「子どもがいないので、財産を社会のために役立てたい」「長年お世話になった団体に寄付したいが、遺言書にどう書けばよいか分からない」「現金だけでなく、不動産や株式も寄付できるのだろうか」「相続人がいるが、その一部を寄付したい」――。財産の一部または全部を、遺言によって団体などに引き継ぐ方法は、こうした思いをかたちにする選択肢の一つです。
この、遺言によって公益法人・NPO法人・学校法人・社会福祉法人・自治体その他の団体などに財産を無償で引き継ぐことを、一般に遺贈寄付といいます。もっとも、遺贈寄付は「気持ち」だけで完結するものではなく、遺贈先の受入方針、財産の種類、相続人や遺留分、税金、遺言書の書き方、遺言執行者といった複数の事柄を、一体として検討しておく必要があります。準備が不十分だと、遺言の内容が実現できなかったり、想定外の税負担が生じたり、残された家族との間で争いになったりすることがあります。
この記事では、遺贈寄付を検討し始めた方に向けて、遺贈寄付の基本的な仕組み、遺贈先の選び方、財産別の注意点、相続人・遺留分・税金の考え方、遺言書と遺言執行者、手続の全体像を整理し、遺言書を作成する前に確認しておきたい資料と、弁護士・税理士に相談したほうがよい場面を解説します。結論の方向性を先にお伝えすると、遺贈寄付は「誰に」「どの財産を」「どの方法で」引き継ぐかによって、法律上・税務上の取扱いが大きく変わります。個別の事情により結論は異なりますので、一般論を確認したうえで、ご自身のケースに当てはめて検討することが大切です。
遺贈寄付を検討されている方へ。弁護士法人ひょうご あわじみらい法律会計事務所(南あわじ市)では、財産・相続人・遺贈先・税務上の論点を整理したうえで、遺言書に明確にすべき事項を検討するお手伝いをしております。何から確認すればよいか迷われている段階でも、お気軽にご相談ください。
Contents
結論:遺贈寄付を実現するために最初に押さえる5つの視点
遺贈寄付を考えるときは、次の五つの視点を、できるだけ早い段階でまとめて確認しておくと、後戻りが少なくなります。いずれか一つでも欠けると、遺言の実現に支障が生じることがあります。
遺贈寄付を検討するときの5つの視点
- 遺贈先の受入方針――寄付を受け付けているか、現金以外の財産を受け入れるか、使途の指定や条件はあるか。
- 財産の種類――現金・預貯金か、不動産・株式など換価や名義変更が必要な財産か。
- 相続人と遺留分――相続人がいる場合、その遺留分に配慮する必要があるか。
- 税金――誰から誰へ、どの財産を引き継ぐかによって、課税関係が変わる。
- 遺言書と遺言執行者――方式に不備のない遺言書を作り、実現する人を決めておく。
あわせて、ご自身やご家族の生活費、医療費、介護費、葬儀費用、債務などを見込んだうえで、寄付にまわせる範囲を検討することが重要です。遺贈寄付は、財産の全部でなく一部を対象とすることもできますし、いったん検討したうえで「今回は行わない」「内容を変更する」という選択も当然に可能です。社会貢献のかたちは人それぞれであり、遺贈寄付が唯一の正解というわけではありません。
遺贈寄付とは何か(基礎知識)
まず、似た言葉との違いを整理します。財産を無償で提供する方法にはいくつかの種類があり、「いつ」「誰から誰へ」移転するかによって、法律上・税務上の取扱いが異なります。
| 方法 | 財産が移転する時点 | 主な特徴 |
|---|---|---|
| 生前の寄附 | 生きている間 | 自分で手続や使途を確認できる。生活資金とのバランスに注意。 |
| 遺贈(遺贈寄付) | 亡くなった時 | 遺言書によって団体などに引き継ぐ。単独の意思で撤回・変更ができる。 |
| 死因贈与 | 亡くなった時 | 贈与する人と受け取る人の合意(契約)による。遺贈とは成立方法が異なる。 |
| 相続人による寄附 | 相続の後 | 相続人が取得した財産を、相続人の判断で寄附する。課税の扱いが遺贈と異なる。 |
このうち遺贈は、遺言によって財産を無償で他人に与える行為をいいます(民法第964条ほか)。遺贈のうち、公益法人・NPO法人・学校法人・社会福祉法人・自治体などへの寄付を目的とするものが、一般に遺贈寄付と呼ばれています。遺言による行為ですので、受け取る側の合意がなくても遺言者が単独で決めることができ、生前であればいつでも撤回・変更ができる点が、契約である死因贈与との大きな違いです。
相続人がいてもいなくても検討できる
遺贈寄付は、「相続人がいない人だけの制度」ではありません。相続人がいる場合でも、財産の一部を遺贈寄付にまわすことは可能です。ただし相続人がいる場合には、後述する遺留分への配慮が必要になることがあります。一方、相続人がいない場合には、遺言がなければ財産が最終的に国庫に入る可能性があり、そのこととの比較で遺贈寄付が検討されることもあります(この点は後述します)。
遺贈先になり得る団体は一様ではない
遺贈先として想定される団体には、公益社団法人・公益財団法人、一般社団法人・一般財団法人、学校法人、社会福祉法人、認定NPO法人、認定を受けていないNPO法人、国・地方公共団体、そのほかの任意団体などがあります。これらは「公益的な団体」とひとくくりにされがちですが、法人の種類によって、寄付を受けたときの税務上の取扱いや、受入れの体制が同じとは限りません。後述する税金の特例も、団体の種類によって適用の可否が変わります。団体名だけでなく、どの種類の法人かまで確認しておくことが大切です。
包括遺贈と特定遺贈――遺贈の二つの方法
遺贈には、大きく分けて包括遺贈と特定遺贈があります(民法第964条)。どちらを選ぶかによって、受け取る側の立場や、債務の扱い、放棄の方法が変わります。
| 項目 | 包括遺贈 | 特定遺贈 |
|---|---|---|
| 対象 | 遺産の全部、または「2分の1」などの割合 | 「この預金」「この土地」など特定の財産 |
| 受け取る側の立場 | 相続人と同一の権利義務を持つとされる(民法第990条) | 特定の財産を受け取る立場 |
| 債務との関係 | 割合に応じて債務も引き継ぐことがある | 原則として特定財産のみで、債務は当然には引き継がない |
| 放棄の方法 | 原則として、知った時から3か月以内に家庭裁判所へ申述 | いつでも放棄できる(遺贈義務者は期間を定めて催告できる) |
実務上、団体への遺贈寄付では、団体が包括遺贈を受け付けていないことがあります。包括受遺者は相続人と同じように遺産分割の協議に加わる立場になり、債務を引き継ぐ可能性もあるため、団体側が受入れを慎重に判断するためです。どの方法を選ぶかは、財産の内容、債務の有無、団体の受入方針によって変わり、「包括遺贈と特定遺贈のどちらが常に良い」というものではありません。
費用や債務を差し引いた「残り」を遺贈する方法
「まず財産を売却して現金にし、費用や債務を差し引いた残額を寄付したい」という場合には、遺言執行者が財産を換価(売却して現金化)し、その代金から必要な費用・税金・債務を清算したうえで、残額を団体に引き継ぐという方法(いわゆる清算型・換価型の遺贈)が検討されます。この場合、遺言執行者に売却の権限があること、売却にかかる費用や税金をどの財産から支払うかを、遺言書で明確にしておくことが重要です。売却の時期や価格の条件を厳しく指定しすぎると、かえって実現が難しくなることがあります。
遺贈先の選び方と、遺言書を作る前の確認
遺贈寄付では、遺言書を作成する前に、遺贈先の受入方針を確認しておくことが、実現可能性を高めるうえで特に重要です。遺言に団体名を書いても、その団体が受け取れるとは限らないためです。
まず確認したいこと
遺贈先の候補に確認しておきたい主な事項
- 団体の正式名称、法人の種類、所在地(似た名称の団体があるため正確に確認する)。
- 遺贈寄付を受け付けているか。受け付けている場合の連絡窓口。
- 現金以外の財産(不動産・株式など)を受け入れるか。受け入れない場合の対応。
- 最低金額、使途の指定、負担付きの寄付を受け付けるかどうか。
- 寄付金の使途や、団体の活動内容・財務状況。
特定の団体を推奨することはできませんが、団体の活動内容や財務情報は、内閣府の公益法人に関する情報サイトや、各団体の公式サイトなどで確認できる場合があります。確認の際にやり取りした担当者名や日付の記録を残しておくと、後の手続がスムーズになります。
受け取れない場合に備える
遺言を作成してから遺言者が亡くなるまでの間に、団体が合併・名称変更・解散することや、受入方針を変更することがあります。また、使途を細かく限定しすぎると、その使途が実現できなくなったときに遺贈自体が宙に浮くおそれもあります。こうした事態に備えて、第1候補が受け取れない場合の予備的な遺贈先を定めておく、使途の指定を狭くしすぎない、といった工夫が考えられます。遺贈先が寄付を受諾するかどうかは当然に保証されるものではないため、複数の可能性を想定しておくことが安全です。
財産の種類ごとの注意点
遺贈する財産が現金・預貯金か、それとも不動産・株式などかによって、手続の負担や税金の扱いが変わります。ここでは、相談の多い財産を中心に整理します。
| 財産の種類 | 主な確認事項 |
|---|---|
| 現金・預貯金 | 最も受け入れられやすい。どの口座から、いくらを遺贈するかを明確にする。 |
| 上場株式・投資信託 | 証券口座の移管や換価の可否、価格変動、団体の受入れの可否を確認する。 |
| 非上場株式・事業用資産 | 評価や換価が難しく、受け入れられないことが多い。承継方法を個別に検討する。 |
| 不動産(土地・建物) | 現物のまま渡すか、売却して現金で渡すかを検討する。費用・税金・管理の負担に注意。 |
| 農地・山林・空き家・共有持分 | 売却や活用が難しいことがある。農地法などの規制や、境界・接道・管理の問題を確認する。 |
不動産――現物のまま渡すか、売却してから渡すか
従来、「団体は現物の不動産では受け取らず、現金化を求めることがほとんど」と説明されることがありました。しかし、これは団体によって異なります。受け入れる団体もあれば、現金でなければ受け取らない団体もあり、方針はさまざまです。まずは遺贈先に、不動産を現物で受け入れるかどうかを確認することが出発点になります。
不動産を現物のまま遺贈する場合には、境界の確定、接道、担保権、賃貸借や占有の有無、残置物、解体の要否といった問題が生じることがあります。とりわけ淡路島(南あわじ市・洲本市・淡路市)では、空き家、農地、山林、共有持分など、売却や活用に個別の検討を要する不動産も少なくありません。一方、売却して現金で遺贈する場合には、遺言執行者に売却の権限があるか、仲介手数料・登記費用・税金といった売却にかかる費用や、亡くなった後の固定資産税・管理費・修繕費を、どの財産から支払うかを、あらかじめ定めておく必要があります。
現物遺贈と換価後の遺贈のどちらにするかは、団体の受入方針、不動産の売れやすさ、費用負担の見込みによって変わります。売却できなかった場合に備えた代替の定めを置いておくと安全です。いずれの場合も、遺言書を作る前に遺贈先へ確認しておくことをおすすめします。
相続人・遺留分・債務との関係
相続人がいる場合、遺贈寄付を行うと、相続人が受け取る財産が減ることになります。ここで問題になりやすいのが遺留分です。
遺留分に注意する
遺留分とは、一定の相続人に法律上保障された、遺産に対する最低限の取り分をいいます。配偶者、子ども(その代襲相続人)、直系尊属(親など)には遺留分がありますが、兄弟姉妹には遺留分がありません(民法第1042条)。遺贈寄付によって遺留分が侵害された相続人は、遺贈を受けた側に対して、金銭の支払いを請求すること(遺留分侵害額請求)ができます(民法第1046条)。これは、遺贈された財産そのものを取り戻すのではなく、金銭による請求である点が特徴です。
この請求には期間の制限があり、相続の開始と遺留分を侵害する遺贈があったことを知った時から1年、または相続開始の時から10年で行使できなくなるとされています(民法第1048条)。遺留分は、遺贈先の団体との間で金銭をめぐる紛争に発展することもあるため、相続人がいる場合には、遺留分に配慮した割合の設定や、あらかじめの検討が有効です。なお、遺言書に思いを記す付言事項には法的な効力はなく、付言事項だけで遺留分の問題が解消されるわけではありません。相続人にあらかじめ説明しておくかどうかは、家族関係によって判断が分かれます。
遺留分の具体的な計算は、生前贈与や特別受益、債務、財産の評価などが関係し、家族構成によって結論が大きく変わります。詳しくは遺留分侵害額請求について解説したコラムもあわせてご確認ください。
包括遺贈と債務
先に述べたとおり、包括遺贈では、受遺者が割合に応じて債務を引き継ぐことがあります。借入れや保証がある場合には、包括遺贈によって団体に思わぬ負担が生じることがないよう、債務の状況を整理したうえで遺贈の方法を検討する必要があります。
税金の基本的な注意点
遺贈寄付について、「寄付だから税金はかからない」「公益法人への遺贈は非課税」と一括りに説明されることがありますが、これは正確ではありません。誰から誰へ、どの財産を引き継ぐかによって、課税関係が変わります。ここでは基本的な注意点にとどめ、詳細は税理士等への確認を前提とします。
「直接の遺贈」と「相続人による寄附」は課税が違う
遺言者から団体へ直接遺贈する場合と、相続人がいったん相続・遺贈で財産を取得したうえでその財産を寄附する場合とでは、税金の扱いが異なります。両者を混同すると、適用される特例を誤ることがあります。国税庁が案内している「相続財産を公益法人などに寄附したとき」の相続税の非課税の取扱いは、後者(相続人などが取得した財産を寄附する場合)に関するもので、租税特別措置法第70条に基づき、相続税の申告期限までに国・地方公共団体や特定の公益法人等へ寄附するなど一定の要件を満たす場合に、その寄附財産について相続税がかからないとされています。対象となる寄附先や要件が細かく定められているため、適用の可否は個別に確認が必要です。
現金と、不動産・株式などでは扱いが違う
現金を遺贈・寄附する場合に比べ、土地・建物・株式など、購入時より値上がりして含み益がある財産を、個人から法人へ無償で移転する場合には、注意が必要です。この場合、時価で譲渡があったものとみなして譲渡所得が課税されることがあります(みなし譲渡課税。所得税法第59条)。亡くなった後にこの課税が生じるときは、相続人などが準確定申告を行う必要が生じることもあります。もっとも、国や地方公共団体への寄贈や、公益法人等への寄附で国税庁長官の承認を受けたものについては、この譲渡所得を非課税とする特例(租税特別措置法第40条)があります。この承認には要件があり、当然に非課税になるわけではありません。
税金の取扱いは、遺贈先の法人の種類、財産の種類、取得価額や時価、使途、申告の時期などによって変わり、断定的に見通すことが難しい分野です。不動産や株式の遺贈寄付を検討する場合や、税負担で寄付にまわせる額が想定外に減ることを避けたい場合には、早い段階で税理士等に確認することをおすすめします。相続税の非課税特例(租税特別措置法第70条)や、譲渡所得の非課税の承認(同法第40条)の詳細は、別途、専門的な検討が必要です。
遺言書の作成と遺言執行者
遺贈寄付は、遺言によって行います。方式に不備があると遺言が無効になりかねないため、遺言書の作り方は特に重要です。
遺言の主な方式
| 方式 | 主な特徴 |
|---|---|
| 公正証書遺言 | 公証人が関与して作成する。方式の不備が生じにくく、原本が公証役場に保管される。 |
| 自筆証書遺言 | 自分で書いて作成する。手軽だが、方式の不備や紛失・改ざんのリスクに注意が必要。 |
| 自筆証書遺言書保管制度 | 自筆証書遺言を法務局(遺言書保管所)で保管する制度。家庭裁判所の検認が不要になる。 |
遺贈寄付では、遺贈先や対象財産を正確に特定する必要があり、方式の不備を避けたいことから、公正証書遺言が選ばれることが多いといえます。もっとも、どの方式が適しているかは、財産の内容やご事情によって変わります。秘密証書遺言という方式もありますが、利用は限られています。遺言書の作成方法については、遺言書の作成について解説したコラムもご参照ください。
遺言書で明確にしておきたい事項
市販のひな形をそのまま用いれば安全、というものではありません。遺贈寄付の遺言では、少なくとも次の事項を、財産・受遺者・債務・税務・遺留分の状況に応じて明確にしておくことが望まれます。
| 項目 | 明確にしておきたい内容 |
|---|---|
| 遺贈先 | 団体の正式名称・所在地など、対象を特定できる情報。 |
| 対象財産 | どの財産を遺贈するか(口座・不動産の表示など)を特定する。 |
| 割合または金額 | 全部か、割合か、特定の財産かを明確にする。 |
| 残余財産の処理 | 指定した財産以外の財産を誰に引き継ぐか。 |
| 予備的な遺贈先 | 第1候補が受け取れない場合に備えた定め。 |
| 換価と費用負担 | 売却の権限、売却費用・税金・管理費をどの財産から支払うか。 |
| 遺言執行者 | 遺言を実現する人(後述)を指定しておく。 |
具体的な文言は、財産や受遺者、債務、税務、遺留分の事情によって変わります。ひな形の文例をそのまま使うと、意図した内容が実現できないことがあるため、個別の確認をおすすめします。
遺言執行者を決めておく
遺言執行者とは、遺言の内容を実現する人をいいます。遺贈寄付では、預貯金の解約、有価証券や不動産の手続、団体への引継ぎなど、実現までに多くの事務が必要になるため、遺言執行者を定めておくことが実務上重要です。遺言執行者は遺言で指定でき、第三者に指定を委託することもできます。指定がない場合や、指定された人が就任できない場合には、利害関係人の申立てにより家庭裁判所が選任することができます。もっとも、遺言執行者を指定すれば必ず希望どおりに実現するとは限らず、遺贈先との連絡、財産目録の作成、換価、登記、費用・税金の処理といった各段階で、専門的な判断が必要になる場面があります。弁護士・司法書士・税理士などの役割分担も含めて検討するとよいでしょう。
作成した後の保管と見直し
遺言書は、作成して終わりではありません。家族関係、財産の内容、遺贈先の受入方針は、時間の経過とともに変わり得ます。定期的に内容を見直し、必要に応じて作り直すことが望まれます。後の遺言によって前の遺言を撤回・変更することもできます。遺言書の原本や関連資料の保管方法、遺言執行者や家族への伝え方もあわせて考えておくと安心です。
遺贈寄付の手続の流れ
遺贈寄付は、おおむね次のような流れで検討します。実際の順序は個別の事情により前後します。
- 遺贈寄付によって実現したい目的を整理する。
- 今後必要となる生活費・医療費・介護費などを見積もる。
- 相続人、遺留分、財産、債務、保証の状況を調べる。
- 遺贈の候補先を調べる。
- 候補先に受入れの条件を確認する。
- 財産の種類と、遺贈の方法(現物か換価か)を決める。
- 弁護士・税理士などに法務・税務を確認する。
- 遺言の方式を選ぶ。
- 遺言書を作成する。
- 遺言執行者を指定する。
- 遺言書と関連資料を保管する。
- 家族関係・財産・遺贈先の変化に応じて見直す。
- 亡くなった後、遺言執行者が換価・申告・引継ぎなどを行う。
遺贈寄付は、遺贈先・財産・相続人・税務・遺言執行が関係し、確認すべき事項が多岐にわたります。資料を確認したうえで、実行可能な方法や遺言書に明記すべき事項を整理したいという方は、遺言書を作成する前の段階でご相談ください。当事務所は、相続・遺言に関する法律問題に対応しております。
よく問題になりやすい場面
次のような場面では、個別の事情によって結論が変わりやすく、事前の検討が特に役立ちます。ご自身の状況に近いものがないか確認してみてください。
- 相続人がいないため、遺産の行き先を自分で決めておきたい。
- 相続人がいて、その遺留分に配慮する必要がある。
- 財産の全部ではなく、一部だけを寄付したい。
- 生活費を確保したうえで、残った財産を寄付したい。
- 不動産を現物のまま遺贈したい/売却して現金で遺贈したい。
- 農地・山林・空き家・共有持分など、売却や活用が難しい不動産がある。
- 遺贈先が受入れを断る可能性がある。
- 遺贈先が名称変更・合併・解散する可能性がある。
- 複数の団体に分けて遺贈したい。
- 指定した遺言執行者が就任できないことがある。
- 遺言を作成した後に、財産の構成が変わった。
遺言書を作成する前のチェックリスト
遺言書を作成する前に、次の点を確認しておくと、検討がスムーズになります。すべての方に全項目が必要というわけではなく、ご事情に応じて取捨選択してください。
- 財産――預貯金・有価証券・不動産などの一覧と、おおよその評価。
- 債務――借入れ、連帯保証、担保の有無。
- 相続人――相続人が誰か(戸籍で確認できる関係)。
- 遺留分――遺留分のある相続人がいるか。
- 遺贈先――候補団体の正式名称・受入方針・連絡記録。
- 税務――現物財産の有無、特例の適用可能性(税理士等に確認する事項)。
- 遺言執行者――誰に依頼するか、就任できない場合の備え。
- 資料――通帳、登記事項証明書、固定資産税の課税明細、保険証券など。
- 見直しの時期――家族・財産・団体の変化に応じた見直しのタイミング。
弁護士に相談するタイミング
遺贈寄付は、遺言書を作成してしまった後では修正が難しい事項も多く、作成する前の段階で確認しておくことが有効です。次のような場面では、弁護士に相談することで、対応の方針や確認すべき論点を整理しやすくなります。相談によって希望が必ず実現する、税負担が必ず減る、紛争が必ず防げる、というものではありませんが、実行可能性を確認する手がかりになります。
- 遺贈先へ正式な希望を伝える前に、条件を整理したいとき。
- 遺言書を作成する前、または公証役場へ行く前。
- 不動産の換価(売却)を前提とするとき。
- 相続人や遺留分が問題になりそうなとき。
- 債務や連帯保証があるとき。
- 税務上の特例を検討するとき(税理士等との連携が必要な場合があります)。
- すでにある遺言を変更したいとき。
- 家族関係、財産の内容、団体の方針が変わったとき。
よくあるご質問(FAQ)
相続人がいても遺贈寄付はできますか。
できます。相続人がいる場合でも、財産の一部(または全部)を団体などに遺贈することは可能です。ただし、配偶者・子・直系尊属など遺留分のある相続人がいる場合には、遺留分への配慮が必要になることがあります。どの程度を寄付にまわせるかは、財産や家族構成により異なります。
相続人の同意は必要ですか。
遺贈は遺言による単独の行為ですので、法律上、相続人の同意がなければ遺贈できないというわけではありません。もっとも、遺留分のある相続人がいる場合には、後に遺留分侵害額請求がなされる可能性があります。紛争を避ける観点から、あらかじめ相続人に説明しておくかどうかは、家族関係を踏まえて検討することになります。
遺産の一部だけを寄付できますか。
できます。「この預金のうち一定額」「不動産を売却した残額」など、特定の財産や割合を対象にすることが可能です。生活費や家族に残す分を確保したうえで、一部を遺贈寄付にまわす設計も検討できます。
不動産をそのまま遺贈できますか。
遺贈先が現物での受入れに応じる場合には可能です。ただし、団体によっては現物を受け入れず、現金化を求めることがあります。まずは遺贈先に確認し、受け入れられない場合には、売却して現金で遺贈する方法などを検討することになります。売却にかかる費用や税金の負担にも注意が必要です。
遺贈先に受取りを断られることはありますか。
あります。団体には受入方針があり、財産の種類や条件によっては受け取らないことがあります。遺言に団体名を書いても、受諾が当然に保証されるわけではありません。事前に受入れの可否を確認し、受け取れない場合に備えた予備的な遺贈先を定めておくと安全です。
遺贈寄付に税金はかかりますか。
「寄付だから非課税」と一律に決まるものではありません。誰から誰へ、どの財産を引き継ぐかによって、相続税・所得税(みなし譲渡課税)・法人課税などの扱いが変わります。国や地方公共団体への寄贈や、公益法人等への一定の寄附には非課税の特例がありますが、要件があり当然には適用されません。特に不動産や株式が関係する場合は、税理士等への確認をおすすめします。
公正証書遺言にする必要がありますか。
必ず公正証書にしなければならないわけではありません。ただし遺贈寄付では、遺贈先や財産を正確に特定する必要があり、方式の不備を避けたいことから、公正証書遺言が選ばれることが多いといえます。自筆証書遺言を法務局で保管する制度もあります。どの方式が適しているかは、ご事情により異なります。
一度作成した遺言を、後から変更できますか。
できます。遺言は、後の遺言によって撤回・変更することができます。家族関係や財産の内容、遺贈先の状況が変わったときには、内容を見直すことが望まれます。変更の方法や、前の遺言との整合には注意が必要ですので、確認のうえで行うと安心です。
まとめ
- 遺贈寄付は、遺言によって公益法人・NPO法人・自治体などに財産を引き継ぐ方法で、相続人がいてもいなくても検討できます。
- 遺贈先の受入方針、財産の種類、相続人・遺留分、税金、遺言書と遺言執行者を、一体として検討することが大切です。
- 遺言書を作成する前に、遺贈先に受入れの可否を確認し、受け取れない場合の備えを考えておくと安全です。
- 税金は「寄付だから非課税」と一律には決まりません。特に不動産・株式が関係する場合は、税理士等への確認が必要です。
- まずは、財産・債務・相続人・遺贈先の情報と、通帳・登記事項証明書などの資料を整理することから始めてみてください。
遺贈寄付は、準備の仕方によって実現可能性が大きく変わります。遺言書に署名する前、公証役場へ行く前に、一度、法律・税務の両面から確認しておくことをおすすめします。
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執筆者・監修者
藤井 貴之(ふじい たかゆき)
弁護士法人ひょうご あわじみらい法律会計事務所 代表弁護士・公認会計士
兵庫県弁護士会所属・日本公認会計士協会兵庫会所属
2012年(平成24年)司法試験合格、2013年弁護士登録。2020年(令和2年)公認会計士試験合格。兵庫県・山口県・東京都での実務経験を経て、2023年に淡路島(南あわじ市)へ事務所を開設しました。相続・遺言をはじめとする個人のご相談から、企業法務・事業承継まで対応しています。相続財産の評価や税務が関係する場面では、税理士など他の専門家と連携して検討します。

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