「土地や建物を売却し、代金も受け取って引き渡したのに、買主がいつまでも所有権移転登記をしてくれない」「売ったはずの不動産について、いまも自分あてに固定資産税の通知が届く」「買主と連絡が取れず、登記簿は売主である自分の名義のまま残っている」。こうしたお悩みは、不動産の売買が終わったあとになって表面化することがあります。
登記名義が売主に残ったままだと、固定資産税の通知が届いたり、建物の管理や近隣対応をめぐって連絡を受けたりと、思わぬ負担が生じることがあります。売主の側から買主に対して登記の引取りを求める方法として、「登記引取請求」という考え方があり、話合いで解決できないときは訴訟(登記引取請求訴訟)を検討することになります。
この記事では、買主が所有権移転登記をしない場合に、元売主の側でまず何を確認すべきか、登記引取請求とは何か、通常の登記手続請求との違い、訴訟から判決後の登記申請までの流れ、必要な資料、固定資産税の通知が届いたときの考え方、相手方が死亡・所在不明・法人解散の場合の入口、そして弁護士に相談するタイミングまでを整理します。結論の方向性を先にお伝えすると、買主が登記に応じない場合、売主の側から登記を求められる可能性がありますが、売買契約の内容、所有権が移った時期、代金の支払や引渡しの状況、相手方の現状、そして判決後に実際に登記できる内容かどうかを確認する必要があります。いきなり訴訟とは限らず、任意の話合いで解決できる場合もあります。個別の事情によって結論は変わりますので、資料を確認したうえで判断することが大切です。
買主が登記をしてくれず、売主名義のまま不動産が残っている場合、まずは登記事項証明書と売買契約書を確認することで、誰にどの登記を求めるべきか、任意交渉と訴訟のどちらを検討するかを整理できます。
Contents
買主が登記しないときにまず確認すること
買主が所有権移転登記をしない場合、あわてて訴訟を起こす前に、いま登記簿がどうなっているか、売買契約の内容はどうであったかを確認することが出発点になります。次の項目は、対応方針を検討するうえで最初に整理しておきたい確認事項です。すべての事案で同じ結論になるわけではなく、確認の結果によって取るべき手続は変わります。
| 確認する項目 | 確認する内容 |
|---|---|
| 現在の登記名義 | 登記事項証明書で、所有者としてだれの名義になっているかを確認します。 |
| 売買契約の有無と内容 | 売買契約書があるか、対象不動産が特定されているか、特約の有無を確認します。 |
| 所有権が移った時期 | 契約で所有権移転の時期(代金完済時など)を定めていないかを確認します。 |
| 代金の支払状況 | 売買代金が支払われているか、領収書や振込記録があるかを確認します。 |
| 引渡しの状況 | 物件を引き渡したか、鍵や書類の授受があったかを確認します。 |
| 相手方(買主)の現状 | 買主が存命か、連絡が取れるか、法人であれば存続しているかを確認します。 |
| 固定資産税の通知 | 売主あてに固定資産税・都市計画税の通知が届いていないかを確認します。 |
| 必要な登記の内容 | 求めるのが所有権移転登記か、更正・抹消かなど、必要な登記を整理します。 |
| 任意交渉の余地 | 買主に登記への協力を求める話合いの余地が残っているかを確認します。 |
| 判決後の登記可能性 | 訴訟で判決を得たとして、その内容で登記申請ができるかを見通します。 |
この記事の結論の方向性は、次のとおりです。
- 買主が登記に応じない場合、売主の側から登記を求められる可能性があります。
- ただし、売買契約の内容、所有権が移った時期、証拠、相手方の状況、登記実務を確認する必要があります。
- いきなり訴訟とは限らず、任意の話合いで解決できる場合もあります。
- 判決を得たあとに実際に登記できる内容かどうかを、訴訟の前から検討しておく必要があります。
登記引取請求とは(売主から買主に登記を求める方法)
不動産を売却すると、通常は買主が新しい所有者として登記名義を得ます。ところが、買主が登記の手続や費用を負担したがらないなどの理由で登記をしないと、登記簿上は売主の名義が残ってしまいます。このようなとき、売主の側から買主に対して「登記を引き取ってほしい(買主名義への移転登記に応じてほしい)」と求めるのが、登記引取請求です。
通常の登記手続請求との違い
不動産の登記をめぐる請求には、向きの異なる二つの場面があります。混同されやすいため、区別して理解しておくことが大切です。
一つは、登記を受ける側(買主など)が、登記に協力しない相手(売主など)に対して登記手続を求める、通常の登記手続請求です。もう一つが、登記を渡す側(売主など)が、登記をしようとしない相手(買主など)に対して登記の引取りを求める、登記引取請求です。前者は「登記を受けたい人」からの請求、後者は「登記を渡したい人」からの請求であり、請求する人の立場が反対になります。
「登記義務者が登記を怠った場合の請求を登記引取請求という」といった説明は、正確ではありません。登記引取請求は、登記を渡す側(多くの場合は売主)が、登記をしようとしない相手(多くの場合は買主)に対して求めるものです。どちらの立場からの請求かによって、必要な準備や進め方が変わります。
登記権利者と登記義務者という用語
登記の手続では、登記によって利益を受ける人を「登記権利者」、登記によって不利益を受ける(名義を失う)人を「登記義務者」と呼びます。売買による所有権移転登記では、通常、買主が登記権利者、売主が登記義務者にあたります。もっとも、契約の内容や登記の原因によって立場が変わることもあるため、実際の関係は契約書と登記記録を確認したうえで判断します。
共同申請の原則と、判決による単独申請
権利に関する登記は、登記権利者と登記義務者が共同で申請するのが原則です(不動産登記法第60条)。買主と売主が協力すれば、通常は共同で所有権移転登記を申請できます。しかし、一方が協力しない場合、この原則のままでは登記が進みません。
そこで、登記手続をすべきことを命ずる確定判決があれば、本来は共同で申請すべき当事者の一方が単独で登記を申請できるとされています(不動産登記法第63条第1項)。売主の側から登記引取請求訴訟を提起し、買主に登記手続を命ずる判決を得て確定すれば、売主が単独で所有権移転登記を申請できる場合があります。ただし、判決の内容が登記実務に適合している必要があります。この点は後ほど詳しく説明します。
裁判実務上の位置付け
登記引取請求は、登記と実際の権利関係を一致させるために、権利変動の当事者は互いに登記を求めることができ、相手方はこれに協力する義務を負う、という考え方に基づきます。この考え方は、最高裁判所の裁判例(昭和36年11月24日判決)でも示されています。もっとも、裁判例が示した一般的な考え方と、その裁判例が扱った個別の事案とは区別して理解する必要があり、あらゆる事案でそのまま同じ結論になるわけではありません。実際の見通しは、契約内容と登記記録を確認したうえで検討します。
不動産を売ったのに売主名義が残ると何が問題になるか
登記名義が売主に残ったままだと、いくつかの負担が生じることがあります。ただし、法律上の責任として当然に負うものと、事実上の対応を求められるにとどまるものは分けて理解する必要があります。過度に不安を抱く必要はありませんが、放置してよいわけでもありません。
固定資産税・都市計画税の通知が届くことがある
固定資産税は、毎年1月1日(賦課期日)時点で固定資産課税台帳に所有者として登録されている人に課税されるのが原則です(地方税法第343条、第359条)。登記名義が売主のまま残っていると、その年度の納税通知書が売主あてに届くことがあります。年の途中で売買や引渡しがあっても、その年度の納税義務者は変わりません。
売主と買主の間で固定資産税を日割りで精算する取決めをしていても、それは当事者間の契約上の負担の話であり、自治体との関係では賦課期日時点の登記名義人などが納税義務者となります。買主に対して負担を求められるかどうかは、契約の内容や精算条項の有無によって異なります。具体的な税額や精算の判断が必要な場合は、税理士や自治体の窓口への確認もあわせて検討してください。
行政や近隣から連絡を受けることがある
登記名義が残っていると、空き家や老朽化した建物について、自治体や近隣の方から登記名義人あてに問合せや連絡が来ることがあります。これは、登記名義人が対応窓口として把握されやすいためです。実際に管理の責任を負うかどうかとは別に、連絡や対応という事実上の負担が生じることがあります。
民法第717条の責任は登記名義だけで決まるとは限らない
土地の工作物(建物や塀など)の設置や保存に欠陥があり、他人に損害を与えた場合の責任は、まず占有者が負い、占有者が損害の発生を防ぐのに必要な注意をしたときは所有者が負うとされています(民法第717条)。ここでいう責任は、実際の権利関係に基づいて判断されるものであり、登記名義が残っているというだけで名義人が当然にこの責任を負うわけではありません。
もっとも、被害者から見ると登記名義人が所有者として把握されやすいため、名義人が責任追及の相手方とされ、紛争に巻き込まれるおそれはあります。法律上の責任と、相手方とされてしまう事実上のリスクは、分けて考えることが大切です。
将来の相続や取引が複雑になる可能性
売主名義が残ったまま時間が経つと、売主本人が亡くなって相続が発生し、相続人が問題を引き継ぐことがあります。そうなると、当事者が増え、必要な資料も増えて、対応が複雑になりがちです。早めに登記の状態を整理しておくことが、後の負担を軽くすることにつながります。
登記引取請求を検討できるケースと、別の手続を検討するケース
買主が登記をしない場面でも、登記引取請求がそのまま使えるとは限らず、別の手続の検討が必要な場合もあります。次の表は代表的な場面の整理です。いずれも「使える」「使えない」と一律に決まるものではなく、個別の事情により結論は変わります。
| 場面 | 考えられる方向性 |
|---|---|
| 売買後、買主が登記をしない | 売主から買主への登記引取請求を検討できる可能性があります。 |
| 買主が費用負担を理由に拒否している | まず任意交渉を検討し、応じない場合に訴訟を検討することがあります。 |
| 買主が死亡している | 相続人調査を行い、だれを相手とするかを確認する必要があります。 |
| 買主が所在不明である | 住所の調査や、送達方法(公示送達など)の検討が必要になる場合があります。 |
| 買主の法人が解散・清算結了している | 清算人の有無など、相手方をだれとするかの確認が必要です。 |
| 契約解除・無効・取消しが争われている | そもそも所有権の帰属が争点となり、別の枠組みでの検討が必要です。 |
| 相続登記が関係している | 相続を原因とする登記など、別の手続の確認が必要な場合があります。 |
| 遺産分割そのものが未了である | まず遺産分割の解決が必要で、直ちに登記引取請求では解決しないことがあります。 |
| 共有関係が問題になっている | 共有者間の関係を整理する別の手続の検討が必要な場合があります。 |
| 単独で申請できる登記である | 訴訟によらず登記できる場合があり、まず登記手続の確認が必要です。 |
| 農地など許可が必要な不動産である | 農地法上の許可など、登記の前提となる手続の確認が必要です。 |
訴訟の前に確認すること(資料・任意交渉・相手方調査)
登記引取請求訴訟は、いきなり提起しなければならないものではありません。訴訟の前に事実関係と資料を確認し、任意の話合いで解決できないかを検討することが、時間や費用の面でも大切です。
登記事項証明書を取得して現状を確認する
まず、対象不動産の登記事項証明書を取得し、現在の所有者名義や、そのほかの登記の状況を確認します。登記の現状がわからないまま方針を決めることはできません。
売買契約書と所有権が移った時期を確認する
売買では、当事者の合意によって所有権が移転するのが原則です(民法第176条)。もっとも、契約で所有権が移る時期を代金完済時などと定めている場合もあります。また、登記は、第三者に自分の権利を主張するための対抗要件です(民法第177条)。売買契約書を確認し、所有権移転の時期や登記に関する取決めを整理します。
代金の支払と引渡しの状況を確認する
代金が支払われているか、物件を引き渡したかは、請求の前提となる重要な事実です。領収書、振込記録、引渡しに関する書類などを確認し、証拠として整理しておきます。
買主へ任意の登記協力を求める・内容証明郵便を検討する
訴訟の前に、買主へ登記への協力を求める連絡を行い、話合いでの解決を検討します。書面で求める場合に内容証明郵便を用いることもありますが、内容証明郵便を送れば必ず有利になる、時効が必ず止まる、といったものではありません。どのような方法が適切かは、事案に応じて検討します。
相手方の住所・死亡・法人の存否を調べる
買主の現在の住所、存命かどうか、法人であれば存続しているかどうかは、だれを相手に手続を進めるかを左右します。相手方が死亡・所在不明・解散などの状態にある場合、相続人調査や送達方法の検討など、追加の対応が必要になります。
法務局で実現できる登記の内容を確認する
訴訟で何を求めるかは、最終的に法務局で登記できる内容から逆算して設計する必要があります。求める登記の内容が登記実務に合っていなければ、判決を得ても登記できないおそれがあります。訴訟の前から、判決後の登記申請まで見据えて検討することが大切です。
登記引取請求訴訟の流れ
売主から買主への登記引取請求訴訟は、おおむね次のような流れで進みます。実際の進み方や必要な手続は事案によって異なり、期間や費用も事案ごとに変わります。
| 段階 | 主な内容 |
|---|---|
| 1 事実と資料の確認 | 登記事項証明書、売買契約書、支払・引渡しの資料などを確認します。 |
| 2 相手方の調査 | 買主の住所、存命・存続の状況、相続人の有無などを調べます。 |
| 3 任意交渉 | 訴訟の前に、登記への協力を求める話合いを検討します。 |
| 4 請求内容と登記内容の設計 | 判決後の登記申請まで見据えて、求める登記の内容を組み立てます。 |
| 5 管轄裁判所の確認 | どの裁判所に提起するかを、事案に応じて確認します。 |
| 6 訴状の提出・送達 | 訴状を提出し、相手方へ送達します。所在不明の場合は送達方法を検討します。 |
| 7 相手方の答弁・争点整理 | 相手方の主張を踏まえ、争点を整理し、証拠を提出します。 |
| 8 和解または判決 | 話合いによる和解、または判決によって結論に至ります。 |
| 9 判決の確定 | 判決に対する不服申立てがなく確定するのを待ちます。 |
| 10 登記の申請・完了確認 | 確定判決に基づき登記を申請し、登記が完了したかを確認します。 |
| 11 固定資産税などの別途対応 | 税や費用の負担については、必要に応じて別途対応を検討します。 |
管轄裁判所や訴額、申立てにかかる費用などは、事案の内容によって変わります。おおよその相場を一律にお示しすることは適切でないため、具体的な費用や期間は、事案と手続を確認したうえで検討します。弁護士費用については、弁護士費用を確認するページもあわせてご覧ください。
判決を得たあとの登記で注意すること
登記引取請求訴訟で勝訴判決を得たとしても、その内容が登記実務に適合していなければ登記できないおそれがあります。判決を得ることと、実際に登記できることは別の問題です。次の点は、判決後の登記で問題になりやすい事項です。
判決が確定しているか
判決に基づいて単独で登記を申請するには、判決が確定している必要があります。判決確定証明書などの準備も必要になります。
判決の主文で登記の内容が特定できているか
判決の主文で、対象となる物件、当事者、登記の原因、登記原因の日付などが特定されている必要があります。これらがあいまいだと、登記申請が受理されないおそれがあります。だからこそ、訴訟の前から求める登記の内容を丁寧に設計することが重要になります。
住所・氏名・商号の変更や、相続による前提登記
当事者の住所や氏名、法人の商号が変わっていたり、相続や法人の承継が生じていたりする場合には、前提となる登記が必要になることがあります。前提登記が整っていないと、目的とする登記に進めないことがあります。
添付情報・登録免許税・法務局への事前確認
登記申請には、必要な添付情報や登録免許税の準備が必要です。求める登記が受理される内容かどうかについては、事前に法務局へ確認したり、登記申請の実務に詳しい司法書士と連携したりして進めることが安全です。
勝訴判決があれば必ず登記できる、というわけではありません。判決の内容が登記実務に適合していることが必要です。訴訟の前から、判決後の登記申請まで見据えて請求内容を設計することが大切です。
よく問題になるケース
ここでは、相談で迷いやすい典型的な場面を整理します。以下は一般的な場面の説明であり、特定の事案の結果を示すものではありません。実際の対応は、資料を確認したうえで、事案ごとに判断します。
買主が登記費用を払いたくないと言っている
買主が登記の費用負担を理由に登記をしない場合、まず任意の話合いで登記への協力を求めることを検討します。応じない場合には、登記引取請求訴訟を検討することがあります。費用の負担については、契約の内容もあわせて確認します。
買主が死亡している・連絡が取れない
買主が亡くなっている場合は、相続人を調査し、だれを相手とするかを確認する必要があります。相続放棄がされていることもあります。買主と連絡が取れない場合は、住所の調査や送達方法の検討が必要になります。いずれも一般的な方向性であり、具体的な手続は事案により異なります。
買主の法人が解散している
買主が法人で、解散・清算結了しているような場合は、清算人の有無など、だれを相手として手続を進めるかの確認が必要になります。法人の登記記録もあわせて確認します。
契約書が見つからない・数十年前の売買である
売買契約書が見つからない場合や、数十年前の古い売買である場合でも、代金の支払や引渡しを裏づける資料、当時のやり取りの記録などから事実関係を整理できることがあります。まずは手元にある資料を確認することが出発点です。資料が不足しているときほど、早めに相談して整理する意味があります。
元売主が亡くなり、相続人に税通知が届いた
売却した本人が亡くなり、その相続人に固定資産税の通知が届くことがあります。この場合、相続の状況と登記の状態の両方を確認する必要があります。なお、相続による登記については、令和6年4月1日から相続登記の申請が義務化されています。詳しくは、相続登記の義務化について確認するもあわせてご覧ください。
固定資産税を買主に請求したい
売主が負担した固定資産税を買主に請求できるかは、売買契約に精算の取決めがあるか、買主に契約上の義務違反があるかなどによって変わります。当然に全額を請求できるとは限らず、契約の内容や事情を確認したうえで判断します。
相談前に準備したい資料
ご相談の際に次のような資料があると、権利関係や登記の状態を確認しやすくなります。すべての事案で全部の資料が必要になるわけではありません。手元にあるものから整理していただければ十分です。
- 現在事項証明書または全部事項証明書(登記事項証明書)
- 公図、地積測量図、建物図面など
- 固定資産評価証明書
- 固定資産税・都市計画税の納税通知書
- 売買契約書、重要事項説明書
- 代金の領収書、振込記録、代金精算書
- 引渡しを確認できる書類
- 登記費用の負担に関する合意書
- 買主とのメール、手紙、メッセージの記録
- 送付した内容証明郵便の控え
- 住民票、戸籍、商業登記情報など相手方に関する資料
- 相続が関係する場合の遺産分割協議書、調停調書、審判書、判決書
- 法務局から受けた案内
- 不動産の現況がわかる写真
どの資料をどう整理すればよいかについては、相談前に準備したい不動産資料を確認するもご参照ください。
売買契約書や登記事項証明書などの資料を確認することで、誰にどの登記を求めるべきか、任意交渉と訴訟のどちらを検討するか、判決後の登記申請まで見据えてどのような請求内容にするかを整理できます。
弁護士に相談するタイミング
登記引取請求は、事実関係の確認、相手方の調査、任意交渉、訴訟、そして判決後の登記申請までを見通して進める必要があります。次のような場面では、早めに相談することで対応方針を整理しやすくなります。
- 買主が登記への協力をはっきり拒否したとき
- 買主と連絡が取れないとき
- 固定資産税の通知が継続して届いているとき
- 相手方が死亡している、または法人が解散しているとき
- 売買契約書や証拠となる資料が不足しているとき
- 相続人が複数いるとき
- 内容証明郵便を送る前
- 和解書に署名する前
- 訴訟を提起する前
- 判決を得たものの、登記の方法がわからないとき
相談によって、結果をお約束するものではありませんが、法的な請求関係を整理し、必要な証拠を確認し、相手方との交渉や、判決後の登記申請まで見据えた請求内容の検討、司法書士との連携が必要かどうかの判断ができます。登記の申請そのものは司法書士が扱う場面が多く、紛争性のある交渉や訴訟は弁護士が扱います。どちらの対応が必要か、あるいは両方を連携して進めるべきかを、状況に応じて整理します。
よくある質問
登記引取請求訴訟とは何ですか。
売却したのに買主が所有権移転登記をしない場合などに、売主の側から買主に対して登記の引取り(買主名義への移転登記への協力)を求める訴訟です。話合いで解決できないときに検討します。
買主が登記しない場合、売主だけで登記できますか。
登記は共同申請が原則ですが(不動産登記法第60条)、登記手続を命ずる確定判決を得れば、売主が単独で申請できる場合があります(同法第63条第1項)。ただし、判決の内容が登記実務に適合している必要があります。
判決があれば必ず登記できますか。
必ずできるとは限りません。判決が確定していること、主文で物件・当事者・登記の原因・日付などが特定されていることなど、登記実務に適合した内容であることが必要です。訴訟の前から登記申請を見据えて請求内容を検討します。
固定資産税の通知が来た場合、買主に請求できますか。
賦課期日(1月1日)時点の登記名義人などが自治体との関係で納税義務者となります。買主に負担を求められるかは、契約の精算条項や義務違反の有無によって変わり、当然に全額を請求できるとは限りません。個別に確認が必要です。
買主が死亡している場合や連絡が取れない場合はどうなりますか。
買主が亡くなっている場合は相続人を調査し、だれを相手とするかを確認します。所在不明の場合は住所の調査や送達方法の検討が必要です。いずれも事案により手続が異なるため、資料を確認したうえで判断します。
古い売買契約や、契約書が見つからない場合でも対応できますか。
契約書が見つからない場合でも、代金の支払や引渡しを裏づける資料、当時のやり取りの記録などから事実関係を整理できることがあります。まず手元の資料を確認することが出発点です。結論は事案により異なります。
弁護士と司法書士のどちらに相談すればよいですか。
登記の申請そのものは司法書士が扱う場面が多く、紛争性のある交渉や訴訟は弁護士が扱います。両方の対応が必要になることもあります。どの手続が必要かを含めて、まず状況を整理することをおすすめします。
登記引取請求に時効はありますか。
登記請求権の法的な性質によって、期間制限の考え方が変わり得ます。一律に「時効にかからない」「必ず何年で時効になる」と言えるものではありません。個別の事情により異なりますので、資料を確認したうえで判断する必要があります。
まとめ
買主が所有権移転登記をせず、売主名義が残っている場合の要点と、次に取るべき行動を整理します。
- まず登記事項証明書と売買契約書を確認し、現在の名義と所有権が移った時期を整理する。
- 買主が登記に応じない場合、売主から登記引取請求を検討できる可能性があるが、事案により結論は変わる。
- いきなり訴訟とは限らず、任意の話合いで解決できる場合もある。
- 固定資産税の通知は賦課期日の名義人に届くのが原則で、買主への請求可否は契約内容による。
- 判決を得ても、内容が登記実務に適合しなければ登記できないおそれがあるため、訴訟の前から登記申請を見据える。
- 相手方が死亡・所在不明・法人解散のときや、相続が関係するときは、早めに資料を確認して方針を整理する。
「買主が登記してくれない」「売った不動産の名義が残っている」「固定資産税の通知が届く」といったお悩みは、資料を確認することで、誰にどの登記を求めるべきか、どの手続が必要かを整理できます。手続を進める前に、一度ご相談いただくことをおすすめします。初回の法律相談は無料です(予約制)。
お電話でのご予約は0799-53-6782(受付9時〜20時)。事務所へのアクセスを確認することもできます。
監修者・執筆者情報
弁護士法人ひょうご あわじみらい法律会計事務所(兵庫県南あわじ市)
藤井貴之(代表弁護士・公認会計士/兵庫県弁護士会所属)、河津昂輝(弁護士/兵庫県弁護士会所属)
不動産の登記や売買に関するトラブルについてご相談を承っています。弁護士の紹介は弁護士紹介を見る、費用は弁護士費用を確認するをご覧ください。

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