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専業主婦の財産分与|家事の貢献と寄与度を神戸の弁護士が解説

長く家庭を支えてきたのに、預貯金も不動産も夫の名義になっている――。神戸や芦屋、西宮、尼崎、明石など阪神間で熟年離婚を考え始めた専業主婦・パートの方から、「収入が少なかった自分でも財産分与を受けられるのか」「家事や育児の貢献はどう評価されるのか」というご不安をよくうかがいます。

結論から申し上げると、専業主婦やパート勤務であっても、婚姻中の家事・育児・家計管理などの貢献は、財産分与のなかで正面から問題になります。名義が夫であっても、夫婦の協力で取得・維持した財産であれば、分与の対象になり得ます。もっとも、対象となる財産の範囲や寄与度は、財産の内容・婚姻期間・別居の有無などの個別事情によって結論が変わります。

この記事では、財産分与の基礎、家事の貢献と寄与度の考え方、令和8年4月1日から変わった改正民法のポイント、専業主婦・パートで問題になりやすい財産と確認資料、そして離婚届や合意書に署名する前に確認しておきたいことを整理します。ご自身の状況を早めに把握しておきたい方は、財産資料や家計に関する資料を手元に用意したうえで、離婚・男女問題の取扱いを見るところから検討を始めていただけます。

まず結論|専業主婦・パートでも財産分与の対象になり得ます

財産分与は、夫婦が婚姻中に協力して築いた財産を、離婚の際に分け合う制度です。ここでは「誰の名義か」ではなく、「夫婦の協力で取得・維持した財産か」が出発点になります。専業主婦・パートの方が最初に押さえておきたい要点を整理します。

ポイントは次の3点です。

  • 名義だけでは決まりません。夫名義の預貯金・不動産・退職金でも、実質的に夫婦で築いた財産(実質的共有財産)であれば対象になり得ます。
  • 家事・育児の貢献は評価の対象です。収入を得ていないことは、貢献がないことを意味しません。
  • 資料の確認が重要です。対象財産の範囲・評価・寄与度は個別事情で変わるため、まず財産と家計に関する資料を整えることが出発点になります。
まず確認したいこと 考え方
自分にも請求できるか 専業主婦・パートでも請求できる可能性があります。個別事情により結論は変わります。
夫名義の財産は対象か 婚姻中に夫婦の協力で取得・維持した財産であれば対象になり得ます。
家事の貢献の扱い 財産の取得・維持への寄与として考慮され得ます。
いつまでに請求するか 令和8年4月1日以後の離婚は原則5年以内。施行日前の離婚は原則2年以内です。
年金分割はどうするか 財産分与とは別の手続です。請求期限も別に確認が必要です。

財産分与とは|制度と対象財産の基礎

財産分与は民法768条に定められた制度で、協議上の離婚をした一方が、相手方に対して財産の分与を請求できるとされています(同条1項)。裁判上の離婚の場合にも、同じ考え方が用いられます(民法771条による準用)。話合いがまとまらないときは、家庭裁判所に財産分与の調停・審判を申し立てることができます。

財産分与の性質(清算・扶養・慰謝料的要素)

財産分与には、婚姻中に築いた財産を清算する要素(清算的財産分与)を中心に、離婚後の生活を支える扶養的な要素などが含まれると理解されています。実務では清算的要素が中心に検討されます。改正後の民法では、分与の額や方法を定める際に裁判所が考慮する事情として、婚姻中に取得・維持した財産の額や寄与の程度に加え、婚姻の期間、婚姻中の生活水準、協力・扶助の状況、当事者の年齢・心身の状況・職業・収入などが明文で挙げられました(民法768条3項)。

対象になる財産・ならない財産(特有財産)

対象になるのは、婚姻中に夫婦の協力で取得・維持した「実質的共有財産」です。名義が一方だけでも、実質的に夫婦で築いた財産は対象になり得ます。一方、婚姻前から持っていた財産や、婚姻中でも相続・贈与などで一方が個人的に得た財産は「特有財産」として、原則として対象外と整理されます(民法762条)。ただし、特有財産かどうか、また実質的共有財産かどうかは個別事情により判断が分かれるため、資料での確認が必要です。

慰謝料・婚姻費用・養育費・年金分割との違い

財産分与は、離婚原因への慰謝料、別居中の生活費である婚姻費用、子の養育費、そして年金分割とは、それぞれ性質も手続も異なります。特に年金分割は、家庭裁判所ではなく年金事務所での手続が関わる別制度です。混同すると準備すべき資料や期限を取り違えるおそれがあるため、分けて考えることが大切です。

家事・育児の貢献は寄与度にどう反映されるか

「収入がない=貢献がない」ではない

財産分与は、夫婦が協力して財産を築いたという考え方を前提にしています。家事・育児・家計管理・介護・転勤への対応などは、他方配偶者が働いて収入を得る基盤を支える役割を果たしていると評価され得ます。したがって、「自分は収入がなかったから分与を受けられない」と考える必要はありません。家事や育児の担い方、家計管理の実態も、寄与を基礎づける事情になり得ます。

2分の1ルールと、修正され得る場合

改正後の民法では、婚姻中の財産の取得・維持についての各当事者の寄与の程度は、「その程度が異なることが明らかでないときは、相等しいものとする」と明文化されました(民法768条3項後段)。これは、実務で定着していたいわゆる「2分の1ルール」を条文に反映したものです。

ただし、これは「常に半分になる」という意味ではありません。寄与の程度が異なることが明らかな場合には、割合が修正されることがあります。過去の裁判例でも、一方の特別な資格・能力や財産形成の事情を考慮して、割合を2分の1から修正した例があります。どのような事情がどこまで考慮されるかは個別事情によって変わるため、資料を確認したうえで判断する必要があります。

令和8年4月1日から変わった財産分与のルール(改正民法)

民法等の一部を改正する法律(令和6年法律第33号)が令和8年4月1日に施行され、財産分与に関するルールが変わりました。専業主婦・パートの方に関係が深い変更点を整理します。

請求期間が2年から5年に

従来、財産分与を家庭裁判所に求めることができる期間は離婚の時から2年とされていましたが、改正により、離婚の時から5年に延長されました(民法768条2項ただし書)。離婚後に生活を立て直しながら財産を調べる時間を確保しやすくなった、という位置づけです。

考慮要素の明確化と情報開示命令

前述のとおり、分与の額や方法を定める際の考慮要素が条文に明記され、寄与度の推定も明文化されました(民法768条3項)。あわせて、家庭裁判所が当事者に対して財産の状況に関する情報の開示を命じることができる「情報開示命令」が設けられ、正当な理由なく開示しない場合や虚偽の開示をした場合には過料の定めが設けられました(家事事件手続法第152条の2ほか)。相手方が財産を明らかにしない場面での手続の一つとして整理されています。

施行日前後で異なる点(経過措置)

請求期間の延長には経過措置があり、離婚した時期によって扱いが変わります。ご自身がどちらに当たるかを最初に確認してください。

離婚等の時期 財産分与の請求期間 根拠
令和8年4月1日以後に離婚等 原則、離婚の時から5年以内 改正後民法768条2項ただし書
令和8年4月1日前に離婚等 原則、離婚の時から2年以内(従前のとおり) 令和6年法律第33号 附則4条

過去に離婚した方は、2年の期間が既に経過していないかを早めに確認することが重要です。期間の計算は事案により異なるため、迷う場合は資料を持参して確認することをおすすめします。

専業主婦・パートで問題になりやすい財産と確認資料

財産分与では、まず「どの財産が対象になり得るか」を洗い出し、その裏づけとなる資料を集めることが出発点になります。財産の種類ごとに、確認しておきたい資料を整理します。いずれも対象になるかどうか・評価方法は個別事情により異なります。

財産の種類 確認したい資料の例 留意点
預貯金 通帳の写し、残高証明書 名義にかかわらず対象になり得ます。
不動産 登記事項証明書、固定資産評価証明書、査定書 評価額と持分の確認が必要です。
住宅ローン 金銭消費貸借契約書、返済予定表、残高証明書 残債が評価額を上回る場合の扱いは個別事情で変わります。
退職金 退職金規程、見込額の計算資料 将来の退職金の扱いは個別事情により異なります。
生命保険・学資保険 保険証券、解約返戻金額の分かる資料 解約返戻金のある保険は対象になり得ます。
有価証券・投資信託等 取引残高報告書、評価額の分かる資料 評価の基準時により金額が変わります。
自動車 車検証、査定書、ローン残高の分かる資料 ローンが残る場合は残債も確認します。
事業用資産 決算書、財産目録 事業性資産は評価・寄与の判断が複雑になりやすい点に留意します。

なお、対象となる財産の範囲を確定する基準となる時点は、別居している場合は別居時とされることが多いとされています。ただし、これも個別事情により異なるため、資料を確認したうえで判断する必要があります。

熟年離婚(長期婚)で特に気をつけたいこと

婚姻期間が長いほど、財産の種類が増え、把握が難しくなります。熟年離婚で相談者が迷いやすいのは次のような場面です。いずれも結論は個別事情により変わります。

  • 退職金・退職金見込額。既に受け取った退職金だけでなく、将来支給される見込みの退職金が問題になる場合があります。扱いは勤務先の制度や支給の確実性などにより異なります。
  • 住宅ローンが残る自宅。自宅の評価額とローン残債の関係、名義、居住の継続などを整理する必要があります。
  • 別居前後の預貯金の動き。別居の前後で預貯金が移動している場合、その経緯の確認が問題になることがあります。
  • 相手方が財産資料を出さない場合。改正で設けられた情報開示命令など、手続のなかで対応を検討できる場面があります。
  • 家計管理を担ってきた場合の資料整理。長年家計を管理してきた方は、把握している資料を整理しておくことが、その後の協議・調停で役立ちます。

年金分割は財産分与とは別の手続です

専業主婦・パートの方にとって、年金分割は老後の生活設計に関わる重要な手続です。年金分割は、婚姻期間中の厚生年金の記録(標準報酬)を当事者間で分ける制度で、財産分与とは別に検討します。

年金分割には、当事者の合意または裁判手続で按分割合を定める「合意分割」と、国民年金の第3号被保険者であった方からの請求により、平成20年4月1日以後の第3号被保険者期間について相手方の記録を2分の1ずつ分ける「3号分割」があります。手続には、年金事務所で交付を受ける「年金分割のための情報提供に関する書類(情報通知書)」などが必要になります。

年金分割の請求期限も、令和8年4月から原則5年に変わりました(令和8年4月1日前に離婚等をした場合は原則2年)。財産分与とは根拠となる法律が異なるため、それぞれの期限を別々に確認しておくことが大切です。詳しい要件や割合の見込みは、年金事務所や弁護士への確認が必要です。

手続の前に確認しておきたいこと(チェックリスト)

離婚の話が具体化する前後で確認しておきたい事項を整理します。特に、いったん署名すると後から見直しが難しくなる場面があるため、署名前の確認が重要です。

  • 離婚届を出す前に、財産分与と年金分割について整理できているか
  • 離婚協議書・公正証書に署名する前に、対象財産の範囲と評価を確認したか
  • 財産分与の合意をする前に、把握できていない財産がないかを確認したか
  • 相手方から財産リストを提示されたとき、資料の裏づけを確認したか
  • 相手方が財産資料を出さないとき、どのような手続が考えられるかを確認したか
  • 過去に離婚した方は、請求期間が経過していないかを確認したか

家庭裁判所に財産分与の調停・審判を申し立てる場合の費用や書類の目安は次のとおりです(連絡用の郵便切手の金額は申立先の裁判所により異なります)。

項目 内容
申立ての手数料 収入印紙1200円分
連絡用の郵便切手 金額は申立先の裁判所により異なります
主な必要書類 申立書、離婚時の戸籍謄本(全部事項証明書)、夫婦の財産に関する資料(不動産登記事項証明書、固定資産評価証明書、預貯金通帳の写し又は残高証明書等)、事情説明書、進行に関する照会回答書 など

なお、離婚そのものについて話し合う夫婦関係調整調停(離婚)のなかで、財産分与についてもあわせて話し合うことができます。

弁護士に相談するタイミング

弁護士への相談は、結果を保証するためのものではありません。財産の範囲や資料を整理し、主張できる点や見通しを検討しやすくするためのものです。次のような場面では、早めに相談しておくと方針を整理しやすくなります。

  • 離婚届を出す前、別居する前または別居直後
  • 退職金・不動産・保険・事業資産など、把握や評価に手間がかかる財産がある場合
  • 相手方が財産を明らかにしない場合
  • 調停の申立てを検討している場合や、請求期間が近い場合
  • 年金分割もあわせて確認しておきたい場合

ご相談の際は、通帳や残高証明書、不動産の資料、保険証券、離婚協議書の案などをお持ちいただくと、状況を整理しやすくなります。取扱いの範囲は離婚・男女問題の取扱いを見るページで、費用の考え方は弁護士費用を確認するページでご確認いただけます。担当する弁護士については弁護士紹介を見るページをご覧ください。

神戸・阪神間で熟年離婚や財産分与にご不安のある方は、財産資料や家計に関する資料を整理したうえでご相談いただくと、対応方針を検討しやすくなります。

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よくある質問

専業主婦でも財産分与を受けられますか。

受けられる可能性があります。家事・育児・家計管理などの貢献は、財産の取得・維持への寄与として考慮され得ます。ただし、対象財産や寄与度は個別事情により異なります。

夫名義の預貯金や不動産も分ける対象になりますか。

婚姻中に夫婦の協力で取得・維持した財産であれば、名義が夫であっても対象になり得ます。名義だけで結論が決まるわけではありません。

家事や育児は寄与度としてどのように評価されますか。

他方が収入を得る基盤を支える貢献として考慮され得ます。改正民法では寄与の程度は「異なることが明らかでないときは相等しい」と推定されますが、個別事情により修正され得ます。

パート収入が少なくても財産形成への貢献を主張できますか。

主張できる可能性があります。収入の多寡だけで寄与が決まるわけではなく、家事や家計管理の実態も踏まえて判断されます。資料を確認したうえで検討する必要があります。

夫の退職金や住宅ローンが残る自宅はどう扱われますか。

退職金は対象になり得ますが、将来分の扱いは個別事情により異なります。住宅ローンが残る自宅は、評価額と残債の関係などにより扱いが変わります。いずれも資料での確認が必要です。

相手が財産資料を見せてくれないときはどうすればよいですか。

改正で設けられた情報開示命令など、手続のなかで対応を検討できる場面があります。どの手続が適切かは事案により異なるため、資料を整理して相談することをおすすめします。

財産分与はいつまで請求できますか。

令和8年4月1日以後の離婚は原則として離婚の時から5年以内、施行日前の離婚は原則として2年以内です。期間の計算は事案により異なるため、早めの確認が重要です。

年金分割も一緒に考えるべきですか。

財産分与とは別の手続ですが、老後の生活に関わるため、あわせて確認しておくことをおすすめします。請求期限も別に定められており、令和8年4月からは原則5年です。

まとめ

  • 専業主婦・パートでも、家事・育児・家計管理の貢献は財産分与で考慮され得ます。
  • 夫名義の財産でも、実質的共有財産であれば対象になり得ます。名義だけでは決まりません。
  • 寄与度は相等しいと推定されますが、個別事情により修正され得ます。
  • 令和8年4月1日以後の離婚は、財産分与の請求期間が原則5年です(施行日前は原則2年)。
  • 年金分割は財産分与とは別の手続で、請求期限も別に確認が必要です。
  • まずは財産と家計に関する資料を整理し、署名前に確認することが大切です。

神戸・阪神間で財産分与や熟年離婚をご検討の方は、離婚届や合意書に署名する前に、財産の範囲と資料を確認しておくことをおすすめします。ご相談により、主張できる点や見通しを整理しやすくなります。

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