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令和6年の贈与税改正と生前贈与|加算7年化と相続対策の要点

「親の財産を、元気なうちに少しずつ子や孫へ渡しておきたい」「生前贈与をすれば相続税を抑えられると聞いたが、令和6年から何が変わったのか分からない」——このようなご相談は、相続対策を検討するご家庭で多く寄せられます。

令和6年1月1日以後の贈与については、贈与税のしくみが見直されました。代表的なものが、相続開始前の一定期間の贈与を相続税の計算に取り込む「生前贈与加算」の対象期間が、最大で相続開始前7年以内へ段階的に延長された点と、相続時精算課税に新たな基礎控除が設けられた点です。

本記事では、生前贈与の基本的な考え方、令和6年改正で変わったポイント、暦年課税と相続時精算課税の違い、そして贈与の前や相続が始まった後に確認しておきたい資料を整理します。生前贈与は税務だけでなく、遺産分割・遺留分・特別受益といった民法上の問題とも関係します。具体的な税額の計算や申告は税理士等への確認が必要ですが、制度全体の見取り図と相談前の準備を本記事で確認していただけます。

なお、生前贈与が有利になるかどうかは、財産の種類、家族関係、贈与の時期や金額によって結論が変わります。「生前贈与をすれば必ず税負担が軽くなる」と一律に言えるものではない点を、はじめにご確認ください。

生前贈与や相続対策は、贈与の前に資料を整理しておくことで、法律面・税務面の論点を把握しやすくなります。神戸みらい法律会計事務所では、遺言・相続に関するご相談を承っています。

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生前贈与と令和6年改正の全体像

はじめに、本記事の結論の方向性を整理します。生前贈与は相続対策の選択肢の一つですが、令和6年改正により、暦年課税による贈与だけで相続税の負担を完結的に調整することは、以前より難しくなった面があります。一方で、相続時精算課税には基礎控除が設けられ、使い方によっては検討の余地が広がりました。どちらの方法が向くかは、個別事情により異なります。

本記事で分かること

  • 生前贈与の基本(贈与契約、暦年課税、名義預金との違い)
  • 令和6年改正で変わった点(生前贈与加算の7年化、相続時精算課税の基礎控除)
  • 暦年課税と相続時精算課税を比較する視点
  • 贈与前・相続開始後に確認したい資料と、相談のタイミング
項目 改正のポイント
生前贈与加算 令和6年1月1日以後の暦年課税の贈与について、相続税の課税価格に加算する対象期間が、相続開始前3年以内から相続開始前7年以内へ段階的に延長
3年超7年以内分 相続開始日が令和9年1月2日以後の場合、相続開始前3年以内より前(3年超7年以内)の贈与は、合計額から総額100万円までは加算しない
相続時精算課税 令和6年1月1日以後の贈与について、相続時精算課税にも基礎控除額(年110万円)を新設

表の数値・期間は国税庁の公表内容に基づく一般的な整理です。実際の課税関係は財産の内容や贈与の時期により異なり、具体的な税額計算・申告は税理士等への確認が必要です。

生前贈与の基礎知識

生前贈与とは

生前贈与とは、財産を持つ方が、生きているうちに、その財産を子や孫などへ無償で移転することをいいます。贈与は、贈与する人(贈与者)と受け取る人(受贈者)の合意によって成立する契約です。実務では、契約という「形式」と、実際に財産の管理・支配が移ったかという「実態」の両方が重要になります。

具体的には、贈与契約書の作成、預貯金であれば口座間の資金移動、不動産であれば名義変更(登記)、一定額を超える贈与であれば贈与税の申告など、複数の手続が関係します。これらが整っていないと、後日、贈与の有効性や金額が争われたり、税務上「贈与」と認められなかったりすることがあります。

暦年課税の基本

贈与税の課税方法には、「暦年課税」と「相続時精算課税」の二つがあります。暦年課税では、その年の1月1日から12月31日までの1年間に受けた贈与の合計額から、基礎控除額110万円を差し引いた残りの額に贈与税がかかります。1年間の合計額が110万円以下であれば、贈与税はかからず、贈与税の申告も不要です。

ただし、贈与税がかからない範囲であっても、後述する生前贈与加算の対象期間内の贈与は、相続税の計算で課税価格に加算されることがあります。「毎年110万円以下だから相続税には関係しない」と単純に考えることはできない点に注意が必要です。

名義預金と評価されないために

家族間の送金や、親が子名義で作った預金が、実態としては親の財産のままと評価される場合があります。これがいわゆる「名義預金」です。名義が子であっても、通帳や印鑑を親が管理し、子が自由に使える状態になっていないようなときは、贈与が成立していないと判断され、相続財産に含めて課税される可能性があります。

こうした評価を避けるためには、贈与の意思が分かる資料(贈与契約書など)、資金の流れが分かる記録(通帳・振込記録)、受贈者が実際に財産を管理している事実などを残しておくことが重要です。

令和6年の贈与税改正で変わったポイント

生前贈与加算が相続開始前7年以内へ

生前贈与加算とは、相続や遺贈などにより財産を取得した人が、被相続人から一定期間内に暦年課税による贈与で受け取っていた財産を、相続税の課税価格に加算するしくみです。改正前は「相続開始前3年以内」の贈与が対象でしたが、令和6年1月1日以後の暦年課税の贈与については、加算の対象期間が「相続開始前7年以内」へと延長されました。

重要なのは、加算の対象期間内であれば、贈与税がかかったかどうかに関係なく加算される点です。したがって、基礎控除額110万円以下の贈与や、亡くなった年に行われた贈与も、対象期間内であれば相続税の課税価格に加算されることになります。なお、相続や遺贈により財産を取得しなかった人(相続時精算課税の適用を受けている人を除きます)は、原則としてこの加算の対象には含まれません。

相続開始日ごとの移行期間

7年への延長は、いきなり全期間に適用されるわけではなく、相続開始日に応じて段階的に移行します。国税庁が示す加算対象期間は次のとおりです。

被相続人の相続開始日 加算対象期間
~令和8年12月31日 相続開始前3年以内
令和9年1月1日~令和12年12月31日 令和6年1月1日から死亡の日までの間
令和13年1月1日~ 相続開始前7年以内

このように、相続開始前7年以内という期間がそのまま当てはまるのは、令和13年1月1日以後に相続が開始する場合です。それまでの間は、令和6年1月1日を起点とする経過的な取扱いになります。

3年超7年以内の贈与と100万円の控除

加算対象期間が延びた分への配慮として、相続開始前3年以内より前の部分(3年超7年以内)の贈与については、一定の控除があります。具体的には、相続開始の日が令和9年1月2日以後の場合、加算対象期間内に取得した財産のうち相続開始前3年以内に取得した財産以外のもの(3年超7年以内分)については、その贈与時の価額の合計額から総額100万円までは相続税の課税価格に加算されません。

この100万円は、年ごとに100万円ではなく、3年超7年以内の部分について総額で100万円までという取扱いです。詳細な当てはめは個別事情により異なるため、具体的な計算は税理士等への確認が必要です。

相続時精算課税に基礎控除が新設

相続時精算課税についても見直しがありました。令和6年1月1日以後の贈与について、相続時精算課税にも基礎控除額(年110万円)が設けられました。これにより、相続時精算課税を選択した後でも、基礎控除額の範囲内の贈与については贈与税がかからず、相続時に加算される金額の計算上も、基礎控除額を差し引いた残額が加算の対象とされます。

なお、この基礎控除が適用されるのは令和6年1月1日以後の贈与に限られます。令和5年12月31日以前の贈与には、相続時精算課税に係る基礎控除の適用はありません。

暦年課税と相続時精算課税の比較

二つの課税方法の主な違いを整理すると、次のとおりです。

比較項目 暦年課税 相続時精算課税
基礎控除 年110万円 年110万円(令和6年1月1日以後の贈与)
特別控除 なし 限度額2,500万円(累計。期限内申告が要件)
税率 累進税率 特別控除を超える部分に一律20%
主な対象 制限なし 原則、贈与年の1月1日で60歳以上の父母・祖父母から、18歳以上の子・孫など
選択・変更 贈与者ごとに選択。一度選択するとその贈与者からの贈与は暦年課税に戻せない
相続時の加算 加算対象期間内の贈与を加算 選択後の贈与を、基礎控除後の残額で加算

どちらが有利かは、財産の種類や金額、贈与者の年齢、家族構成、将来の値上がり見込みなどによって変わります。相続時精算課税は一度選択すると暦年課税へ戻せないため、選択前の検討が特に重要です。具体的な税額のシミュレーションや、どちらの方法を選ぶかの判断は、税理士等への確認が必要です。

暦年課税と相続時精算課税のどちらが向くか、また贈与が遺産分割や遺留分にどう影響するかは、資料を確認したうえで検討することで見通しを整理しやすくなります。

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生前贈与を検討しやすいケース

生前贈与は、次のような場面で検討されることがあります。ただし、いずれの場合も税務上有利になるとは限らず、民法上の論点とあわせた検討が必要です。

  • 相続人間の話し合いが難しくなりそうで、生前に財産の渡し方を整理しておきたい場合
  • 不動産、自社株、事業用資産など、承継方法を早めに決めておきたい財産がある場合
  • 子や孫への資金援助(住宅、教育、開業資金など)を予定している場合
  • 将来の値上がりが見込まれる財産について、早期の移転を検討したい場合
  • 親の判断能力があるうちに、財産管理・承継の方針を整理しておきたい場合
  • 遺言、家族信託、任意後見、生命保険など、他の制度とあわせて検討したい場合

これらは、税負担の調整だけでなく、相続開始後の紛争を予防する観点からも検討できます。もっとも、贈与の方法によっては、かえって相続人間の不公平感を生み、後述する遺留分や特別受益の問題につながることもあります。

よく問題になるケース

生前贈与をめぐっては、次のような点が後日争いの火種になりやすいといえます。

名義預金・贈与契約書がないケース

贈与契約書がなく、通帳や入出金履歴も整理されていない場合、贈与の有無や金額が後日争われやすくなります。受贈者が実際に財産を管理していないと、名義預金と疑われ、相続財産として扱われる可能性があります。

一部の相続人だけが贈与を受けたケース

特定の相続人だけが多額の援助を受けていた場合、他の相続人から不公平だとして、後述する特別受益の主張や、遺留分侵害額請求につながることがあります。

不動産を贈与するケース

不動産の生前贈与では、贈与税のほかに、登記手続に伴う登録免許税や、不動産取得税などの負担が生じることがあります。これらの要否や税率・計算は事案により異なり、司法書士・税理士への確認が必要です。税負担の軽減だけを優先すると、かえって遺産分割や遺留分の紛争が複雑になることもあるため、注意が必要です。

判断能力が低下した後の贈与

認知症など、贈与者の判断能力が低下した後に行われた贈与は、その有効性が後日争われることがあります。贈与の意思があったといえるか、贈与時の状況を示す資料が残っているかが問題になります。

ここで挙げたケースは一般的な整理であり、結論は個別事情により異なります。実際の見通しは、契約書や資料を確認したうえで判断する必要があります。

生前贈与と遺留分・特別受益の関係

生前贈与を考えるうえで見落とされがちなのが、贈与税・相続税という「税務」の問題と、遺留分・特別受益という「民法」の問題は別であるという点です。税務上の生前贈与加算の期間と、遺留分や特別受益で問題になる期間や対象は一致しません。

たとえば、遺留分の算定にあたって基礎となる財産にどの贈与が含まれるかは、相続人に対する贈与か第三者に対する贈与か、また婚姻・養子縁組のためや生計の資本としての贈与かなどによって扱いが変わります。特別受益として持戻しの対象になるかどうかも、贈与の目的や性質により判断されます。これらの期間や範囲は、税務上の3年・7年といった加算期間とは別の基準で考えられます。

つまり、税務上は加算の対象外であっても、民法上は遺留分や特別受益の問題として考慮される贈与があり得ます。具体的にどの贈与がどの範囲で問題になるかは、資料を確認したうえで判断する必要があります。生前贈与を相続対策として行う場合は、税務と民法の双方の観点から検討しておくことが望まれます。

手続前チェックリスト

贈与や制度選択の前後では、次のような資料の確認・整備が役立ちます。

贈与・契約書作成・送金の前に

  • 誰から誰へ、何を、いつ、いくら贈与するのかを整理しているか
  • 贈与契約書を作成する準備があるか
  • 資金移動の記録(振込)が残る方法を選んでいるか
  • 受贈者が財産を管理できる状態か(名義預金と評価されないか)

不動産の名義変更の前に

  • 不動産登記事項証明書、固定資産税課税明細書などを準備しているか
  • 登録免許税・不動産取得税などの負担を司法書士・税理士に確認したか
  • 他の相続人との関係(遺留分・特別受益)を考慮しているか

相続時精算課税の選択の前に

  • 暦年課税に戻せなくなる点を理解しているか
  • 贈与者ごとの選択になる点を理解しているか
  • 基礎控除・特別控除・申告手続を税理士に確認したか

相続開始後の申告の前に

  • 過去の贈与(加算対象期間内のもの)を把握しているか
  • 贈与税の申告書・納付の記録を確認しているか
  • 相続税・贈与税の申告は税理士に確認・依頼したか

相談前に準備しておきたい資料

弁護士・税理士への相談前に、次の資料を整理しておくと、論点の把握がスムーズになります。

  • 贈与契約書、預貯金通帳・入出金明細・振込記録
  • 贈与税申告書、税務署提出資料
  • 不動産登記事項証明書、固定資産税課税明細書・固定資産評価証明書
  • 株式・投資信託・保険・事業用資産に関する資料
  • 家族関係図、戸籍資料、遺言書、エンディングノート
  • 過去の相続対策メモ、親族間のやり取り、税理士・司法書士・金融機関との資料

弁護士・税理士に相談するタイミング

生前贈与は、贈与の前、制度選択の前、相続開始後の申告の前など、節目ごとに確認しておきたい論点があります。弁護士は、一般的な制度の整理や資料の確認、遺産分割・遺留分・特別受益・遺言との関係の整理についてお手伝いできます。これにより、対応方針を整理しやすくなります。

もっとも、個別の税額計算、相続税・贈与税の申告、税務代理は税理士の業務であり、税務上の判断は税理士等への確認が必要です。神戸みらい法律会計事務所では、必要に応じて税務の論点を意識しながら、法律面の整理を行います。資料を確認したうえで、法律上の見通しを検討することができます。

よくある質問(FAQ)

令和6年の贈与税改正で何が変わりましたか?

主に二点です。令和6年1月1日以後の暦年課税の贈与について、相続税に加算する生前贈与加算の対象期間が、相続開始前3年以内から最大で相続開始前7年以内へ段階的に延長されました。また、相続時精算課税にも基礎控除(年110万円)が設けられました。詳細な当てはめは個別事情により異なり、税額計算は税理士等への確認が必要です。

毎年110万円までの贈与も相続税に関係しますか?

関係する場合があります。生前贈与加算の対象期間内に行われた贈与は、贈与税がかからない110万円以下の贈与であっても、相続税の課税価格に加算されることがあります。ただし、相続開始前3年超7年以内の部分には総額100万円までの控除があります(相続開始日が令和9年1月2日以後の場合)。

相続時精算課税を選ぶと暦年課税に戻せますか?

戻せません。相続時精算課税は贈与者ごとに選択できますが、一度選択すると、その贈与者からの贈与については暦年課税へ変更できません。選択の前に、税理士等への確認をおすすめします。

暦年課税と相続時精算課税はどちらが有利ですか?

個別事情により異なります。財産の種類や金額、贈与者の年齢、家族構成、将来の値上がり見込みなどによって結論が変わります。一律にどちらが有利とはいえないため、具体的な比較・シミュレーションは税理士等への確認が必要です。

生前贈与は遺留分や特別受益にも影響しますか?

影響することがあります。贈与税・相続税という税務の問題と、遺留分・特別受益という民法上の問題は別であり、問題になる期間や対象も一致しません。相続人への贈与か第三者への贈与か、贈与の目的などにより扱いが変わります。具体的な判断は資料を確認したうえで行う必要があります。

贈与契約書がない場合でも贈与と認められますか?

認められる場合もありますが、争いになりやすくなります。贈与契約書や資金移動の記録がないと、贈与の有無や金額が後日問題になりやすく、名義預金と評価される可能性もあります。契約書の作成や記録の保存をおすすめします。

不動産を生前贈与するときは何に注意すべきですか?

贈与税のほか、登記に伴う登録免許税や不動産取得税などの負担が生じることがあります。これらの要否や税率は事案により異なり、司法書士・税理士への確認が必要です。あわせて、遺留分・特別受益など民法上の影響も検討しておくことが望まれます。

弁護士に相談する前に何を準備すればよいですか?

贈与契約書、通帳・振込記録、贈与税申告書、不動産登記事項証明書、固定資産税課税明細書、家族関係図・戸籍、遺言書などがあると、論点を把握しやすくなります。お手元の資料を整理したうえでご相談ください。

まとめ

  • 令和6年1月1日以後の暦年課税の贈与について、生前贈与加算の対象期間が相続開始前7年以内へ段階的に延長された
  • 加算対象期間内であれば、110万円以下の贈与も相続税の課税価格に加算されることがある
  • 相続開始前3年超7年以内の贈与には、総額100万円までの控除がある(相続開始日が令和9年1月2日以後の場合)
  • 相続時精算課税にも令和6年から基礎控除(年110万円)が設けられた
  • どちらの課税方法が向くかは個別事情により異なり、税額計算は税理士等への確認が必要
  • 税務と、遺留分・特別受益などの民法上の問題は別であり、双方の観点からの検討が望まれる

生前贈与や相続対策について、資料を整理したうえで法律面の見通しを確認したい方は、神戸みらい法律会計事務所へご相談ください。遺言・相続に関するご相談を承っています。税務上の判断が必要な場合は、税理士等との連携を含めて対応方針を整理します。

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監修者・執筆者情報

神戸みらい法律会計事務所(弁護士法人ひょうご支所)は、弁護士・公認会計士の資格を有する体制で、相続・遺言をはじめとする法律問題に対応しています。法律面の整理に加え、必要に応じて会計・税務の論点を意識した検討を行います。所属する弁護士や取扱分野については、弁護士紹介ページをご覧ください。

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