神戸市内や兵庫県内の建設現場で長く働いてこられた方、またはそのご家族が、中皮腫や肺がん、石綿肺などの診断を受けた後に、「国の給付金の対象になるのだろうか」と調べはじめることは少なくありません。
建設アスベスト給付金は、石綿(アスベスト)にさらされる建設業務に従事したことで石綿関連疾病にかかった方やそのご遺族に対し、国が給付金を支給する制度です。神戸で働いていたから特別な制度がある、というものではなく、全国共通の国の制度を、神戸の読者の方が利用できるかどうかという問題になります。
この記事では、対象になり得る方、対象となる期間や業務、対象疾病、給付金額の決まり方、請求期限、必要となり得る資料、請求手続の流れ、神戸で準備を進めるときの確認ポイントを整理します。ご自身やご家族が請求できる可能性があるかは、診断書や就業歴に関する資料を確認したうえで判断する必要があります。
建設アスベスト給付金は、対象期間や就業歴、医療資料、遺族関係などの確認が必要になる制度です。ご自身やご家族が対象になり得るかを整理したい場合は、資料を持って相談することで、見通しや必要な準備を検討しやすくなります。
建設アスベスト給付金の全体像(まず押さえたい要点)
はじめに、確認しておきたい要点を整理します。いずれも詳細は厚生労働省の公表資料で確認する必要がありますが、全体像をつかむ手がかりになります。
| 確認したい項目 | 概要(詳細は厚生労働省の公表資料で確認) |
|---|---|
| 対象となる立場 | 石綿にさらされる建設業務に従事した労働者、一人親方、中小事業主(家族従事者等を含む) |
| 対象となる期間・業務 | 石綿の吹付け作業や一定の屋内作業場での作業など、作業の種類ごとに対象期間が法令で定められています |
| 対象となる疾病 | 中皮腫、肺がん、著しい呼吸機能障害を伴うびまん性胸膜肥厚、石綿肺、良性石綿胸水など |
| 給付金額 | 病態区分に応じて定められ、死亡や病態の重さ等で異なります(喫煙歴のある肺がんや短期のばく露では減額される場合があります) |
| 請求期限 | 起算点(診断日・じん肺管理区分の決定日・死亡日など)から一定の期間内に請求する必要があります |
| 必要となり得る資料 | 就業歴がわかる資料、医療資料、(遺族の場合)戸籍・死亡関係資料など |
| 相談を検討したい場面 | 就業歴や勤務先が不明、本人が死亡、労災資料との関係が不明、既払金がある、請求期限が不安なときなど |
建設アスベスト給付金は国の制度です。神戸など特定の地域だけの制度ではなく、対象期間・対象業務・対象疾病・就業歴の資料などによって対象かどうかが判断されます。
建設アスベスト給付金とはどのような制度か
国が設けた給付金制度であること
建設アスベスト給付金は、石綿にさらされる建設業務に従事した方が石綿を吸い込むことで疾病にかかり精神的な苦痛を受けたことについて、最高裁判所において国の責任が認められたことを踏まえ、被害者の方々への迅速な賠償を図るために設けられた制度です。令和3年に法律が成立し、令和4年から請求の受付が行われています。
訴訟を一から起こさなくても、要件を満たせば国に対して給付金を請求できる仕組みである一方、就業歴やばく露作業の内容、遺族関係、すでに受け取った補償金の有無など、確認すべき事項があります。
労災保険・石綿健康被害救済制度・損害賠償請求との違い
石綿による健康被害をめぐる制度には、建設アスベスト給付金のほかにも、労災保険給付、石綿健康被害救済制度、建材メーカー等への損害賠償請求などがあります。これらは目的や請求先、対象が異なるため、混同しないことが大切です。
建設アスベスト給付金は、労災保険給付や石綿健康被害救済制度の支給を受けている場合でも請求できるとされています。一方で、すでに受け取った補償金の内容によっては、給付金額の調整が問題になる場合があります。どの制度を使うか、併用できるかは、個別事情により異なります。
本人が亡くなっている場合は遺族が請求できる場合がある
要件を満たす方がすでに石綿関連疾病で亡くなっている場合には、一定の範囲のご遺族が請求できる場合があります。請求できる遺族の範囲や順位は法令で定められているため、戸籍などで続柄や順位を確認する必要があります。
対象になる方・対象期間・対象業務
対象となる立場(労働者・一人親方・中小事業主・家族従事者)
対象となり得るのは、石綿にさらされる建設業務に従事して石綿関連疾病にかかった方で、企業などに雇用されていた労働者に限られません。一人親方や中小事業主(家族従事者等を含む)も対象に含まれ得る点が、この制度の特徴です。
ご自身が労働者だったのか、一人親方や事業主だったのかによって、就業歴を示す資料の集め方が変わることがあります。
対象期間と対象業務の考え方
対象となるのは、石綿の吹付けの作業に係る建設業務や、一定の屋内作業場で行われた作業に係る業務など、作業の種類ごとに定められた期間に、所定の作業に従事していた場合です。対象となる期間や業務の範囲は法令で具体的に定められており、厚生労働省の公表資料で確認できます。
自分の働いていた現場や時期が当てはまるかどうか、微妙なケースもあります。該当しないように思える場合でも、就業歴や作業内容を整理したうえで判断する必要があります。
神戸・兵庫県内の現場で働いていた場合の考え方
神戸市内、明石、阪神間、兵庫県内などの現場で働いていた場合も、地域独自の特別な要件があるわけではありません。あくまで、全国共通の対象期間・対象業務・対象疾病・就業歴の資料によって判断されます。神戸での就労であること自体が有利にも不利にもなるわけではない、という点を押さえておくと整理しやすくなります。
対象となる疾病と給付金額の決まり方
対象となる石綿関連疾病
給付金の対象となる石綿関連疾病として、中皮腫、肺がん、著しい呼吸機能障害を伴うびまん性胸膜肥厚、石綿肺、良性石綿胸水などが定められています。
これらに当たるかどうか、また石綿のばく露が原因といえるかどうかは、医学的な診断や認定基準に基づいて判断されます。じん肺管理区分や呼吸機能の検査結果など、医療資料や労災資料を確認する必要があります。診断や検査については主治医に相談する事柄であり、法律相談とは区別して進めることになります。
給付金額の決まり方(病態区分・減額・追加給付金)
給付金額は、病態区分に応じて定められています。病態の重さや合併症の有無、ご本人が死亡しているかどうかなどによって区分が分かれ、金額が異なります。
喫煙の習慣があった肺がんの方や、ばく露期間が一定に満たない方については、給付金額が一定の割合で減額される場合があります。また、すでに国や企業から損害賠償金や和解金などを受け取っている場合、給付金額の調整が問題になることがあります。具体的な金額や減額・調整の取扱いは、厚生労働省の公表資料で確認する必要があります。
なお、給付金を受けた後に症状が悪化し病態区分が変わった場合には、差額分の追加給付金を請求できる場合があります。
| 金額に影響する主な要素 | 考え方 |
|---|---|
| 疾病・病態の区分 | 中皮腫、肺がん、びまん性胸膜肥厚、石綿肺(じん肺管理区分)、良性石綿胸水など、病態の区分に応じて金額が定められています |
| 合併症の有無・病態の重さ | 石綿肺などでは、合併症の有無や管理区分により区分が分かれます |
| ご本人の死亡の有無 | ご本人が石綿関連疾病で死亡している場合は、金額が異なる区分が設けられています |
| 減額の有無 | 喫煙の習慣があった肺がんの方、ばく露期間が一定に満たない方は、給付金額が一定の割合で減額される場合があります |
| 症状悪化後の追加給付金 | 受給後に症状が悪化し病態区分が変わった場合は、差額分の追加給付金を請求できる場合があります |
請求期限と注意したい起算点
建設アスベスト給付金には請求期限が定められています。起算点は、石綿関連疾病にかかった旨の医師の診断日や、石綿肺に係るじん肺管理区分の決定日とされ、石綿関連疾病により死亡した場合は死亡日が起算点とされています。
どの起算点が当てはまるか、また期限がいつまでかは、診断の時期や管理区分の決定、死亡の有無などの個別事情によって変わり得ます。期限が迫っているかどうかを正確に把握するためにも、早めに診断書や労災資料を確認し、必要に応じて公式資料で期限を確認することをおすすめします。
期限の長さや起算点の当てはめは個別事情により異なります。ご自身の状況で期限がいつになるか不安な場合は、資料を整理したうえで確認することが重要です。
請求手続の流れ
請求手続は、すでに労災認定を受けているかどうかなどによって進め方が分かれます。いずれの場合も、必要書類を厚生労働省(労働基準局労災管理課の建設アスベスト給付金担当)あてに、配達状況が確認できる方法で郵送して請求します。
労災支給決定等情報提供サービスを利用できる場合
石綿関連疾病に関する労災保険給付の支給決定や、石綿健康被害救済制度の特別遺族給付金の支給決定をすでに受けた方やそのご遺族は、これらの支給決定情報の提供を受けられる「労災支給決定等情報提供サービス」を利用できる場合があります。このサービスを利用すると、過去の労災の支給決定などを確認しやすく、請求手続を進めやすくなります。
サービスを利用しない通常の請求の場合
労災認定を受けていない場合などは、通常の請求として、就業歴やばく露作業の内容、医療資料などを自分で整理して請求することになります。就業歴等申告書には、石綿にばく露した作業の職種や内容を記載し、当時の事業主や同僚などから証明を受ける必要がある場合があります。
遺族が請求する場合・追加給付金を請求する場合
ご本人が亡くなっている場合は、ご遺族が請求します。戸籍などで遺族の範囲や順位を確認する必要があります。なお、すでに国や企業から損害賠償金や和解金などを受け取っている場合でも、本制度の給付金を初めて請求するときは「追加給付金」ではなく「給付金」として請求することになります。追加給付金は、いったん給付金を受けた後に症状が悪化したときなどに請求するものです。
| 資料の種類 | 例 |
|---|---|
| 請求の基本書類 | 給付金請求書、就業歴等申告書など(厚生労働省の様式集による) |
| 就業歴・ばく露を示す資料 | 給与明細、源泉徴収票、確定申告書、年金記録、建設業退職金共済手帳、作業日報、名刺、写真、当時の同僚の証言など |
| 医療に関する資料 | 診断書、CT・X線などの画像、検査結果、じん肺健康管理手帳など |
| 身分・遺族関係の資料 | 戸籍謄本、住民票(遺族請求では死亡の事実や続柄がわかる資料など) |
| 他制度の受給に関する資料 | 労災保険給付や石綿健康被害救済制度の受給状況がわかる資料など |
必要となる資料は、ご本人の請求か遺族の請求か、労災認定を受けているかどうかなどによって異なります。詳しい様式や添付書類は、厚生労働省の様式集や請求の手引きで確認してください。
神戸で請求準備を進めるときの確認ポイント
神戸市内や兵庫県内の現場で働いていた方が請求準備を進める際は、就業歴やばく露作業の内容を裏づける資料を整理することが出発点になります。地域に特別な制度があるわけではありませんが、長期間にわたる就労や、複数の現場・元請下請関係をたどる作業は、資料の整理に手間がかかることがあります。
ご本人が当時の状況を説明できる場合に整理したい情報
ご本人が当時の状況を説明できる場合は、勤めていた会社名、現場名、工期、職種、作業内容、元請・下請の関係、当時の同僚などを書き出して整理しておくと、就業歴の確認がしやすくなります。
ご本人が亡くなっている場合にご遺族が確認したい資料
ご本人が亡くなっている場合、ご遺族は本人の記憶に頼ることができません。古い給与明細、確定申告書、年金記録、健康保険の資料、労災に関する資料、預金通帳、名刺、写真、作業日報、会社関係の書類、当時の同僚の連絡先、医療資料などが、就業歴やばく露作業を確認する手がかりになります。まずは家族が把握している情報や手元の書類から整理を始めるとよいでしょう。
よく問題になるケース
次のような場合は、判断に迷いやすく、確認すべき点が多くなりがちです。いずれも結論は個別事情によって変わるため、資料を確認したうえで検討する必要があります。
- 昔の勤務先が分からない、勤務先が廃業している
- 労災認定を受けていない
- ご本人がすでに亡くなっており、遺族関係や資料の整理が必要
- 一人親方として働いており、就業歴を示す資料が少ない
- 肺がんで喫煙歴があり、減額の取扱いが気になる
- 国や企業から和解金・補償金・損害賠償金を受け取ったことがある
- 自分の働いていた期間や業務が対象に当たるか分からない
- 建材メーカー等への損害賠償請求もあわせて検討したい
これらの場面では、対象になり得るかどうか、どの制度をどの順序で検討するか、必要な資料は何かを、早めに整理しておくと見通しを立てやすくなります。
請求前に確認しておきたいチェックリスト
請求の準備として、まずは次のような資料が手元にあるかを確認しておくと整理が進みます。すべてがそろっていなくても、確認できる資料から順に集めていくことができます。
- 診断書や検査結果、CT・X線などの画像、じん肺健康管理手帳などの医療資料
- 労災保険給付や石綿健康被害救済制度の受給状況がわかる資料
- 給与明細、源泉徴収票、確定申告書、年金記録など就業歴を示す資料
- 建設業退職金共済手帳、作業日報、名刺、写真など作業内容を示す資料
- 当時の同僚の連絡先など、就業歴を裏づけられる情報
- (ご遺族の場合)戸籍謄本、住民票、死亡の事実や続柄がわかる資料
- すでに受け取った和解金・補償金・損害賠償金に関する資料
弁護士に相談する目安と相談でできること
次のような場合は、弁護士に相談することで、資料の整理や手続の進め方を検討しやすくなります。相談は、結果を保証するものではなく、対象になり得るかどうかの見通しや、必要な資料、制度の選択、請求期限の確認といった判断材料を整理するためのものです。
- 対象となる期間や職種に当たるか分からない
- 資料が古く、勤務先が廃業しているなどして就業歴の確認が難しい
- 労災認定の資料があるが、給付金請求との関係が分からない
- ご本人が亡くなり、遺族関係や資料の整理が複雑
- 国や企業からすでに金銭を受け取っており、調整の有無が気になる
- 建材メーカー等への請求もあわせて検討したい
- 請求期限が迫っていないか不安
- 厚生労働省から追加の資料提出を求められた
建設アスベスト給付金は、就業歴や医療資料、遺族関係などを確認しながら準備を進める制度です。ご遺族だけでは把握しにくい当時の就業歴や資料も、整理することで請求の可能性や期限、手続の方針を検討しやすくなります。
弁護士費用については弁護士費用を確認する、担当する弁護士については弁護士紹介を見るをご覧ください。
よくある質問(FAQ)
建設アスベスト給付金は誰が対象になりますか?
対象は、石綿にさらされる建設業務に従事して石綿関連疾病にかかった労働者や、一人親方、中小事業主(家族従事者等を含む)です。対象となる期間・業務・疾病などの要件があり、該当するかは就業歴資料や診断書などを確認したうえで判断する必要があります。
一人親方でも請求できますか?
一人親方や中小事業主(家族従事者等を含む)も対象に含まれ得ます。雇用されていた方に限られない点が特徴です。実際に該当するかは、就業歴やばく露作業の内容を示す資料を確認する必要があります。
本人が亡くなっていても遺族が請求できますか?
要件を満たす方がすでに石綿関連疾病で亡くなっている場合、一定の範囲のご遺族が請求できる場合があります。遺族の範囲や順位は法令で定められているため、戸籍などで続柄を確認する必要があります。
神戸の現場で働いていた場合、どこに請求しますか?
建設アスベスト給付金は国の制度で、神戸の現場で働いていた場合も地域限定の特別な制度ではありません。請求は厚生労働省の担当課あてに郵送します。詳しい提出先は厚生労働省の公表資料でご確認ください。
労災認定を受けていなくても請求できますか?
労災認定を受けていない場合でも請求できる場合があります。労災認定を受けている方は手続を簡素にできる仕組みがある一方、未認定でも就業歴や医療資料から請求準備を進められることがあります。該当性は資料を確認して判断します。
給付金はいくらもらえますか?
給付金額は病態区分に応じて定められており、死亡や病態の重さ、喫煙歴のある肺がんや短期のばく露による減額などで変わります。具体的な金額は厚生労働省の公表資料でご確認ください。
請求に期限はありますか?
請求には期限が定められています。起算点は診断日やじん肺管理区分の決定日、(死亡の場合は)死亡日などとされています。期限の長さや起算点の当てはめは個別事情で変わり得るため、早めに公式資料を確認するか相談することをおすすめします。
昔の勤務先や現場の資料が残っていない場合はどうすればよいですか?
当時の資料が手元になくても、給与明細、確定申告書、年金記録、写真、同僚の連絡先など、整理できる資料から確認を始められます。ご本人が亡くなっている場合は、ご家族が把握している情報や古い書類を手がかりにします。
まとめ
- 建設アスベスト給付金は、石綿にさらされる建設業務に従事して石綿関連疾病にかかった方やそのご遺族に対する国の制度です
- 対象となる立場、対象期間・業務、対象疾病、給付金額の決まり方、請求期限を、厚生労働省の公表資料で確認することが出発点になります
- 神戸など特定の地域だけの制度ではなく、就業歴や資料によって対象かどうかが判断されます
- 神戸・兵庫県内の現場で働いていた方は、会社名・現場名・工期・職種・作業内容などを整理しておくと確認が進みます
- ご遺族は、戸籍や死亡に関する資料、医療資料、就業歴を示す資料を確認します
- 判断に迷う場合は、整理できる資料を持って相談することで、対象になり得るか、期限、手続の方針を検討しやすくなります
ご自身やご家族が建設アスベスト給付金の対象になり得るか迷う場合は、手元にある資料を整理したうえでご相談ください。資料を確認することで、請求の可能性や請求期限、手続の進め方を検討しやすくなります。
参考資料(公的機関の公式資料)

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