共有名義の土地や建物を売りたいのに、ほかの共有者が反対している。このようなとき、物件全体を通常の売買で売るには、原則として共有者全員の合意が必要です。もっとも、自分の持分だけを売る方法や、裁判所に共有物の分割を求める方法(共有物分割請求)もあります。ただし、分割を請求できること、希望する分け方が認められること、実際に売却や代金の支払が実現することは、それぞれ別の問題です。
この記事では、通常の共有や、遺産分割によって共有で取得した土地・建物を主な対象として、方法ごとの条件と費用を整理します。どの方法を選ぶかは、売却価格の大小だけでなく、残債・費用・税金を差し引いて本人の手元に残る額(手取り)、残る債務、実現の見込み、資金化までの時間と負担で比べることが大切です。結論は、持分の割合、共有になった経緯、借入れと担保、居住者の有無などの個別事情によって変わります。
共有者が反対していても売却する方法はあるか
共有不動産を処分し、又は共有を解消する主な方法は次のとおりです。このうち価格賠償は、共有者の一人又は数人が不動産を取得し、ほかの共有者に持分の価格を支払う分け方です。方法ごとに、成立の条件と、本人が負う費用や債務の扱いが異なります。
| 解決方法 | 成立の条件 | 確認すべき負担 |
|---|---|---|
| 全員の合意による売却 | 共有者全員が売却と価格・条件に合意し、売主として契約と登記の手続に加わること | 仲介手数料などの売却費用、借入れの返済と担保の抹消、共有者ごとの税金 |
| 自分の持分の売却 | ほかの共有者の同意は原則として不要。ただし、買主が見つかり、価格と条件に合意できること | 全体の価格に持分の割合を掛けた額を下回り得ること、借入れや保証が残るか、減額・解除の条件 |
| 現物分割 | 協議で合意するか、裁判所がこの方法による分割を命じること。土地を区画して分けられること | 測量・分筆・登記の費用、接道や形状による価値の低下、建物の扱い |
| 価格賠償 | 協議で合意するか、裁判所がこの方法による分割を命じること。いずれの場合も、価格の評価と、取得する共有者の資金の裏付けが前提になること | 評価や鑑定の費用、取得する共有者の資金調達、支払の確保 |
| 競売 | 裁判所が、現物分割や価格賠償では分割できない、又は分割によって価格が著しく減少するおそれがあると判断して競売を命じ、その後に競売を申し立てること | 売却の価格と時期が決まっていないこと、申立手数料・予納金などの費用、手続の期間 |
全員で売る場合と自分の持分だけを売る場合
物件全体を売って買主に所有権を移すことは、ほかの共有者の持分まで処分することを意味します。持分の価格の過半数で決められるのは共有物の管理に関する事項であり(民法第252条第1項)、共有物に変更(形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除きます)を加えるにも、ほかの共有者の同意が必要とされています(同法第251条第1項)。物件全体の売却は持分の過半数による多数決では決められず、原則として共有者全員が売主として売買契約と登記の手続に加わる必要があります。
これに対し、自分の持分は、原則としてほかの共有者の同意がなくても売ることができます。ただし、次の点に注意が必要です。
- 買主と価格:持分だけを買った人は、物件を単独で自由に使ったり売ったりできません。そのため、買主が見つからないことや、全体の価格に持分の割合を掛けた額を下回る価格になることがあります。
- 借入れと保証:持分を売っても、借入れや保証の負担が当然になくなるわけではありません。担保の抹消や債務の精算の条件を、金融機関などに確認する必要があります。
- 持分の性質:持分は物件全体に対する割合であり、土地の特定の部分(たとえば東側の半分)を指すものではありません。
- 譲渡の制限:法令や共有者間の契約によって、譲渡が制限されていないかも確認します。
持分を買い受けた人は新たな共有者として、ほかの共有者と協議し、分割を請求する立場に立つため、家族の関係への影響も含めて検討してください。なお、共有者の所在が分からない場合は、反対している共有者がいる場合とは前提が異なるため、別途の検討が必要です。このほか、離婚に伴う財産分与、農地、マンションなど区分所有建物の共用部分・敷地の分離処分の制限、法人が所有する不動産、共有者の破産、境界の確定、相続税の特例が関係する場合も、この記事とは別の検討が必要です。
相続した不動産は遺産分割が済んでいるかを確認
相続で共有名義になった不動産は、遺産分割が済んでいるかどうかで手続が変わります。遺産分割によって兄弟姉妹がそれぞれ持分を取得した場合のように、遺産分割を経て共有になった不動産は、通常の共有として扱います。これに対し、相続人の間で遺産分割をすべき不動産や持分は、原則として共有物分割の対象にならず(遺産共有に関する民法第258条の2第1項)、遺産分割の協議や、家庭裁判所の遺産分割の手続(同法第907条)で分けることになります。
法定相続分どおりの相続登記がされていても、遺産分割が済んでいるとは限りません。登記事項証明書の名義だけで判断せず、遺産分割協議書や、家庭裁判所の調停調書・審判書があるかを確認してください。遺産分割が済んでいない場合の進め方は、相続した不動産を換価分割する手続と税務で解説しています。
相続開始から10年を経過した場合の例外(同法第258条の2第2項)は、通常の共有の持分と、遺産分割が済んでいない持分が、同じ不動産に併存する場合のものです。不動産全体が遺産分割未了のままであれば、10年が経過しただけで共有物分割の手続に切り替えることはできません。また、例外の対象となる場合でも、その持分について遺産分割の請求があり、相続人が、共有物分割の請求を受けた裁判所からその旨の通知を受けた日から2か月以内に、その裁判所に異議を申し出たときは、例外は使えません(同項ただし書・同条第3項)。
共有物分割では現物分割・価格賠償・競売を検討する
各共有者は、原則としていつでも共有物の分割を請求できます。ただし、共有者の間で5年を超えない期間は分割しない旨の契約をしている場合は、その期間中は分割を請求できません。この契約は更新できますが、更新後の期間も、更新の時から5年を超えることはできません。協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、裁判所に分割を請求できます(民法第256条・第258条)。
現物分割と価格賠償
現物分割は、土地を区画して共有者ごとに分ける方法です(民法第258条第2項第1号)。面積を持分どおりに分けられるかだけでなく、分けた後の各区画が道路に接しているか、形が使いやすいか、建物があるかによって、分けた後の価値は大きく変わります。測量や分筆登記の費用もかかるため、建物が建っている土地や面積の小さい土地では、現物分割が適さないことがあります。
価格賠償は、民法等の一部を改正する法律(令和3年法律第24号。共有に関する改正は令和5年4月1日施行)により、「共有者に債務を負担させて、他の共有者の持分の全部又は一部を取得させる方法」として、現物分割と並んで条文に定められました(民法第258条第2項第2号)。裁判所は、分割の裁判の中で、金銭の支払や登記義務の履行などを命じることもできます(同条第4項)。
改正前の民法第258条は、価格賠償の方法を定めていませんでした。この時期の最高裁平成8年10月31日判決(最高裁判所第一小法廷・平成3年(オ)第1380号・民集50巻9号2563頁)は、共有物の性質・形状、共有になった経緯、共有者の数と持分の割合、利用の状況、分割した場合の経済的価値、分け方についての各共有者の希望とその合理性などを総合的に考慮し、特定の共有者に取得させるのが相当で、価格が適正に評価され、取得する者に支払能力があり、ほかの共有者に持分の価格を取得させても共有者間の実質的公平を害しないと認められる特段の事情があるときは、共有物を一人又は数人の所有とし、取得する者からほかの共有者に対して持分の価格を賠償させる方法(全面的価格賠償)による分割も許されるとしました。
この事案では、建物が敷地のほぼ全体を占めて現物分割ができず、共有者の一人がその建物を長年生活の本拠としていた一方、ほかの共有者は競売による分割を希望していました。最高裁判所は、その共有者に取得させること自体は相当でないとはいえないとしつつ、実質的公平を害しないためには賠償金を支払う者に支払能力があることを要するとして、支払能力を確定しないまま価格賠償を命じた原審の判断を是認せず、原判決のうち共有物分割に関する部分を破棄して高等裁判所に差し戻しました(差戻し後の結論は、この記事では扱いません)。
この判決は改正前の条文の下での判断です。もっとも、誰に取得させるのが相当か、価格の評価が適正か、取得する共有者に支払う資金があるか、共有者間の公平を害しないかという視点は、現行法の下で分け方を検討するうえでも重要な判断材料になると考えられます。「自分が取得したい」という希望や、ほかの共有者の希望だけで、分け方が決まるわけではありません。取得を希望する側は、評価の根拠と、融資の見込みなど支払の裏付けを示せるかが問われます。
競売になる条件と換価までの手続
裁判所が競売を命じることができるのは、現物分割や価格賠償の方法では分割することができないとき、又は分割によって価格が著しく減少するおそれがあるときです(民法第258条第3項)。反対する共有者がいるからといって、直ちに競売になるわけではありません。また、現行の条文は現物分割と価格賠償を並べて定めており、現物分割、価格賠償、競売の順に手続を一つずつ試していく仕組みではありません。
競売を命じる判決が確定しても、それだけで売却されるわけではありません。確定判決などに基づいて、改めて裁判所に競売(いわゆる形式的競売)を申し立てる必要があります。裁判所の形式的競売の案内では、申立手数料(4,000円)のほか、民事執行の予納金や登録免許税などが必要とされており、予納金の額は申立先の裁判所によって異なります。競売で実際にいくらで売れるか、いつ売れるか、買受人が現れるかは、手続を進めるまで分かりません。
交渉は売却条件と資金の裏付けをそろえて進める
反対理由を価格・居住・資金・費用負担に分ける
反対の理由は一つとは限りません。価格に納得していないのか、住み続けたいのか、資金の事情があるのか、費用の負担に不満があるのかを分けて聞き取ると、提案の内容を具体的にしやすくなります。
- 価格:同じ物件情報と時点を前提にした査定を共有し、売出価格と、一定の期間売れないときに価格を見直す条件をあらかじめ決めておきます。査定額は、その価格で売れることを保証するものではありません。
- 居住:住んでいる共有者がいる場合は、退去の時期と引越しの準備期間、それまでの使用の対価(民法第249条第2項)の扱いを話し合います。鍵の交換や荷物の搬出などで一方的に退去させることは、別の紛争を招くため避けてください。占有をめぐる問題は、相続人が住み続ける実家の明渡しと使用対価で解説しています。
- 資金:反対している共有者が自ら取得を希望する場合は、買い取る価格と、融資の事前審査など資金の裏付けを確認します。
- 費用負担:仲介手数料、測量費、固定資産税等の精算方法を決めておきます。譲渡所得の税金は共有者ごとに計算されることも、あらかじめ共有しておくと話を進めやすくなります。
評価の考え方は、遺産分割における不動産評価と代償金でも整理しています。ただし、遺産分割での代償金と、共有物分割で共有者の一人が取得する場合の支払(価格賠償)は、別の制度です。
合意できない場合の訴訟と手続選択
協議が調わないとき、又は協議をすることができないときの分割の請求は、ほかの共有者を相手に、共有物分割の訴え(共有物分割訴訟)を起こして行います(民法第258条第1項)。協議を何回行えばよいという決まりはなく、話合いの場として裁判所の調停を利用することもできますが、訴えの前に経ることが法律上求められている手続ではありません。
もっとも、実務上は、価格や条件を示した書面で協議を申し入れ、回答の内容や期限を記録しておくと、協議が調わなかった経緯や各共有者の意向を説明しやすくなります。法律上の要件と、交渉をどの順序で進めるかという実務上の判断は、分けて考えてください。なお、不動産全体が遺産分割未了の場合は、共有物分割の訴えではなく、遺産分割の協議や家庭裁判所の手続で解決します。
神戸市内の不動産でも、申立先は手続ごとに確認が必要です。兵庫県内の裁判所の管轄区域では、須磨区・垂水区は神戸地方裁判所本庁の区域とされ、明石市と神戸市西区は明石支部の区域とされていますが、不動産競売は神戸地方裁判所本庁で取り扱うと案内されています。共有物分割の訴えをどの裁判所に起こすかは、訴額や相手方の住所なども踏まえて確認します。遺産分割は家庭裁判所の手続です。
共有物分割にかかる費用と手取りを比較する
裁判費用・鑑定費用・売却費用・弁護士費用
費用は、選ぶ方法によって要否が変わります。どの案にも同じ費用を一律に加えるのではなく、その案で実際に生じる費用を、発生する場面と負担する人に分けて見積もってください。
| 費用項目 | 発生場面 | 確認事項 |
|---|---|---|
| 弁護士費用 | 相談、交渉、訴訟、競売の申立てなど、依頼する段階ごと | 段階ごとの着手金・報酬金の算定方法と、追加費用の有無を、見積りと委任契約書で確認します |
| 裁判所の手数料等 | 共有物分割の訴えの提起、競売の申立て | 訴えの手数料は、訴額、申立ての方法(書面又は電子)、被告の数などで異なります。競売では申立手数料のほか、予納金や登録免許税などがかかります |
| 不動産鑑定の費用 | 価格に争いがあり、鑑定を行う場合 | 予納が必要となることがあり、予納した額と最終的な負担額は一致するとは限りません。同じ鑑定や評価の費用を、ほかの項目と二重に数えないようにします |
| 測量・分筆・登記の費用 | 現物分割を行う場合や、売却に測量が必要な場合 | 現物分割を選ばない場合は、不要なこともあります |
| 仲介・契約・担保抹消の費用 | 物件全体又は持分を売却する場合 | 売主が負担する範囲、抵当権の抹消に必要な返済額と手続の費用、売買契約書の印紙代を確認します |
| 保有を続ける間の費用 | 解決までの期間 | 固定資産税等、借入れの利息、管理や修繕の費用を、比べる案どうしで期間をそろえて見込みます |
裁判所に納める手数料は、裁判所の手数料案内で確認できます。以前の一覧表の金額をそのまま当てはめず、申立ての時点の案内で確認してください。弁護士費用の額は、依頼の範囲や事案の内容によって異なるため、弁護士費用のページを確認のうえ、ご相談の際に見積りでご確認ください。
残債を精算した税引前手取りの計算例
方法を比べるときは、売却価格ではなく、最終的に本人の手元に残る額で比べます。計算の考え方は次のとおりです。
本人の手取り=本人に配分される代金(費用を差し引く前の額)-本人が精算する残債-本人が負担する売却・手続の費用-本人の税金
共通の費用を差し引いた後の配分額を使う場合は、同じ費用を重ねて差し引きません。買主から借入れの返済後の額として示された金額から、残債をもう一度差し引くこともしません。解決までの期間に支払う固定資産税等や追加の利息は、比べる案どうしで期間をそろえて考えます。借入れの負担や代金の配分、費用の負担が決まっていない段階の計算は、暫定的なものとして扱ってください。
持分を移しても、借入れの債務が当然に移るわけではありません。持分の割合と借入れの負担の割合は一致するとは限らず、当事者の間で「取得する人が返済する」と決めただけでは、金融機関との関係で元の債務者が債務を免れるとはいえません(債務を引き受けた人だけが債務者となるには、債権者の関与が必要です。民法第472条)。担保の対象と順位、必要な返済額、抹消の条件、連帯債務や保証が残るかを、金融機関などに確認してください。
次の計算例は説明のための仮定であり、当事務所の取扱実績や相場、料金を示すものではありません。前提は次のとおりです。
- 共有者と持分:共有者は2名で、持分は2分の1ずつです。
- 売却の条件:物件全体を3,000万円で売却でき、仲介手数料などの共通の売却費用が120万円かかるものとします。
- 借入れ:借入れは合計600万円で、本人が精算する額を300万円とします。この300万円の精算によって、比べるいずれの案でも、本人について必要な担保の処理と債務の精算が完了し、借入れや保証の負担が残らないことを金融機関などと確認できた場合に限った前提です。持分が2分の1だから返済も半分になる、と推認したものではありません。
- 費用と税金:費用は本人が実際に支払う額として仮に置き、消費税がかかる費用は税込みの想定額とします。税金と、解決までの保有費用(固定資産税等や利息)は含めていません。
| 方法 | 計算 | 税引前手取り |
|---|---|---|
| ①全員合意の全体売却 | 自主交渉で実現できた場合:(3,000万円-120万円)×2分の1-300万円 | 1,140万円 |
| ②①に弁護士費用等を加算 | ①と同じ売却条件で、本人の弁護士費用等を仮に60万円とした場合:1,140万円-60万円 | 1,080万円 |
| ③持分の売却 | 買取価格800万円、本人負担の売却費用20万円の場合:800万円-20万円-300万円 | 480万円 |
税引前の手取りは、②が③より600万円、①が③より660万円多くなり、②は①より60万円少なくなります。ただし、①と②は、反対している共有者が全体の売却に同意した場合の数字です。反対が解消しない段階で、①や②を実現できる案として扱うことはできません。②の60万円は説明のための仮定であり、料金の案内ではありません。また、②は弁護士が関与して合意による売却に至った場合を仮定したもので、訴訟で得られる額や競売の結果を予測したものではありません。③は、金融機関が持分の売却に際して300万円の精算で担保の抹消などに応じることが前提であり、応じない場合はこの計算を使えません。税金、保有を続ける間の費用、解決までの時間、実現の見込みが異なれば、優劣が入れ替わることもあります。共有者の一人が取得する方法(価格賠償)や競売による場合の金額は、別に評価が必要なため、この計算例には含めていません。
②と③の差の600万円を、「弁護士に依頼すると600万円増える」と読むことはできません。比べるべきなのは、実際に選ぶことのできる別の案との差であり、そこから追加の費用、税金、保有を続ける間の費用、解決までの時間と結果の見通しを考える必要があります。売却代金の全額や持分の評価額の全額を、依頼による効果とみることもできません。なお、ここでの比較の数字と、委任契約で弁護士報酬を算定する基礎となる「経済的利益」は別のものです。報酬の算定方法は、見積りと委任契約の内容で確認してください。
税引後の手取りは別に確認する
計算例は、税金を差し引く前の手取りです。不動産や持分を売った場合の税金(譲渡所得の課税)は、手取りとは別の計算で求めます。譲渡所得の金額は、売った金額から取得費と譲渡費用を差し引いて計算するのが基本で、特別控除などの特例は、要件を満たす場合に限って適用されます(国税庁「No.3202 譲渡所得の計算のしかた(分離課税)」)。
手取りの計算で差し引いた借入金の返済額を、そのまま取得費や譲渡費用として差し引けるわけではありません。そのため、返済に充てて手元に現金がほとんど残らなくても、譲渡所得が生じて税金がかかることがあります。取得費と譲渡費用に当たるものは、国税庁「No.3252 取得費となるもの」と「No.3255 譲渡費用となるもの」で確認できます。建物の取得費は、所有していた期間の減価償却費に相当する額を差し引いて計算します。相続で取得した不動産は、原則として、亡くなった方の取得費と取得の時期を引き継ぎます(「No.3270 相続や贈与によって取得した土地・建物の取得費と取得の時期」)。弁護士費用などの支出をどこまで差し引けるかは、支出の目的や内容によって異なるため、一律にはいえません。
現物分割については、個人が共有する一つの土地を持分に応じて現物で分けた場合、その分割による土地の譲渡はなかったものとして取り扱われます。分割後の面積の比が持分の割合と異なっても、分割後の価額の比が持分の割合におおむね等しければ、持分に応じた現物分割に当たるとされています(所得税基本通達33-1の7)。この取扱いを、共有者の一人が取得して代金を支払う方法、持分の売却、遺産分割での代償分割に、そのまま当てはめることはできません。税額や特例の適用は、各共有者の取得の経緯や居住の状況などによって異なるため、共有者ごとに税理士又は税務署に確認してください。
持分買取業者と契約する前に確認したいこと
提示価格より契約条件と精算後の受領額を確認
持分の買取りは、ほかの共有者と合意できない場合でも資金化を図る手段になり得ます。一方で、提示価格だけで判断すると、減額の条件や費用の負担、残債の精算によって、実際に受け取る額が想定と異なることがあります。業者を一括りに評価するのではなく、個々の契約の条件と、費用や残債を精算した後に実際に受け取れる額で比べてください。署名する前に契約書の案の写しを受け取り、次の点を確認することをおすすめします。
- 対象となる持分:どの土地・建物の、どの割合の持分か。複数の不動産がある場合に、すべてが含まれているか。
- 契約の当事者と形態:買主は誰か。業者自身による買取りか、仲介による売却か。
- 買主の資金:決済に必要な資金の裏付けがあるか。
- 減額の条件:調査の結果や決済の前に、価格を下げる条件が付いていないか。
- 費用の負担:仲介手数料、登記費用、測量費、印紙代などを誰が負担するか。
- 債務と保証:借入れの返済と担保の抹消の段取り、保証や連帯債務が残らないか。
- 決済と登記の手順:代金の支払と持分の移転登記を、どの順序で行うか。
- 契約不適合責任:売主として負う責任の範囲と期間。
- 解除と違約金:解除できる場合と、違約金の額。
- ほかの共有者への連絡:買主が、ほかの共有者にいつ、どのように連絡するか。
訴訟を選んでも手取りが改善しにくい場合
次のような事情があると、訴訟などの費用と時間をかけても、手取りが改善しにくいことがあります。
- 価格が低い不動産:裁判所の手数料、鑑定、弁護士費用などの負担が、見込める差額に比べて大きくなることがあります。
- 共有者が多い場合:協議や訴訟の当事者が増え、手続の負担や費用が増えることがあります。
- 担保の負担が重い場合:売却代金の多くが残債の精算に充てられ、手元に残る額が限られることがあります。
- 取得を希望する共有者に資金がない場合:価格賠償が難しく、競売を命じられる可能性も考える必要があります。
- 占有や接道などの問題がある場合:第三者が住んでいる、道路に十分に接していないなどの事情は、売却の価格や買い手の範囲に影響します。
弁護士に依頼すれば常に手取りが増えるわけではありません。持分の売却や、条件を見直した合意も含めて、実際に選べる案どうしを手取りで比べ、訴訟を選ぶ場合は費用倒れにならないかを見積りの段階で確認してください。
よくある質問
持分の過半数があれば、物件全体を売ることができますか。
できません。持分の価格の過半数で決められるのは共有物の管理に関する事項であり、物件全体の売却はほかの共有者の持分の処分を伴うため、原則として共有者全員の合意が必要です。合意できない場合は、自分の持分の売却や、共有物分割の請求を検討します。
裁判で、反対している共有者に不動産を買い取らせることはできますか。
共有者の一人が取得してほかの共有者に代金を支払う方法は、法律上の分割方法の一つです。ただし、取得する共有者の希望や支払能力、価格の評価、共有者間の公平などを踏まえて裁判所が判断するため、請求する側の希望どおりになるとは限りません。
相続から10年が経てば、共有物分割訴訟を使えますか。
10年経過後の例外は、通常の共有の持分と遺産分割が済んでいない持分が併存する場合に限られます。不動産全体が遺産分割未了であれば、10年が経っても遺産分割の手続によります。例外の対象となる場合でも、その持分について遺産分割の請求があり、相続人が、共有物分割の請求を受けた裁判所からの通知を受けた日から2か月以内に、その裁判所に異議を申し出たときは、例外は使えません。
費用をかけても、手取りが増えないことはありますか。
あります。不動産の価格が低い場合、借入れの負担が重い場合、取得を希望する共有者に資金がない場合などは、費用と時間に見合う改善が得られないことがあります。実際に選べる案どうしを、費用・残債・税金を差し引いた手取りで比べて判断します。
共有不動産の売却について相談する前に
ご相談の際は、次の資料があると、権利関係と選択肢を具体的に検討しやすくなります。すべてがそろっていなくても構いません。裁判所からの通知や、買取業者との契約の期限などがある場合は、資料がそろうのを待たずに、その日付を先にお伝えください。
- 登記事項証明書:持分の割合、担保の有無、名義を確認します。
- 売買契約書、遺産分割協議書など:共有になった経緯を確認します。
- 不動産会社の査定書:物件全体の価格の目安を確認します。同じ前提による2社程度の査定があると比べやすくなりますが、法律上必要なものではありません。
- 借入れの残高証明書、金銭消費貸借契約書など:精算の条件と、保証や連帯債務の有無を確認します。
- 賃貸借契約書、居住の経緯が分かる資料:引渡しができるかを確認します。
- 買取業者の提案書、契約書の案:実際に受け取る額と、売主として負う責任の範囲を確認します。
- 共有者とのやり取りの記録:反対の理由と協議の経過を確認します。手紙やメールなど、ご自身が適法に保有している原本を、手を加えずに保存してください。
- 固定資産評価証明書:固定資産税の評価額を確認します。時価の査定とは別のものです。
- 取得時の売買契約書や領収書など:譲渡所得の計算に使います。
共有不動産の売却・分割のご相談
共有者の反対で売却が進まない場合や、持分の買取りを提案されている場合は、物件の所在地、ご自身とほかの共有者の持分、共有になった経緯、査定や買取りの提示額、借入れの残高、居住・賃貸の状況、希望する解決の方法(全体を売りたい、自分が取得したい、持分を手放したいなど)をうかがい、どの方法で進めるかを、手取りと実現の見込みの観点から検討します。契約書に署名する前に、一度ご確認ください。
ご相談の前に、相手方となる共有者のお名前などをうかがい、利益相反の有無を確認します。その結果、ご相談やご依頼をお受けできない場合があります。相談予約フォームを送信しただけでは、相談の日時やご依頼が確定するものではありません。
事務所紹介
このコラムは、弁護士法人ひょうご支所 神戸みらい法律会計事務所が掲載しています。所属する弁護士の氏名・資格・所属弁護士会は、弁護士紹介のページでご確認いただけます。
参考資料
この記事は、共有不動産の売却と共有物分割に関する一般的な情報をまとめたものです。実際の結論は、権利関係、借入れと担保の内容、各共有者の事情などによって異なります。記載の内容は、令和8年(2026年)10月27日時点の法令・公的資料に基づきます。

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