実と資料を対応させ、その費用が必要な理由と移転との因果関係を示し、同じ負担を重ねて数えないようにします。

資料と説明したい事実を対応させる

次の表は、検討項目ごとに集める資料と、その資料で説明する事実・注意点を整理したものです。法律で提出が義務付けられた書類の一覧ではなく、ここに挙げた費目が当然に補償されるという意味でもありません。

立退き交渉で用意する資料と説明する事実
検討項目 資料 説明する事実・注意点
契約・通知 原契約書、更新契約書、定期借家の説明書面・電子記録、貸主からの通知(届いた日が分かるもの)、提示された条件、メールなどのやり取り 終了の根拠、期限、すでに合意した内容の有無
立地・移転先 移転候補の物件の比較(面積、賃料、用途、動線、設備、許認可上の条件) 現在の立地が必要な理由、代わりの物件を確保する難しさ
内装・設備 内装・設備の台帳、工事契約書・請求書、写真、リース契約書、撤去・移設・再調達の見積書 誰の所有か、移設できるか、同等の機能か、性能の向上分を含めていないか
休業 移転の工程表、機器の搬入・調整の予定、許認可の日程、休業の計画 必要な休業期間、借主の都合による延長がないか、段階的な移転などで短縮できないか
営業損益・継続費用 3期分程度の決算書・申告書(目安であり必須ではありません)、月次・店舗別の損益、売上の集計、雇用・賃貸・保守の契約書、給与・支払の明細 季節による変動、以前からの減収、本部費の配賦、休業中も実際に残る費用
顧客・患者の減少 顧客数・患者数の地域別・継続率の集計、移転前後の比較、移転の案内・広告の見積書 移転との因果関係、回復までの期間、休業による損失との重複。貸主への説明は集計した資料で行い、個人を識別できる情報を安易に出さない
資金繰り 移転の予算、支払予定日、保証金の額、税金の試算 損益上の負担と、先に必要になる資金を区別する

内装や設備の負担は、会計上の帳簿価額とは分けて考えます。帳簿価額は、移設や再調達に必要な費用とも、立退料とも別のものです。帳簿価額がゼロになった内装・設備でも、移転先で同じ機能を確保する負担がなくなるとは限りません。一方で、旧内装の未償却額と新しい内装の工事費、設備の買替え費用と旧設備の売却で得られる金額などを整理し、同じ負担を二重に数えないようにします。移転後の家賃が上がる場合も、増加分を期限なく積み上げるのではなく、比較した物件、対象とする期間、その物件が必要な理由を示します。

医院は設備と許認可の日程も確認する

医院・診療所の移転では、内装工事に加えて、医療機器の移設・再設置、医療法に基づく手続、保険診療の継続が、退去日と休診期間に影響します。工事の工程、機器の搬入・調整、手続の日程を別々に確認し、無理のない退去日を合意することが大切です。

必要な手続は、開設主体(個人か法人かなど)、病床の有無、変更の内容などによって異なります。神戸市の診療所等の手続案内では、電子申請で受け付ける所在地の変更は住居表示の変更によるものであり、移転は含まれないとされています。住所変更の届出だけで済むと考えず、移転先の物件、工事、退去日を固める前に、診療所を所管する窓口(神戸市内であれば神戸市の医務薬務課)に必要な手続と時期を確認します。

保険医療機関の指定についても、移転の前後で保険診療を切れ目なく続けられるとは限りません。近畿厚生局の保険医療機関の移転に関する案内では、遡及指定の取扱いについて、類型ごとの条件と事前の手続が示されています。どの取扱いに当たるかを近畿厚生局に個別に確認したうえで、休診期間と退去日を決めます。

売上と利益を分けて休業の影響を計算する

移転のための休業や、移転後の顧客・患者の減少による影響は、売上の減少額そのものではなく、通常どおり営業した場合の損益との差として整理します。

減る売上と節約できる費用を分ける

休業すると売上はなくなりますが、仕入や材料費など売上に応じて生じる費用(変動費)も生じなくなります。一方で、家賃やリース料など、休業中も支払が続く費用(固定費)は残ります。次の表は、説明のための仮定例です。

休業1か月の影響の仮定例
項目 通常営業1か月 完全休業1か月
売上 400万円 0円
変動費 160万円 0円
固定費 180万円 180万円
営業損益 60万円 マイナス180万円

通常営業の営業利益60万円と、休業時の営業損失180万円との差は、240万円です(60万円+180万円)。これは、失われる売上400万円から、休業によって支出しなくて済む変動費160万円を差し引いた額と一致します。この240万円に固定費180万円をさらに加えると、同じ固定費を二重に数えることになります。

この例は、変動費が全額生じなくなり、固定費が全額続くという前提を置いた説明用の仮定例です。移転の実費、再開後の減収、税金は含めていません。法律で定められた計算式や立退料の相場、裁判所が認める見込みの額を示すものではなく、当事務所が取り扱った事案の結果を示すものでもありません。

実際の計算では、一部の営業を続けられるか、休業中に削減できる固定費があるか、季節による売上の変動、本当に必要な休業期間などを確認します。

顧客・患者の減少を過大に見積もらない

移転後に客足や患者数が戻るまでの減収は、地域、期間、回復の見込みを資料で示します。移転前の地域別の顧客数・患者数や継続率、移転先との位置関係、移転の案内や広告の計画などを組み合わせて、減少が移転によるものであることを説明します。顧客や患者がすべて失われる、減少がいつまでも続くといった前提は置かず、対象とする期間を区切ります。再開後の減収を見込む期間は、休業による損失の期間と重ならないようにします。医院・診療所では、診療を行った月と診療報酬が入金される月がずれるため、比べる期間をそろえて集計します。

営業が赤字であっても、移転費用や休業中も支払が続く費用などの検討が直ちに不要になるわけではありません。ただし、以前からの赤字や減収、近くに代わりの物件があること、短期間の休業で済むことは、借主に不利な事情にもなります。

立退料・退去日・原状回復・保証金を一体で交渉する

立退料の金額だけを決めて合意すると、支払の時期や原状回復の範囲をめぐって、後から負担が生じることがあります。金額とあわせて、退去までの条件を一体として整理します。

移転資金が必要になる時期と支払時期を合わせる

移転先の保証金、内装工事、医療機器や設備の購入などの支払は、退去より前に必要になることがあります。立退料が全額後払いの場合、こうした移転費用を先に負担できないことがあります。ただし、一部の前払いなどは、借主が当然に求めることのできる権利ではなく、合意によって定める条件です。分割払いや、内容があいまいな約束には、支払われない危険も伴います。署名する前に、合意書が次の点を、実行できる内容で具体的に定めているかを確かめてください。

  • 金額と支払:立退料の金額と内訳、支払う者、支払期限、支払方法
  • 前払いと残額:移転準備のための前払いの有無と金額、残額の支払と明渡しとの関係
  • 退去日:明渡しの日と、工事や許認可が遅れた場合の扱い
  • 賃料・共益費:いつまで支払うか
  • 原状回復:範囲と、免除する場合の撤去・廃棄の費用負担
  • 残置する内装・設備:残していく物の範囲と、所有権や撤去・処分の扱い
  • 保証金(敷金):返還額と返還の時期
  • 引渡し:鍵の返還などの方法と、受領の確認方法
  • 第三者の承諾:リース会社など、承諾が必要な事項
  • 清算条項:置く場合は、その対象となる範囲

原状回復と保証金を立退料に埋もれさせない

原状回復と敷金の返還については、民法第621条・第622条の2に定めがあります。第621条によれば、借主は、借りた物を受け取った後に生じた損傷を、賃貸借が終了したときに原状に戻す義務を負いますが、通常の使用による損耗や経年変化は対象から除かれ、借主の責めに帰することができない事由による損傷についても義務を負いません。ただし、店舗や医院の契約では、内装や設備をすべて撤去して引き渡す特約(いわゆるスケルトン返し)などが定められていることがあり、その内容と有効性を確認します。貸主の都合による退去であっても、原状回復が当然に免除されるわけではありません。免除を受ける場合は、免除の範囲、撤去・廃棄の費用、清算の方法を合意書で明確にします。

保証金は、名目にかかわらず、賃料などの債務を担保するために預けた敷金に当たる場合、原則として、契約が終了し、物件を返還した後に、未払の賃料など担保される債務の額を差し引いた残額が返還されます(民法第622条の2)。保証金の性質や、償却・敷引きなどの特約の有無は、契約書で確認します。敷金の返還は、明渡しと当然に同時に行われるものではありません。明渡しと同時の精算や返還の前倒しを望む場合は、合意の条件として定めます。なお、これらの規定は2020年に施行された民法の改正によるものであり、それより前に結ばれた契約では、契約や更新の時期によって適用関係を確かめる必要があります。

合意書でも交渉結果の評価でも、立退料と保証金の返還額は分けて扱います。保証金の返還は借主が預けたお金が戻るものであり、これを含めた総額を、立退料が増えたように見ることは避けます。

立退料の総額と実際の負担を比べる

提示額が大きく見えても、その全額が手元に残るわけではありません。移転全体の収支と資金繰り(実際の移転費用、休業中の負担、税金、弁護士費用など)を確認したうえで、既存の提示をそのまま受け入れる場合と比べて、追加の交渉でどれだけ改善するかを考えます。

追加の交渉で見込まれる改善(増額、原状回復の軽減、退去時期の調整など)と、追加の弁護士費用・実費や交渉が長引くことによる負担を比べます。退去時期などの金額以外の条件を、根拠なく金額に換算して評価することは避けます。既存の提示で移転の負担をまかなえる場合には、増額を求めるより条件の確定を優先する選択もあります。立退料の全額が、そのまま借主の純利益や弁護士に依頼した成果になるわけではありません。弁護士に依頼する場合は、報酬の基準となる経済的利益に、立退料の総額、上積みされた額、免除された原状回復費用などのどれを含むか、訴訟に移った場合の追加費用がどうなるかを、委任契約で確認してください。弁護士費用を貸主に負担させられるとは限りません。費用と得られる利益の比べ方は、弁護士費用と費用倒れの見極め方でも解説しています。

税金の扱いも、受取額の評価に影響します。個人の事業者が受け取る立退料は、その実質に応じて、借家権の消滅の対価に相当する部分は総合課税の譲渡所得、休業などによる収入の減少や必要経費を補う部分は事業所得などの収入金額、それ以外の部分は一時所得の収入金額になるとされています(国税庁の立退料の所得区分)。全額が非課税になるわけではなく、移転に使えば課税されないというものでもありません。法人が受け取る場合には、この所得区分は当てはまらず、法人としての課税関係を別途確認する必要があります。

消費税については、賃貸借契約の解除に伴って借主が貸主から受け取る立退料は、資産の譲渡等の対価に当たらず、課税の対象外とされています(消費税法基本通達5-2-7)。ただし、賃借人の地位を貸主以外の第三者に譲渡して受け取る対価は別の扱いであり、造作や設備の売買を含む場合も、名目だけでは判断できません。消費税の対象外であることは、所得税などがかからないという意味ではありません。合意する内訳は、税理士などの税務担当者と確認してください。

合意前に相談したい場面と準備資料

話合いがまとまらない場合の進め方と、相談の前に用意する資料を整理します。

交渉でまとまらない場合と早めの相談が必要な場合

話合いで条件がまとまらない場合は、裁判所の民事調停で合意を目指すことや、貸主から明渡しを求める訴訟が起こされた場合の対応を検討します。通常の立退きの交渉は、借主が希望する金額を損害賠償として独立に請求するものではありません。貸主の明渡しの請求に対する反論と、合意に基づく支払の請求などとは、分けて考えます。調停は話合いによる合意を目指す手続であり、借主の希望額が強制的に決まるものではありません。手続の費用や期間は、事案により異なります。

次のような場合は、早めの相談を検討してください。

  • 貸主が示した回答期限や退去日が迫っている
  • 合意書や覚書への署名を求められている
  • 裁判所から調停や訴訟の書類が届いた(放置せず、記載された期限を確認します)
  • 建物の工事や設備の停止などにより、営業に支障が出ている

交渉中であっても、賃料の支払を一方的に止めることは避けてください。賃料の不払いは、立退きの交渉とは別に、契約違反を理由とする解除の問題を生じさせるおそれがあります。

契約・通知・提示条件を先に用意する

最初の相談の段階で、すべての資料をそろえる必要はありません。まず、次の資料を優先してください。営業損益や移転の見積りは、方針を整理したうえで順に集めれば足ります。

  • 契約書:原契約書のほか、更新契約書、定期借家の説明書面(電子の記録を含みます)
  • 貸主からの通知:届いた日が分かるもの
  • 提示された条件:立退料の金額、退去日、原状回復や保証金の扱いなど
  • 期限:回答期限、退去希望日、裁判所の書類に記載された期限

集めた資料は、原本や元のデータに手を加えずに保管し、貸主に示す説明資料は集計したものを別に作ります。患者や従業員の個人情報は、説明に必要な範囲を超えて提出しないようにします。期限が迫っている場合は、お問い合わせ(相談予約)のページから早めに予約をご検討ください。

よくある質問

定期借家契約でも、立退きの条件を話し合うことはできますか。

話し合うこと自体は妨げられません。ただし、有効な定期借家契約であれば、期間満了による終了に普通借家のような正当事由は必要ないため、貸主が話合いや補償に応じるとは限りません。有効かどうかは契約書の名称だけでは判断できず、書面又は電磁的記録による契約か、契約の前に更新がない旨の書面の交付(借主の承諾を得た電磁的方法による提供を含みます)を受けて説明されたかなどを確認します。期間が1年以上の契約では、貸主が満了の1年前から6か月前までに終了の通知をしなければ終了を借主に対抗できず、遅れて通知した場合は、その通知から6か月を経過した後に対抗できるようになります。

赤字の店舗や医院では、営業上の損失はないと扱われますか。

直ちにそうなるわけではありません。赤字でも、移転費用や休業中も支払が続く費用の検討が不要になるとは限りません。一方で、以前からの赤字や減収、代わりの物件があること、短期間の休業で済むことは、借主に不利な事情にもなります。売上ではなく損益の比較で、期間を区切って示すことが大切です。

貸主の都合による退去なら、原状回復は免除されますか。

当然には免除されません。民法では、通常の使用による損耗や経年変化は原状回復の対象から除かれていますが、店舗や医院の契約では、内装をすべて撤去して返す特約などが定められていることがあり、その内容と有効性を確認します。免除を求める場合は、免除の範囲、撤去・廃棄の費用、残していく設備の扱いを合意書に明記します。

退去の合意書に署名した後でも、立退料の増額を求めることはできますか。

署名した合意は、その内容と効力を検討する必要があり、署名後に当然に撤回したり増額を求めたりできるわけではありません。署名の前に、金額、支払時期、退去日、原状回復、保証金の返還などを確認することが大切です。すでに署名している場合は、合意書と交渉の経緯が分かる資料をそろえて、早めにご相談ください。

まとめ

  • 立退きを求められたら、まず契約の種類、通知の根拠と時期、期限を確認します。普通借家では、通知の期間だけでなく、正当事由の有無が問題になります。
  • 営業上の損失は、売上ではなく損益の差で示し、資料と説明したい事実を対応させます。同じ負担の重複や過大な見積りは避けます。
  • 立退料の金額だけでなく、支払時期、退去日、原状回復、保証金の返還、遅れた場合の扱いを一体で合意します。
  • 提示額の大きさではなく、移転全体の負担や税金、弁護士費用を踏まえた実際の改善で判断します。
  • 署名を求められたとき、期限が迫っているとき、裁判所の書類が届いたときは早めに相談し、交渉中も賃料の支払は続けます。

立退きを求められた借主の方へ

店舗・医院・事務所の立退きを求められた場合は、契約書、貸主からの通知、提示された金額や条件、退去の期限が分かる資料をご用意のうえ、相談方法と弁護士費用をご確認いただき、ご予約ください。契約の種類と通知の根拠を確認し、退去に応じる必要があるか、提示条件のどこを検討すべきかを整理します。期限が迫っている場合は、資料がそろっていなくても、その期限を予約の際にお知らせください。

ご相談の前に、相手方となる貸主や管理会社の名称などをうかがい、利益相反の有無を確認します。その結果、ご相談やご依頼をお受けできない場合があります。予約のお申込みだけで、相談の日時やご依頼が確定するものではなく、お申込みの時点で個別のご質問への回答をお約束するものでもありません。掲載している費用の基準が個別の事案にどのように当てはまるかは、ご相談の際にご確認ください。

立退きに関する相談を予約する

弁護士費用の案内

相談方法・条件を確認する

事務所紹介

このコラムは、弁護士法人ひょうご支所 神戸みらい法律会計事務所が掲載しています。所属する弁護士については所属弁護士の紹介のページで、不動産に関する取扱業務は不動産問題の取扱いのページでご覧いただけます。そのほかの解説は、弁護士コラム一覧からご覧ください。

参考資料

この記事は、店舗・医院・事務所の立退きを求められた借主の方に向けて、一般的な情報をまとめたものです。個別の事案についての法律上の判断や税務上の助言ではなく、実際の結論は、契約の内容、通知の経緯、営業の状況などによって異なります。記載の内容は、2026年10月28日時点の法令・公的資料に基づきます。

まずはご予約ください。夜間/休日はご予約で相談可能

法律のお悩みは、 相談しやすい
神戸みらい法律会計事務所
にお任せください。

(初回相談無料 / 交通事故 債務整理は電話での無料相談が可能)

初回相談無料

ご予約フォームはこちら

お電話でもご予約いただけます

 078-797-5227

受付時間 : 9:00〜20:00

LINEからの
ご予約はこちら