「この契約は取締役会の決議が必要なのか」「招集通知に書いていない議題を、その場で決議してよいのか」「一部の取締役に通知が届いていなかったが、決議も契約も無効になるのか」。取締役会をめぐる相談は、多くの場合、手続を進めた後ではなく、進める直前か、進めた後に不安が生じた場面で持ち込まれます。
この記事では、通常の取締役会設置会社を前提に、取締役会の役割と権限、定款・取締役会規則等の内規との関係、招集権者・通知期間・通知方法、招集通知に記載していない議題の扱い、招集手続・決議・報告の三つの省略制度、決議を欠く行為の効力、手続違反があった場合の取締役の責任までを、条文と判例に沿って整理します。
結論から申し上げると、取締役会をめぐる問題は「有効か、無効か」の二択で決まりません。機関設計(取締役会設置会社かどうか)、決議事項該当性、招集・議決手続、実行した行為の性質、相手方の認識という複数の層に分けて検討する必要があり、どの層で問題が生じたかによって、結論も採るべき対応も変わります。個別事情により結論は異なりますので、実際の判断には定款、取締役会規則、招集通知、議事録、契約書等の確認が必要です。
取締役会の招集や決議の進め方に迷っている場合、手続を実行する前に、定款、取締役会規則、招集通知の案、議案書を確認しておくと、必要な手続と残すべき記録を整理しやすくなります。
まず押さえる全体像|確認する順序
この記事で分かること
- 検索語として使われる「取締役決議」と、会社法上の「取締役会決議」の違い
- 取締役会で決議しなければならない事項と、定款・内規で上乗せされる事項の関係
- 招集権者、通知の相手方、通知期間、通知方法と、その証拠の残し方
- 招集通知に書いていない議題を決議できるかどうかを分ける判断要素
- 招集手続の省略、決議の省略、報告の省略という三つの制度の違い
- 決議を欠いた場合に、決議自体と対外的な取引の効力をどう分けて考えるか
- 手続違反があった場合に、どの立場の取締役がどのような責任を問われ得るか
取締役会に関する問題は、次の順序で確認すると整理しやすくなります。順序を飛ばすと、そもそも取締役会決議が不要な会社について決議の瑕疵を論じたり、内規違反にすぎない事案を会社法上の決議欠缺と取り違えたりすることになります。
| 順序 | 確認すること | 主に確認する資料 |
|---|---|---|
| 1 機関設計 | 取締役会設置会社か、監査役の権限に会計限定の定めがあるか、監査等委員会設置会社等でないか | 登記事項証明書、現行定款 |
| 2 決議の要否 | 会社法上、取締役会の決議を要する事項か。定款・取締役会規則・付議基準で上乗せされていないか | 会社法、定款、取締役会規則、付議基準、職務権限規程 |
| 3 招集手続 | 招集権者、通知の相手方、通知期間、通知方法、目的事項の記載、省略制度の利用の可否 | 招集通知、送信記録、同意書面、取締役会規則 |
| 4 決議の成立 | 定足数、可決要件、特別の利害関係を有する取締役の扱い、議事録の記載 | 出席記録、議事録、議案書、説明資料 |
| 5 実行行為 | 実際に行われた行為の性質(対外的な個別取引か、組織法上の行為か)と相手方の認識 | 契約書、決裁書、稟議書、相手方とのやり取り |
| 6 瑕疵発見後 | 原資料の保全、再招集・再決議・追認の可否、登記是正の要否、責任関係の整理 | 上記全部、登記関係書類 |
「取締役決議」と「取締役会決議」はどう違うのか
検索語としてよく使われる「取締役決議」は、会社法上の統一的な用語ではありません。実務上は、次の二つがいずれも「取締役決議」と呼ばれることがあり、規律が大きく異なります。最初にどちらの話なのかを切り分ける必要があります。
取締役会設置会社における「取締役会決議」
取締役会は、すべての取締役で組織され、業務執行の決定、取締役の職務の執行の監督、代表取締役の選定及び解職という職務を行います(会社法第362条第1項、第2項)。取締役会の決議は、議決に加わることができる取締役の過半数が出席し、その過半数をもって行います(会社法第369条第1項)。
公開会社、監査役会設置会社、監査等委員会設置会社、指名委員会等設置会社は、取締役会を置かなければなりません(会社法第327条第1項)。それ以外の会社では、取締役会を置くかどうかは定款で決まります。
取締役会非設置会社における「取締役の過半数による決定」
取締役会を置いていない会社では、取締役が会社の業務を執行し、取締役が二人以上ある場合には、定款に別段の定めがある場合を除き、業務は取締役の過半数をもって決定します(会社法第348条第1項、第2項)。支配人の選任及び解任、支店の設置・移転・廃止等、各取締役に委任できない事項も定められています(同条第3項)。
この場合、会社法上の「取締役会の招集通知」「取締役会の議事録」に関する規定は適用されません。取締役会議事録の様式で書面を作成しても、取締役会決議があったことにはなりません。決定の記録は、取締役の決定書等の形で残すことになります。
株主総会の決議事項との違い
取締役会設置会社では、株主総会は、会社法に規定する事項及び定款で定めた事項に限り決議をすることができます(会社法第295条第2項)。取締役会の権限と株主総会の権限は別のものであり、取締役会決議で足りる事項と、株主総会決議が必要な事項(さらには両方が必要な事項)を混同しないことが重要です。
| 区分 | 取締役会設置会社 | 取締役会非設置会社 |
|---|---|---|
| 決定の主体 | 取締役会(会社法第362条) | 取締役(取締役が二人以上のときは過半数の決定。会社法第348条) |
| 招集手続 | 会社法第366条、第368条の規律がある | 会社法上の取締役会招集手続の規定は適用されない |
| 議事録 | 会社法第369条第3項、会社法施行規則第101条により作成・備置き | 会社法上の取締役会議事録の規定は適用されない |
| 株主総会の権限 | 会社法に規定する事項及び定款で定めた事項に限られる(会社法第295条第2項) | 会社に関する一切の事項について決議できる(会社法第295条第1項) |
監査等委員会設置会社、指名委員会等設置会社は、業務執行の決定を取締役や執行役へ委任できる範囲が異なります。この記事の説明をそのまま当てはめることはできませんので、該当する場合は定款と登記事項証明書を前提とした個別の確認が必要です。
取締役会の役割と権限|何を決議する必要があるか
取締役会の三つの職務
取締役会の職務は、会社法第362条第2項で三つに整理されています。
- 業務執行の決定(同項第1号)
- 取締役の職務の執行の監督(同項第2号)
- 代表取締役の選定及び解職(同項第3号)
取締役会は「決める場」であると同時に「監督する場」です。監督機能を支える仕組みとして、代表取締役及び取締役会の決議によって選定された業務執行取締役は、三箇月に一回以上、自己の職務の執行の状況を取締役会に報告しなければならないとされています(会社法第363条第1項、第2項)。この報告は、後述する報告の省略の対象外です(会社法第372条第2項)。
取締役に委任できない重要な業務執行
取締役会は、次の事項その他の重要な業務執行の決定を取締役に委任することができません(会社法第362条第4項)。
| 号 | 事項 |
|---|---|
| 第1号 | 重要な財産の処分及び譲受け |
| 第2号 | 多額の借財 |
| 第3号 | 支配人その他の重要な使用人の選任及び解任 |
| 第4号 | 支店その他の重要な組織の設置、変更及び廃止 |
| 第5号 | 社債を引き受ける者の募集に関する重要な事項として法務省令で定める事項 |
| 第6号 | 取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他業務の適正を確保するために必要な体制の整備 |
| 第7号 | 定款の定めに基づく会社法第423条第1項の責任の免除 |
注意が必要なのは、この列挙が「取締役会決議事項の一覧」ではないことです。条文は「次に掲げる事項その他の重要な業務執行の決定」としており、列挙されていない事項でも重要な業務執行に当たれば委任できません。また、競業取引・利益相反取引の承認(会社法第356条第1項、第365条第1項)のように、会社法の個別規定によって取締役会の承認が必要とされる場面もあります。定款や適法な社内規程で付議事項が追加されている場合もあります。
「重要な財産の処分」「多額の借財」をどう判断するか
この点について、万能の金額基準や割合基準は存在しません。旧商法第260条第2項第1号(現在の会社法第362条第4項第1号に相当します)に関する最高裁平成6年1月20日判決・民集48巻1号1頁は、重要な財産の処分に該当するかどうかについて、当該財産の価額、その会社の総資産に占める割合、当該財産の保有目的、処分行為の態様及び会社における従来の取扱い等の事情を総合的に考慮して判断すべきとしています。
「総資産の一定割合を超えれば重要、超えなければ重要でない」という単一の基準で割り切ることはできません。同判決の事案では、帳簿価額が総資産に占める割合が一パーセント台であっても、保有目的や従来の取扱い等を含めて総合考慮すべきものとされています。社内で付議基準を金額で定めること自体は有用ですが、その基準を下回れば会社法上も決議不要になる、という関係ではありません。
なお、同判決は旧商法下のものです。判断枠組みは現在も実務上参照されていますが、個別の事案に当てはめる際には、現行会社法の条文と、その後の裁判例・実務の状況を踏まえた確認が必要です。
定款・取締役会規則等の内規と会社法の関係
実務では、会社法上の決議事項に加えて、取締役会規則、付議基準、職務権限規程、決裁規程、稟議規程によって社内の意思決定ルールが定められていることが一般的です。これらは効力の性質が異なります。
| 階層 | 性質 | 違反した場合に主に問題となること |
|---|---|---|
| 会社法・会社法施行規則 | 強行規定を含む法令。定款や内規で排除できない部分がある | 決議の効力、対外的な行為の効力、役員の責任、過料等 |
| 定款 | 会社の根本規則。会社法が許す範囲で要件の加重・緩和等を定める(例:決議要件の加重、通知期間の短縮、決議の省略の採用) | 定款所定の要件を欠く決議の効力、取締役の任務懈怠 |
| 取締役会規則・付議基準 | 取締役会の運営に関する内部規範 | 審議・準備の機会の確保、決議の効力に影響するかは事案による、取締役の任務懈怠 |
| 職務権限規程・決裁規程・稟議規程 | 社内の決裁権限の配分に関する内部規範 | 社内的な手続違反、代表権に対する内部的制限としての位置づけ、取締役・従業員の責任 |
内規違反と会社法上の決議欠缺は別問題
「取締役会規則に反しているから決議は無効」「稟議を通していないから契約は無効」と単純に結論づけることはできません。会社法上取締役会決議が必要な事項について決議を欠く場合と、会社法上は決議不要であるものの社内規程の決裁を経ていない場合とでは、問題の所在が異なります。
後者、すなわち代表取締役の代表権に対する内部的な制限にとどまる場合については、会社法第349条第4項が代表取締役は会社の業務に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有すると定め、同条第5項が「前項の権限に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない」と定めています。内規違反があっても、取引の効力が当然に否定されるわけではありません。
もっとも、内規違反が会社内部で無意味になるわけでもありません。内規の目的、法的性質、違反の程度、審議や準備の機会が実質的に損なわれたかどうか、決議結果への影響、相手方の認識等を個別に検討する必要があります。内規が法令又は定款に反している場合の扱いも、当該規定と事案に即した確認が必要です。
取締役会決議の成立要件
定足数と可決要件
取締役会の決議は、議決に加わることができる取締役の過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合はその割合以上)が出席し、その過半数(同じく定款で加重できます)をもって行います(会社法第369条第1項)。頭数で計算し、株主総会のような議決権数による計算ではありません。定款で要件を加重している会社もありますので、必ず現行定款を確認してください。
可決には出席取締役の過半数が必要ですので、賛否同数の場合は可決されません。取締役会規則で議長に決裁権(キャスティングボート)を与える定めがある例も見られますが、その有効性については議論があり、個別の検討が必要です。
特別の利害関係を有する取締役
決議について特別の利害関係を有する取締役は、議決に加わることができません(会社法第369条第2項)。議決に加わることができない以上、定足数の計算の基礎となる「議決に加わることができる取締役」からも除かれることになります。誰が特別の利害関係を有するかは議案ごとに判断され、同じ取締役でも議案によって結論が変わります。利益相反取引の当事者となる取締役や、解職の対象となる代表取締役について問題になりやすい論点です。
監査役の出席と意見陳述
監査役は、取締役会に出席し、必要があると認めるときは意見を述べなければなりません(会社法第383条第1項)。ここで注意が必要なのは、監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある会社(会社法第389条第1項)は、会社法上の「監査役設置会社」に当たらないことです(会社法第2条第9号)。招集通知の相手方等の扱いが変わりますので、定款の確認が欠かせません。
議事録と「異議をとどめない取締役」の賛成推定
取締役会の議事については、法務省令で定めるところにより議事録を作成し、書面で作成しているときは、出席した取締役及び監査役が署名し、又は記名押印しなければなりません(会社法第369条第3項)。電磁的記録で作成する場合は、署名又は記名押印に代わる措置をとる必要があります(同条第4項)。議事録等は、取締役会の日から十年間、本店に備え置かなければなりません(会社法第371条第1項)。
| 記載事項 | 実務上の留意点 |
|---|---|
| 開催の日時及び場所 | その場所に存しない取締役、監査役等が出席した場合には、その出席の方法も記載します(同項第1号) |
| 招集の経緯 | 招集請求に基づく招集、監査役の招集等、該当する場合はその旨を記載します |
| 議事の経過の要領及びその結果 | 審議の実質が分かる程度の記載が求められます(同項第4号) |
| 特別の利害関係を有する取締役の氏名 | 決議を要する事項について該当者があるときに記載します(同項第5号) |
| 法定の意見・発言の概要 | 監査役の意見等、条文が定める発言について記載します(同項第6号) |
| 議長の氏名 | 議長が存するときに記載します(同項第8号) |
特に重要なのが、取締役会の決議に参加した取締役であって議事録に異議をとどめないものは、その決議に賛成したものと推定されるという規定です(会社法第369条第5項)。議案に反対しながら議事録に何も残さなかった場合、後から「反対していた」と主張することが難しくなります。反対する取締役にとっては、議事録の記載こそが最初の防御手段になります。
定款、取締役会規則、招集通知、議案書、議事録、契約書等を確認したうえで、その案件に取締役会決議が必要か、既に生じている手続上の問題にどう対応するかを整理できます。決議や登記を実行する前であれば、選択できる手続の幅も広くなります。
取締役会の招集|招集権者・通知の相手方・通知期間・通知方法
招集権者と招集請求
取締役会は、原則として各取締役が招集します。ただし、取締役会を招集する取締役を定款又は取締役会で定めたときは、その取締役(招集権者)が招集します(会社法第366条第1項)。
招集権者が定められている場合、それ以外の取締役は、取締役会の目的である事項を示して、招集権者に対し取締役会の招集を請求することができます(同条第2項)。そして、その請求があった日から五日以内に、その請求があった日から二週間以内の日を取締役会の日とする招集の通知が発せられない場合には、請求をした取締役が自ら取締役会を招集することができます(同条第3項)。
この「五日」「二週間」は、いずれも招集請求があった日を起点とします。五日以内に通知を発すること、かつ、通知される取締役会の日が請求日から二週間以内であることの両方が満たされない場合に、請求をした取締役の自ら招集する権限が生じます。日数の数え方と、実際に通知を発した日を示す資料の保存が重要になります。
監査役も、一定の場合に取締役に対して取締役会の招集を請求することができ、五日以内に請求日から二週間以内の日を取締役会の日とする招集通知が発せられないときは、自ら招集することができます(会社法第383条第2項、第3項)。また、監査役設置会社、監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社を除く取締役会設置会社では、株主が、取締役の法令・定款違反行為等を理由として取締役会の招集を請求できる場合があります(会社法第367条)。いずれも機関設計と要件が限定されていますので、一般化はできません。
通知の相手方と通知期間
取締役会を招集する者は、取締役会の日の一週間(これを下回る期間を定款で定めた場合は、その期間)前までに、各取締役(監査役設置会社にあっては、各取締役及び各監査役)に対してその通知を発しなければなりません(会社法第368条第1項)。
ここでの要点は次の三つです。
- 期間は定款で短縮できます。実務上、三日前まで等と定めている会社は少なくありません。現行定款の確認が必要です。
- 条文は通知を「発する」ことを要求しています。到達までを要件とするかについては議論がありますが、実務上は、発信の事実と到達の状況の双方を記録に残しておくことが安全です。
- 通知の相手方は各取締役であり、監査役設置会社では各監査役も含まれます。前述のとおり、監査の範囲を会計に関するものに限定する定款の定めがある会社は会社法上の監査役設置会社に当たらないため、この点の扱いが変わります。
通知方法と証拠化
会社法第368条第1項は、通知の方法を書面に限定していません。もっとも、定款や取締役会規則が書面による通知を求めている場合には、その定めに従う必要があります。電子メールやビジネスチャットを用いる場合は、宛先、送信日時、送信記録、配信エラーの有無、受領の状況(開封確認・返信等)を保存しておくことが重要です。
名目的な取締役である、反対することが分かっている、どうせ欠席する、当該議案について特別の利害関係を有する。これらはいずれも、招集通知を省略してよい理由にはなりません。特別の利害関係を有する取締役は議決に加わることができませんが、それは議決権の問題であり、取締役会への招集通知や出席の問題とは別に検討する必要があります。
招集通知に議題を書く必要があるか|通知にない議題を決議できるか
会社法は、取締役会の招集通知に目的事項の記載を一律には求めていない
株主総会については、取締役会設置会社では、招集の際に決定した「株主総会の目的である事項」以外の事項について決議をすることができないと明文で定められています(会社法第309条第5項、第298条第1項第2号)。
これに対し、取締役会の招集通知については、会社法第368条第1項が「その通知を発しなければならない」と定めるのみで、目的事項(議題)の記載を一律に要求する規定は置かれていません。他方で、招集権者以外の取締役が招集を請求する場面や、株主が招集を請求する場面では、「取締役会の目的である事項を示して」請求することが求められています(会社法第366条第2項、第367条第2項)。会社法が、場面によって目的事項の特定を求めたり求めなかったりしていることが分かります。
この違いは、取締役会が、経営に関する情報を共有し継続的に職務を執行している少人数の取締役による会議体であり、株主総会と前提が異なることによるものと説明されています。したがって、「通知に書いていない議題は当然に決議できない」とも、「通知に書いていなくても常に決議できる」とも言えません。
類型ごとの判断要素
以下は、実際の事案でどのような事情が結論を左右し得るかを整理したものです。具体的な結論は、定款・取締役会規則の定め、議案の重要性、資料の有無、審議の実質等により異なります。
| 類型 | 主に問題となる点 | 結論を左右し得る事情 |
|---|---|---|
| 通知に目的事項を記載していない | 会社法上、記載を一律に求める明文はない | 定款・取締役会規則が記載を義務づけていないか。議案の重要性。準備・検討の機会が実質的に確保されたか |
| 定款・規則が議題の記載を求めている | 内規違反となる | 規則の趣旨と法的性質。違反の程度。審議の機会への影響。決議結果への影響 |
| 通知に列挙した議題以外の重要議案を当日追加した | 列挙により生じた信頼と、準備の機会 | 追加議案の重要性・緊急性。資料の提供。欠席者の有無。反対の機会が確保されたか |
| 全取締役が出席し、異議なく審議・決議に応じた | 手続上の瑕疵が問題とならない場合がある | 全員が出席したか。異議・延期要求がなかったか。議事録に審議の実質が記録されているか |
| 資料・検討時間が不足した | 準備、反論、延期要求の機会の侵害 | 資料の事前配付の有無。説明の内容。延期要求の有無とその処理 |
| 反対する取締役を意図的に排除した | 手続の公正さそのもの | 通知の欠缺・遅延の意図。日程設定の経緯。排除の態様 |
| 代表取締役の解職、重要な資産処分、利益相反取引等 | 会社支配・重大な利益に関わる | 議案の性質。特別の利害関係の有無。事前準備の機会の重要性が高まる |
実務上の安全な運用
- 会社法上の明文がなくても、招集通知には目的事項を記載する運用を標準にする
- 取締役会規則で議題記載を義務づけている場合は、例外なくこれに従う
- 重要議案は、通知に記載したうえで、議案書・説明資料を事前に配付する
- 当日に議案を追加する場合は、全員が出席しているか、追加に異議がないかを確認し、その経過を議事録に残す
- 延期や資料追加の要求があった場合は、要求の内容と対応を議事録に記録する
招集手続の省略・決議の省略・報告の省略
会社法には、名称が似ていて内容が異なる三つの省略制度があります。混同すると、必要な同意が取れていないまま決議があったものとして扱う、という重大な誤りにつながります。
| 項目 | 招集手続の省略 | 取締役会決議の省略(みなし決議) | 取締役会への報告の省略 |
|---|---|---|---|
| 根拠 | 会社法第368条第2項 | 会社法第370条 | 会社法第372条 |
| 定款の定め | 不要 | 必要(定款に定めがなければ利用できない) | 不要 |
| 必要な同意等 | 取締役(監査役設置会社にあっては取締役及び監査役)の全員の同意 | 取締役の提案について、議決に加わることができる取締役全員の書面又は電磁的記録による同意の意思表示 | 取締役(監査役設置会社にあっては取締役及び監査役)の全員に対する通知 |
| 監査役の異議 | 監査役設置会社では監査役の同意も必要 | 監査役設置会社において監査役が異議を述べたときは、みなし決議は成立しない | 全員への通知が要件 |
| 効果 | 招集手続を経ずに会議を開催できる(会議は実際に開く) | 提案を可決する旨の決議があったものとみなされる(会議を開かない) | 当該事項を取締役会へ報告することを要しない |
| 残すべき記録 | 全員の同意が分かる記録、議事録 | 同意の書面又は電磁的記録、会社法施行規則第101条第4項第1号所定の事項を記載した議事録、十年間の備置き | 通知の記録、同規則第101条第4項第2号所定の事項を記載した議事録 |
| 使えない場面 | 同意が一人でも欠ける場合 | 定款の定めがない場合。議決に加わることができる取締役の同意が一人でも欠ける場合。監査役が異議を述べた場合 | 会社法第363条第2項による業務執行取締役の職務執行状況の報告(会社法第372条第2項) |
「全員が出席したから招集通知はいらない」「メールで全員が賛成したから決議は成立している」「持ち回りで押印をもらったから議事録を作れる」。これらはいずれも別の制度の話であり、そのままでは成り立ちません。特に決議の省略(みなし決議)は定款の定めが前提であり、定款に定めがない会社でメールの賛成を集めても、取締役会決議があったものとはみなされません。また、代表取締役及び選定業務執行取締役の三箇月に一回以上の職務執行状況報告は、報告の省略の対象外です。
なお、テレビ会議やWEB会議による出席については、会社法施行規則第101条第3項第1号が、議事録の記載事項として「その場所に存しない取締役等が出席した場合における当該出席の方法」を掲げており、その場所にいない取締役が出席する形態が想定されていることが分かります。実際の運用では、出席者が相互に十分な議論を行えるかどうか、接続記録をどう残すかを含めて、定款・取締役会規則との整合を確認する必要があります。
手続違反・決議欠缺がある場合の効力
「必要な取締役会決議がないのだから、決議も契約も当然に無効である」という説明は正確ではありません。次の層に分けて検討します。
層1 取締役会決議そのものの効力
取締役会の決議については、株主総会決議取消しの訴えのような、出訴期間の定めのある特別の訴訟制度は設けられていません。手続や内容に瑕疵があれば、決議は無効であり、必要に応じて決議無効確認の訴え等によってその効力が争われることになります。
一部の取締役に対する招集通知を欠いた場合について、最高裁昭和44年12月2日判決・民集23巻12号2396頁は、そのような招集手続に基づいて開かれた取締役会の決議は無効になると解すべきであるが、その取締役が出席してもなお決議の結果に影響がないと認めるべき特段の事情があるときは、瑕疵は決議の効力に影響がないものとして決議は有効になると解するのが相当である、としています。
この「特段の事情」を、単純な賛否の票数計算に置き換えることはできません。取締役会は審議と説得を通じて判断を形成する場ですから、その取締役が出席していれば議論の方向が変わり得たかどうかも含めた検討が必要になります。「一人欠けても多数決の結果は同じだから有効」と即断することは危険です。
層2 代表取締役がした対外的な個別取引の効力
最高裁昭和40年9月22日判決・民集19巻6号1656頁は、代表取締役が、取締役会の決議を経てすることを要する対外的な個々的取引行為を、その決議を経ないでした場合でも、その取引行為は内部的意思決定を欠くにとどまるから原則として有効であり、相手方がその決議を経ていないことを知り、又は知り得べかりしときに限って無効であるとしています。
つまり、会社の内部で決議を欠いていたことと、相手方との間で契約が無効になることとは、直ちには結びつきません。相手方の認識・調査状況が結論を左右します。
層3 誰が無効を主張できるか
最高裁平成21年4月17日判決・民集63巻4号535頁は、代表取締役が取締役会の決議を経ないでした重要な業務執行に該当する取引について、取締役会の決議を経ていないことを理由とする無効は、原則として会社のみが主張することができ、会社以外の者は、原則としてこれを主張することができないとしています。
取引の相手方が、自らに不都合になったときに「実は御社の取締役会決議がなかったはずだ」と主張して契約から離脱する、という筋道は原則として通りません。
層4 純粋に内規上の制限にとどまる場合
会社法上は取締役会決議が不要であり、社内の決裁規程・稟議規程に反しただけの場合は、代表取締役の代表権に加えた制限の問題として整理されます。この制限は善意の第三者に対抗することができません(会社法第349条第5項)。層2とは根拠条文も判断枠組みも異なりますので、混同しないでください。
層5 別の規律が働く場面
上記の枠組みは、代表取締役がした対外的な個々的取引行為について形成されたものです。次のような行為には、それぞれ別の規律や救済手段があり、無条件に流用することはできません。
- 利益相反取引・競業取引(会社法第356条、第365条。承認の欠缺の効果、責任の推定規定が別途問題になります)
- 代表取締役の選定・解職その他の組織法上の行為(対外取引の枠組みとは前提が異なります)
- 新株発行、組織再編、事業譲渡等(それぞれ固有の無効の訴えや差止請求の制度があります)
- 株主総会決議も必要とされる行為(取締役会決議の瑕疵と株主総会決議の瑕疵は別に検討します)
- 登記を伴う行為(登記の是正手続と、第三者との関係を別に検討します)
層6 事後の再決議・追認・登記是正
瑕疵が判明した後の対応として、適法な招集手続による再決議、事後の承認・追認、契約内容の修正、登記の是正等が検討対象になります。ただし、事後の決議によって当然に当初に遡って有効になる、という一般則はありません。行為の性質、第三者の利害、経過した期間、当事者の対応によって、採り得る手段と効果は変わります。
実際には開催していない取締役会の議事録を作成すること、日付を遡らせること、既存の議事録を書き換えることは、いずれも行ってはなりません。議事録に虚偽の記載をした場合には過料の対象となり得ますし(会社法第976条)、事案によってはより重い責任が問題になります。瑕疵が判明した場合は、まず原資料を現状のまま保全することが出発点です。
| 層 | 問題 | 主な根拠 |
|---|---|---|
| 層1 | 取締役会決議自体が有効か | 会社法第368条、第369条、最高裁昭和44年12月2日判決 |
| 層2 | 代表取締役がした対外的な個別取引が有効か | 最高裁昭和40年9月22日判決 |
| 層3 | 無効を主張できるのは誰か | 最高裁平成21年4月17日判決 |
| 層4 | 内規上の代表権制限にとどまる場合 | 会社法第349条第4項、第5項 |
| 層5 | 利益相反、新株発行、組織再編、事業譲渡、組織法上の行為 | 会社法の各個別規定 |
| 層6 | 再決議・追認・登記是正の可否と第三者への影響 | 行為の性質に応じて個別に検討 |
手続違反があった場合の取締役の責任
手続に違反があったからといって、関与した取締役が直ちに損害賠償責任を負うわけではありません。逆に、欠席や棄権をしたというだけで当然に責任を免れるわけでもありません。責任の有無は、立場と行為態様、そして各制度の要件に即して検討されます。
会社に対する責任
役員等は、その任務を怠ったときは、会社に対し、これによって生じた損害を賠償する責任を負います(会社法第423条第1項)。任務懈怠、損害、因果関係が必要です。利益相反取引によって会社に損害が生じたときは、取引をした取締役、取引をすることを決定した取締役、承認の決議に賛成した取締役について、任務を怠ったものと推定されます(同条第3項)。決議に賛成したこと自体が責任判断の対象になり得る点は、実務上重要です。
ここで前述の会社法第369条第5項が効いてきます。決議に参加した取締役で議事録に異議をとどめないものは、賛成したものと推定されるからです。
第三者に対する責任
役員等がその職務を行うについて悪意又は重大な過失があったときは、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負います(会社法第429条第1項)。会社に対する責任(任務懈怠)と第三者に対する責任(悪意又は重過失)は要件が異なりますので、混同しないでください。複数の役員等が責任を負う場合、これらの者は連帯債務者となります(会社法第430条)。
また、会社が責任追及の訴えを提起しない場合、一定の要件を満たす株主が、会社のために責任追及等の訴えを提起できる制度があります(会社法第847条)。公開会社でない株式会社では、六箇月の株式保有期間の要件は適用されません(同条第2項)。
反対する立場の取締役が採り得る行動
賛成できない議案がある場合、その場の空気に流されて沈黙することが最も危険です。適法で現実的な行動としては、次のようなものが考えられます。
- 議案書と説明資料の事前提供を求める
- 資料・検討時間の不足を理由に、審議の延期を求める
- 特別の利害関係を有する取締役の有無、定足数の充足を会議の場で確認するよう求める
- 会議において明確に異議を述べ、その理由を述べる
- 議事録に反対の事実と理由を記載するよう求める(会社法第369条第5項の賛成推定を避けるため)
- 議事録の内容が実際の審議と異なる場合、その旨を書面で会社に伝え、控えを保存する
- 招集通知、議案書、送受信記録、自らのメモ等の原資料を保存する
チェックリスト|決議前と瑕疵判明後
決議の前に確認する資料
- 登記事項証明書(取締役会設置会社か、役員構成、代表取締役、監査役の有無)
- 現行定款と変更履歴(決議要件の加重、通知期間の短縮、決議の省略の定め、監査役の権限の会計限定の定め)
- 取締役会規則、付議基準、職務権限規程、決裁規程、稟議規程
- 役員の就任・退任に関する資料(現に取締役である者の範囲の確定)
- 議案が会社法上の決議事項に当たるかの整理(重要な財産の処分、多額の借財等)
- 総資産、取引価額、借入額、従来の同種取引の取扱いを示す資料
- 特別の利害関係を有する取締役の有無を判断する資料
- 招集通知の案(宛先、発信日、会日、目的事項)と送付方法
- 議案書、説明資料、契約書案
- 招集手続の省略又は決議の省略を用いる場合の同意の取得方法と書式
瑕疵が判明した後に確認・保全する資料
- 実際に送付した招集通知と、その送信記録・配信エラー・受領記録
- 招集手続の省略に関する同意の記録
- 当日の出席状況、オンライン出席の接続記録
- 作成済みの議事録(署名・記名押印の状況を含む)
- 決議の省略を用いた場合の書面又は電磁的記録による同意
- 反対意見・延期要求の有無とその記録
- 対象となった契約書、決裁書、稟議書、発注書、支払記録
- 相手方との照会・回答(相手方が決議の有無をどう認識していたかに関わります)
- 既に実行された行為の範囲と進行状況
- 登記が完了している場合の登記関係書類
瑕疵が判明した後に、実際には開催していない取締役会の議事録を作成する、日付を遡らせる、既存の記録を修正するといった対応は行わないでください。原資料をそのまま保全したうえで、適法な再招集・再決議、追認、契約内容の修正、登記の是正等の可否を個別に検討することになります。
立場によって初動は変わります
| 立場 | まず行うこと |
|---|---|
| 決議前の会社 | 定款・規程と会社法上の決議事項該当性を照合し、招集通知・議案書・議事録の様式を整える |
| 瑕疵が判明した会社 | 原資料を保全し、実行済みの範囲を確定したうえで、再決議・追認・契約修正・登記是正の要否を検討する |
| 反対・欠席した取締役 | 招集通知の受領状況、議事録の記載内容を確認し、自らの意見と経緯を記録化する |
| 株主 | 議事録等の閲覧・謄写請求の可否を確認し(会社法第371条)、事実関係を特定する |
| 取引先・金融機関 | 契約締結時に何を確認したかを整理する。今後は、議事録の写しの受領等、内部承認の確認手順を定型化する |
弁護士に相談するタイミング
取締役会に関する問題は、実行前に確認できるかどうかで、採り得る選択肢の幅が大きく変わります。次の場面では、早い段階での確認が有効です。
- 招集通知を送る前 通知の相手方、期間、方法、目的事項の記載を、定款・取締役会規則と照らして確認できます。
- 重要な取引・契約を締結する前 会社法上の決議事項に当たるか、社内の付議基準との関係はどうかを整理できます。
- 決議や登記を実行する前 議事録の記載事項、必要な同意、登記に必要な添付書面を確認できます。
- 通知漏れや通知外議題が判明したとき どの層の問題なのかを切り分け、原資料の保全と対応方針を整理できます。
- 決議の有効性が争われたとき 求める救済の内容、主張できる立場、必要な立証と資料を検討できます。
- 差止めや仮処分等の緊急対応が必要なとき 時間的制約の中で、採り得る手続と準備すべき資料を整理できます。
相談の場では、定款、取締役会規則、招集通知、議案書、議事録、契約書等を確認したうえで、必要な手続、残すべき証拠、対応方針、法律上の見通しを整理します。結論は個別事情により異なりますので、資料を確認したうえでの判断が必要です。
よくある質問
「取締役決議」と「取締役会決議」は同じものですか。
同じではありません。「取締役決議」は会社法上の統一的な用語ではなく、取締役会設置会社の取締役会決議を指す場合と、取締役会非設置会社における取締役の過半数による決定(会社法第348条第2項)を指す場合があります。招集手続や議事録の規律が異なりますので、まず登記事項証明書と定款で機関設計を確認してください。
取締役会の招集通知は何日前までに送る必要がありますか。
原則として、取締役会の日の一週間前までに通知を発する必要があります(会社法第368条第1項)。ただし、この期間はこれを下回る期間を定款で定めることができ、実際に短縮している会社もあります。現行定款の確認が必要です。
招集通知はメールや口頭でも有効ですか。
会社法第368条第1項は通知の方法を書面に限定していません。もっとも、定款や取締役会規則が書面による通知を求めている場合はその定めに従う必要があります。メールを用いる場合は、宛先、送信日時、送信記録、配信エラーの有無、受領状況を保存しておくことが重要です。
招集通知に議題を書く必要はありますか。通知にない議題も決議できますか。
株主総会と異なり、取締役会の招集通知について目的事項の記載を一律に求める明文の規定は置かれていません。ただし、定款や取締役会規則が記載を義務づけている場合があり、議案の重要性、資料の有無、準備や反論の機会、全員出席と異議の有無、意図的な排除の有無等によって結論は変わります。重要議案については、通知に記載し、資料を事前配付する運用が安全です。
全員が同意すれば、招集通知や会議そのものを省略できますか。
制度が分かれます。招集手続の省略は、取締役(監査役設置会社にあっては取締役及び監査役)全員の同意があれば可能ですが、会議自体は開催します(会社法第368条第2項)。会議を開かずに決議があったものとみなす取扱い(決議の省略)は、定款にその定めがあることが前提であり、議決に加わることができる取締役全員の書面又は電磁的記録による同意が必要で、監査役設置会社では監査役が異議を述べたときは成立しません(会社法第370条)。
一部の取締役に招集通知をしなかった場合、決議は無効になりますか。
最高裁昭和44年12月2日判決は、招集手続に瑕疵がある場合の決議は無効になると解すべきであるが、その取締役が出席してもなお決議の結果に影響がないと認めるべき特段の事情があるときは、決議は有効になるとしています。特段の事情の有無は、単純な票数計算ではなく、審議への影響も含めて判断されますので、個別の検討が必要です。
必要な取締役会決議を欠いた契約は、当然に無効になりますか。
当然に無効になるわけではありません。最高裁昭和40年9月22日判決は、代表取締役が取締役会決議を経ずにした対外的な個々的取引行為は、内部的意思決定を欠くにとどまるから原則として有効であり、相手方が決議を経ていないことを知り、又は知り得べかりしときに限って無効であるとしています。さらに、最高裁平成21年4月17日判決は、この無効は原則として会社のみが主張できるとしています。新株発行や組織再編等には別の規律がありますので、行為の性質に応じた検討が必要です。
決議に反対する取締役は、何を記録・保存しておくべきですか。
会社法第369条第5項により、決議に参加した取締役で議事録に異議をとどめないものは賛成したものと推定されます。会議で明確に異議を述べ、その理由を議事録に記載するよう求めることが基本です。あわせて、招集通知、議案書、送受信記録、自らのメモ等を保存してください。
まとめ
- まず登記事項証明書と現行定款で、取締役会設置会社かどうか、監査役の権限に会計限定の定めがないかを確認します。
- 取締役会の決議事項は、会社法第362条第4項の列挙だけでは確定しません。個別規定、定款、取締役会規則、付議基準もあわせて確認します。
- 「重要な財産の処分」「多額の借財」に一律の金額基準はありません。価額、総資産に占める割合、保有目的、処分行為の態様、従来の取扱い等を総合的に考慮します。
- 招集通知は、原則として会日の一週間前までに、各取締役(監査役設置会社では各監査役にも)発します。定款で短縮できます。
- 取締役会の招集通知に目的事項の記載を一律に求める明文はありませんが、内規、議案の重要性、準備の機会等により結論は変わります。重要議案は記載と資料の事前配付が安全です。
- 招集手続の省略、決議の省略、報告の省略は別の制度です。特に決議の省略は定款の定めが前提です。
- 決議自体の効力、対外取引の効力、無効を主張できる者は、それぞれ別の問題として検討します。
- 手続違反があっても取締役の責任が自動的に成立するわけではありませんが、議事録に異議をとどめなければ賛成が推定されます。反対する場合は記録を残してください。
- 瑕疵が判明した場合は、原資料を保全することが出発点です。議事録の遡及作成や日付の遡及は行わないでください。
取締役会の招集や決議について確認したい点がある場合、定款、取締役会規則、招集通知、議案書、議事録、契約書等を確認したうえで、必要な手続、残すべき記録、対応方針と法律上の見通しを整理します。手続を実行する前でも、既に問題が生じた後でも、資料の確認から始められます。
執筆・監修
弁護士・公認会計士 藤井 貴之(兵庫県弁護士会所属)
神戸みらい法律会計事務所
参考資料
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する法的助言ではありません。具体的な結論は、機関設計、定款、社内規程、事実関係により異なります。記載内容は令和8年8月27日時点で確認した法令及び裁判例に基づいています。実際の判断にあたっては、資料を確認したうえで弁護士にご相談ください。

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