社長死亡と会社借入・個人保証|相続放棄前に確認したい要点 |神戸市(須磨・垂水・西神・北神)の弁護士|初回相談無料|弁護士法人ひょうご支所神戸みらい法律会計事務所

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社長死亡と会社借入・個人保証|相続放棄前に確認したい要点

会社を経営していた社長(代表取締役)が亡くなると、残されたご家族や後継者の方は、「会社の借金は自分が払わなければならないのか」「亡くなった社長が保証人になっていた借入はどうなるのか」「決算書にある役員借入金や役員貸付金は相続とどう関係するのか」といった不安に直面します。会社の債務と社長個人の債務、さらに帳簿上の勘定が入り混じり、何をどこまで引き継ぐのかが分かりにくくなりがちです。

結論の方向性を先にお伝えすると、大切なのは、①会社名義の借入(会社の債務)と社長個人の債務(保証・担保など)を分けて考えること、②個人保証・個人担保・役員借入金・役員貸付金という項目ごとに、契約書や決算書を確認して整理すること、③相続放棄を検討しているうちは、故人の財産を処分したり、金融機関の書面に署名押印したりすることを急がないこと、の三点です。

本記事は、会社の借入・個人保証・個人担保・役員借入金・役員貸付金という「債務と貸借対照表」の側面に絞って、相続放棄を検討する前に確認したい点を整理します。代表取締役の死亡後の後任選任・役員変更登記・株式(自社株)の相続については、別の記事で扱っています。なお、結論は契約書・決算書などの資料や個別の事情により異なりますので、最終的には資料を確認したうえで判断する必要があります。

会社の借入や社長個人の保証・担保は、契約書・決算書・登記事項証明書などの資料を確認したうえで、会社の債務と個人の債務を切り分けて検討することが重要です。相続放棄の期限(原則3か月)が関係する場合もあるため、金融機関へ回答したり書面に署名したりする前に、一度資料を整理して見通しを確認しておくことをおすすめします。

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この記事で分かること

  • 会社名義の借入(会社の債務)と、社長個人の債務(個人保証・個人担保)の区別
  • 個人保証・連帯保証が相続の対象になり得る場合と、確認すべき資料
  • 故人の不動産などに会社の借入の担保(抵当権・根抵当権)が付いている場合の考え方
  • 役員借入金と役員貸付金の違いと、相続財産・相続債務との関係
  • 根保証で社長が亡くなった場合の「元本の確定」と、既に発生した保証債務の扱い
  • 相続放棄を検討しているときに注意したい行為(法定単純承認との関係)
  • 相続放棄・準確定申告・相続税に関する3か月・4か月・10か月の期限と起算点

まず押さえたい結論(全体像)

社長の死亡に伴う「お金」の問題は、次のように整理すると混乱を避けやすくなります。

  • 会社名義の借入は、原則として会社の債務です。会社は社長個人とは別の法人格を持つため、会社の借入がそのまま相続人個人の借金になるわけではありません。
  • ただし、社長個人が連帯保証人・保証人・物上保証人(担保提供者)になっている場合、その保証債務や担保の負担は、相続の問題として検討する必要があります。
  • 役員借入金(会社が社長から借りている状態)は、故人側から見ると会社への貸付金債権となり、相続財産に含まれ得ます。役員貸付金(会社が社長へ貸している状態)は、故人側から見ると会社への債務となり、相続債務になり得ます。
  • 相続放棄を検討している間は、故人の財産を処分したり、故人の財産から会社の債務を支払ったり、会社から役員借入金の返済を受けたりすると、単純承認をしたものとみなされる(法定単純承認)おそれがあります(民法921条)。
  • 相続放棄をしても、会社そのもの・担保・株式・他の相続人・税務の問題まですべてが自動的に解決するわけではありません。個別の事情により結論は変わります。
項目 会社から見た性質 故人(相続)から見た性質 相続放棄・相続との主な関係 主な確認資料
会社名義の借入 会社自身の債務 原則として会社の債務(相続と直接は結び付かない) 相続人が当然に個人で支払う債務ではない 金銭消費貸借契約書、返済予定表、決算書
個人保証・連帯保証 会社の借入に対する保証人=故人 故人の保証債務 保証債務として相続の対象になり得る 保証契約書、銀行取引約定書、信用保証協会関係資料、金融機関の通知
個人担保(物上保証) 会社の借入の担保提供者=故人 担保に供した故人の財産(不動産など) 担保付き財産の相続・担保権実行の問題として検討 担保設定契約書、登記事項証明書(不動産登記簿)
役員借入金 会社の債務(会社が故人から借りている) 会社への貸付金債権 相続財産に含まれ得る 決算書、勘定科目内訳書、総勘定元帳、借用書、通帳
役員貸付金 会社の債権(会社が故人へ貸している) 会社への債務 相続債務になり得る 決算書、勘定科目内訳書、総勘定元帳、取締役会・株主総会議事録

まずは、決算書(貸借対照表)と契約書を手元に置き、「これは会社の債務か、社長個人の債務か」「会社が貸しているのか、借りているのか」を一つずつ切り分けることが出発点になります。

会社の借入と社長個人の相続は分けて考える

会社名義の借入は原則として会社の債務

株式会社は、社長個人とは別の法人格を持ちます。会社が金融機関から借り入れた債務は会社自身の債務であり、社長が亡くなっても、その借入がそのまま相続人個人の借金に変わるわけではありません。相続によって相続人が承継するのは、あくまで被相続人(故人)個人に属した権利義務です(民法896条)。会社の借入は、会社が事業を続けるか、清算するか、法人として破産手続をとるかといった会社側の問題として検討することになります。

したがって、「社長が亡くなったので、会社の借金を家族が肩代わりして払う」という前提は、多くの場合そのままでは正確ではありません。相続人個人が会社の借入について責任を負うのは、後述の個人保証や個人担保が付いている場合など、個人としての負担の根拠があるときです。

個人保証・個人担保が付くと相続の問題になる

会社の借入について、社長個人が連帯保証人になっていたり(個人保証)、社長個人の不動産に抵当権などを設定していたり(個人担保・物上保証)する場合、その保証債務や担保の負担は、故人個人に属するものとして相続の対象になり得ます。中小企業の融資では、社長が個人保証をしている例が少なくないため、まずは保証契約書や担保設定契約書の有無を確認することが重要です。

役員借入金と役員貸付金を混同しない

決算書に出てくる「役員借入金」と「役員貸付金」は、名称が似ていますが、向きが逆です。いずれも会社の帳簿から見た名称である点に注意してください。「役員借入金」は会社が役員(社長)から借りている状態、「役員貸付金」は会社が役員(社長)に貸している状態を指します。故人の側から見ると、役員借入金は会社への債権(返してもらえる立場)、役員貸付金は会社への債務(返す立場)となり、相続財産・相続債務としての意味合いが正反対になります。

会社の手続と相続人個人の手続は別

会社の事業をどうするか(継続・廃業・清算・法人破産など)は会社(法人)の手続です。これに対し、相続放棄や限定承認は相続人個人の手続です。両者は次元が異なります。会社が資金繰りに窮していても、それだけで相続人が当然に会社の借入を負担するわけではなく、逆に相続放棄をしても会社の債務や事業の問題が自動的に消えるわけでもありません。

個人保証・連帯保証と相続

会社の借入に社長個人の保証(連帯保証を含む)が付いている場合、その保証債務は故人の債務として相続の対象になり得ます。保証債務のような金銭債務(可分債務)は、原則として各相続人が法定相続分に応じて分割して承継すると解されていますが、契約内容や事案により扱いが異なり得ます。まずは、次の資料で保証の有無・内容・残額を確認する必要があります。

  • 保証契約書、連帯保証契約書
  • 金銭消費貸借契約書、銀行取引約定書
  • 信用保証協会の保証に関する資料
  • 返済予定表、残高証明書、金融機関からの通知書

相続放棄を検討している段階での注意

相続放棄を検討しているうちに、金融機関からの求めに応じて保証債務を承認する書面に署名押印したり、故人の預金など個人財産から保証債務を支払ったりすると、単純承認をしたものとみなされ、相続放棄ができなくなるおそれがあります(民法921条)。金融機関へ回答する前に、保証や担保の内容と相続放棄の可否を確認することをおすすめします。

なお、経営者保証については、全国銀行協会と日本商工会議所が策定した「経営者保証に関するガイドライン」があり、事業承継などの場面で保証の必要性を見直す考え方が示されています。ただし、これは法令のような法的拘束力を持つものではなく、関係者による自主的・自律的な準則であり、実際の取扱いは金融機関との個別の協議によります。相続や事業承継に伴って保証をどう整理するかを検討する場合には、金融機関と協議する前に、契約内容と会社の状況を整理しておくことが大切です。

また、相続放棄をすれば、保証債務を含め被相続人の債務を承継しないことになりますが(民法939条)、相続放棄は会社の存続、担保不動産の扱い、自社株の承継、他の相続人の立場、税務といった問題まで一括して解決するものではありません。相続放棄すればすべて解決するとは限らず、個別事情により結論は変わります。

個人担保(物上保証)と相続

故人個人が所有する不動産などに、会社の借入を担保するための抵当権や根抵当権が設定されていることがあります(物上保証)。この場合、次の四つを分けて考える必要があります。

  • 会社債務(担保されている会社の借入そのもの)
  • 保証債務(社長個人が保証人にもなっている場合の保証の負担)
  • 担保不動産の所有権(相続の対象となる財産)
  • 担保権実行のリスク(会社の返済が滞った場合に担保が実行される可能性)

相続人が担保付きの不動産を相続で取得するのか、相続放棄をするのか、会社を継続して返済を続けるのかによって、とるべき対応は変わります。担保設定契約書、登記事項証明書(不動産登記簿)、金融機関の資料を確認し、担保の種類(抵当権か根抵当権か)、被担保債権の範囲、残債務の状況を把握することが出発点になります。個別事情により結論は異なるため、資料を確認したうえで判断する必要があります。

役員借入金・役員貸付金の見方

役員借入金(会社の債務/故人の貸付金債権)

役員借入金は、会社から見れば故人に対する債務であり、故人側から見れば会社に対する貸付金債権です。亡くなった社長が会社へ資金を貸していた場合、その返還請求権が相続財産に含まれ得ます。もっとも、帳簿上の残高がそのまま実態を反映しているとは限りません。次の点を、決算書・帳簿・原資料で確認する必要があります。

  • 帳簿上の残高が、返済済み・振替後の実際の残高と一致しているか
  • 役員報酬・立替金・仮払金などとの振替が正しく処理されているか
  • 借用書や金銭の移動(通帳)など、貸付の裏付けとなる資料があるか
  • 会計処理・税務処理に問題がないか(税務上の取扱いは税理士に確認)

役員貸付金(会社の債権/故人の債務)

役員貸付金は、会社から見れば故人に対する債権であり、故人側から見れば会社に対する債務です。亡くなった社長が会社からお金を借りていた場合、会社は故人(またはその相続財産・相続人)に返還を求める立場になり得ます。会社の債権管理、相続人への請求、相続放棄、遺産分割、税務上の処理が交錯するため、安易に相殺・免除・放棄をしたり、帳簿上だけで処理をしたりしないことが大切です。会社が債権を放棄・免除する場合には、税務上の役員給与認定や寄附金・貸倒れの問題が生じ得るため、貸付の実態、返済条件、利息、取締役会・株主総会の議事録などを確認しつつ、税務上の取扱いは税理士に確認することをおすすめします。

相続放棄を検討中に会社から返済を受けるリスク

相続放棄を検討している相続人が、会社から役員借入金(故人の貸付金債権)の返済を受け取ると、相続財産である債権を回収・処分したと評価され、単純承認をしたものとみなされるおそれがあります(民法921条1号)。相続放棄の可否に影響し得るため、会社からの返済を受ける前に、相続放棄との関係を確認する必要があります。該当するかどうかは事案により異なるため、断定は避け、資料を確認したうえで慎重に判断してください。

根保証の元本確定と既発生の保証債務

会社の借入の保証が、限度額(極度額)を定めて一定の範囲の債務を継続的に保証する「根保証」の形をとっていることがあります。個人が保証人となる根保証(個人根保証契約)については、極度額を定めなければ効力を生じないとされています(民法465条の2)。まずは契約書で、根保証かどうか、極度額、保証の対象となる主債務の範囲を確認してください。

個人根保証では、保証人が死亡したときに、その時点で保証の対象となる主債務の元本が確定します(民法465条の4第1項第3号)。この「元本の確定」は、次のように理解すると整理しやすくなります。

  • 社長(保証人)の死亡後に新たに発生する主債務は、原則としてその根保証の対象にはなりません。死亡によって将来分まで無制限に保証が膨らみ続けるわけではない、ということです。
  • 他方で、死亡の時点までに発生し、元本確定の対象となった保証債務は、相続の問題として残り得ます。死亡によって既に発生した保証債務まで当然に消えるわけではありません。

確認すべき事項としては、根保証か否か、極度額、元本確定期日、契約締結日・更新日、主債務者・保証人・債権者、主債務の範囲などが挙げられます。

公正証書のルールと改正の適用関係は要確認

事業のために負担する貸金等債務についての個人保証は、原則として、契約締結前に公正証書で保証意思を確認していなければ効力を生じないとされています(民法465条の6)。ただし、主債務者である法人の取締役など一定の者が保証人となる場合は、この公正証書の作成は不要とされています(民法465条の9)。社長個人が自社の借入を保証するケースは、この例外に当たることが多いと考えられます。もっとも、根保証や個人保証に関する民法の規定は2020年施行の改正が関係し、契約締結日や更新日によって適用される規律が変わり得ます。契約書の日付を含め、適用関係は個別に確認する必要があります。

相続放棄を検討しているときに注意したい行為

相続放棄や限定承認は、家庭裁判所への申述によって行います(民法938条ほか)。相続放棄が受理されると、その相続に関して初めから相続人でなかったものとして扱われ、被相続人の債務も承継しません(民法939条)。もっとも、相続放棄を検討している段階で一定の行為をすると、単純承認をしたものとみなされ(法定単純承認)、相続放棄ができなくなるおそれがあります。民法は、相続人が相続財産の全部または一部を処分したときなどに、単純承認をしたものとみなすと定めています(民法921条)。

会社の債務との関係では、特に次の区別が重要です。

  • 会社が、会社の資金で、会社の債務を返済することは、会社(法人)の行為です。これ自体は相続人個人の相続放棄の可否に直結するものではありません。
  • これに対し、相続人が、故人個人の財産を処分したり、故人の財産から会社の債務・保証債務を支払ったりすることは、相続財産の処分と評価され、法定単純承認が問題となり得ます。

相続放棄を検討している間は、次のような行為を急がないことをおすすめします。いずれも、法定単純承認に当たるかどうかは事案により異なるため、断定はできませんが、判断に影響し得る行為です。

  • 故人の預金を引き出して、会社の借入や保証債務を支払う
  • 故人の個人財産(不動産・車・有価証券など)を売却・名義変更・処分する
  • 会社から役員借入金(故人の貸付金債権)の返済を受け取る
  • 金融機関に対し、保証債務を承認する書面や分割弁済の合意書に署名押印する
  • 会社の資産と故人個人の資産を混同して動かす

なお、葬儀費用の支出や、財産を現状のまま維持するための保存行為、財産・債務の調査などは、扱いに注意を要する領域ですが、事案により評価が分かれます。個別の判断が必要な場面では、行為に及ぶ前に確認することが安全です。

社長死亡後に意識したい期限(3か月・4か月・10か月)

社長の死亡後は、複数の期限が並行して進みます。いずれも、必要となる場合の期限であり、起算点が異なる点に注意してください。数字や起算点は、公的機関の公表資料を前提に整理しています。

手続 期限 起算点 主な確認資料 主な相談先 注意点
相続放棄・限定承認 原則3か月(熟慮期間) 自己のために相続の開始があったことを知った時(民法915条1項) 戸籍、債務・財産の資料 家庭裁判所・弁護士 期間の伸長を家庭裁判所に請求できる場合がある
準確定申告(必要な場合) 4か月 相続の開始があったことを知った日の翌日(国税庁) 故人の所得に関する資料 税務署・税理士 対象となるかは事案による
相続税の申告・納税(必要な場合) 10か月 被相続人が死亡したことを知った日(通常は死亡の日)の翌日(国税庁) 財産・債務の資料 税務署・税理士 基礎控除以下など、申告が不要な場合もある
(参考)役員変更登記 2週間 変更が生じた時(会社法915条1項) 登記事項証明書ほか 司法書士・弁護士 後任選任・登記の詳細は関連記事を参照

相続放棄・限定承認の3か月は、亡くなった日から機械的に数えるとは限らず、「自己のために相続の開始があったことを知った時」が起算点です。ただし、通常は死亡を知った時が問題になります。準確定申告の4か月、相続税の10か月とは起算点の表現が異なるため、混同しないよう注意してください。いずれも個別事情により結論が変わり得ます。代表取締役死亡後の後任選任や役員変更登記(2週間)の詳細は、別の記事で扱っています。

会社の借入・個人保証・担保・役員貸借勘定は、決算書と契約書を照らし合わせて整理することで、相続放棄をすべきか、どの順序で金融機関に対応するかといった見通しを検討しやすくなります。相続放棄の期限(原則3か月)が関係する場合もあるため、資料の確認を早めに進めることをおすすめします。

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よくある相談場面と考え方

会社の借入を相続人が個人で払うと思い込んでいる場合

会社名義の借入は原則として会社の債務であり、社長が亡くなっても当然に相続人個人の借金になるわけではありません。相続人が個人として負担し得るのは、個人保証や個人担保など、個人としての負担の根拠がある場合です。まずは契約書で、保証・担保の有無を確認することが出発点になります。

故人が会社の借入の連帯保証人だった場合

個人保証(連帯保証)は相続の対象になり得ます。相続放棄をすれば保証債務も承継しないことになりますが、担保・株式・他の相続人・税務との関係も併せて検討する必要があります。金融機関から保証債務の承認や支払を求められても、相続放棄を検討している間は、署名押印や支払を急がず、内容を確認することが重要です。

故人所有の不動産に会社の借入の担保が付いている場合

会社債務・保証債務・担保不動産の所有権・担保権実行リスクを分けて考えます。相続人が不動産を取得するのか、相続放棄をするのか、会社を継続するのかによって対応が変わります。担保設定契約書と登記事項証明書で、担保の種類と被担保債権の範囲を確認します。

役員借入金・役員貸付金がある場合

役員借入金は故人の会社に対する貸付金債権として相続財産に含まれ得ます。役員貸付金は故人の会社に対する債務として相続債務になり得ます。いずれも帳簿上の残高が実態と一致しているかを、決算書・勘定科目内訳書・総勘定元帳・原資料で確認する必要があります。会社が債権を放棄・免除する場合や、相続人が返済を受ける場合は、税務上の取扱いや相続放棄との関係に注意が必要です。

相続放棄の前に、会社から返済を受けたり故人の財産から支払いそうな場合

会社から役員借入金の返済を受けたり、故人の預金から会社の債務・保証債務を支払ったりすると、法定単純承認が問題となり、相続放棄ができなくなるおそれがあります(民法921条)。会社が会社資金で会社債務を返済することとは区別が必要です。行為に及ぶ前に確認することをおすすめします。

会社を続けるか、閉じるか、法人破産を検討するかで迷っている場合

会社の事業継続・廃業・清算・法人破産は会社(法人)の手続、相続放棄は相続人個人の手続で、次元が異なります。会社をどうするかによって、保証債務や担保の現実的なリスクも変わってきます。会社側の方針と相続人個人の対応を、資料に基づいて並行して検討することになります。いずれも個別事情により結論が変わる典型的な場面です。

手続前チェックリスト

相続放棄をする前、金融機関へ回答する前、会社から返済を受ける前、故人の財産から支払う前、保証関係の書面に署名押印する前、会社の帳簿処理をする前に、次の資料・事項を確認しておくことが望ましいといえます。何が必要かは事案により異なります。

  • 決算書(貸借対照表・損益計算書)、勘定科目内訳書
  • 総勘定元帳(役員借入金・役員貸付金の推移)、借用書、通帳
  • 金銭消費貸借契約書、銀行取引約定書、返済予定表、残高証明書
  • 保証契約書・連帯保証契約書、信用保証協会関係資料
  • 担保設定契約書、登記事項証明書(不動産登記簿)
  • 金融機関からの通知書・請求書、署名押印を求められている書面
  • 取締役会・株主総会の議事録、役員報酬に関する定め
  • 故人の財産・債務の一覧(プラスの財産とマイナスの財産)
  • 相続人の範囲が分かる戸籍関係書類
  • 準確定申告・相続税の要否を判断するための資料

これらを整理したうえで、「会社の債務か個人の債務か」「相続放棄の期限に間に合うか」「署名や支払を先行させてよいか」を順に確認していくと、対応の優先順位が見えやすくなります。

弁護士に相談するタイミング

会社と個人の債務が入り混じる場面では、次のような段階で相談を検討すると、判断材料を整理しやすくなります。相談により結果が保証されるものではありませんが、資料の整理、法的リスクの確認、対応方針の検討がしやすくなります。

  • 会社の借入・保証・担保の全体像が分からず、何から確認すべきか迷っている段階
  • 金融機関から、保証債務の承認・支払・書面への署名押印を求められた段階
  • 相続放棄をすべきか、期限(原則3か月)内に判断する必要がある段階
  • 役員借入金・役員貸付金の扱いや、会社からの返済の可否を検討する段階
  • 会社を続けるか、廃業・清算・法人破産を検討するかで迷っている段階
  • 担保付き不動産や自社株の扱いを、他の相続人との関係も含めて整理したい段階

会社の債務・保証・担保の問題は、登記が関係すれば司法書士、税務が関係すれば税理士との連携が必要になる場面もあります。神戸みらい法律会計事務所では、会社法務と相続の双方に関わるご相談に対応しています。

相続放棄をすべきか、金融機関にどう回答するか、役員借入金・役員貸付金をどう扱うかは、契約書・決算書・登記事項証明書などの資料を確認したうえで判断する必要があります。示談的な合意や署名押印、支払を先行させる前に、一度資料を整理して見通しを確認することをおすすめします。

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よくある質問(FAQ)

社長が亡くなったら、会社の借入は相続人が払う必要がありますか?

会社名義の借入は原則として会社の債務であり、社長が亡くなっても当然に相続人個人の借金になるわけではありません。相続人が個人として負担し得るのは、社長個人が連帯保証人になっている場合や、個人の財産に担保を設定している場合などです。まずは契約書で保証・担保の有無を確認する必要があります。

会社借入の連帯保証人が故人だった場合、相続放棄できますか?

個人保証(連帯保証)は相続の対象になり得ますが、相続放棄をすれば、原則として保証債務も承継しないことになります(民法939条)。ただし、担保・株式・他の相続人・税務との関係も併せて検討する必要があり、相続放棄には原則3か月の期限があります。金融機関へ回答する前に、資料を確認したうえで判断することをおすすめします。

役員借入金は相続財産になりますか?

役員借入金は、会社が故人から借りている状態を指し、故人側から見ると会社への貸付金債権となるため、相続財産に含まれ得ます。もっとも、帳簿上の残高が実際の残高と一致しているとは限りません。決算書・勘定科目内訳書・総勘定元帳・借用書・通帳などで実態を確認する必要があります。

役員貸付金がある場合、相続人は会社へ返済する必要がありますか?

役員貸付金は、会社が故人へ貸している状態を指し、故人側から見ると会社への債務となるため、相続債務になり得ます。相続人が相続を承認した場合には、その債務が問題となる可能性があります。金額や返済条件、帳簿の正確性、税務上の取扱いを確認する必要があり、会社側の債権放棄・免除は税務上の問題も生じ得ます。個別事情により結論は異なります。

根保証は社長死亡でどうなりますか?

個人が保証人となる根保証では、保証人が死亡したときに主債務の元本が確定します(民法465条の4第1項第3号)。死亡後に新たに発生する主債務は原則として保証の対象になりませんが、死亡の時点までに発生していた保証債務は相続の問題として残り得ます。契約書で極度額・元本確定期日・締結日などを確認する必要があります。

相続放棄前に会社から役員借入金の返済を受けてよいですか?

相続放棄を検討している段階で、会社から役員借入金(故人の貸付金債権)の返済を受け取ると、相続財産を処分したと評価され、単純承認をしたものとみなされるおそれがあります(民法921条)。相続放棄ができなくなる可能性があるため、返済を受ける前に相続放棄との関係を確認することをおすすめします。該当するかは事案により異なります。

3か月、4か月、10か月の期限はいつから数えますか?

相続放棄・限定承認の3か月は「自己のために相続の開始があったことを知った時」から(民法915条1項)、準確定申告の4か月は「相続の開始があったことを知った日の翌日」から、相続税の申告・納税の10か月は「被相続人が死亡したことを知った日(通常は死亡の日)の翌日」からが起算点です(いずれも公的機関の公表資料による)。起算点の表現が異なるため、混同しないよう注意してください。

金融機関から書類への署名を求められた場合、どうすべきですか?

保証債務を承認する書面や分割弁済の合意書などに署名押印すると、相続放棄の可否に影響し得る場合があります。相続放棄を検討している間は、内容と法的な意味を確認しないまま署名押印することは避け、保証や担保の内容、相続放棄の期限との関係を確認することをおすすめします。対応は個別の事情により異なります。

まとめ

  • 会社名義の借入は原則として会社の債務であり、社長の死亡で当然に相続人個人の借金になるわけではありません。
  • 社長個人の連帯保証・物上保証は相続の問題になり得るため、保証契約書・担保設定契約書・登記事項証明書を確認します。
  • 役員借入金は故人の会社に対する貸付金債権(相続財産)、役員貸付金は故人の会社に対する債務(相続債務)で、向きが逆です。
  • 個人根保証では、保証人の死亡で元本が確定し(民法465条の4第1項第3号)、既に発生した保証債務は相続の問題として残り得ます。
  • 相続放棄を検討している間は、故人財産の処分・会社からの返済受領・保証書面への署名押印を急がないことが重要です(法定単純承認・民法921条)。
  • 相続放棄・限定承認は原則3か月、準確定申告は4か月、相続税は10か月で、起算点が異なります。
  • 後任選任・役員変更登記・株式相続は別記事で扱っています。会社の債務・保証・担保と相続放棄の判断は、資料を確認したうえで整理することが大切です。

社長の死亡に伴う会社借入・個人保証・個人担保・役員借入金・役員貸付金の問題は、契約書と決算書を確認して会社の債務と個人の債務を切り分けることで、相続放棄をすべきか、金融機関にどう対応するかの見通しを検討できます。相続放棄の期限や署名押印の前に、一度資料を整理して確認することをおすすめします。神戸みらい法律会計事務所は、弁護士・公認会計士として、会社法務と相続の双方に関わるご相談に対応しています。初回の法律相談は無料です(費用のお見積りも無料)。

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監修者・執筆者

藤井 貴之(ふじい たかゆき)
弁護士・公認会計士/兵庫県弁護士会所属
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相続・企業法務を含む法律問題を、法律と会計・税務の双方の視点から取り扱っています。会社の債務・個人保証・役員貸借勘定と相続放棄が交錯する場面で、資料の確認を踏まえた対応方針の検討をお手伝いします。

所在地:兵庫県神戸市須磨区中落合2丁目2-5 名谷センタービル7階
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参考資料

本記事は、一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する法的助言を行うものではありません。会社借入・個人保証・個人担保・役員借入金・役員貸付金・根保証・相続放棄の扱いは、契約書・決算書・登記の内容や個別の事情により結論が異なります。実際のご対応にあたっては、最新の法令・公式情報をご確認のうえ、弁護士・税理士・司法書士等にご相談ください。記載の内容は作成時点(2026年7月)の情報に基づくものであり、その後の法改正等により変更される場合があります。

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