淡路島(南あわじ市・洲本市・淡路市)で交通事故に遭われた方の中には、島内の医療機関だけでは十分な検査・手術・専門的なリハビリを受けにくく、神戸方面や徳島・鳴門方面の総合病院・専門病院へ通院されている方が少なくありません。通院のたびに高速道路を使い、ご家族が仕事を調整して送迎し、場合によっては前泊する——こうした負担が積み重なると、「この交通費や付添いの費用は、相手方に請求できるのだろうか」という疑問が生じます。
結論から申し上げると、島外への通院にかかる通院交通費・付添費・宿泊費は、損害賠償として請求できる可能性があります。ただし、いずれも当然に全額が認められるわけではなく、事故との相当因果関係、通院の必要性、費用の相当性、そしてそれらを裏づける資料の有無によって、認められる範囲は事案ごとに異なります。
この記事では、淡路島から島外へ通院している被害者とご家族に向けて、(1)どの費目を請求できる可能性があるか、(2)認められやすくするためにどの資料を残せばよいか、(3)保険会社と争いになりやすい点、(4)示談・後遺障害申請・保険会社への回答の前に確認すべきことを整理します。
示談書への署名前、保険会社へ回答する前、後遺障害の申請前に、手元の領収書や通院記録を一度確認しておくと、請求できる可能性のある項目を整理しやすくなります。判断に迷う段階で、弁護士に資料を確認してもらうこともできます。
Contents
島外通院の交通費・付添費・宿泊費|まず押さえる結論
島外通院に関わる費用は、大きく分けて通院交通費・付添費・宿泊費の三つが問題になります。それぞれ、請求できる可能性はありますが、認められるかどうかは「必要性」「相当性」「資料による裏づけ」で判断されます。
請求できる可能性がある費目
| 費目 | 主な内容 | 認められるための主な視点 |
|---|---|---|
| 通院交通費 | 公共交通機関・自家用車・タクシー・高速道路代・駐車場代など | 通院の必要性と費用の相当性、実費の立証 |
| 付添費(通院付添費) | ご家族等が通院に付き添った場合の費用 | 付添いの必要性(年齢・症状・歩行困難等)、医師の判断、付添内容の記録 |
| 宿泊費 | 遠方通院・早朝検査・手術前後等で前泊・宿泊した費用 | 日帰りが困難または不相当といえる事情、必要性・相当性・金額の妥当性 |
認められやすくするためのポイント
- なぜその島外病院に通う必要があるのかを、紹介状・診療情報提供書・主治医の説明で説明できるようにする。
- 領収書・明細を費目ごとに保管し、通院交通費明細書として一覧化する。
- 通院日・出発地・目的地・交通手段・付添者・宿泊理由をメモで記録する。
- タクシー・宿泊・遠方通院・付添いが必要な場合は、事前に保険会社の担当者へ確認し、やり取りを記録しておく。
もっとも、これらを満たしても費用が当然に全額認められるわけではありません。最終的に受け取れる金額は、過失割合、既に支払われた金額(既払金)、後遺障害の有無などとあわせて総合的に判断されます。個別事情により結論は変わります。
淡路島から神戸・徳島への島外通院が問題になりやすい理由
淡路島は、明石海峡大橋で本州(神戸方面)と、大鳴門橋で四国(徳島・鳴門方面)と陸路でつながっています。一方で、島内の医療機関だけでは対応が難しい検査・手術・専門外来・リハビリも少なくなく、主治医の判断で島外の総合病院・専門病院へ紹介・転院されるケースがあります。
このとき、居住地(南あわじ市・洲本市・淡路市)から病院までの距離・通院時間・高速道路の利用・ご家族の送迎の有無などにより、移動の負担が大きくなりがちです。そして相手方の任意保険会社は、こうした遠方通院について「近くの病院で足りるのではないか」「交通費が高額ではないか」「付添いは不要ではないか」といった点を確認・争点化しやすい傾向があります。
だからこそ、「島内では対応が難しく、その島外病院での治療が必要だった」という事情を、紹介状や診療情報提供書などの資料で説明できるようにしておくことが重要になります。なお、「淡路島だから島外通院費が当然に全額認められる」というわけではありません。あくまで個別の通院の必要性・相当性が問われます。
通院交通費として請求できる可能性があるもの
自賠責保険の支払基準でも、通院交通費は「通院に要した、必要かつ妥当な実費」とされています。交通手段ごとに、残すべき資料と留意点が異なります。
公共交通機関(バス・電車・高速バス)
路線バス・電車・高速バスの運賃は、通院に必要な範囲で実費が問題になります。経路・運賃・利用日が分かるよう、交通系ICカードの利用履歴や乗車券、領収書を残しておくと整理しやすくなります。
自家用車・ご家族による送迎
自家用車で通院した場合のガソリン代は、実務上、通院先までの走行距離に一定の単価を乗じて算定される取扱いがみられます。単価や算定方法は運用や事案により異なるため、ここでは具体額を断定しません。出発地・目的地・経路・往復距離が分かるよう記録しておくことが有用です。ご家族が送迎した場合も、同様に距離や通院の必要性を記録しておきます。
高速道路代・駐車場代
高速道路代や病院の駐車場代も、通院に必要な経路・時間短縮・身体的負担の軽減との関係を説明できれば、請求できる可能性があります。ETCの利用明細、高速道路や駐車場の領収書を保管してください。
タクシー代
タクシー代は、当然に認められるわけではありません。怪我の程度、歩行や乗降の困難性、公共交通機関を利用することの困難性、医師の指示、深夜・早朝の通院など、タクシーを使う必要性によって判断が変わります。利用前に保険会社へ確認できる場合は確認し、領収書を必ず保存してください。
フェリー・高速船を利用した場合
淡路島と本州・四国は橋で陸路接続されているため、通常は自動車・バスでの通院が想定されますが、移動手段や経路によってはフェリー・高速船を利用する場合もあり得ます。利用した場合は、運賃の領収書や予約記録を残しておきます。
通院交通費明細書の作成
交通費は、通院日ごとに費目・金額・経路を一覧化した「通院交通費明細書」としてまとめておくと、保険会社への提出や弁護士による確認がスムーズになります。下表のように整理しておくと漏れを防ぎやすくなります。
| 交通手段 | 主に残す資料 | 留意点 |
|---|---|---|
| 路線バス・電車・高速バス | 乗車券・領収書・ICカード履歴 | 経路・運賃・利用日が分かるようにする |
| 自家用車・送迎 | 通院記録(出発地・目的地・往復距離) | ガソリン代は距離に基づき算定される実務がある(単価は事案による) |
| 高速道路 | ETC利用明細・領収書 | 通院に必要な経路であることを説明できるようにする |
| 駐車場 | 駐車場の領収書 | 病院・通院との対応関係を記録する |
| タクシー | 領収書 | 利用の必要性(移動困難性・医師の指示等)の記録が重要 |
| フェリー・高速船 | 運賃の領収書・予約記録 | 利用した経路・日を記録する |
神戸・徳島の病院へ通う必要性をどう説明するか
島外通院の交通費・宿泊費が問題になる場面では、「なぜその病院に通う必要があったのか」を説明できるかどうかが鍵になります。次のような資料・事情が、必要性の説明に役立つ可能性があります。
- 主治医が作成した紹介状や診療情報提供書(島外病院への紹介・転院の経緯が分かるもの)。
- 島内の医療機関では対応が難しい検査・手術・専門外来・リハビリが必要であったという事情。
- 救急搬送先・転院先・紹介先として、その島外病院が選ばれた経緯。
- 後遺障害の判断に必要な検査や専門医の診察が、その病院で行われたという事情。
- 傷病の内容・症状・通院頻度・交通事情から見て、通院先の選択が不自然でないこと。
なお、どの治療・検査が必要かといった医学的判断は、弁護士ではなく医師が行うものです。治療方針や通院先については、主治医の説明や診療情報を踏まえて判断する必要があります。
付添費を請求できる可能性があるケース
付添費(通院付添費)は、ご家族等が通院に付き添ったことが必要であったと評価される場合に、請求できる可能性があります。自賠責保険の支払基準でも、原則として12歳以下のお子さまへの近親者の付添いや、医師が看護の必要性を認めた場合などについて看護料の定めがあります。次のようなケースでは、付添いの必要性を説明しやすい傾向があります。
- 被害者がお子さま、または高齢者で、単独での通院が難しい場合。
- 重症・歩行困難・車いす利用などで、移動や乗降に介助が必要な場合。
- 高次脳機能障害や認知面の問題があり、受診手続や医師の説明の理解に補助が必要な場合。
- 医師が付添いの必要性を認めている場合。
ご家族が付き添った場合は、単なる見舞いや任意の同行ではなく、移動介助・受診手続の補助・医師説明の補助・服薬やリハビリの管理など、付添いが必要であった具体的な内容を記録しておくことが重要です。これらの記録がないと、保険会社から「付添いは不要だった」と指摘されやすくなります。
また、ご家族が仕事を休んで付き添った場合は、付添費とは別に、休業損害的な主張ができるかが問題になることがあります。この点を検討するには、勤務先の資料、休業を証明する書類、給与明細、有給休暇の使用状況などの確認が必要です。付添費と休業損害は別の問題であり、二重に当然に認められるものではないため、事案に応じた整理が必要です。なお、裁判実務上参照される赤い本・青本にも付添看護費の項目がありますが、その基準額や評価は最新版・事案により異なります。
宿泊費を請求できる可能性があるケース
宿泊費は、通院のために必ず認められる費用ではありません。自賠責保険の傷害分の支払基準にも、宿泊費という独立の費目はなく、必要性・相当性が個別に問われます。遠方通院などにより、日帰りでの移動が困難または不相当といえる場合に、請求を検討できる可能性があります。たとえば次のような事情です。
- 早朝からの検査や、手術の前後で、当日の往復が現実的に難しい場合。
- 連日の通院が必要で、毎回の長距離移動が身体的に大きな負担となる場合。
- 重症で、長距離移動そのものが困難な場合。
- 公共交通機関の最終便・始発便の都合で、日帰りが難しい場合。
- 付添いが必要で、付添者も宿泊せざるを得ない場合。
宿泊費を請求する場合は、宿泊日・診察日・病院名・宿泊先・金額・宿泊した理由・日帰りが困難であった事情・領収書を整理しておきます。金額についても、通院のために相当な範囲かどうかが問われます。宿泊や遠方通院が必要になりそうな場合は、争いを避けるため、事前に保険会社の担当者へ相談し、やり取りを記録しておくことをおすすめします。事前の了承がないと一切請求できないとは限りませんが、後の争いを減らすうえで有効です。
保険会社に否認されやすいケースと対応
島外通院の費用は、相手方の任意保険会社との間で争いになりやすい部分です。代表的な指摘と、考えられる対応を整理します。否認されても、資料を整理して交渉や裁判実務上の基準を踏まえ、見直しを求める余地がある場合があります。ただし、結果を保証するものではありません。
| 保険会社からの主な指摘 | 考えられる対応 |
|---|---|
| 「近くの病院で足りるのでは」 | 紹介状・診療情報提供書・島内で対応が難しかった事情を整理する |
| 「タクシーは認められない」 | 移動困難性・医師の指示・公共交通機関の利用困難性を記録する |
| 「家族の付添いは不要」 | 付添いの必要性と具体的な内容を記録し、必要に応じて医師に確認する |
| 「宿泊は自己都合」 | 日帰りが困難・不相当であった事情と、診療日との対応関係を示す |
| 「領収書がない」 | 再発行・明細・通院記録・ICカード履歴などで補える部分を整理する |
いずれの場合も、感情的に反論するのではなく、通院の理由・必要性を文書化し、資料を整理したうえで対応することが有効です。否認が続く場合や判断に迷う場合は、弁護士に資料を確認してもらうことを検討してください。
残しておくべき資料チェックリスト
島外通院の費用を請求する可能性に備えて、次の資料を残しておくと、後の整理がスムーズになります。
- 診断書・診療報酬明細書
- 各費目の領収書(交通費・高速道路代・駐車場代・タクシー代・宿泊費など)
- 紹介状・診療情報提供書
- 通院交通費明細書(通院日ごとの費目・金額・経路の一覧)
- ETC利用明細・高速道路の領収書
- 駐車場の領収書
- 宿泊先の領収書・予約確認メール
- 通院日・出発地・目的地・交通手段・付添者・宿泊理由のメモ
- 保険会社とのメール・書面・通話メモ
- ご家族が仕事を休んだ場合の勤務先資料・休業を証明する書類・給与明細・有給休暇の記録
示談前に確認すべきこと
示談の前には、請求できる可能性のある費目に漏れがないかを確認することが重要です。特に次の点を確認してください。
- 通院交通費・付添費・宿泊費に計上漏れがないか。
- 後遺障害の申請を予定している場合、その手続との関係。
- 休業損害や慰謝料など、他の費目との関係。
- 過失割合や既払金が、最終的に受け取れる金額にどう影響するか。
示談書に署名すると、原則として、後から追加で請求することが難しくなる場合があります。もっとも、その法的効果は示談書の内容や事案により異なります。署名の前に、提示された内容と請求項目を確認し、必要に応じて弁護士に資料を見てもらうことをおすすめします。
弁護士に相談を検討するタイミング
次のような場面では、早めに弁護士へ相談することで、請求できる可能性のある項目の漏れや、保険会社への説明方法を整理しやすくなります。
- 島外通院を始める前、または始めた直後。
- タクシー・宿泊・付添いが必要になったとき。
- 保険会社から交通費・付添費・宿泊費を否認されたとき。
- 治療費の打ち切りを打診されたとき。
- 症状固定と言われたとき、後遺障害の申請を検討するとき。
- 示談金の提示を受けたとき。
なお、ご自身やご家族の自動車保険に弁護士費用特約が付いている場合、弁護士への相談・依頼の費用にこれを利用できることがあります。特約の有無や利用条件は、加入している保険会社にご確認ください。
島外通院中の方は、領収書や通院記録を整理してご相談いただくと、資料を確認したうえで、請求できる可能性のある項目や保険会社への説明方法を整理できます。示談・後遺障害申請・保険会社への回答の前のタイミングでのご確認をおすすめします。
よくある質問(FAQ)
淡路島から神戸の病院へ通う交通費は請求できますか。
通院に必要かつ妥当な範囲であれば、請求できる可能性があります。島内で対応が難しい治療・検査のために神戸の病院へ通っているという事情を、紹介状や診療情報提供書などで説明できると整理しやすくなります。認められる範囲は事案により異なります。
徳島・鳴門の病院へ通う場合も交通費は対象になりますか。
対象になり得ます。通院先が徳島・鳴門であっても、その病院での治療・検査が必要であったといえれば、通院交通費を請求できる可能性があります。経路・交通手段・費用の記録を残しておくことが有用です。
家族が車で送迎した場合、ガソリン代や高速道路代は請求できますか。
通院に必要な範囲であれば、請求できる可能性があります。ガソリン代は走行距離に基づき算定される実務があり、高速道路代はETC利用明細や領収書で立証します。通院の必要性と経路を記録しておいてください。
タクシー代は認められますか。
当然に認められるわけではありません。怪我の程度、歩行や乗降の困難性、公共交通機関の利用が難しい事情、医師の指示などにより判断が変わります。利用前に保険会社へ確認し、領収書を残しておくことをおすすめします。
家族の付添費は請求できますか。
付添いが必要であったと評価される場合には、請求できる可能性があります。お子さま・高齢者・重症・歩行困難・医師が必要と認めた場合などが考えられます。付添いの具体的な内容を記録しておくことが重要です。
通院のために前泊したホテル代は請求できますか。
日帰りでの移動が困難または不相当といえる事情があれば、請求を検討できる可能性があります。早朝検査・手術前後・重症・公共交通の都合などが該当し得ます。宿泊した理由・診療日との対応関係・領収書を整理してください。当然に認められるものではありません。
領収書をなくした場合はどうすればよいですか。
再発行が可能なものは再発行を依頼し、ICカードの利用履歴・通院記録・明細などで補える部分を整理します。完全に補えない場合もありますが、残っている資料をできる限り集めておくことが大切です。
保険会社に交通費を否認されたらどうすればよいですか。
通院の必要性や費用の相当性を、紹介状・診療情報提供書・通院記録などで整理したうえで、見直しを求める余地がある場合があります。否認が続く場合や判断に迷う場合は、弁護士に資料を確認してもらうことを検討してください。
まとめ
- 島外通院にかかる通院交通費・付添費・宿泊費は、損害賠償として請求できる可能性があります。
- いずれも当然に全額認められるわけではなく、必要性・相当性・資料による裏づけが重要です。
- 「なぜその島外病院に通う必要があったか」を、紹介状・診療情報提供書・通院記録で説明できるようにしておきましょう。
- 示談・後遺障害申請・保険会社への回答の前に、請求項目の漏れがないか確認してください。
- 島外通院中の方は、領収書や記録を整理して、早めに弁護士へ相談することを検討してください。
あわじみらい法律会計事務所では、交通事故の被害に遭われた方からのご相談を承っています。手元の資料を確認したうえで、請求できる可能性のある項目や保険会社への説明方法を整理できます。費用やご相談方法については、下記のページをご確認ください。
監修者・執筆者
弁護士名:【要確認】
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