「住宅ローンを払いながら、カードローンやリボ払いの返済も重なり、毎月の家計が回らなくなってきた」「このまま滞納が続くと、長年住んでいる戸建てを手放すことになるのではないか」。神戸市垂水区の星陵台、本多聞、千鳥が丘、舞子台といった住宅地で戸建てにお住まいの方から、こうしたご相談をいただくことがあります。
借金の整理というと、自宅を売却しなければならないというイメージを持たれる方も少なくありません。しかし、一定の条件を満たせば、自宅を残したまま、住宅ローン以外の借金を整理する方法を検討できる場合があります。その中心となるのが、裁判所を利用する個人再生という手続と、その中で使われる住宅資金特別条項、いわゆる住宅ローン特則です。
この記事では、住宅ローン付きの戸建てを残したい方に向けて、個人再生と住宅ローン特則の基礎、利用できるか確認すべきポイント、相談前にそろえておきたい資料を整理します。自宅を残せるかどうかは、住宅ローン特則の要件、家計の状況、自宅やその他の財産の評価、滞納や代位弁済の状況、担保関係などを資料で確認したうえで判断する必要があり、個別事情により結論は異なります。
この記事で分かること
- 個人再生と住宅ローン特則の基本的な仕組み
- 住宅を残したまま借金を整理できる可能性と、使えない場合があること
- 住宅ローン特則を利用できるか確認するためのポイント
- 保証会社の代位弁済後に注意すべき期限の考え方
- 相談前にそろえておきたい資料
住宅ローンと他の借金の状況を整理し、自宅を残せる可能性があるかを確認したい方は、お手元の資料をもとにご相談ください。契約書や返済予定表などを確認することで、対応方針を整理しやすくなります。
Contents
結論:自宅を残せるかは「要件・家計・財産・滞納状況」の確認で決まります
自宅を残せるかどうかは、次の点を一つずつ確認して判断します。いずれも、契約書や登記、家計の資料を確認しないと判断できません。
- 自宅と住宅ローンが住宅ローン特則の対象になるか(住宅・抵当権・担保の要件)
- 住宅ローンを今後も払い続けられる家計か
- 自宅やその他の財産の評価(清算価値)がどの程度か
- 住宅ローンを滞納し、保証会社の代位弁済が行われていないか、行われている場合はその時期
- 住宅ローン以外の借金の総額と内容
一般論として「個人再生で必ず家を残せる」「必ず借金が減る」と言えるものではなく、要件を満たさない場合や、減額の効果が小さくなる場合もあります。まずは現状を整理し、選択肢(任意整理・個人再生・自己破産)を比較して検討することが出発点になります。
個人再生とは
個人再生は、裁判所に申し立てて、借金を法律で定められた範囲まで減額し、原則として3年(事情により最長5年)で分割返済する再生計画を立てる手続です。安定した収入が見込まれることが前提になります。借金の整理には、大きく分けて次の方法があります。
| 方法 | 概要 |
|---|---|
| 任意整理 | 裁判所を使わず、債権者と個別に交渉し、主に将来利息のカットや分割の立て直しを図る方法です。 |
| 個人再生 | 裁判所を利用し、住宅ローン以外の借金を減額して再生計画に基づき返済する方法です。住宅ローン特則を使えば自宅を残せる場合があります。 |
| 自己破産 | 原則としてすべての借金の支払義務を免除してもらう代わりに、一定以上の価値がある財産を処分する方法です。自宅も処分の対象になりえます。 |
自宅を残したい場合に検討されることが多いのが個人再生ですが、収入や借金額、財産の状況によっては利用できない、あるいは効果が小さいこともあります。なお、住宅ローンを除いた借金の総額が一定額(5000万円)を超える場合は、個人再生を利用できません。
小規模個人再生と給与所得者等再生
個人再生には、小規模個人再生と給与所得者等再生の二つがあります。小規模個人再生は多くの方が利用する手続で、再生計画案について債権者の一定数の反対があると認められない場合があります。給与所得者等再生は、給与など収入の変動が小さい方が利用できる手続で、債権者の決議が不要な一方、可処分所得の2年分以上を返済する必要があり、返済額が高くなりやすい傾向があります。どちらが適しているか、返済額がいくらになるかは、収入や債権者の構成、財産の状況によって変わります。
住宅ローン特則(住宅資金特別条項)とは
住宅ローン特則は、住宅ローンについては従来どおり(または立て直したうえで)支払いを続け、それ以外の借金を再生計画で整理することで、自宅を残すことを目的とした制度です。本来、個人再生では債権者を平等に扱うのが原則ですが、住宅ローンについては例外的に支払いを続けることを認め、生活の基盤である自宅を維持できるようにしたものです。
ここがポイント
住宅ローン特則は、住宅ローンそのものが当然に減額される制度ではありません。減額の対象になるのは、原則として住宅ローン以外の借金です。したがって、住宅ローンを今後も無理なく払い続けられる家計であるかどうかが、利用を検討するうえで大切になります。
住宅ローン特則を使えるか確認するポイント
住宅ローン特則を利用するには、いくつかの要件を満たす必要があります。一つでも満たさないと利用できないため、事前の確認が重要です。代表的な確認ポイントは次のとおりです。
| 確認項目 | 確認の内容 |
|---|---|
| 対象となる住宅 | 本人が所有し、本人が居住するための建物であること。床面積の2分の1以上が居住用であること。別荘やセカンドハウス、投資用物件は対象外です。 |
| 店舗・賃貸併用 | 店舗兼住宅や一部を賃貸している場合、居住用部分が床面積の2分の1以上あるかを確認します。 |
| 住宅ローンの内容 | 住宅の建設・購入・改良のための分割払いの借入で、その住宅に抵当権が設定されていること(住宅資金貸付債権に当たるか)。 |
| 住宅ローン以外の担保 | 自宅に、住宅ローン以外の借入(自動車ローン、おまとめローン、事業用借入など)のための抵当権・根抵当権が付いていないこと。付いていると利用できない場合があります。 |
| 共有・連帯債務 | 共有名義、ペアローン、連帯債務、連帯保証、親族所有の土地などがある場合、追加の確認が必要です。 |
| 借換え・諸費用ローン | 借換えローン、諸費用ローン、リフォームローンが含まれる場合、その内容を確認します。 |
これらは登記事項証明書や住宅ローン契約書を確認しないと判断できないものが多く、結論は資料の内容によって変わります。たとえば、自宅を担保に住宅ローン以外の借入をしている場合、その債権者が抵当権を実行して自宅が競売にかけられるおそれがあるため、住宅ローン特則だけでは自宅を守れないことがあります。
保証会社の代位弁済と「巻戻し」(期限に注意)
住宅ローンの滞納が続くと、期限の利益を失い、保証会社が住宅ローンの残額を金融機関に一括で支払う「代位弁済」が行われることがあります。代位弁済が行われると、債権者は金融機関から保証会社に変わり、保証会社から残額の一括請求を受け、応じられなければ自宅が競売にかけられる流れになります。
保証会社が代位弁済をすると、原則として住宅ローン特則は利用できなくなります。ただし、例外として、保証会社が代位弁済をした日から6か月を経過する日までに個人再生の申立てをすれば、住宅ローン特則を利用できる場合があります。これを「巻戻し」といいます。巻戻しが認められて再生計画が認可されると、代位弁済はなかったものとして扱われ、住宅ローンを払い続けて自宅を残す道が再び開けます。
6か月の起算点に注意
この6か月の起算点は「代位弁済が行われた日」であり、代位弁済通知が手元に届いた日ではありません。通知が届くのが遅れても期限は延びません。1日でも過ぎると巻戻しは使えなくなるため、代位弁済の日付を正確に把握し、早めに動くことが重要です。代位弁済通知、期限の利益喪失通知、競売開始決定通知などの書類は、捨てずに保管してください。
清算価値保障原則と自宅の評価
個人再生では、再生計画で支払う総額が、仮に自己破産をした場合に債権者へ配当される見込み額を下回ってはならないというルールがあります。これを清算価値保障原則といいます。清算価値とは、おおまかにいえば、その時点で持っている財産を金銭評価した額です。清算価値には、自宅などの不動産のほか、預貯金、生命保険の解約返戻金、自動車、退職金の見込額などが含まれます(裁判所により計上の基準は異なります)。このため、返済額は、借金の総額だけでなく、財産の状況によっても変わります。
自宅の清算価値は、おおまかには、自宅の時価(査定額)から住宅ローン残高を差し引いた額で考えます。住宅ローン残高が時価を上回る(オーバーローン)場合、自宅の清算価値は0として扱われることが多くなります。時価が住宅ローン残高を上回る(アンダーローン)場合、その差額が清算価値に加算され、返済額が上がる可能性があります。住宅ローンをほとんど返し終えている場合、自宅の清算価値が高くなり、減額の効果が小さくなることがあります。
参考として、住宅ローンを除いた借金の総額に応じた最低限の返済額(最低弁済額)の目安は次のとおりです。ただし、これは目安の一つにすぎず、清算価値や、給与所得者等再生での可処分所得を踏まえた基準と比べて、最も高い額が実際の返済額になります。具体的な金額は資料を確認したうえで検討する必要があります。
| 借金の総額(住宅ローンを除く) | 最低弁済額の目安 |
|---|---|
| 100万円未満 | 借金の総額(全額) |
| 100万円以上 500万円以下 | 100万円 |
| 500万円超 1500万円以下 | 5分の1 |
| 1500万円超 3000万円以下 | 300万円 |
| 3000万円超 5000万円以下 | 10分の1 |
個人再生・住宅ローン特則の手続の流れ
個人再生は、おおむね次の流れで進みます。裁判所や事案により、手続の細部、必要書類、費用、期間は異なります。
| 段階 | 主な内容 |
|---|---|
| 相談・受任 | 借金や住宅ローンの状況、家計、財産を確認し、方針を検討します。 |
| 資料整理・債権調査 | 債権者から取引履歴を取り寄せ、借金の額を確定します。 |
| 家計収支の確認 | 住宅ローンを払い続けられるか、再生計画を遂行できるかを確認します。 |
| 申立て | 必要書類をそろえ、裁判所に個人再生を申し立てます。代位弁済がある場合は期限に注意します。 |
| 開始決定 | 裁判所が手続の開始を決定します。個人再生委員が選任される場合があります。 |
| 債権届出・認否 | 債権者からの届出を確認し、債権額を確定します。 |
| 再生計画案の提出 | 返済計画(住宅資金特別条項を含む)を作成し、提出します。 |
| 決議・意見聴取 | 小規模個人再生では書面決議、給与所得者等再生では意見聴取が行われます。 |
| 認可決定・確定 | 裁判所が再生計画を認可し、確定します。 |
| 弁済開始 | 再生計画に従って返済を開始します。 |
垂水区の戸建てでよく問題になるケース
垂水区の星陵台、本多聞、千鳥が丘、舞子台、塩屋北、多聞台といった住宅地では、長年住んでいる戸建てを残したいというご相談の中で、次のような点が問題になることがあります。いずれも、結論は個別事情と資料により変わります。
- 住宅ローンを滞納している:滞納が続くと代位弁済や競売に進むため、早めの確認が必要です。
- 保証会社から代位弁済通知が届いた:巻戻しの期限(代位弁済日から6か月)との関係で、時間が限られていることがあります。
- 競売開始決定が届いた:手続上、中止を求める方法が検討される場合がありますが、費用や時期の問題があり、資料確認が必要です。
- ペアローン・共有名義・連帯保証がある:夫婦それぞれの手続が必要になる場合があるなど、扱いが複雑になります。
- 住宅ローン以外の抵当権が付いている:自動車ローンやおまとめローン、事業用借入のために自宅が担保になっていると、住宅ローン特則を使えないことがあります。
- 自宅の価値が住宅ローン残高を上回る:清算価値が上がり、返済額に影響することがあります。
- 固定資産税や税金の滞納がある:税金などは再生計画では減額されにくく、滞納があると手続に影響することがあります。
- 店舗兼住宅・事業用借入がある:居住用部分の割合や担保の状況によって、利用の可否が変わります。
相談前にそろえておきたい資料
相談の際に次の資料があると、住宅ローン特則を利用できるか、返済額がどの程度になりそうかを具体的に検討しやすくなります。すべてそろわなくても構いませんので、手元にあるものからご用意ください。
- 住宅ローン関係:住宅ローン契約書、返済予定表(償還予定表)、住宅ローン残高証明書
- 自宅関係:不動産登記事項証明書、固定資産税納税通知書、固定資産評価証明書、不動産の査定書
- 滞納・競売関係:代位弁済通知、期限の利益喪失通知、競売開始決定通知
- 借金関係:債権者の一覧、借入残高の分かる書類、督促状、訴状や支払督促が届いていればその書類
- 収入関係:給与明細、源泉徴収票、確定申告書、年金の資料
- 家計・財産関係:家計の収支が分かる資料、預貯金通帳、生命保険証券、退職金見込額の分かる資料
- 関係者:共有者、連帯保証人、連帯債務者が分かる契約書類
- 公租公課:住民税、国民健康保険料、社会保険料、固定資産税などの滞納が分かる資料
やってはいけない対応
返済が苦しくなると、つい次のような対応をとってしまいがちですが、手続上問題になる可能性があるため、事前に確認することをおすすめします。
- 一部の債権者だけに偏って返済する:後の手続で問題になることがあります。
- 自宅や財産の名義変更・処分・親族への譲渡を独断で行う:清算価値や手続の公正さの観点から問題になることがあります。
- 督促状、代位弁済通知、競売の書類を放置する:巻戻しの期限を過ぎたり、競売が進んだりするおそれがあります。
- 新たな借入で返済を続ける:借金が増え、状況が悪化することがあります。
- 保証人や共有者への影響を確認せずに手続を進める:保証人に一括請求が及ぶなど、想定外の影響が出ることがあります。
特に、住宅ローン以外の借金に保証人・連帯保証人・連帯債務者がいる場合、個人再生で本人の借金を減額しても、これらの方の支払義務は当然には減りません。手続の前に影響を確認することが重要です。
弁護士に相談するタイミング
弁護士への相談は、結果を保証するためのものではなく、住宅ローンや借入、家計、財産の資料をもとに、自宅を残す方法を検討できるか、どの手続が適しているかといった対応方針を整理するためのものです。次のような場面では、早めの相談が判断材料の整理に役立ちます。
- 住宅ローン以外の返済が苦しく、家計が赤字になってきたとき
- 住宅ローンの滞納が始まりそう、または始まったとき
- 保証会社から代位弁済通知が届いたとき(期限との関係で特に早めに)
- 競売の書類が届いたとき
- 住宅ローンや他の借金に保証人・連帯債務者がいるとき
住宅ローンと他の借金、家計、財産の資料をもとに、自宅を残せる可能性があるか、どの手続が適しているかを一緒に整理できます。垂水区周辺で戸建てを所有し、返済の見直しを考えている方は、まずはご相談ください。
よくある質問(FAQ)
個人再生をすれば必ず家を残せますか。
必ず残せるわけではありません。住宅ローン特則の要件を満たすか、住宅ローンを払い続けられる家計か、清算価値がどの程度かなどによって結論は変わります。要件を満たさない場合や、減額の効果が小さい場合もあります。
住宅ローン特則を使うと、住宅ローンも減額されますか。
原則として住宅ローン自体は減額されません。減額の対象になるのは、主に住宅ローン以外の借金です。住宅ローンは、従来どおり、または支払いを立て直したうえで払い続けることになります。
住宅ローンを滞納していても利用できますか。
滞納していても利用を検討できる場合があります。ただし、保証会社の代位弁済が行われると原則として使えなくなり、巻戻しという例外を使うには期限があります。滞納が続いている場合は早めの確認が必要です。
保証会社が代位弁済をした後でも間に合いますか。
代位弁済が行われた日から6か月を経過する日までに個人再生を申し立てれば、巻戻しにより利用できる場合があります。起算点は代位弁済が行われた日で、通知が届いた日ではありません。日付の確認が重要です。
ペアローンや共有名義でも住宅ローン特則は使えますか。
使える場合がありますが、夫婦それぞれが手続を行う必要があるなど、扱いが複雑になることがあります。裁判所の運用や契約内容により異なるため、契約書類を確認したうえで検討します。
自宅の価値が住宅ローン残高より高い場合はどうなりますか。
時価が住宅ローン残高を上回る分(アンダーローン部分)は清算価値に加算され、返済額が上がる可能性があります。住宅ローンをほとんど返し終えている場合も同様に、減額の効果が小さくなることがあります。
税金や固定資産税を滞納している場合はどうなりますか。
税金や社会保険料などは、個人再生の再生計画では減額されにくい債権です。滞納があると手続に影響することがあるため、滞納の状況を確認し、必要に応じて納付方法を整理することが大切です。
弁護士に相談するときは何を持っていけばよいですか。
住宅ローン契約書、返済予定表、残高証明書、登記事項証明書、固定資産税納税通知書、借入先の一覧、給与明細、家計の分かる資料などがあると検討しやすくなります。すべてそろわなくても、手元にあるものからお持ちください。
まとめ
- 一定の条件を満たせば、個人再生と住宅ローン特則により、自宅を残したまま住宅ローン以外の借金を整理できる場合があります。
- 住宅ローン自体は原則減額されず、払い続けられる家計であることが前提になります。
- 利用できるかは、住宅・抵当権・担保の要件、家計、清算価値、滞納や代位弁済の状況などを資料で確認して判断します。
- 保証会社の代位弁済がある場合、巻戻しの期限(代位弁済日から6か月)に注意が必要です。
- まずは資料を整理し、任意整理・個人再生・自己破産を比較しながら、対応方針を検討することが出発点です。
「自分の家は住宅ローン特則の対象になるのか」「いつ動けばよいのか」を、資料をもとに整理することから始めましょう。神戸市垂水区周辺で戸建てを所有し、自宅を残して返済を見直したい方のご相談に対応しています。
参考資料

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