取引先から労務費・原材料費・エネルギー費の上昇を理由に価格改定(値上げ)を求められたものの、社内でどこまで応じるべきか、どのように回答すべきか迷っている発注担当者の方は少なくありません。反対に、コスト上昇分の価格転嫁を求めたいのに、発注者から理由の説明もなく単価を据え置かれている、要請を先延ばしされている、という受注者の方もいらっしゃいます。
令和8年1月1日に施行された取適法(中小受託取引適正化法)では、価格協議の求めがあったにもかかわらず、協議に応じず、必要な説明もせずに一方的に代金を決めるような対応が、問題となる可能性があります。本記事では、発注者(委託事業者)と受注者(中小受託事業者)の双方に向けて、何が問題になり得るのか、社内で何を整え、どの資料をそろえ、どのタイミングで弁護士に相談すればよいのかを、公正取引委員会・中小企業庁などの公的資料に基づいて整理します。
なお、本記事は公的資料に基づく一般的な解説です。ある取引が取適法の対象となるか、ある対応が違反となるかは、取引内容、当事者間の力関係、協議の経過、説明内容、価格決定のプロセス、証拠関係などの個別事情により結論が変わります。最終的な判断は、資料を確認したうえで個別に検討する必要があります。
この記事で分かることは次のとおりです。
- 取適法(旧下請法)で何が変わったのか、施行日と対象取引の考え方
- 「協議を適切に行わない一方的な代金決定の禁止」とは何か、買いたたきとの違い
- 発注者・委託事業者が整備すべき社内対応と部署ごとの役割
- 受注者・中小受託事業者が準備すべき根拠資料と協議の進め方
- 発注者・受注者それぞれの「やってはいけない対応例」
- 価格協議の実務フローと、相談前にそろえておきたい資料
自社の取引が取適法の対象となるか、価格協議への対応や記録の残し方をどう整えるべきか、判断に迷う場面は少なくありません。協議経過の整理や社内体制の見直しについて、弁護士に相談することで、対応方針と必要資料を整理できます。
Contents
価格転嫁の協議でまず確認したい結論
細かい制度の説明に入る前に、発注者・受注者それぞれが最初に押さえておきたい要点を整理します。
発注者・委託事業者が押さえるべき要点
- 価格協議の求めがあった場合、無視・放置・理由を示さない据置きは避け、実質的な協議と説明を行い、その経過を記録しておくことが重要です。
- ただし、受注者の希望額を必ず全額受け入れなければならないわけではありません。受け入れられない部分があるときは、その理由と根拠を示し、協議の経過を記録に残すことが望まれます。
- 対応は調達・購買部門だけで完結させず、法務・経理・事業部・経営層を含めた社内フローとして整える必要があります。
受注者・中小受託事業者が押さえるべき要点
- 価格改定を求める際は、対象となる取引、現行単価と希望単価、コスト上昇の根拠資料、協議を求めた記録を整理しておくことが望ましいといえます。
- 希望額が必ず認められるわけではありませんが、協議を求めたこと、その経過、相手方の回答を形に残しておくことが、後の交渉や相談の手がかりになります。
- 協議を求めても無視・先延ばし・理由のない据置きが続く場合は、弁護士や公的相談窓口に相談することで、対応方針を整理できます。
取適法とは何か
旧下請法から取適法への変更
従来「下請法」と呼ばれてきた法律の正式名称は「下請代金支払遅延等防止法」(昭和31年制定)でした。令和7年5月16日に改正法が成立し、同月23日に公布されたことで、法律の正式名称は「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」に改められ、略称は「中小受託取引適正化法」、通称は「取適法(トリテキ法)」となりました。
背景には、労務費・原材料費・エネルギーコストの上昇局面において、サプライチェーン全体で適切な価格転嫁を定着させる必要があるという問題意識があります。協議に応じない一方的な価格決定など、価格転嫁を阻害し受注者に負担を押しつける商慣習を改めることが、改正の趣旨の一つとされています。
用語の変更
改正に伴い、「下請」という語感への指摘を踏まえて、主要な用語が次のように変更されました。本記事でも、原則として改正後の用語を用います。
| 改正前(旧下請法) | 改正後(取適法) |
|---|---|
| 親事業者 | 委託事業者(発注者) |
| 下請事業者 | 中小受託事業者(受注者) |
| 下請代金 | 製造委託等代金 |
| 3条書面(発注時の書面交付) | 4条明示 |
| 5条書類(取引記録の作成・保存) | 7条記録 |
施行日と適用される取引
取適法は令和8年1月1日から施行されます。公正取引委員会の公表によれば、令和8年1月1日以降に発注する取引について、取適法の規定(禁止行為等)が適用されます。したがって、施行日をまたぐ継続的な取引では、いつ発注した取引かによって適用関係が異なり得る点に注意が必要です。
対象取引・適用基準の確認が必要
取適法が適用されるかどうかは、取引の内容(製造委託・修理委託・情報成果物作成委託・役務提供委託・運送委託など)と、当事者の規模要件によって判断されます。規模要件は、従来の資本金基準に加えて、改正により新たに従業員基準が追加されました。
資本金基準(製造委託・修理委託の場合)の例としては、委託事業者が資本金3億円超で中小受託事業者が3億円以下、または委託事業者が資本金1000万円超3億円以下で中小受託事業者が1000万円以下、といった区分があります。情報成果物作成委託・役務提供委託では、3億円が5000万円に置き換わる区分が用いられます。
従業員基準は、製造委託等で従業員数300人、役務提供委託等で従業員数100人が基準とされ、資本金基準が適用されない場合に適用されます。「常時使用する従業員」は賃金台帳に記載されている従業員(正社員、契約社員、パート・アルバイト、1か月を超えて引き続き使用される日雇い労働者など)で数え、派遣社員は派遣元が使用者となるため含まれません。
自社の取引が対象となるかは、取引類型と規模要件を個別に確認する必要があります。建設工事、フリーランスとの取引、労働者派遣、士業との契約など、適用関係が問題になりやすい取引もあるため、判断に迷う場合は公正取引委員会のよくある質問コーナーを確認するか、弁護士に相談することが考えられます。
協議を適切に行わない一方的な代金決定の禁止とは
新設された禁止行為の考え方
今回の改正で、対等な価格交渉を確保する観点から、「協議を適切に行わない代金額の決定の禁止」(新第5条第2項第4号)が新設されました。公正取引委員会は、これを「協議に応じない一方的な代金決定の禁止」とも表現しています。
具体的には、中小受託事業者から価格協議の求めがあったにもかかわらず、委託事業者が協議に応じなかったり、必要な説明を行わなかったりするなどして、一方的に代金を決定し、中小受託事業者の利益を不当に害する行為が問題となり得ます。
買いたたきとの違い
従来から禁止されている「買いたたき」と、新設された「協議を適切に行わない一方的な代金決定の禁止」は、着目する点が異なります。両者を混同しないことが重要です。
| 項目 | 買いたたき | 協議を適切に行わない一方的な代金決定の禁止 |
|---|---|---|
| 着目点 | 対価(代金額そのもの) | 交渉プロセス(協議の有無・内容) |
| 問題となる場面 | 通常支払われる対価(市価)に比べて著しく低い代金を不当に定める場合 | 協議の求めに応じない、必要な説明をしないなどして一方的に代金を決める場合 |
| 判断の手がかり | 市価との乖離、対価の水準 | 協議の経過、説明の内容、価格決定の進め方 |
つまり、代金額の水準そのものに着目するのが買いたたき、価格をどのように決めたかという過程に着目するのが新設規定です。一つの対応が、両方の規定に同時に関係する場合もあります。たとえば、手形払を現金払に変更する際に、一方的に従前の単価から一定率を割引料として引き下げて代金を定めることや、振込手数料の負担を委託事業者に変更する際に、一方的に従前の代金から振込手数料相当額を引き下げることは、公正取引委員会の資料において、買いたたき又は協議に応じない一方的な代金決定の禁止に該当するおそれがあると整理されています。
「協議をした」といえるかどうかの判断ポイント
形式的に面談を一度行った、メールを一通返した、というだけで、ただちに十分な協議をしたと評価されるとは限りません。協議の実質が伴っているかは、次のような点から検討されると考えられます。
- 受注者の求めに対し、価格を据え置く・引き上げない理由を、根拠とともに説明しているか
- コスト上昇の状況について、受注者の説明を確認し、検討しているか
- 「予算がない」「社内決裁が通らない」といった一方的な事情の伝達だけで終えていないか
- 回答を先延ばしにしたり、要請を放置したりしていないか
- 協議の経過や結論を、記録として残しているか
希望額を受け入れない場合の説明と記録化
繰り返しになりますが、協議に応じることと、受注者の希望額を全額受け入れることは同じではありません。発注者が、検討の結果として希望額の一部または全部を受け入れられないと判断すること自体が、ただちに問題となるわけではありません。重要なのは、受け入れられない場合に、その理由と根拠を示し、協議の経過を記録に残しておくことです。説明と記録化を欠いたまま一方的に据え置くと、協議を適切に行わなかったと評価されるおそれがあります。
「協議をした」といえる対応がどの程度のものか、希望額を受け入れない場合にどのような説明と記録が必要かは、取引の状況により異なります。自社のケースに即して、対応方針や残すべき記録を整理したい場合は、弁護士への相談が有効です。
発注者・委託事業者側が整備すべき社内対応
発注者側は、価格協議への対応を担当者個人の判断に委ねるのではなく、社内のフローと記録の仕組みとして整えることが望まれます。整備すべき項目と担当部署の目安を整理します。
| 整備すべき項目 | 主な内容 | 主に関わる部署 |
|---|---|---|
| 対象取引の棚卸し | 取適法の対象となり得る取引・取引先を洗い出す | 調達・購買、法務 |
| 規模要件の確認方法 | 取引先の資本金・従業員数の確認手順を定める(確認義務はないが判別が必要な場合の対応) | 調達・購買、法務 |
| 取引類型の確認 | 製造委託・役務提供委託・運送委託などの区分を確認する | 調達・購買、事業部 |
| 価格改定要請の受付窓口 | 要請の受付先と一次対応者を明確にする | 調達・購買 |
| 回答・対応期限の社内ルール | 要請を放置・先延ばししないよう、対応期限を定める | 調達・購買、法務 |
| 協議日程の調整 | 協議の場を設定し、担当者を決める | 調達・購買、事業部 |
| 根拠資料の求め方 | 必要な範囲で根拠資料を求める。過度に詳細な内部資料を求めない配慮をする | 調達・購買、経理 |
| 公表資料の活用 | 最低賃金・各種統計など公表資料を用いて協議する | 調達・購買、経理 |
| 協議経過の記録・保存 | 議事録、メール、社内決裁資料を作成・保存する | 調達・購買、法務 |
| 受け入れない場合の理由説明 | 受け入れられない部分の理由と根拠を示す | 調達・購買、経理、事業部 |
| 契約・帳票の見直し | 取引基本契約、発注書、単価表、注文書、検収書、支払条件を点検する | 法務、調達・購買 |
| 担当者研修 | 調達・購買担当者に取適法対応を周知する | 法務、人事 |
| 経営層への報告 | 協議状況・リスクを経営層に報告する | 経営層、法務 |
| 定期的な協議の声かけ | 継続取引先に対し、定期的に価格協議の機会を設ける | 調達・購買、経営層 |
| 紛争化時の相談 | 紛争化のおそれがある場合に弁護士へ相談する | 法務、経営層 |
受注者・中小受託事業者側が準備すべき資料と交渉方法
受注者側は、価格協議を求める前に、対象取引・希望額・根拠資料・記録の準備を整えておくことが望まれます。協議の申入れは、口頭だけでなく、書面やメールなど形に残る方法によることが望ましいといえます。
| 準備する項目 | 主な内容 |
|---|---|
| 協議の申入れ | 価格協議の申入書、メール、見積書など、形に残る方法で求める |
| 対象取引の特定 | 対象となる取引、発注番号、契約書、注文書を明確にする |
| 現行単価と希望単価 | 現在の単価と希望する単価を具体的に示す |
| コスト上昇資料 | 労務費・原材料費・エネルギー費・外注費・物流費などの上昇を示す資料 |
| 客観的な根拠 | 最低賃金、各種統計、公表資料、業界資料などの根拠 |
| 協議経過の記録 | 協議を求めた経緯、やり取りの記録 |
| 相手方の対応記録 | 相手方からの回答、保留、拒否、取引縮小の示唆などの記録 |
| 開示範囲の線引き | 社内で開示できる資料と、開示すべきでない資料を整理する |
| 相談先の確認 | 弁護士、取引かけこみ寺、公的相談窓口に相談するタイミングを検討する |
やってはいけない対応例
発注者・受注者それぞれについて、問題となり得る、または交渉・相談を不利にしやすい対応例を整理します。いずれも個別事情により評価は変わりますが、避けることが望ましい類型です。
| 発注者側で避けたい対応 | 受注者側で避けたい対応 |
|---|---|
| 価格協議のメールを放置する | 口頭だけで価格改定を求め、記録を残さない |
| 「前年同額で決定済み」とだけ伝える | 対象取引や希望額を明確にしない |
| 根拠を示さず「値上げは一切認めない」と回答する | コスト上昇の根拠を全く示さない |
| 過度に詳細な原価資料や内部情報を求める | 相手方の説明を確認せず、すぐに違法と断定する |
| 協議を求めたことを理由に発注停止・取引縮小を示唆する | 相手方に開示すべきでない内部情報まで不用意に開示する |
| 手形払廃止・振込手数料変更に伴うコストを一方的に単価から差し引く | 契約書や注文書を確認しないまま交渉する |
| 購買担当者だけで判断し、法務・経営層に共有しない | 協議経過や相手方の回答を記録に残さない |
価格協議の実務フロー
価格協議は、次のようなステップで進めると、協議の実質と記録化を両立しやすくなります。発注者・受注者のいずれの立場でも参考になります。
- ステップ1:対象取引と契約書・発注書を確認する
- ステップ2:価格改定の要請内容(対象・現行単価・希望額・理由)を文書化する
- ステップ3:協議の日程と担当者を決める
- ステップ4:必要な根拠資料を確認する(過度に詳細な内部資料は求めない)
- ステップ5:受け入れる範囲・受け入れられない範囲・代替案を検討する
- ステップ6:理由と根拠を相手方に説明する
- ステップ7:合意内容、または協議が未了であることの内容を記録する
- ステップ8:結果を単価表・契約書・注文書・社内決裁資料に反映する
- ステップ9:継続的に見直す(定期的な協議の機会を設ける)
契約書・発注書・単価表・社内規程の見直しポイント
取適法への対応を一過性のものにしないために、契約・帳票・社内規程を点検しておくことが望まれます。主な見直しの視点は次のとおりです。
- 調達規程・購買規程:価格改定要請の受付・回答期限・協議手順・記録保存のルールを定める
- 取引基本契約:価格改定の協議条項、単価改定の手続、協議が調わない場合の取扱いを整理する
- 単価表:改定履歴を残し、いつ・どのような協議を経て改定したかを追えるようにする
- 発注書・注文書:4条明示の記載事項を満たしているかを確認する
- 記録保存:協議の議事録、メール、社内決裁資料、7条記録を一定期間保存する体制を整える
各帳票の記載事項や記録の保存期間など、法令で定められた具体的な要件については、公正取引委員会の資料を確認するか、弁護士に確認することをおすすめします。
弁護士に相談するタイミング
弁護士への相談は、結果を保証するものではありませんが、自社の状況に即して、対応方針や必要資料、想定されるリスクを整理する手がかりになります。発注者・受注者それぞれについて、相談を検討したい場面を挙げます。
発注者・委託事業者が相談を検討したい場面
- 価格改定要請が複数の取引先から届いており、対応方針を統一したい
- 価格改定を拒否・一部拒否したいが、説明の仕方に迷っている
- 発注停止・取引縮小・契約解除を検討している
- 取引先から公正取引委員会・中小企業庁・取引かけこみ寺への相談を示唆された
- 取引基本契約書・発注書・単価表・支払条件を見直したい
- 購買・調達部門の社内ルールを整備したい
受注者・中小受託事業者が相談を検討したい場面
- 価格協議を求めたが、無視・先延ばし・理由のない据置きを受けている
- 取引先との関係を維持しながら交渉を進めたい
- 協議経過の記録や根拠資料の整理の仕方に迷っている
- 取引縮小や発注停止を示唆され、対応に迷っている
相談前に準備したい資料
弁護士に相談する際、関係資料がそろっていると、状況の把握と方針の検討が円滑になります。発注者・受注者それぞれについて、準備したい資料を整理します。すべてが必要というわけではなく、手元にあるものから整理すれば足ります。
| 発注者側の資料 | 確認する内容 |
|---|---|
| 取引基本契約書・個別契約書 | 価格・単価・協議に関する条項 |
| 発注書・注文書(4条明示関係) | 記載事項・発注条件 |
| 単価表・見積書・請求書 | 現行単価と改定要請の内容 |
| 検収資料・支払条件資料 | 支払方法・支払期日 |
| 価格改定要請メール・協議議事録 | 協議の経過と相手方の主張 |
| 社内決裁資料・過去の単価改定履歴 | 社内の意思決定と改定経緯 |
| 取引先別の発注実績 | 取引の規模・継続性 |
| 調達規程・購買規程 | 社内ルールの整備状況 |
| 担当者間のメール・チャット | やり取りの記録 |
| 受注者側の資料 | 確認する内容 |
|---|---|
| 取引基本契約書・注文書・発注書 | 取引条件・単価 |
| 請求書・見積書・過去の単価表 | 現行単価と推移 |
| 価格改定要請書・メール | 協議を求めた記録 |
| コスト上昇資料(労務費・原材料費・エネルギー費等) | 値上げ要請の根拠 |
| 最低賃金・統計資料・公表資料 | 客観的な裏付け |
| 発注者の回答メール・協議議事録 | 相手方の対応 |
| 取引縮小・発注停止を示唆された資料 | 不利益取扱いの有無 |
| 売上・粗利・原価推移資料 | 収益への影響 |
| 社内で開示可能な範囲を整理した資料 | 開示・非開示の線引き |
よくある質問
価格協議を求められたら、発注者は必ず値上げに応じる必要がありますか。
必ず希望額に応じる必要があるわけではありません。問題となり得るのは、協議に応じない、必要な説明をしない、理由を示さず一方的に据え置く、といった対応です。受け入れられない部分があるときは、理由と根拠を示し、協議の経過を記録しておくことが望まれます。
メールで「値上げはできません」と一度回答すれば、協議したことになりますか。
一通の回答だけで十分な協議をしたと評価されるとは限りません。据え置く・引き上げない理由を根拠とともに説明し、相手方の説明も確認したうえで検討した経過が残っているかが重要になります。個別事情により評価は異なります。
価格改定の根拠資料は、発注者としてどこまで求めてもよいですか。
協議に必要な範囲で資料を求めること自体は妨げられませんが、過度に詳細な原価情報や内部情報まで求めることは慎重であるべきとされています。最低賃金や各種統計などの公表資料を活用して協議することが望まれます。
受注者は、価格協議をどのように申し入れればよいですか。
対象取引、現行単価と希望単価、コスト上昇の根拠を示したうえで、書面やメールなど形に残る方法で申し入れることが望ましいといえます。協議を求めた事実とその経過を記録しておくことが、後の交渉や相談の手がかりになります。
協議を求めたら取引を減らされそうです。どうすればよいですか。
協議を求めたことを理由に発注停止や取引縮小を示唆する対応は、問題となる可能性があります。やり取りや示唆の内容を記録に残したうえで、弁護士や取引かけこみ寺などの公的相談窓口に相談することが考えられます。
買いたたきと、一方的な代金決定の禁止は何が違いますか。
買いたたきは代金額そのもの(市価との乖離)に着目する規定で、協議を適切に行わない一方的な代金決定の禁止は、協議の有無や内容といった交渉の過程に着目する規定です。一つの対応が両方に関係する場合もあります。
取適法の対象外であれば、価格協議に応じなくても問題ありませんか。
取適法の対象外であっても、独占禁止法上の優越的地位の濫用など、別の規制が問題となる場合があります。また、取引適正化の観点からは、対象の内外にかかわらず協議に応じる姿勢が望まれます。対象該当性の判断自体に迷う場合は、確認が必要です。
社内では、どの部署が対応すべきですか。
調達・購買部門だけでなく、法務、経理、事業部、経営層が関わる体制が望まれます。要請の受付・協議・記録・契約見直し・経営報告といった機能を分担し、担当者個人の判断に委ねない仕組みを整えることが重要です。
弁護士に相談するときは、何を準備すればよいですか。
契約書、発注書・注文書、単価表、見積書・請求書、価格改定要請のメールや議事録、コスト上昇の根拠資料などがあると、状況の把握と方針の検討が円滑になります。手元にあるものから整理すれば足ります。
まとめ
取適法の施行により、価格協議の求めに対する一方的な代金決定が問題となり得ます。発注者・受注者それぞれが、次の行動を検討しておくとよいでしょう。
発注者・委託事業者が次に取るべき行動
- 取適法の対象となり得る取引・取引先を棚卸しする
- 価格改定要請の受付・回答期限・協議・記録のルールを社内で整える
- 受け入れない場合の理由説明と記録化の運用を定める
- 取引基本契約・発注書・単価表・支払条件を点検する
- 調達・購買担当者へ周知し、経営層に状況を報告する
受注者・中小受託事業者が次に取るべき行動
- 対象取引・現行単価・希望単価を整理する
- コスト上昇の根拠資料と公表資料をそろえる
- 協議の申入れと経過を、形に残る方法で記録する
- 無視・先延ばし・理由のない据置きが続く場合の相談先を確認する
いずれの立場でも、判断に迷う場面では、資料を確認したうえで対応方針を整理することが重要です。個別事情により結論は異なるため、必要に応じて弁護士への相談を検討してください。
神戸みらい法律会計事務所では、企業法務・法律顧問の一環として、取引先との価格協議への対応、契約書・発注書・単価表・社内規程の見直し、調達・購買部門の体制整備などのご相談に対応しています。発注者・受注者いずれの立場でも、資料を確認したうえで、対応方針と必要資料を整理できます。
監修・執筆
弁護士法人ひょうご支所 神戸みらい法律会計事務所
所属:兵庫県弁護士会
当事務所は、弁護士業務に加えて会計・税務の視点を踏まえた企業法務に対応しています。取引適正化に関するご相談では、契約・取引記録の整備に加え、コスト構造や価格決定プロセスの整理といった会計的な観点からの検討も行います。
参考資料
※本記事は公的資料に基づく一般的な解説であり、特定の事案についての法的助言ではありません。記載内容は作成時点の情報に基づいており、制度・運用は変更される場合があります。個別の取引に関する判断は、最新の公的資料を確認のうえ、弁護士にご相談ください。

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