古い借金について債権回収会社や貸金業者から連絡があり、電話に出て何かを答えてしまった、分割払いや支払猶予をお願いしてしまった、少額だけ振り込んでしまった、送られてきた書面に署名してしまった――その後で「もう時効援用はできないのではないか」と調べておられる方に向けた記事です。電話に応答したという事実だけで結論が決まるわけではありません。他方で、支払猶予の申入れ、一部の返済、債務の内容を認める書面への署名は、法律上「債務の承認」と評価され、不利に働き得る行為です。本記事では、時効が完成する前の承認と完成した後の承認で扱いがどう違うのか、行った対応ごとに何を確認するのか、その後さらに期間が経過している場合に何を検討できるのかを、条文と最高裁判所の判例に基づいて整理します。いずれも個別事情により結論は異なり、資料を確認したうえで判断する必要があります。
この記事で分かること
- 電話への応答そのものと「債務の承認」は別の問題であること
- 時効完成前の承認(民法第152条第1項による更新)と、完成後の承認(判例による援用の制限)の違い
- 発言・支払・署名という行為ごとに、結論を左右する事情と確認する資料
- 承認の後にさらに期間が経過している場合に検討し得ること
- 適用される法律は、債権が生じた時期によって変わること
- 裁判所からの書類が届いている場合に優先すべき対応
- 時効援用が難しい場合に検討できる選択肢
既に電話で応答した、支払の約束をした、少額を支払った、書面に署名したという場合でも、それだけで相談の意味がなくなるわけではありません。いつ、誰に、何を伝え、何を支払ったのかを資料とともに確認することで、時効援用を検討できるか、今後どう対応するかを整理できます。追加の約束・支払・署名の前にご相談ください。
初回の法律相談は無料です(事前予約制。無料相談のご予約は、原則として平日の営業時間内に限ります)。借金問題(債務整理)の分野では、可能な範囲でお電話での無料相談にも対応しています。お電話は078-797-5227(受付は9時から20時まで)。無料相談の対象・条件は「初めての方へ」で無料相談の条件を確認するからご確認ください。
結論|「何をしたか」によって検討の内容が変わります
古い借金への対応は、「発言」「支払」「署名」の三つに分けて整理すると見通しが立ちます。このうち支払猶予や分割払いの申入れ、一部の返済、債務の内容を認める書面への署名は、債務の承認と評価される可能性が高い行為です。他方、着信に応答した、氏名を答えた、資料の送付を求めたという対応は、それ自体から直ちに承認があったとはいえません。ただし、通話の全体、相手方の質問と自分の返答の前後、対象となった債務、留保や否認の有無、その後のやり取りを確認しなければ評価は定まりません。
さらに、承認があったと評価される場合でも、それが時効の完成前だったのか完成後だったのかで、根拠となる規定も効果も異なります。完成していたかどうかは、契約の時期、返済の履歴、期限の利益を失った時期、過去の裁判手続の有無を確認しないと判断できません。次の表は検討の枠組みです。可否を記号で示すことはできません。
| 行った対応 | 法律上問題となる点 | 結論を左右する事情 | 確認する資料 |
|---|---|---|---|
| 着信に応答した、折り返した | 応答した外形だけでは債務を認めたことになりません | 通話中に何を述べたか。相手方の質問と返答 | 通話履歴、着信日時、相手方の名称、当時のメモ |
| 氏名・住所等を答えた、請求の説明や資料の送付を求めた | 本人確認や資料請求は、債務を認める意思の表明とは異なります | その際に支払や債務の存在に触れた発言がなかったか | 通話履歴、送付を受けた書面、封筒、送付状 |
| 借金の存在を認めた、「払います」と述べた | 債務の承認に当たる可能性が高い言動です | どの契約のどの債務について述べたか。範囲に留保があったか | 通話録音、通話日時、相手方の応対記録、その後の連絡 |
| 「分割にしてほしい」「支払を待ってほしい」と求めた | 支払猶予を求めた行為が承認に当たると原審で認定された最高裁判所の判決の事案があります | 申入れの対象、時期、その後の支払や合意の有無 | 通話録音、メール、SMS、LINE、申込書 |
| 「今は払えない」と述べた | 支払能力の説明とも、債務の存在を前提とした発言とも読み得ます | 債務の存在を前提としていたか、身に覚えがないと述べたか | 通話録音、当時のメモ、前後のやり取り |
| 元金・利息又は一部として少額を支払った | 一部の支払も承認に当たり得ます。少額であることは一事情にとどまります | どの契約のどの債務への支払か。名目、支払者、経緯 | 振込明細、通帳、領収書、引落記録、入金案内 |
| 和解書・債務確認書・分割払合意書に署名した | 承認にとどまらず、新たな合意の成立も問題になり得ます | 表題ではなく実際の条項。電子的な同意の場合は同意履歴 | 書面の全ページ、控え、電子契約の本文と送信・同意の記録 |
| 家族が電話をした、家族が支払った | 権限のない家族の言動が当然に本人に帰属するわけではありません | 本人の依頼や代理権、支払名義、資金の出所、本人の認識、後の言動 | 家族の通話記録、振込明細の名義、家族と本人のやり取り |
債務の承認とは何か|書面がなくても問題になります
民法第152条第1項は「時効は、権利の承認があったときは、その時から新たにその進行を始める。」と定めています。ここでいう承認は支払の約束に限られず、相手方の権利や自分の債務が存在することを認める言動が広く問題になります。したがって、署名した書面がないことだけを理由に承認はなかったと言い切ることはできません。他方で、承認があったというには、どの債権について何を認めたのかが特定できる必要があります。「昔そういう借入れをした覚えはある」という発言と、「この請求書の金額を払います」という発言とでは、前提が異なります。
なお、民法第152条第2項は「前項の承認をするには、相手方の権利についての処分につき行為能力の制限を受けていないこと又は権限があることを要しない。」と定めています。これは承認をする人が相手方の権利を処分できる能力や権限まで備えている必要はないという意味であり、家族など権限のない第三者が述べたことがそのまま本人の承認になるという意味ではありません。第三者の言動が本人に及ぶかどうかは、代理権(民法第99条)、無権代理と追認(民法第113条、第116条)という別の規定で判断されます。
時効完成前の承認と完成後の承認は、扱いが異なります
完成前の承認|時効の更新(民法第152条第1項)
時効の完成前に承認があった場合は、承認の時から新たに時効が進行します(時効の更新)。2020年(令和2年)4月1日より前の民法では、同じ効果が「時効の中断」と呼ばれ、承認は中断事由の一つとされていました(改正前の民法第147条第3号、第157条第1項)。名称は変わりましたが、承認の時から数え直すという点は共通します。「時効がリセットされる」という言い方は、この完成前の場面の説明であり、正確には承認の時から新たに期間が進行するという意味です。
更新の効果が生じるのは債務者の側の承認があった場合です。請求書や督促状が届いたというだけで当然に更新されるわけではありません。催告については、民法第150条第1項が「催告があったときは、その時から六箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。」と定めており、完成が猶予されるにとどまります。
完成後の承認|援用が信義則上制限されます
時効期間が経過した後の承認は、民法第152条だけでは処理されません。ここでいう時効の援用とは、時効が完成したことを相手方に対して主張することをいいます。民法第145条は、時効は当事者が援用しなければ、裁判所がこれによって裁判をすることができないと定めています。期間が経過しただけでは足りず、援用が必要だという意味です。
なお、民法第146条は「時効の利益は、あらかじめ放棄することができない。」と定めており、時効が完成する前に放棄することを禁じる規定です。時効が完成した後の扱いは、この条文だけでは決まりません。次に述べるとおり、判例は信義誠実の原則(民法第1条第2項)によって処理しています。
最高裁判所大法廷昭和41年4月20日判決(昭和37年(オ)第1316号・民集20巻4号702頁)は、まず「債務者は、消滅時効が完成したのちに債務の承認をする場合には、その時効完成の事実を知つているのはむしろ異例で、知らないのが通常である」として、完成後に承認した事実から時効の完成を知って承認したと推定することは許されないとしました。そのうえで、「債務者が、自己の負担する債務について時効が完成したのちに、債権者に対し債務の承認をした以上、時効完成の事実を知らなかつたときでも、爾後その債務についてその完成した消滅時効の援用をすることは許されない」と判示しています。理由として、承認は時効による債務消滅の主張と相容れない行為であり、相手方も債務者はもはや時効を援用しない趣旨であると考えるであろうから、信義則に照らして援用を認めないのが相当である、と述べています。
つまり、時効を知らなかったことは結論を覆す理由になりません。この判例は、既に承認をしてしまった方にとって不利な内容です。相談によって承認をなかったことにできるわけでもありません。検討すべきは、その言動がそもそも承認に当たるのか、対象はどの債権だったのか、そして承認の後にどれだけの期間が経過しているのか、という点です。
| 承認の時点 | 根拠 | 法律上の効果 |
|---|---|---|
| 時効の完成前 | 民法第152条第1項(改正前は民法第147条第3号、第157条第1項) | 承認の時から新たに時効が進行します(時効の更新) |
| 時効の完成後 | 最高裁判所大法廷昭和41年4月20日判決 | 完成の事実を知らなかった場合でも、既に完成した時効の援用は信義則上許されません |
| 完成後の承認から、さらに期間が経過 | 最高裁判所第一小法廷昭和45年5月21日判決 | 援用が制限されるのは既に経過した期間についてであり、承認の後に再び時効が進行することまでは否定されません |
次の説明は正確ではありません
- 「時効を知らずに承認したのだから無効である」――知らなかったことは援用の制限を免れる理由になりません。
- 「完成した後なら、何を言っても支払っても影響しない」――完成後の承認こそ援用が制限される場面です。
- 「完成後の承認は、すべて時効の利益の放棄である」――時効の利益の放棄と、信義則による援用の制限は別の枠組みです。
- 「相談すれば承認を取り消せる」――承認をなかったことにする手続があるわけではありません。
支払った金額が少なかった、厳しい督促を受けて困惑していた、時効の制度を知らなかった、相手方から説明がなかった――こうした事情だけで援用できるという結論にはなりません。これらが意味を持ち得るのは、督促の具体的な態様、相手方の説明の内容、支払の目的と名目、本人の理解、署名した書面の内容と、それらを裏づける資料に結び付けて検討した場合です。錯誤や強迫といった意思表示の問題に触れる余地があるとしても、承認という行為の評価とは別の枠組みであり、適用条文・要件・証拠を個別に確認する必要があります。「怖かったと伝えれば無効になる」という説明は正確ではありません。
行動別に確認すること
電話に関する対応
着信に応答した、折り返した、本人確認に応じたという対応や、請求内容の説明を求めた、取引履歴や契約書の送付を依頼したという対応は、それ自体から承認があったとはいえません。他方、通話の中で支払の意思や債務の存在に触れていれば、その部分が承認として評価され得ます。「今は払えません」「覚えていません」「資料を送ってください」といった一言だけを取り出して、安全であるとも援用できないとも決めることはできません。
分割・猶予の申入れと一部の支払
分割払いや支払を待ってほしいという申入れは、債務の存在を前提とする言動として不利な評価につながり得ます。後で触れる最高裁判所第一小法廷昭和45年5月21日判決(昭和44年(オ)第1131号・民集24巻5号393頁)の事案でも、債務者が債権者に対して支払猶予を求めた行為が、時効完成後の債務の承認に当たると原審で認定されています。
一部の支払についても、「支払っていなければ影響しない」「少額なら影響しない」とはいえません。その支払がどの契約のどの債務についての承認に当たるかは別に検討を要し、複数の契約がある場合に一回の入金で請求額の全体を認めたと当然に評価されるわけでもありません。また、本人が自ら振り込んだのか、口座振替で自動的に引き落とされたのか、第三者が独自の判断で支払ったのか、差押えによって取り立てられたのかで位置づけは異なります。民法第474条第1項は「債務の弁済は、第三者もすることができる。」と定めていますが、第三者が弁済できることと、その弁済が債務者本人の承認に当たるかどうかは別の問題です。
署名した書面と電子的な同意
書面は表題では判断できません。単に資料を受け取ったことを示す署名と、債務の内容に合意する書面とを区別する必要があります。電子契約や画面上の同意操作の場合も、対象となった文面と同意の履歴を確認します。
| 確認する箇所 | 確認する内容 | 評価が変わり得る理由 |
|---|---|---|
| 当事者の表示 | 債権者・債務者として誰が記載されているか。譲受会社か元の貸主か | 対象の債権が特定できなければ、何を認めたのかも定まりません |
| 承認に関する条項 | 債務の存在や金額を認める条項の有無と、その対象・範囲 | 債務の内容を認める合意かどうかで位置づけが変わります |
| 金額と内訳 | 元金、利息、遅延損害金の別。請求額の全体か一部か | 認めた範囲が限定されている場合があります |
| 返済期と期限の利益喪失 | 返済期の定めと、支払を怠った場合の一括請求の定め | 新たな期限の定めは、その後の時効の起算点の検討に影響します |
| 清算条項その他の合意 | ほかに債権債務がない旨の条項、和解の趣旨の記載 | 承認にとどまらず、新たな合意の成立が問題になり得ます |
| 電子的な同意の履歴 | 同意した画面の文面、送信日時、同意の記録、送付先のメールアドレス | 何に同意したかを示す資料が、書面の控えに代わります |
家族が対応した場合
家族が電話に出た、家族が代わりに振り込んだという場合、それが本人の承認として扱われるかは、本人の依頼や代理権の有無、支払の名義、資金の出所、本人がそれを知っていたか、後に本人が追認する言動をしていないかによって変わります。家族が本人の名前で書面に署名していた場合は、無断の署名という問題も生じます。無断で保証人にされた場合の対応をまとめたコラムを読むもあわせてご確認ください。
承認の後に、さらに期間が経過している場合
承認の後に、再び時効期間が進行する余地があります
最高裁判所第一小法廷昭和45年5月21日判決は、時効完成後の承認によって援用が許されなくなるのは「すでに経過した時効期間について消滅時効を援用しえないというに止まり、その承認以後再び時効期間の進行することをも否定するものではない」と判示しました。「一度払ったら一生時効援用できない」という説明は正確ではありません。
もっとも「承認から5年待てば当然に援用できる」という説明も正確ではありません。同判決の事案は商行為によって生じた債権で、改正前の商法第522条の5年の時効期間が前提でした。現在のすべての借入れにそのまま当てはめることはできません。承認の後に支払をした、再び約束をした、期限を変更した、和解をした、裁判手続がとられた、差押えを受けたといった事情があれば、そのたびに完成猶予や更新の有無を検討する必要があります。放置して期間の経過を待つことをおすすめするものではありません。
適用される法律は、債権が生じた時期で変わります
現在の民法第166条第1項は、債権は「債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき」又は「権利を行使することができる時から十年間行使しないとき」に時効によって消滅すると定めています。しかし、この規定をすべての古い借金に機械的に当てはめることはできません。
民法の一部を改正する法律(平成29年法律第44号)は、法務省の公表によれば一部の規定を除き令和2年(2020年)4月1日から施行されています。同法附則第10条は、時効に関する経過措置として、施行日前に債権が生じた場合(施行日以後に債権が生じた場合であって、その原因である法律行為が施行日前にされたときを含みます)の消滅時効の援用について「なお従前の例による」とし(第1項)、その消滅時効の期間についても「なお従前の例による」としています(第4項)。また、施行日前に改正前の民法に規定する時効の中断・停止の事由が生じた場合のこれらの事由の効力についても「なお従前の例による」と定めています(第2項)。時効期間についての経過措置と、中断・更新等の事由についての経過措置は、分けて検討する必要があります。
| 確認する事項 | なぜ確認するか | 根拠 | 確認しないと決まらないこと |
|---|---|---|---|
| 契約の時期と債権が生じた時期 | 令和2年4月1日より前かどうかで適用規定が分かれます | 平成29年法律第44号附則第10条第1項・第4項 | 時効期間が何年か。援用について新旧どちらの規定によるか |
| 改正前の商事債権に当たるか | 改正前は商行為によって生じた債権に5年の定めがありました | 改正前の商法第522条 | 5年と10年のどちらを前提に検討するか |
| 期限の利益を喪失した時期 | 分割払いでは一括して請求できる状態になった時期が問題になります | 契約書の期限の利益喪失に関する条項 | 起算点をいつと考えるか |
| 中断・更新・完成猶予の事由の有無 | 過去の承認・請求・差押えの効力は、生じた時期で適用規定が異なります | 令和2年4月1日以後に生じた事由は民法第147条、第148条、第150条、第152条。同日前に生じた事由は改正前の民法第147条、第157条第1項(附則第10条第2項) | これまでに時効が数え直されていないか |
| 確定判決等の有無 | 確定判決等で確定した権利は時効期間が10年とされます | 民法第169条第1項 | 短い時効期間を前提に検討してよいか |
確定判決・和解調書・公正証書を同じに扱わないでください
民法第169条第1項は「確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって確定した権利については、十年より短い時効期間の定めがあるものであっても、その時効期間は、十年とする。」と定めています。仮執行の宣言を付した支払督促については、民事訴訟法第396条が、督促異議の申立てがないとき等は「確定判決と同一の効力を有する。」と定めています。
他方、公正証書は同じ扱いにはなりません。民事執行法第22条は強制執行の根拠となる債務名義を列挙し、確定判決(第1号)、仮執行の宣言を付した支払督促(第4号)、いわゆる執行証書(第5号)、確定判決と同一の効力を有するもの(第7号)を、それぞれ別に掲げています。手元の書面が確定判決等に当たるのか、当事者間で作成した私的な和解書にとどまるのかは、名称ではなく内容と作成の経緯によって確認する必要があります。なお、債権譲渡の通知が届いた日や、債権回収会社から初めて連絡が来た日は、それ自体が起算点になったり時効を更新したりするものではありません。
対応記録表と必要資料|相談の前に整理すること
次の表の項目に沿って、手元のノートや文書ファイルに書き出してください。債権者が複数ある場合は、債権者ごと・契約ごとに分けます。自分の記憶、相手方が主張している内容、客観的な記録が示していることは区別して記載してください。日付や発言が思い出せない場合は、推測で埋めず「不明」と記載していただければ十分です。
| 項目 | 記録する内容 | 照合する資料 |
|---|---|---|
| 日付 | 通話、書面の受領、メール等の送受信、振込を区別し、年月日と分かる範囲の時刻を記載します | 通話履歴、封筒の消印、送付状の日付、振込明細、メールやSMSの送信日時 |
| 相手 | 会社名、担当者名、連絡先、元の債権者の名称、債権譲渡があった旨の記載の有無 | 通知書、債権譲渡通知、名刺、着信番号 |
| 発言内容 | 相手方の質問と自分の返答を、できる限りそのままの言葉で。要約する場合はその旨を明記します | 通話録音、当時のメモ、メール、SMS、LINE |
| 支払額 | 金額のほか、対象とした債務、支払方法、支払名義、資金を出した人を記載します | 振込明細、通帳、領収書、引落記録、入金案内 |
| 署名した書類 | 名称だけでなく全ページの内容と、控えを受け取ったかどうかを記載します | 書面の全ページの写し、電子契約の本文と同意履歴 |
| 録音・メール等の有無 | 録音やメールが残っているか、どこに保存されているかを記載します | 録音データの保存先、メールの保存フォルダ、端末内の保存場所 |
あわせて、次の資料をお手元にそろえてください。すべてがそろわなくても相談は可能です。
- 契約書、取引履歴、返済予定表、過去と現在の請求書・督促状
- 届いた通知書とその封筒、債権譲渡通知、債権者や回収担当者が分かる書面
- 通帳、振込明細、領収書、口座振替の記録
- 通話履歴、録音の原本、当時のメモ、メール・SMS・LINE等のやり取り
- 署名又は同意した書類の全ページ、電子契約の本文・送信記録・同意履歴
- 訴状、支払督促、仮執行の宣言を付した支払督促、判決書、和解調書、差押命令など裁判所から届いた書類と、受領日が分かるもの
相談の前にしないでいただきたいこと
- 資料を削除・加工しないでください。原本と元データをそのまま保存してください。
- 既にした対応をなかったことにするために、もう一度電話をして撤回を申し出たり、様子を見るために少額を入金したりすることはおすすめできません。新たな承認と評価されるおそれがあります。
- 録音や取引履歴を取り寄せるために相手方へ連絡することも、まずは手元の資料を保全したうえで、取得方法を含めてご相談ください。
- 録音がないから相手方が承認を立証できないとも、メモがあれば当然に有利になるとも申し上げられません。相手方の応対記録も争点になり得ますが、債権者側の記録だけで事実が確定するわけでもありません。
記録と書類を整理した段階でご相談ください
対応記録表と手元の資料がそろえば、どの言動がどの債権についての承認として問題になるのか、時効が完成していた時期はいつかという検討に入れます。ご相談の際は、契約書・取引履歴・届いた通知書と封筒・振込明細・署名した書面の全ページ・裁判所からの書類をお持ちください。資料がそろっていない段階でのご相談もお受けしています。
ご予約の際は、氏名、連絡先、相談の概要(相手方の名称等)をお知らせください。お電話は078-797-5227(受付は9時から20時まで)。借金の総額や債権者が分からない場合は、借金の総額・債権者が分からないときの調べ方のコラムを読むもご覧ください。
裁判所から書類が届いている場合は、そちらの対応が先です
民間の会社から届く督促状と、裁判所から届く書類は区別してください。裁判所からの書類には対応の期限や期日が定められているものがあり、時効援用を検討できるかどうかにかかわらず期限内の対応が必要です。一般的な時効援用の通知を送ったことや相談を予約したことによって、訴訟・督促手続・強制執行への対応が完了したり手続が止まったりするわけではありません。
条文の文言と、実際に届いた書類の名称が一致しないことがあります。現行の民事訴訟法第391条及び第393条は「電子支払督促」という文言を用いていますので、条文をご覧になる際はご注意ください。
| 届いた書類 | 確認する期間 | 根拠 | あわせて確認すること |
|---|---|---|---|
| 支払督促(仮執行の宣言が付く前のもの) | 送達を受けた日から2週間以内に督促異議の申立てをしないと、債権者の申立てにより仮執行の宣言がされます | 民事訴訟法第391条第1項、第390条 | 裁判所名、事件番号、送達を受けた日 |
| 仮執行の宣言を付した支払督促 | 送達を受けた日から2週間の不変期間を経過すると、督促異議の申立てができなくなります | 民事訴訟法第393条 | 確定判決と同一の効力を有すること(民事訴訟法第396条) |
| 訴状・期日呼出状 | 答弁書の提出期限と第一回の期日は、同封された書類に記載されています | 同封された書類の記載 | 提出先、期日の日時、欠席した場合の取扱いの記載 |
| 判決書 | 送達を受けた日から2週間の不変期間内に控訴を提起する必要があります | 民事訴訟法第285条 | 主文の内容、確定しているかどうか |
裁判所からの書類がある場合は、資料がすべてそろうのを待たずにご相談ください。届いた書類ごとの初動は裁判所から書類が届いたときの初動と期限のコラムを読むで、給与の差押えの予告が届いている場合は給与差押え予告が届いたときの対応のコラムを読むで整理しています。
時効援用が難しい場合と、相談するタイミング
不利に評価される承認があったと認められ、その後の時効も完成していない場合には、時効援用は難しいという結論になります。この場合でも、承認の有無とその効果、適用される時効期間、請求されている金額の内訳、裁判手続の進行状況、家計の負担を確認して方針を決めることはできます。
返済を続ける前提で条件を見直す場合は任意整理を検討します。任意整理は債権者との合意によって進める手続ですので、分割回数や将来利息の取扱いをあらかじめお約束することはできません(任意整理の流れと和解後の返済についてのコラムを読む)。収入や資産に照らして返済の余力がない場合は、個人再生や自己破産も含めて検討します。どの手続が適しているかは、収入、資産、債務の全体、保証人の有無によって異なり、費用と効果もあわせて個別に確認します(個人再生と自己破産の違いを解説したコラムを読む)。取扱いの範囲は借金問題(債務整理)の取扱業務を見る、費用は弁護士費用を確認するからご確認ください。
信用情報については、承認をしたことや時効を援用したことだけを理由に、登録が直ちに削除されるとも、一定の年数が経てば当然に融資を受けられるとも申し上げられません(信用情報と登録期間についてのコラムを読む)。
次のいずれかに当てはまる場合は、早い段階でご相談ください。追加の約束、追加の支払、書面への署名は、その前に一度ご確認いただくことをおすすめします。
- 電話で何かを答えた後、続けて分割払いや入金を求められている
- 書面が送られてきており、署名を求められている
- 少額を支払った後に、残額の一括請求を受けている
- 家族が電話に出た、又は家族が支払ったことを後から知った
- 裁判所から書類が届いている
- 最後の取引から長い年数が経っているが、契約の時期や取引履歴が分からない
よくある質問
電話に出ただけでも、時効援用はできなくなりますか。
応答したという事実だけで結論は決まりません。問題になるのは、通話の中で債務の存在を認める言動があったかどうかです。相手方の質問、自分の返答、対象となった債務、その後のやり取りを確認したうえで判断する必要があります。
支払や分割の約束をしましたが、実際にはまだ払っていません。影響はありますか。
支払っていないことを理由に影響がないとはいえません。債務の承認は、支払そのものではなく債務の存在を認める言動によって問題となります。最高裁判所の判決の事案では、支払猶予を求めた行為が時効完成後の債務の承認に当たると原審が認定しています。承認に当たるかどうかは、申入れの対象、時期、その後の経緯によって個別に判断されます。
少額を払っただけでも影響しますか。
一部の支払も債務の承認に当たり得ます。金額が少ないことは考慮され得る一事情にとどまります。その支払がどの契約のどの債務についてのものかを確認する必要があり、請求額の全体を認めたと当然に評価されるわけでもありません。
時効の制度を知らずに対応しました。その承認は無効になりますか。
無効にはなりません。最高裁判所大法廷昭和41年4月20日判決は、時効完成の事実を知らなかった場合でも、その後に完成した消滅時効を援用することは許されないとしています。知らなかったことは、援用の制限を免れる理由になりません。
和解書や確認書に署名した場合はどうなりますか。
書面の名称ではなく条項の内容によって評価が変わります。当事者の表示、承認に関する条項、金額と内訳、返済期、期限の利益喪失、清算条項を確認します。債務の内容を認める合意である場合は、承認にとどまらず新たな合意の成立も問題になり得ます。
承認をしてから長い年数が経っています。もう一度時効を検討できますか。
検討する余地はあります。最高裁判所第一小法廷昭和45年5月21日判決は、援用が制限されるのは既に経過した時効期間についてであり、承認の後に再び時効期間が進行することまで否定するものではないとしています。もっとも、何年経てば当然に援用できるというものではなく、適用される法律、時効期間、その後の支払・約束・裁判手続・差押えの有無を確認する必要があります。
録音が残っていなくても相談できますか。
相談できます。録音がない場合でも、書面、入金記録、メールやSMS、通話履歴、その後の経緯から検討します。他方で、録音がないことを理由に相手方が承認を立証できないとも、メモがあれば当然に有利になるとも申し上げられません。
時効援用が難しい場合でも、相談する意味はありますか。
あります。承認の有無とその効果、適用される時効期間、請求額の内訳、裁判手続の期限、家計の負担を確認したうえで、任意整理・個人再生・自己破産を含めた方針を検討できます。裁判所からの書類がある場合は、その対応を優先します。
まとめ
- 電話に応答した、本人確認に答えたという事実だけでは、債務の承認があったとはいえません。
- 分割・猶予の申入れ、一部の支払、債務の内容を認める書面への署名は、不利に評価され得る行為です。
- 時効完成前の承認は民法第152条第1項による更新、完成後の承認は判例による援用の制限という、別の枠組みで扱われます。
- 時効の完成を知らなかったことは、援用の制限を免れる理由になりません。
- 承認の後に再び時効期間が進行する余地はありますが、適用される法律とその後の経過の確認が前提です。
- 対応した内容を日付・相手・発言・支払・署名・記録の有無に分けて整理し、資料は原本のまま保全してください。
- 裁判所からの書類がある場合は、資料がそろうのを待たずに対応してください。
時効援用の可否と、その先の方針をあわせて確認する
既に行った対応の内容によって、検討すべき事項は変わります。時効援用を検討できるか、難しい場合にどの手続を選ぶかを、資料を確認したうえで整理します。ご相談の際は、対応記録表と、この記事でご案内した資料をお持ちください。債権者が複数ある場合は、債権者ごとの内訳と、裁判所からの書類については受領日が分かるものもお持ちください。
初回の法律相談は無料です(事前予約制。無料相談のご予約は、原則として平日の営業時間内に限ります)。借金問題(債務整理)の分野では、可能な範囲でお電話での無料相談にも対応しています。
なお、ご予約をいただいた場合は、夜間・土日祝のご相談にも対応しています。無料相談の対象・条件は「初めての方へ」で無料相談の条件を確認するからご確認ください。
弁護士情報
代表弁護士・公認会計士 藤井 貴之
兵庫県弁護士会所属・日本公認会計士協会兵庫会所属
弁護士法人ひょうご支所 神戸みらい法律会計事務所
借金問題(債務整理)を取扱業務としており、古い請求を受けた場合の対応、時効援用の可否の検討、任意整理・個人再生・自己破産の選択について、資料を確認したうえでご相談に対応しています。
〒654-0154 神戸市須磨区中落合2丁目2-5 名谷センタービル7階(神戸市営地下鉄西神・山手線名谷駅から徒歩1分)
参考資料
本記事は一般的な情報提供であり、個別の事案についての法律上の助言ではありません。時効援用の可否は、契約の時期、取引履歴、承認の有無とその時期、過去の裁判手続の有無など個別の事情により結論が異なります。記載の内容は令和8年(2026年)9月15日時点の法令及び公表資料に基づきます。

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