ご家族が経営していた会社の株式(自社株)が相続財産に含まれていると、預貯金や不動産とは違った難しさが生じます。とくに非上場の会社では、株式に決まった「市場価格」がないため、いくらと評価するのか、誰がどのように引き継ぐのかをめぐって、相続人の間で話し合いが進まなくなることが少なくありません。後継者は経営を安定させたいと考え、ほかの相続人は公平な取り分を求める――この立場の違いが、自社株相続をこじれさせる典型的な構図です。
この記事では、自社株が相続財産に含まれる場合の評価の考え方と、分け方の選択肢を整理します。あわせて、もめやすいケース、会社法上の確認事項、手続の前にそろえておきたい資料についても解説します。なお、具体的な株価の計算や税額、事業承継税制の適用可否は税理士等による確認が必要であり、本記事では概要にとどめます。個別の事情により結論は変わりますので、判断に迷う場合は資料を確認したうえで検討することをおすすめします。
自社株が含まれる相続では、会社の状況や株式の内容によって取り得る選択肢が変わります。ご自身のケースでどの分け方が検討できるかを整理したい方は、相続に対応する弁護士にご相談いただくことで、資料の確認と今後の進め方を整理しやすくなります。
Contents
自社株が相続財産に含まれるとき、まず確認したいこと
自社株の相続では、評価方法を考える前に、前提となる事実を確認することが出発点になります。誰が経営を引き継ぐのか、株式にどのような制限が付いているのか、代償金の原資があるのかによって、現実的な選択肢が変わってくるためです。
はじめに整理すべき6つのポイント
| 確認項目 | 確認の内容と意味 |
|---|---|
| 評価の目的 | 相続税申告のための評価か、遺産分割で当事者が主張する評価か、買取り交渉のための価値か。目的により基準や金額の考え方が異なります。 |
| 株式の種類 | 上場株式か非上場株式(取引相場のない株式)か。普通株式か種類株式か。譲渡制限が付いているか。 |
| 後継者の有無 | 経営を引き継ぐ相続人がいるか、複数の相続人が経営に関与するか。経営権の集約が必要かどうかを左右します。 |
| 定款の定め | 譲渡制限や、相続人等に対する売渡請求の定めの有無。分割方法や経営権に影響します。 |
| 株主名簿の状況 | 名義と実際の出資者が一致しているか(名義株の有無)。誰が株主かが争点になることがあります。 |
| 代償金の原資 | 後継者が株式を集約する場合に、ほかの相続人へ支払う代償金を準備できるか。会社からの借入れや保険金の有無も確認します。 |
自社株相続は、法律(遺産分割・会社法)、税務(相続税評価・納税資金)、会社経営(経営権)の3つが重なる分野です。どれか1つだけで判断すると、ほかの面で不利益が生じることがあります。
結論の方向性
結論として、自社株が相続でもめるときは、まず「評価の目的を分けて考えること」「会社の定款・株主名簿・決算書を確認すること」「分け方の選択肢を比較すること」の3点が基本になります。評価額そのものよりも、何のための評価で、どの分割方法なら相続人全員が納得しやすいかを整理することが、解決への近道になりやすいといえます。
自社株とは――非上場株式・取引相場のない株式の基礎
「自社株」「非上場株式」「取引相場のない株式」の関係
「自社株」は法律用語ではなく、一般に、その会社の経営者や親族が保有する自社の株式を指す言葉として使われます。中小企業の自社株の多くは、証券取引所に上場していない非上場株式です。相続税の評価の場面では、上場株式や気配相場等のある株式以外の株式を「取引相場のない株式」と呼びます。市場で売買される価格がないため、評価が難しく、相続でもめやすい財産の代表例といえます。
株式に付いている権利(議決権・配当・残余財産)
株式には、主に、株主総会で議決に加わる議決権、利益の分配を受ける配当を受け取る権利、会社が解散したときに残った財産の分配を受ける権利があります。自社株相続では、配当や財産的価値だけでなく、議決権(=経営に対する発言権)をめぐる対立が起きやすい点が特徴です。誰がどれだけの議決権を持つかによって、会社の意思決定が変わるためです。
譲渡制限株式とは
多くの中小企業では、株式を譲渡する際に会社(取締役会や株主総会など)の承認を要する旨を定款で定めています。これを譲渡制限株式といいます。第三者に勝手に株式が渡らないようにする仕組みですが、相続による取得は譲渡とは異なる扱いとなる場面があり、定款の定めや会社法上の手続を確認する必要があります。詳しくは後述します。
自社株の「評価」は目的によって異なる
自社株相続で混乱しやすいのが、「評価額」という言葉が場面によって異なる意味を持つことです。大きく3つに分けて理解すると整理しやすくなります。
相続税申告のための評価
相続税を計算するための評価です。取引相場のない株式は、国税庁の財産評価のルールに従って評価します。後述する類似業種比準方式・純資産価額方式・配当還元方式などを用いますが、計算は複雑で、評価明細書の作成を含めて税理士等による確認が必要です。相続税の申告には期限(相続の開始があったことを知った日の翌日から一定期間内)があり、評価の遅れは申告にも影響します。期限や具体的な税額の取扱いは税理士等にご確認ください。
遺産分割で問題になる評価
相続人の間で「誰がどの財産を取得し、代償金をいくらにするか」を決める遺産分割の場面では、相続税評価額がそのまま使われるとは限りません。当事者が合意すればその金額で分割でき、合意できなければ、純資産価額や類似会社比較、収益力など複数の考え方が主張され、評価額に開きが出ることがあります。後継者は経営の重荷を理由に低めの評価を、ほかの相続人は会社の資産や利益を理由に高めの評価を主張しやすく、ここが対立の中心になりやすい部分です。
会社経営から見た価値
第三者への売却や、会社・後継者による買取りを検討する場面では、実際に支払える金額・買い手が見込む価値が問題になります。相続税評価額や遺産分割で主張される評価額とは別の水準になることもあります。
評価時点の違いに注意する
| 場面 | 評価の基準となる時点(考え方) |
|---|---|
| 相続税の申告 | 課税時期(被相続人が亡くなった日=相続開始時)を基準に評価します。 |
| 遺産分割(取得財産・代償金の算定) | 実務上、遺産分割を行う時点を基準に評価するのが原則とされています。相続開始から分割までに会社の状況が変わると、金額に差が出ることがあります。 |
| 特別受益・寄与分を踏まえた取り分の算定 | 生前贈与などを考慮して各相続人の取り分を計算する場面では、相続開始時の価額を用いる扱いとされています。 |
評価の基準時は、事案によって争点になりやすい部分です。どの時点・どの方法で評価するのが適切かは、資料を確認したうえで個別に判断する必要があります。
取引相場のない株式の評価方法の概要(相続税)
ここでは、相続税申告のための「取引相場のない株式」の評価方法を、一般の方向けに概要だけ説明します。実際の計算は前提条件により大きく変わり、税理士等による確認が欠かせません。
同族株主等かどうかで評価方法が変わる
取引相場のない株式は、その株式を取得した株主が、会社の経営を支配する力を持つ同族株主等か、それ以外の株主かによって、用いる評価方式が異なります。経営を支配する立場の株主は原則的な評価方式で、それ以外の株主は特例的な評価方式(配当還元方式)で評価するのが基本です。
原則的評価方式(類似業種比準・純資産価額・併用)
原則的評価方式では、会社を総資産価額・従業員数・取引金額により大会社・中会社・小会社に区分し、おおむね次の方法で評価します。
| 会社区分 | 原則となる評価方式 | 考え方の概要 |
|---|---|---|
| 大会社 | 類似業種比準方式 | 類似する業種の株価をもとに、評価する会社の1株当たりの配当金額・利益金額・純資産価額(簿価)の3つで比準して評価します。 |
| 小会社 | 純資産価額方式 | 会社の総資産や負債を相続税の評価に洗い替えたうえで、評価した総資産から負債や法人税額等相当額を差し引いて評価します。 |
| 中会社 | 併用方式 | 類似業種比準方式と純資産価額方式を併用して評価します。 |
なお、株式等の保有割合が高い会社(株式等保有特定会社)や土地の保有割合が高い会社(土地保有特定会社)など、一定の会社の株式は、原則として純資産価額方式によるなど、特別な扱いがあります。自社がどの区分に当たるかで評価額が変わるため、判断には専門的な確認が必要です。
特例的評価方式(配当還元方式)
同族株主以外の株主などが取得した株式は、会社の規模にかかわらず、原則的評価方式に代えて配当還元方式で評価します。配当還元方式は、その株式を持つことで受け取る1年間の配当金額を、一定の利率(10パーセント)で還元して株式の価額を評価する方法です。一般に原則的評価方式よりも評価額が低くなる傾向があります。
具体的な株価計算は税理士等の確認が必要
各方式の適用や具体的な株価の計算、評価明細書の作成は、会社の決算内容や株主構成によって結論が変わります。相続税の申告に用いる評価額は、税理士等による確認が必要です。本記事の説明は概要であり、個別の計算結果を示すものではありません。
自社株の分け方――5つの選択肢
自社株をどう分けるかには、主に次の選択肢があります。経営権・資金繰り・税務への影響が異なるため、会社の状況に応じて比較検討することが大切です。
| 分け方 | 概要 | 主なメリット | 主な注意点 |
|---|---|---|---|
| 現物分割 | 株式そのものを相続人で分けて取得する。 | 分かりやすく、株式以外の財産がなくても対応できる。 | 議決権が分散し、経営の意思決定が不安定になることがある。 |
| 代償分割 | 後継者など1人が株式を取得し、ほかの相続人へ代償金を支払う。 | 経営権を集約しやすく、会社経営を安定させやすい。 | 代償金の原資が必要。評価額の合意や支払方法の取り決めが課題になる。 |
| 換価分割 | 株式を売却し、得られた代金を相続人で分ける。 | 現金で公平に分けやすい。 | 譲渡制限や買い手の有無が問題になる。非上場株式は売却先が限られる。 |
| 共有・準共有 | 分割せず、株式を相続人が共有(準共有)のまま持つ。 | とりあえず分割を保留できる。 | 権利行使者を定めないと議決権を行使しにくい。対立が長期化しやすく、根本解決にならないことが多い。 |
| 会社・後継者による買取り | 会社(自己株式取得)や後継者が、ほかの相続人の株式を買い取る。 | 株式を集約しつつ、ほかの相続人は現金を得られる。 | 会社による取得には財源規制などの会社法上の制約がある。買取価格・税務の確認が必要。 |
評価額の考え方や代償金の見通しは、決算書・株主名簿・定款などの資料を確認したうえで判断する必要があります。話し合いが進みにくいと感じている場合は、早めに弁護士や税理士等へ相談することで、対応方針を整理しやすくなります。
代償分割を選ぶときに確認すること
後継者が株式を集約する場合、代償分割が選ばれることが多くあります。もっとも、代償分割には固有の確認事項があります。
代償金の金額と評価額のずれ
代償金は、株式の評価額をもとに計算します。前述のとおり、相続税評価額と遺産分割で用いる評価額は一致しないことがあるため、どの評価を前提に代償金を決めるかで金額が変わります。相続人間で評価の前提が共有されていないと、合意に至らないことがあります。
支払時期・分割払い・担保
代償金を一括で支払えない場合、分割払いとすることがあります。その際は、支払時期、回数、利息の有無、支払が滞った場合の取り決め、担保の要否などを明確にしておくことが、後のトラブルを避けるうえで重要です。口頭の約束だけでは履行をめぐる争いが生じやすいため、書面化を検討します。
税務上の取扱いの確認
代償分割では、代償金の支払いや受取りについて税務上の取扱いを確認する必要があります。具体的な課税関係は事案により異なり、税理士等による確認が必要です。
自社株相続でよく問題になるケース
自社株相続では、次のような場面で話し合いが行き詰まりやすくなります。いずれも一般的に問題になりやすい例であり、解決を保証するものではありませんが、あらかじめ知っておくことで備えやすくなります。
後継者と他の相続人で評価額の見方が違う
後継者は経営の負担を理由に低い評価を、ほかの相続人は会社の資産や利益を理由に高い評価を主張しやすく、評価額の前提がそろわないまま平行線になることがあります。客観的な資料(決算書・税務申告書など)をもとに、評価の考え方を整理することが出発点になります。
代償金を準備できない
後継者が株式を集約したくても、ほかの相続人へ支払う代償金を準備できないことがあります。会社からの借入れ、保険金、分割払い、会社による買取りの併用など、原資の確保を含めて検討する必要があります。
株式を分けると経営権が不安定になる
株式を相続人で均等に分けると、議決権が分散し、重要な意思決定ができなくなることがあります。とくに、後継者の議決権が過半数や三分の二に届くかどうかは、経営の安定に大きく影響します。
名義株や過去の贈与が問題になる
株主名簿上の株主と実際に出資した人が異なる「名義株」がある場合、誰の財産として扱うかが争点になります。また、生前の贈与が特別受益として取り分の計算に影響することもあり、過去の経緯の確認が必要になります。
遺留分侵害額請求が予想される
後継者に株式を集中させる遺言や生前贈与があると、ほかの相続人の遺留分を侵害し、遺留分侵害額請求(金銭の請求)がされることがあります。自社株の評価額が高いと請求額も大きくなりやすく、納税資金とあわせて資金面の備えが課題になります。
決算書や株主名簿を見せてもらえない
会社の経営に関与していない相続人が、決算書や株主名簿を確認できず、評価の前提が分からないまま協議が進まないことがあります。資料の開示を求める方法や、開示が得られない場合の対応を検討する必要があります。
調停で評価資料や鑑定が問題になる
協議がまとまらず遺産分割調停・審判に進んだ場合、評価をめぐって、当事者が提出する私的な評価書や、裁判所での鑑定が問題になることがあります。鑑定には費用と時間がかかるため、その要否も含めて方針を検討します。
会社法上の確認事項――定款・株主名簿・売渡請求
自社株相続では、民法の遺産分割のルールに加えて、会社法上の確認事項があります。これらを見落とすと、思わぬ形で経営権が動くことがあります。
定款の譲渡制限・売渡請求の定め
まず、会社の定款を確認します。譲渡制限の内容に加えて、相続その他の一般承継により株式を取得した者に対し、会社がその株式を売り渡すよう請求できる旨の定め(相続人等に対する売渡請求の定め)があるかどうかが重要です。この定めの有無により、相続後に会社が株式の集約を図れるかどうかが変わります。
株主名簿と実質的出資者のずれ(名義株)
株主名簿の記載と、実際に出資した人が一致しているかを確認します。過去に他人名義で株式を引き受けた名義株があると、相続財産に含まれるかどうかが争点になります。設立時の出資の経緯、株主名簿、議事録などの資料をもとに、慎重な確認が必要です。
相続人等に対する売渡請求制度と逆転リスク
定款に売渡請求の定めがある場合、会社は、相続があったことを知った日から一定期間内に、株主総会の特別決議を経て、相続人に株式の売渡しを請求できます。注意したいのは、この決議において、売渡しを請求される相続人は原則として議決権を行使できない点です。そのため、後継者が株式を相続したケースでも、ほかの株主の決議によって会社へ株式を売り渡すよう求められ、結果として経営権が動く可能性があります。逆に、少数派が多数派の相続人を排除する手段として用いられることもあり、いずれの立場でも、定款の定めと手続を確認しておくことが重要です。なお、売買価格は当事者の協議により、整わない場合は裁判所に価格決定を求めることになります。
売渡請求の手続には期間制限があり、対応の可否や得失は会社の状況によって異なります。定款・株主名簿・登記事項証明書を確認したうえで、早めに検討することをおすすめします。
手続前に確認しておきたい資料チェックリスト
遺産分割協議の前、調停の申立て前、相続税の申告前、株式の移転前、代償金の合意前には、次のような資料を確認しておくと、評価や分け方の検討がスムーズになります。
- 定款(譲渡制限・売渡請求の定めの有無)
- 株主名簿(名義と実際の出資者の確認)
- 登記事項証明書(役員・資本金などの確認)
- 直近数期分の決算書(貸借対照表・損益計算書など)
- 法人税申告書(別表を含む)
- 相続税の申告に関する資料、取引相場のない株式の評価明細書(作成済みの場合)
- 遺言書の有無と内容
- 生前贈与に関する資料(特別受益の検討のため)
- 株主総会・取締役会の議事録
- 株式の譲渡に関する契約書、株主間の取り決めがある場合はその資料
- 会社への貸付金・会社からの借入金(役員借入金など)に関する資料
- 不動産など主要資産の評価に関する資料
これらの資料は、評価の前提を客観的に示すためのものです。資料がそろうほど、相続人間の認識のずれを小さくしやすくなります。
弁護士に相談するタイミング
自社株相続では、次のような段階で弁護士に相談することで、対応方針を整理しやすくなります。相談は結果を保証するものではありませんが、資料の整理、評価の考え方、分割方法、交渉や調停の進め方、税理士等との連携の方針を検討する場になります。
- 相続が発生し、財産に自社株が含まれることが分かったとき
- 評価額や分け方をめぐって相続人の話し合いが進みにくいと感じたとき
- 後継者への株式集約や、代償金の見通しを検討したいとき
- 遺留分侵害額請求が予想されるとき
- 遺産分割調停・審判を検討するとき
- 生前に、もめない承継のための遺言や定款整備を考えたいとき
自社株の評価は法律と税務・会計が重なる分野であり、弁護士・公認会計士・税理士・司法書士など複数の専門職の連携が必要になることがあります。資料を確認したうえで、必要な連携の形を検討します。
よくある質問(FAQ)
自社株は相続財産に含まれますか。
被相続人が保有していた株式は、原則として相続財産に含まれ、遺産分割の対象になります。非上場株式(取引相場のない株式)も同様です。ただし、名義株などがある場合は、誰の財産かが争点になることがあり、資料の確認が必要です。
自社株の評価は誰に依頼すべきですか。
相続税申告のための評価や具体的な株価計算は、税理士等による確認が必要です。遺産分割で評価額が争点になる場合は、弁護士が法的な観点から、必要に応じて公認会計士・税理士と連携して対応を検討します。目的によって相談先が変わります。
相続税評価額と遺産分割で使う評価額は同じですか。
必ずしも同じではありません。相続税の申告では国税庁の財産評価のルールに従いますが、遺産分割では当事者の合意や主張により異なる評価額が用いられることがあります。どの評価を前提とするかで結論が変わるため、個別の確認が必要です。
後継者が自社株をすべて取得する方法はありますか。
代償分割により後継者が株式を取得し、ほかの相続人へ代償金を支払う方法などが考えられます。会社や後継者による買取りを組み合わせることもあります。いずれも代償金の原資や税務の確認が必要で、事案により取り得る方法は異なります。
代償金を支払えない場合はどうなりますか。
分割払い、担保の設定、会社からの借入れ、保険金の活用、会社による買取りの併用などを検討することがあります。原資の確保が難しい場合は、ほかの分割方法も含めて見直す必要があります。具体的な方法は資料を確認したうえで検討します。
譲渡制限株式は相続人が自由に売れますか。
相続による取得は譲渡とは異なる扱いとなる場面がありますが、その後に第三者へ売却する際は、定款の譲渡制限により会社の承認が必要となることがあります。また、定款に売渡請求の定めがある場合の取扱いもあり、定款の確認が必要です。
株式を相続人で分けると経営に影響しますか。
議決権が分散すると、重要な意思決定がしにくくなることがあります。とくに後継者の議決権割合は経営の安定に影響します。経営権の維持を重視する場合は、株式の集約を含めて分割方法を検討する必要があります。
調停になった場合、自社株の評価はどう扱われますか。
遺産分割調停・審判では、当事者が提出する資料や評価書、必要に応じて裁判所の鑑定をもとに評価が検討されます。鑑定には費用と時間がかかることがあり、その要否を含めて方針を検討します。結論は事案により異なります。
まとめ――自社株相続でもめないために
自社株が相続財産に含まれる場合のポイントを整理します。
- 「評価」は、相続税申告・遺産分割・会社経営で意味が異なる。目的を分けて考える。
- 取引相場のない株式の評価は複雑で、具体的な計算は税理士等の確認が必要。
- 分け方には、現物分割・代償分割・換価分割・共有・買取りなどがあり、経営権・資金・税務への影響が異なる。
- 定款の譲渡制限・売渡請求の定め、株主名簿、名義株の有無など、会社法上の確認が欠かせない。
- 遺留分や納税資金など、資金面の備えも課題になる。
- 判断に迷うときは、資料を確認したうえで、弁護士・税理士等に早めに相談する。
自社株の評価と分け方は、法律・税務・会社経営が重なる分野です。神戸みらい法律会計事務所では、弁護士と公認会計士の視点から、資料整理・評価方針・分割方法・交渉方針の検討をご一緒に進めることができます。必要に応じて税理士・司法書士等との連携も検討できます。手続を進める前に、一度ご相談ください。
監修者・執筆者情報
本記事は、神戸みらい法律会計事務所(弁護士法人ひょうご支所)の弁護士・公認会計士 藤井貴之が監修しています。兵庫県弁護士会所属。相続・遺産分割、事業承継、企業法務などに対応しています。担当弁護士の詳細は、弁護士紹介ページをご覧ください。

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