住宅ローンを支払いながら、カードローンやリボ払い、消費者金融などの返済が重なり、毎月の家計が回らなくなる――そうした状況で、自宅を手放さずに借金を整理できないかと考える方は少なくありません。
結論として、住宅ローンが残っている場合でも、個人再生を検討できる場合があります。個人再生で住宅資金特別条項(いわゆる住宅ローン特則)を利用できれば、住宅ローンは支払いを続けながら、住宅ローン以外の借金について再生計画で整理することを検討できます。
もっとも、住宅ローン特則を使えるかどうかは、自宅の所有・居住の状況、住宅ローンの内容、担保の状況、滞納の有無、保証会社による代位弁済、競売の進行、収入、清算価値などによって変わります。また、住宅ローン特則は住宅ローンそのものを当然に減額する制度ではなく、住宅ローンを支払い続けられるかという返済可能性が重要になります。
滞納が広がる前、保証会社の代位弁済後、競売への対応前などの段階で資料を整理し、必要に応じて弁護士に相談することで、任意整理・個人再生・自己破産を比較しながら、生活再建に向けた対応方針を整理できる場合があります。本記事では、住宅ローンがある方が個人再生と住宅ローン特則を検討する前に確認しておきたい点を整理します。なお、見通しは個別事情により異なり、結果を保証するものではありません。
住宅ローンを残したまま借金整理を検討している方へ
住宅ローンが残っている場合でも、個人再生を検討できる場合があります。住宅資金特別条項を利用できれば、住宅ローンは支払いを続けながら、住宅ローン以外の借金について再生計画を立てることを検討できます。神戸みらい法律会計事務所では、資料を確認したうえで、任意整理・個人再生・自己破産の選択肢を比較し、住宅ローンと生活再建を踏まえた対応方針を整理します。
※初回相談・電話相談・夜間・土日対応・オンライン・出張相談・法テラス利用・分割払いの可否は、対象分野・事案・予約状況により異なる場合があります。最新の案内をご確認ください。
Contents
住宅ローンがある場合の個人再生でまず押さえたい結論
詳しい説明に入る前に、住宅ローンがある場合の個人再生で、はじめに押さえておきたい結論を整理します。
- 住宅ローンが残っていても、個人再生を検討できる場合があります。
- 住宅資金特別条項(住宅ローン特則)を使えれば、住宅ローンは支払いを続けながら、住宅ローン以外の借金を再生計画で整理することを検討できます。
- ただし、特則を使えるかは、自宅の所有・居住、ローンの目的、担保の状況、滞納、代位弁済、競売、収入、清算価値などにより異なります。
- 住宅ローン特則は、住宅ローン自体を当然に減額する制度ではありません。住宅ローンを払い続けられるかが重要です。
- 住宅ローン以外の借金だけでなく、税金・国民健康保険料・固定資産税・マンション管理費なども含めて家計全体を確認する必要があります。
- 住宅ローンを滞納している場合、保証会社の代位弁済や競売開始決定が出ている場合は、早急な資料確認が重要です。代位弁済からの経過期間によっては、特則の利用に影響が生じることがあります。
以下では、これらの結論の背景を一つずつ確認していきます。なお、本記事は一般的な解説であり、実際の結論は資料を確認したうえで個別に判断する必要があります。
個人再生とはどのような手続か
個人再生は、裁判所に申し立て、認可された再生計画に基づいて、借金の一部を原則3年(事情により最長5年)で分割して返済し、計画どおり返済すれば残りの債務について免除を受けられる手続です。原則としてすべての借金の免責を目指す自己破産とは異なり、返済を続けることを前提とする手続である点が特徴です。
個人再生を利用するには、将来において継続的または反復して収入を得る見込みがあることなどが必要です。また、住宅ローンなどを除いた無担保の債務総額が一定額(民事再生法上の上限。一般に5000万円が目安とされますが、別除権で回収が見込まれる額の扱いなどを含めて確認が必要です)を超えないことが求められます。具体的な金額・要件は、必ず民事再生法と裁判所の公式資料で確認する必要があります。
なお、個人再生では、弁護士・税理士などの資格制限は原則として問題になりにくいとされますが、個別の資格要件や勤務先の規程は別途確認が必要です。また、税金・社会保険料・養育費・罰金などは、減額の対象とならない、または別の取扱いとなる場合があるため、個別に確認する必要があります。
小規模個人再生と給与所得者等再生
個人再生には、小規模個人再生と給与所得者等再生の2種類があります。多くの場合は小規模個人再生が選択されますが、収入の安定性や家計の状況により、いずれが適するかは異なります。
| 比較項目 | 小規模個人再生 | 給与所得者等再生 |
|---|---|---|
| 主に利用できる人 | 継続的・反復的な収入の見込みがある個人 | 給与など定期的な収入があり、その変動の幅が小さい個人 |
| 債権者の不同意 | 一定数・一定額の債権者が不同意の場合、再生計画が認可されないことがある | 債権者の決議は不要 |
| 返済額の基準 | 最低弁済額と清算価値のいずれか高い額 | 左記に加え、可処分所得2年分を加えた中で最も高い額 |
| 傾向 | 給与所得者等再生より返済額を抑えられることが多い | 可処分所得2年分が高くなると返済額が大きくなりやすい |
| 住宅ローン特則との関係 | 住宅ローンの支払を続けつつ計画返済を組みやすい場合がある | 可処分所得分に加えて住宅ローンも払う負担が重くなる場合がある |
どちらが適切かは、債務額・債権者の構成・収入の安定性・可処分所得・清算価値・住宅ローンの返済額などにより異なります。実際の判断には、資料に基づく試算が必要です。
返済額の考え方(最低弁済額・清算価値・可処分所得)
個人再生での返済額は、いくつかの基準を比較して決まります。基本となるのが最低弁済額と清算価値保障原則です。清算価値保障原則とは、仮に自己破産した場合に債権者へ配当されると見込まれる金額(清算価値)以上は返済しなければならない、という考え方です。
最低弁済額は、無担保債務の総額に応じて民事再生法で段階的に定められています。おおよその目安は次のとおりですが、正確な区分・金額は民事再生法第231条第2項などの条文と裁判所の運用で確認する必要があります。
| 無担保債務の総額(目安) | 最低弁済額の目安 |
|---|---|
| 100万円未満 | 債務総額の全額 |
| 100万円以上500万円以下 | 100万円 |
| 500万円超1500万円以下 | 債務総額の5分の1 |
| 1500万円超3000万円以下 | 300万円 |
| 3000万円超5000万円以下 | 債務総額の10分の1 |
給与所得者等再生では、これらに加えて可処分所得の2年分が基準に加わります。可処分所得は、手取り収入から政令で定める生活費などを差し引いて算定され、家族構成などにより変わります。単身世帯では生活費が低く計算されやすく、返済額が高くなる場合があります。いずれの基準が適用されるかで返済総額は変わるため、個別の試算が欠かせません。
住宅ローン特則(住宅資金特別条項)とは
住宅ローン特則とは、民事再生法に定められた住宅資金貸付債権に関する特則、すなわち再生計画のなかに「住宅資金特別条項」を定める制度の通称です(民事再生法第196条以下)。
住宅ローン特則を利用できる場合、住宅ローン債権について特別条項を定めた再生計画を作成し、自宅を維持しながら個人再生を進めることを検討できます。住宅ローンは原則として従前の契約どおり、または特別条項で定めた内容に従って支払いを続け、その間に住宅ローン以外の借金を再生計画で整理していく、という形が基本になります。
住宅ローン特則を利用するには、住宅ローン債権者(保証会社を含む場合があります)との事前の協議や、再生計画案への記載、必要書類の提出が必要になります。裁判所の公式資料でも、申出の前に住宅ローン債権者の窓口で相談することが求められています。
住宅ローンが当然に減額される制度ではない
ここはとくに誤解の多い点です。住宅ローン特則を使っても、住宅ローン自体の元本が当然に減額されるわけではありません。減額・分割返済の対象になり得るのは、住宅ローン以外の借金です。住宅ローンについては、原則として契約どおり、または特別条項で定めた範囲で支払いを続ける必要があります。
そのため、住宅を残すことだけを優先して無理な返済計画を立てると、かえって生活再建が難しくなることがあります。住宅ローンの毎月の返済額に加え、管理費・修繕積立金・固定資産税・火災保険・教育費・医療費・再生計画の返済額などを合算し、家計全体で支払いを続けられるかを確認することが重要です。
住宅ローン特則を使えるか確認するポイント
住宅ローン特則を使えるかは、複数の要件を満たすかどうかで決まります。代表的な確認項目は次のとおりです。該当性が微妙な場合は、資料を確認したうえで弁護士に判断を求める必要があります。
| 確認項目 | ポイント・注意点 |
|---|---|
| 自宅の所有 | 再生債務者本人が所有する建物であることが前提です(共有持分を含む扱いは別途確認)。 |
| 居住の実態 | 本人が現実に居住している住宅であることが必要です。 |
| 店舗兼住宅 | 床面積の2分の1以上が自己の居住用であることが目安とされます。事業用部分が大きいと要件を満たさない場合があります。 |
| 用途 | 投資用不動産・セカンドハウス・別荘は対象になりません。 |
| ローンの目的 | 住宅の建設・購入・改良(敷地となる土地・借地権の取得を含む)に必要な資金であることが必要です。 |
| 抵当権の設定 | 住宅ローン債権(または保証会社の求償権)を担保する抵当権が住宅に設定されていることが必要です。 |
| 住宅ローン以外の担保 | 住宅ローン以外の借入れを担保する抵当権・根抵当権が自宅に設定されていると、原則として利用できません(民事再生法第198条ただし書)。ここは要注意点です。 |
| 共同担保 | 住宅以外の不動産にも住宅ローンの抵当権が及び、その不動産に後順位の担保権がある場合などは確認が必要です。 |
| 滞納・代位弁済・競売 | 滞納額、期限の利益喪失、保証会社の代位弁済、競売開始決定の有無により、利用の可否や類型が変わります。代位弁済後は申立時期に制約が生じることがあります。 |
| 返済可能性 | 住宅ローンを継続して支払える収入があり、かつ再生計画による一般債務の返済も可能であることが重要です。 |
| 清算価値 | 自宅やその他財産の評価が高いと清算価値が上がり、返済総額に影響することがあります。 |
これらはあくまで代表的な項目であり、実際の可否は条文と裁判所運用に照らして個別に判断されます。「この条件なら必ず使える」と単純化はできません。
住宅ローンの滞納・代位弁済・競売がある場合
住宅ローンを滞納している場合は、滞納月数・期限の利益喪失の有無・保証会社の代位弁済の有無・競売開始決定の有無を確認することが出発点になります。滞納があっても、後述の「期限の利益回復型」などの特別条項を検討できる場合がありますが、滞納額が大きい場合や収入が不足する場合は、再生計画の履行可能性が問題になります。
保証会社の代位弁済と「巻戻し」
住宅ローンを一定期間滞納すると、契約に基づき期限の利益を喪失し、保証会社が金融機関に代位弁済を行うことがあります。代位弁済が行われると、保証会社が求償権に基づいて一括請求をしてくる流れになります。
この場合でも、一定の要件のもとで、代位弁済をなかったものとみなして従前の状態に戻す「巻戻し」が認められることがあります(民事再生法第204条)。ただし、住宅資金特別条項を定めるには、保証会社が代位弁済した日から6か月以内に再生手続開始の申立てをする必要があるとされています。この期間の経過は取り返しがつかないため、代位弁済通知が届いた場合は早急な確認が重要です。具体的な起算点・期間の取扱いは、条文と裁判所運用で必ず確認する必要があります。
競売開始決定が出ている場合
住宅について競売開始決定が出ている場合でも、再生手続のなかで競売手続の中止を求められる場合があります。もっとも、中止が認められるかは要件次第であり、任意売却との関係も含めて専門的な判断が必要です。「特則を使えば必ず競売を止められる」とは言えません。保証会社・サービサー・金融機関から届いた通知や、競売関係の書類は捨てずに保管し、早めに相談することをおすすめします。
住宅ローン特則を使えるか、資料で確認しましょう
住宅ローン特則を検討する際は、不動産登記事項証明書、住宅ローン契約書、返済予定表、残高証明書、滞納通知、保証会社の代位弁済通知、競売関係書類などを確認する必要があります。住宅ローンを支払い続けながら再生計画の返済もできるか、家計収支表をもとに整理しましょう。
住宅資金特別条項の主な類型
住宅資金特別条項には、滞納の有無や返済期間の調整などに応じていくつかの類型があります。実務では次のように呼ばれることがあります。どの類型を利用できるかは、住宅ローン契約・滞納額・残りの返済期間・年齢・収入・金融機関の対応・裁判所の判断により異なります。
| 類型(通称) | 主な場面 | ポイント・注意点 |
|---|---|---|
| そのまま型 | 滞納がなく、従来どおり支払える場合 | 住宅ローンは約定どおり支払う。住宅ローン以外の借金を再生計画で整理する。 |
| 期限の利益回復型 | 滞納はあるが、収入で立て直せる場合 | 将来分は約定どおり支払い、滞納分(元本・利息・損害金)を再生計画の弁済期間内に支払う。 |
| リスケジュール型 | 従来の返済額では支払いが難しい場合 | 住宅ローンの最終弁済期を延ばすなどして月々の負担を調整する。延長後の最終弁済期や年齢に関する制限がある。 |
| 元本猶予期間併用型 | 一般債務の返済期間中、住宅ローン負担も重い場合 | 一般債務の弁済期間中、住宅ローン元本の一部支払を猶予するなどして調整する。 |
| 同意型 | 上記の枠に収まらない調整が必要な場合 | 住宅ローン債権者の同意を得て、より柔軟な内容を定める。債権者の協議・同意が前提となる。 |
各類型の詳細な要件は民事再生法第199条などに規定されています。読者の方は、まず「滞納の有無」と「従来どおり払えるか」を整理しておくと、相談がスムーズになります。実際にどの類型を用いるかは、弁護士が資料を確認して判断します。
共有名義・ペアローン・連帯債務・連帯保証の注意点
自宅やローンの名義・契約形態によって、確認すべき点や影響が変わります。
- 共有名義(夫婦・親子・親族での共有):各共有者の持分、担保設定、住宅ローン契約、居住状況を確認する必要があります。
- ペアローン:夫婦などが各自別々に住宅ローン債務者となっている形態です。双方の借入れ・抵当権・保証関係を確認する必要があり、一方のみの手続では十分でない場合があります。
- 連帯債務:他方の債務者の返済義務に影響が及ぶ可能性があります。
- 連帯保証:個人再生をしても、保証人の責任は当然には免除されません。保証人への請求が生じる可能性があります。
家族が保証人でない場合でも、住宅ローンや共有財産、家計管理の関係で、家族への説明が必要になることがあります。配偶者や親族に知られずに進められることを保証するものではありません。共有者・連帯債務者・保証人への通知や影響は、契約書・裁判所運用・金融機関の対応により異なるため、個別の確認が必要です。
住宅ローン以外の抵当権・根抵当権がある場合
住宅ローン特則を利用するうえで重要なのが、住宅ローン以外の借入れを担保する抵当権・根抵当権が自宅に設定されていないかという点です。これらが設定されていると、原則として特則を利用できません(民事再生法第198条ただし書)。
確認には不動産登記事項証明書が必要です。抵当権者・根抵当権者、被担保債権の内容、債務者、共同担保の有無を確認します。事業資金、おまとめローン、カードローン、親族からの借入れ、二番抵当、根抵当権などが同じ不動産に設定されている場合は、利用可否が問題になり得ます。住宅ローンと同じ金融機関であっても、住宅資金以外の借入れを担保している場合があるため、契約書の確認が欠かせません。
もっとも、「二番抵当があれば必ず使えない」と単純に決まるわけではなく、担保している債権の内容によって結論が変わります。事業者・会社代表者・不動産担保ローンを利用している方は、とくに注意が必要です。
自宅の価値と清算価値の関係
個人再生では、前述の清算価値保障原則により、自宅やその他の財産の評価が返済総額に影響します。
- アンダーローン(自宅の査定額が住宅ローン残高を上回る場合):自宅の剰余価値が清算価値に算入され、再生計画での返済総額が上がる可能性があります。
- オーバーローン(住宅ローン残高が自宅の査定額を上回る場合):自宅自体の剰余価値は小さくなりますが、退職金見込額・生命保険の解約返戻金・自動車・預貯金など、ほかの財産により清算価値が問題になることがあります。
確認には、不動産査定書、固定資産評価証明書、住宅ローン残高証明書、登記事項証明書などが必要です。査定額は評価方法や査定先により差が出ることがあり、裁判所や個人再生委員から追加資料を求められる場合があります。「オーバーローンなら必ず問題ない」「アンダーローンなら必ず個人再生できない」と単純化はできません。
住宅ローンを払い続けられるか確認する家計チェック
住宅ローンを支払い続けながら、一般債務の再生計画返済も行えるかどうか――ここが住宅ローン特則を検討するうえでの核心です。次の費目を一覧化し、家計全体で無理がないかを確認しましょう。
| 区分 | 主な費目 | 確認の視点 |
|---|---|---|
| 住宅関連 | 住宅ローン(ボーナス払い含む)、管理費、修繕積立金、固定資産税、火災保険 | ボーナス払いに依存していないか。固定費が収入に対して重すぎないか。 |
| 生活費 | 食費、水道光熱費、通信費、日用品 | 実態に即した金額か。過少見積りになっていないか。 |
| 家族関連 | 教育費、医療費、養育費 | 今後数年で大きな支出が予定されていないか。 |
| 車・その他 | 自動車ローン、車検・保険、各種税金 | 維持費を含めて確認しているか。 |
| 返済 | 再生計画による弁済額 | 住宅ローンと同時に無理なく支払えるか。 |
個人再生では、将来において継続的または反復して収入を得る見込みが問われます。同居家族の収入を考慮する場合でも、本人の収入・家計負担・扶養関係を整理する必要があります。赤字家計や、住宅ローン返済比率が高すぎる計画は慎重な検討が必要です。再生計画が認可されても、計画どおり返済できなければ手続が行き詰まる可能性があります。
税金・社会保険料・管理費・修繕積立金の滞納
住宅を維持するために必要な固定費の滞納も、見落とせない論点です。
- 税金・社会保険料(所得税・住民税・国民健康保険料・年金など):個人再生でも減額の対象になりにくく、滞納処分(差押え等)の問題が残ることがあります。
- 固定資産税:滞納があると差押え・滞納処分の可能性があるため、早めに自治体へ相談することが望まれます。
- マンション管理費・修繕積立金:滞納があると、管理組合からの請求、遅延損害金、先取特権、競売などが問題になり得るため、確認が必要です。
これらの取扱いは、制度・時期・債権の性質により異なります。住宅ローンだけでなく、住み続けるために必要な固定費を含めて、返済可能性を検討する必要があります。
自己破産・任意整理・個人再生の比較
住宅を残したい場合に個人再生が候補になることはありますが、必ず最適とは限りません。三つの手続の大枠を比較します。
| 比較項目 | 任意整理 | 個人再生 | 自己破産 |
|---|---|---|---|
| 手続の場 | 裁判所を通さず債権者と交渉 | 裁判所に申立て | 裁判所に申立て |
| 自宅を残せる可能性 | 残せる場合がある(対象から外す等) | 住宅ローン特則を使えれば残せる可能性がある | 原則として維持は難しい場合が多い |
| 住宅ローン以外の借金 | 将来利息のカット等が中心。元本の大幅減額は通常難しい | 再生計画で減額・分割返済の対象になり得る | 原則として免責を目指す |
| 返済継続の要否 | 必要(返済原資が前提) | 必要(計画返済が前提) | 原則不要 |
| 保証人への影響 | 対象の選び方による | 保証人の責任は当然には消えない | 保証人に請求が及ぶことがある |
| 向く可能性のある場面 | 一部の債務を無理なく返済できる場合 | 自宅を残しつつ債務を整理したい場合 | 返済の見込みが立たない場合 |
任意売却・リースバック・親族間売買などの選択肢もありますが、安易に進めると不利益が生じることがあるため、専門的な検討が必要です。税金・養育費・罰金などは、いずれの手続でも別途確認が必要です。どの手続が適切かは、債務総額・担保・収入・家計・資産・滞納状況などにより異なります。
個人再生を検討する前にやってはいけないこと
自己判断での行動が、後の手続を不利にしたり、選択肢を狭めたりすることがあります。次の行動は避けてください。
- 借金や住宅ローンの滞納を隠す
- 保証会社・裁判所からの通知を捨てる
- 競売開始決定を放置する
- 弁護士に相談せず、特定の債権者にだけ返済する(偏った返済)
- 親族・勤務先・保証人にだけ返済する
- 自宅の名義を配偶者や親族に移す
- 車・保険・退職金・預金・不動産を隠す
- 新たな借入れやカード利用を続ける
- クレジットカードの現金化をする
- 住宅ローンを払うために高金利の借入れをする
- 給与差押えや支払督促を放置する
- 任意売却・リースバック契約を急いで締結する
- 家族に知られたくないために事実と異なる説明をする
- 匿名掲示板やSNSの情報だけで判断する
なお、住宅ローンの支払継続や一部弁済の扱いは、申立ての時期・裁判所・弁護士の方針により変わります。「必ず払う」「必ず止める」と一律に決まるものではないため、自己判断の前に確認することが大切です。
弁護士に相談するタイミング
次のような場面では、早めに相談を検討することをおすすめします。
- 住宅ローンとカードローン・リボ払い・消費者金融の返済が両立できない
- 自宅を残したいが、返済が難しくなってきた
- 住宅ローンを滞納し始めた/期限の利益喪失通知が届いた
- 保証会社から代位弁済通知が届いた/競売開始決定が届いた
- 住宅ローン以外の抵当権・根抵当権がある
- ペアローン・共有名義・連帯債務・連帯保証がある
- 自宅の査定額が住宅ローン残高を上回りそう
- 固定資産税・税金・マンション管理費を滞納している
- 給与差押え・支払督促・訴状・債権差押命令が届いた
- 任意整理では返済が難しい/自己破産だと自宅を失う可能性が高い
- 個人再生の返済額や家計収支を試算したい
- 家族・保証人・勤務先への影響を確認したい
- 法テラスの利用や費用の分割を確認したい
弁護士に相談することで、資料を確認したうえで、住宅ローン特則の利用可能性、任意整理・個人再生・自己破産・任意売却の比較、家計改善、裁判所提出資料の方針などを整理できる場合があります。もっとも、自宅維持・再生計画の認可・督促や競売の停止・家族に知られないこと・費用負担の有無を保証するものではありません。見通しは個別事情により異なります。
相談前に準備したい資料
資料がそろっているほど、相談での見通しの整理は進みやすくなります。すべてそろっていなくても相談は可能ですが、とくに住宅ローン関係の書類は優先して準備することをおすすめします。
| 区分 | 主な資料 |
|---|---|
| 本人・家族 | 本人確認資料、住民票、家族構成が分かる資料 |
| 収入 | 給与明細、源泉徴収票、課税証明書、確定申告書 |
| 家計 | 家計収支表、家計簿 |
| 借入れ全般 | 債権者一覧、借入残高が分かる書類、督促状・催告書、支払督促・訴状・判決・和解調書、債権差押命令 |
| 住宅ローン(優先) | 住宅ローン契約書、金銭消費貸借契約書、保証委託契約書、抵当権設定契約書、返済予定表・償還表、残高証明書、滞納通知、期限の利益喪失通知、保証会社の代位弁済通知、競売開始決定 |
| 不動産(優先) | 登記事項証明書、固定資産評価証明書、不動産査定書、売買契約書・重要事項説明書、建物図面・間取り・床面積資料(店舗兼住宅は面積資料) |
| 管理費・税金 | 管理費・修繕積立金の明細、管理費滞納通知、固定資産税納税通知書、税・国保・年金・社会保険料の滞納資料 |
| その他財産 | 預貯金通帳、保険証券・解約返戻金証明書、車検証・自動車ローン資料、退職金見込額資料 |
| 保証関係 | 保証人・連帯保証人・連帯債務者が分かる契約書 |
| 費用関連 | 法テラス利用を検討する場合の収入・資産資料 |
住宅ローンがあっても個人再生はできますか?
住宅ローンが残っていても、個人再生を検討できる場合があります。住宅資金特別条項(住宅ローン特則)を使えれば、住宅ローンは支払いを続けながら、ほかの借金を再生計画で整理することを検討できます。ただし利用できるかは、所有・居住・担保・滞納・収入・清算価値などにより異なり、資料の確認が必要です。
住宅ローン特則とは何ですか?
民事再生法に定められた住宅資金貸付債権に関する特則で、再生計画に「住宅資金特別条項」を定める制度の通称です。一定の要件のもとで、自宅を維持しながら個人再生を進めることを検討できます。
個人再生をすると住宅ローンも減額されますか?
住宅ローン特則を使っても、住宅ローン自体の元本が当然に減額されるわけではありません。減額・分割の対象になり得るのは住宅ローン以外の借金です。住宅ローンは原則として契約どおり、または特別条項で定めた範囲で支払いを続ける必要があります。
住宅ローンを滞納していても自宅を残せますか?
滞納があっても、収入で立て直せる場合などは特別条項を検討できることがあります。ただし滞納額が大きい場合や収入が不足する場合は、返済可能性が問題になります。保証会社の代位弁済や競売が進んでいる場合は、早急な資料確認が重要です。
保証会社が代位弁済した後でも住宅ローン特則は使えますか?
一定の要件のもとで、代位弁済をなかったものとみなす「巻戻し」が認められることがあります。ただし、代位弁済の日から一定期間内(一般に6か月以内とされます)に申立てが必要とされており、期間の経過は取り返しがつきません。詳細は条文と裁判所運用の確認が必要です。
ペアローンや共有名義でも個人再生はできますか?
できる場合がありますが、各自の借入れ・抵当権・保証関係・持分・居住状況などの確認が必要です。一方のみの手続では十分でない場合や、他方の債務者・保証人に影響が及ぶ場合があるため、個別の検討が欠かせません。
自宅の価値が高いと個人再生の返済額は増えますか?
清算価値保障原則により、自宅やその他財産の評価が高いと返済総額が上がる可能性があります。住宅ローン残高との関係(アンダーローン・オーバーローン)や、退職金・保険・車・預金なども影響します。試算には資料が必要です。
相談するときは何を準備すればよいですか?
住宅ローン契約書、返済予定表、残高証明書、登記事項証明書、滞納・代位弁済・競売関係の書類を優先して準備すると、見通しの整理が進みやすくなります。すべてそろっていなくても相談は可能です。
まとめ
- 住宅ローンが残っていても、個人再生を検討できる場合がある。
- 住宅資金特別条項を使えれば、住宅ローンを払いながら、ほかの借金を再生計画で整理することを検討できる。
- 特則の利用可否は、所有・居住・ローン目的・担保・滞納・代位弁済・競売・収入・清算価値などにより異なる。
- 住宅ローン特則は、住宅ローンを当然に減額する制度ではない。払い続けられるかが重要。
- 住宅ローン以外の抵当権・根抵当権、共有・ペアローン・連帯保証、税金・管理費の滞納はとくに要確認。
- 滞納の拡大前・代位弁済後・競売対応前に、資料を整理して早めに相談することが望ましい。
次の一歩として、まずは手元の住宅ローン関係の書類と借入れの一覧を整理し、家計収支を書き出してみてください。そのうえで、任意整理・個人再生・自己破産を比較しながら、生活再建に向けた方針を検討することをおすすめします。
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住宅ローンがある場合の個人再生では、住宅ローン特則を利用できるか、自宅の価値が清算価値にどう影響するか、住宅ローンと再生計画の返済を両立できるかを確認する必要があります。滞納・保証会社の代位弁済・競売開始決定がある場合は、とくに早期の資料確認が重要です。住宅を残すことだけを優先するのではなく、生活再建に向けて任意整理・個人再生・自己破産を比較して検討しましょう。
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監修・執筆者
弁護士法人ひょうご支所 神戸みらい法律会計事務所
弁護士・公認会計士 藤井 貴之(兵庫県弁護士会所属)
取扱分野:借金問題(債務整理)ほか。弁護士紹介を見る
所在地:兵庫県神戸市須磨区中落合2丁目2-5 名谷センタービル7階/電話:078-797-5227(受付時間は公式サイトでご確認ください)。事務所案内・アクセスを見る
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案についての法的助言ではありません。実際の取扱いは事案により異なります。
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