「経営判断が結果的にうまくいかなかったとき、取締役個人が会社に責任を負うのではないか」「株主との関係が悪化しており、いつ株主代表訴訟を起こされるか不安だ」——中小企業や同族会社、非上場会社の経営者・役員の方から、こうしたご相談をいただくことがあります。
取締役は、会社との関係で一定の義務を負い、これに違反して会社に損害が生じた場合には、会社に対して責任を問われることがあります。もっとも、経営判断が結果的に失敗しただけで直ちに責任が認められるわけではありません。重要なのは、平時から意思決定の過程を記録し、説明できる資料を整えておくことです。本コラムでは、会社側・取締役側の視点から、取締役の責任の枠組みと、株主代表訴訟リスクを下げるための備えを整理します。
取締役会議事録、契約書、会計資料などを確認したうえで、責任リスクと今後の対応方針を整理することができます。利益相反取引や重要な経営判断を控えている場合は、手続前にご相談ください。
Contents
結論|取締役の責任と株主代表訴訟への備えの全体像
はじめに要点を整理します。詳細は以下で順に説明します。
- 取締役は、会社との関係で善管注意義務・忠実義務を負います。
- 取締役が任務を怠り、会社に損害が生じ、因果関係や故意・過失などが認められる場合には、会社に対する損害賠償責任が問題になります。
- もっとも、経営判断が結果的に失敗しただけで、直ちに責任が認められるわけではありません。判断の前提となった事実認識や検討過程、判断内容の合理性が問われます。
- 株主代表訴訟を完全に防ぐ方法はありませんが、意思決定過程の合理性、利益相反の管理、議事録・稟議・会計資料の整備、内部統制、早めの相談により、紛争化リスクや説明が困難になるリスクを下げられる可能性があります。
- 結論は個別事情により異なります。定款、登記事項証明書、株主名簿、取締役会議事録、契約書、会計資料などを確認したうえで判断する必要があります。
本コラムは、執筆時点で確認できる会社法・民法等の条文と裁判例を前提とした一般的な説明です。法令・運用は改正される可能性があり、個別の事案への当てはめは資料の確認が必要です。なお、取締役の賠償責任の上限に関する会社法改正が検討されているとの報道もありますが、執筆時点では改正は成立しておらず、内容は確定していません。
取締役が会社に対して負う主な義務
善管注意義務と忠実義務
会社と取締役の関係は委任に関する規定に従うものとされ(会社法第三三〇条)、取締役は、善良な管理者の注意をもって職務を行う義務(善管注意義務。民法第六四四条)を負います。あわせて、法令・定款・株主総会の決議を遵守し、会社のため忠実に職務を行う義務(忠実義務。会社法第三五五条)を負います。
これらの義務に違反して任務を怠り(任務懈怠)、会社に損害が生じた場合、取締役は会社に対して損害を賠償する責任を負うことがあります(会社法第四二三条第一項)。実務上は、この任務懈怠責任が問題になる場面が多くみられます。
競業取引・利益相反取引の制限
取締役が、自己または第三者のために会社の事業の部類に属する取引(競業取引)を行う場合、また、自己または第三者のために会社と取引をする場合などの利益相反取引を行う場合には、その取引について重要な事実を開示し、承認を受ける必要があります(会社法第三五六条第一項)。取締役会を設置している会社では、取締役会の承認と、取引後の重要事実の報告が求められます(会社法第三六五条)。
承認手続や記録を欠いたまま利益相反取引・競業取引が行われると、後日その必要性・相当性を説明することが難しくなり、責任追及のリスクが高まり得ます。役員個人や親族会社、グループ会社との取引では、特に手続と記録が重要です。
法令・定款・株主総会決議を遵守する義務
取締役は、法令および定款、株主総会の決議を遵守して職務を行う義務を負います。後述する経営判断の原則は、あくまで「経営判断」に属する事項についての裁量を前提とするものであり、法令違反行為そのものには及びません。必要な株主総会決議や取締役会決議を欠く行為などは、経営判断の当否を論じるまでもなく責任が問題になり得ます。
会社財産の管理・監視義務・内部統制
取締役は、会社財産を適切に管理する責任を負うとともに、他の取締役や使用人の職務執行を監視する義務を負うと解されています。一定規模の会社では、業務の適正を確保するための体制(いわゆる内部統制システム)の構築・運用が問題になります。
「自分が直接関与していない」というだけでは、監視義務違反のリスクを免れられない場合があります。会社資金と個人資金の分別、稟議・決裁の運用、会計帳簿や証憑の保存など、組織として説明できる仕組みを整えておくことが重要です。
配当・資金移動に関する注意点
剰余金の配当などは、分配可能額の範囲内で行う必要があります(会社法第四六一条)。分配可能額を超える違法な配当が行われた場合、金銭等の交付を受けた株主のほか、業務執行者などが会社に対して支払義務を負うことがあります(会社法第四六二条)。
会社資金の社外流出をともなう判断(配当、役員貸付、多額の支出など)では、分配可能額や資金繰りの確認、手続の適正、記録化が特に重要になります。
取締役の責任が問われやすい典型場面
中小企業・同族会社で、取締役の責任や株主代表訴訟が問題になりやすい場面を整理します。いずれも「直ちに責任がある」という意味ではなく、説明できる資料・手続が整っていないとリスクが高まりやすい場面という趣旨です。
| 場面 | 問題になりやすい理由 | 整えておきたい資料・手続 |
|---|---|---|
| 役員個人・親族会社との取引 | 利益相反性があり、価格・必要性・相当性の説明が求められる | 承認手続、特別利害関係人の取扱い、議事録、価格根拠資料 |
| 役員貸付・仮払金・使途不明金 | 会社資金の私的流用が疑われやすく、回収可能性も問題になる | 貸付契約、返済計画、稟議、出金の使途を示す証憑 |
| 会社の事業と競合する取引 | 競業避止の観点から承認・報告が問題になる | 事前の承認、取引内容の開示、議事録 |
| 検討資料が乏しいM&A・投資・新規事業・重要契約 | 判断の前提や検討過程の合理性が問われやすい | 検討資料、代替案、リスク評価、専門家の意見、議事録 |
| 分配可能額を確認しない配当 | 違法配当として支払義務が問題になり得る | 分配可能額の計算、計算書類、決議手続の記録 |
| 会計処理・税務処理・資金繰り資料の不備 | 会社財産の管理や説明責任が問われやすい | 総勘定元帳、試算表、決算書、申告書、証憑 |
| 取締役会の未開催・議事録の不備 | 承認の有無や検討過程を後から立証しにくい | 開催手続、議事録、決議事項・報告事項の記録 |
| 株主との情報格差が大きい状態 | 不信感から閲覧請求・提訴請求に発展しやすい | 計算書類、議事録の整備、説明の記録 |
| 不祥事発覚後の調査・証拠保全・開示が不十分 | 対応の遅れ自体が新たな責任問題になり得る | 調査体制、証拠保全、関係者ヒアリング、情報管理 |
役員の使途不明金・私的流用については、役員の使途不明金・私的流用に関する解説を見ることもご参照ください。
利益相反取引、役員貸付、会社資金の支出、重要契約を控えている場合は、承認手続と記録化を事前に確認しておくことが重要です。資料を確認したうえで、整えておくべき手続と記録の範囲を一緒に検討できます。
経営判断の原則|「経営の失敗」と「法的責任」は同じではない
経営判断の原則とは
取締役の業務執行には、不確実な状況で迅速な決断が求められる場面や、一定のリスクを取るべき場面があります。結果が悪かったことだけを理由に責任を負わせると、経営が萎縮しかねません。そこで裁判実務では、いわゆる「経営判断の原則」と呼ばれる考え方が形成されてきました。
最高裁判所平成22年7月15日判決(アパマンショップ事件)は、事業再編計画の一環として行われた子会社株式の買取価格の決定について、「その決定の過程、内容に著しく不合理な点がない限り、取締役としての善管注意義務に違反するものではない」と判断したものとして知られています。すなわち、赤字になった、投資に失敗したというだけで責任が当然に認められるわけではなく、判断の前提となった事実の認識(情報収集・調査・分析)と、意思決定の過程・内容の合理性が問われると整理できます。
経営判断の原則が及ばない場面
もっとも、経営判断の原則は万能ではありません。次のような場合には、責任追及のリスクが高まり得ます。
- 判断の前提となる資料を十分に確認していなかった場合
- 利益相反の状況を放置したまま取引を行った場合
- 明らかに不合理な条件で取引した場合
- 必要な承認手続(取締役会決議・株主総会決議など)を経ていなかった場合
- そもそも法令・定款に違反する行為であった場合(この場合、経営判断の当否を論じるまでもありません)
裏を返せば、重要な意思決定について、判断材料・代替案・リスク・反対意見・専門家の意見を記録に残しておくことが、後日の説明可能性を高めることにつながります。
株主代表訴訟の基本的な仕組み(概要)
株主代表訴訟とはどのような制度か
株主代表訴訟は、株主が会社のために役員等の責任を追及する制度です(会社法第八四七条)。役員等の責任は本来は会社が追及するものですが、役員同士の関係などから会社が追及しないおそれがあるため、一定の要件のもとで株主が会社に代わって訴えを提起できるようにしたものです。
ここで重要なのは、株主代表訴訟は、株主個人が賠償金を受け取る制度ではないという点です。役員に対する賠償が認められても、賠償金が支払われる先は会社です。株主は、いわば会社のために責任追及を行う立場にあります。
提訴請求から株主による提訴までの大まかな流れ
株主は、原則としてまず会社に対し、役員等の責任を追及する訴えを提起するよう書面等で請求します(提訴請求)。会社が一定期間内に訴えを提起しない場合などに、株主自身が訴えを提起できる仕組みになっています。なお、公開会社・非公開会社の別、株式の保有期間、対象となる責任の範囲、多重代表訴訟(最終完全親会社等の株主による特定責任追及の訴え。会社法第八四七条の三)、旧株主による責任追及等の訴え(会社法第八四七条の二)など、要件は場面により異なります。
提訴請求の期間、不提訴理由の通知、管轄、裁判手数料、担保提供命令などの手続の詳細は別のコラムで解説しています。会社側として手続の全体像を確認したい場合は、株主代表訴訟の要件と流れを詳しく見るをご参照ください。
本コラムでは、これらの予防策は「訴訟そのものを封じるもの」ではなく、責任追及を受けた場合に会社・取締役が合理的に説明できる状態を整えるものとして位置づけています。
株主代表訴訟リスクを下げるための平時の備え
会社側・取締役側が平時から実践しやすい備えを、チェックリストとして整理します。すべてを一度に整える必要はありませんが、リスクの高い取引・判断から優先して整備することをおすすめします。
- 重要な意思決定では、判断材料・代替案・リスク・反対意見・専門家の意見を記録に残す。
- 取締役会・株主総会の開催手続と議事録を整える。
- 稟議規程、職務権限規程、関連当事者取引規程、経費精算規程、与信管理規程などを整備する。
- 利益相反取引・競業取引は、事前承認、特別利害関係人の取扱い、報告、議事録への記載を確認する。
- 役員個人・親族会社・グループ会社との取引条件は、価格・必要性・相当性を説明できる資料を残す。
- 会社資金と個人資金を明確に分ける。
- 会計帳簿、証憑、契約書、請求書、振込記録を保存する。
- 監査役、会計の専門家、顧問弁護士、税理士、公認会計士と早めに相談する。
- 不祥事の疑義が出た場合は、証拠保全、関係者ヒアリング、調査体制、情報管理の方針を早期に決める。
- 株主から説明要求を受けた場合は、感情的な対応や一方的な拒否ではなく、法的義務と任意対応を切り分ける。
- 役員等賠償責任保険(D&O保険)、補償契約、責任限定契約、責任の一部免除などは、会社法上の要件、定款、株主総会決議、利益相反性、事業報告の記載事項などを確認したうえで検討する。
補償契約(会社法第四三〇条の二)および役員等賠償責任保険契約(会社法第四三〇条の三)は、令和元年の会社法改正で新たに規定が設けられたものです。いずれも所定の決議や手続が必要であり、補償の範囲には限定があります。「保険や補償契約があれば責任追及を避けられる」というものではない点に注意が必要です。
株主から提訴請求を受けた場合の初動対応
提訴請求書が届いてから慌てないために、初動で確認・実施すべき事項を整理します。期限や手続は厳格に扱われるため、できるだけ早い段階で企業法務を取り扱う弁護士に相談することをおすすめします。
- 提訴請求書の到達日、宛先、請求内容、対象役員、請求原因、添付資料を確認する。
- 会社の機関設計(監査役の有無など)に応じて、誰が会社の対応主体になるかを確認する。
- 対象役員と会社側との利益相反に注意する。
- 証拠の廃棄・改ざんや、関係者への不適切な口裏合わせは絶対に行わない。これらは新たな責任問題を生じさせます。
- 調査体制を決め、議事録・契約書・会計資料・メールなどを適正に保全する。
- 提訴するか、不提訴とするか、裁判外の解決を検討するかを、法的・会計的に整理する。
- 不提訴とする場合の理由の通知が問題になることがあるため、会社法上の要件を確認する。
提訴請求への対応は、会社・取締役の正当な権利を守るための手続であり、隠ぺいや責任逃れのためのものではありません。事実関係を適切に整理し、法令に従って対応することが、結果的に会社と役員双方を守ることにつながります。
弁護士に相談する際に準備したい資料
ご相談の際に次の資料があると、責任リスクの検討や対応方針の整理がスムーズになります。すべてを揃えてからでなくても構いませんので、手元にあるものからご持参ください。
| 資料カテゴリ | 具体例 | 確認ポイント |
|---|---|---|
| 会社の基本情報 | 定款、登記事項証明書、株主名簿 | 機関設計、株式の保有状況、株式譲渡制限の有無 |
| 意思決定の記録 | 取締役会議事録、株主総会議事録、稟議書 | 承認手続の有無、検討過程の記録 |
| 取引関係資料 | 契約書、見積書、請求書、領収書、関連当事者との取引資料 | 価格・必要性・相当性を示す根拠 |
| 会計・税務資料 | 会計帳簿、総勘定元帳、試算表、決算書、税務申告書 | 会社財産の管理状況、資金の流れ |
| 資金の動きを示す資料 | 送金記録、通帳、ネットバンキング履歴 | 役員貸付・使途不明金の有無 |
| 社内ルール | 各種社内規程 | 承認・決裁・経費精算の運用 |
| 専門家とのやり取り | 監査役・税理士・公認会計士・顧問弁護士との記録 | これまでの助言・対応の経緯 |
| 株主からの書面 | 通知書、質問書、提訴請求書 | 到達日、請求内容、対象役員 |
| 責任に関する契約 | 役員等賠償責任保険の保険証券、補償契約・責任限定契約に関する資料 | 補償・付保の範囲、手続の履践 |
弁護士に相談するタイミング
次のような場面では、早めにご相談いただくことで、責任リスク・対応方針・今後整えるべき体制を検討できます。結果を保証するものではありませんが、資料を確認したうえで見通しを整理することが可能です。
- 株主から通知書や提訴請求が届いたとき
- 役員個人との取引、親族会社との取引を行う前
- 多額の投資・M&A・新規事業・重要契約を決める前
- 会社資金の流用や使途不明金が疑われるとき
- 取締役会議事録や承認手続に不安があるとき
- 株主から会計帳簿や議事録の開示を求められたとき
- 責任限定契約・補償契約・役員等賠償責任保険を整備したいとき
- 不祥事の調査、役員の責任追及、対外的な説明が必要になったとき
株主からの会計帳簿の開示請求については会計帳簿閲覧謄写請求の解説を見る、非上場・同族会社の少数株主との関係については非上場・同族会社の少数株主の権利を見るもあわせてご参照ください。
まとめ|取締役が整えておくべきこと
- 取締役の責任は、結果だけでなく、義務違反・損害・因果関係・故意過失・判断過程などをふまえて検討されます。
- 株主代表訴訟を完全に防ぐことはできませんが、平時から説明可能な意思決定プロセスと資料を整えておくことが重要です。
- 利益相反取引・競業取引・会社資金の支出・重要な経営判断では、手続と記録が特に重要になります。
- 株主から通知や提訴請求を受けた場合は、到達日と期限を確認し、証拠を適正に保全し、調査体制を早期に整える必要があります。
- 結論は個別事情により異なります。資料を確認したうえで判断する必要があり、不明な点は早めに専門家にご相談ください。
取締役の責任や株主代表訴訟への備えは、会社の状況や資料の整備状況によって対応が異なります。当事務所では、弁護士と公認会計士の視点から、議事録・契約書・会計資料などを確認したうえで、責任リスクと今後の対応方針を整理するお手伝いをしています。
株主から通知や提訴請求が届いた場合は、到達日・請求内容・関係資料を整理し、早めにご相談ください。
よくある質問
取締役は、経営判断に失敗しただけで損害賠償責任を負いますか。
結果が悪かったというだけで直ちに責任が認められるわけではありません。裁判実務では、判断の前提となった事実の認識や検討の過程、判断内容の合理性が問われると整理されています。ただし、必要な資料を確認していない、利益相反を放置していたなどの事情があると、責任が問われるリスクが高まり得ます。個別事情により結論は異なります。
善管注意義務違反とは何ですか。
取締役が、善良な管理者として通常期待される注意を払って職務を行う義務(善管注意義務)に違反することをいいます。この義務は会社法第三三〇条・民法第六四四条を根拠とし、忠実義務(会社法第三五五条)とあわせて取締役の基本的な義務とされています。違反により会社に損害が生じた場合、損害賠償責任が問題になることがあります。
株主代表訴訟を完全に防ぐ方法はありますか。
完全に防ぐ方法はありません。もっとも、意思決定の過程を記録し、利益相反を適切に管理し、議事録や会計資料を整えておくことで、責任追及を受けた場合に説明できる状態を準備し、紛争化のリスクを下げられる可能性はあります。
取締役会議事録には何を残すべきですか。
決議事項・報告事項のほか、重要な判断については、判断材料、代替案、想定されるリスク、反対意見、専門家の意見などを記録しておくことが望ましいと考えられます。何をどこまで記載すべきかは、案件の重要性や会社の体制により異なりますので、資料を確認したうえで検討する必要があります。
利益相反取引では何を確認すべきですか。
取引について重要な事実を開示したうえで、必要な承認(取締役会設置会社では取締役会の承認)を得ているか、特別利害関係人の取扱いが適切か、取引後の報告がされているか、議事録に記載されているかなどを確認します。あわせて、取引条件の必要性・相当性を説明できる資料を残しておくことが重要です。
株主から提訴請求が届いたら、まず何をすべきですか。
到達日、請求内容、対象役員、請求原因、添付資料を確認し、会社の対応主体を整理します。証拠の廃棄・改ざんや関係者への口裏合わせは行わず、関係資料を適正に保全してください。期限や手続が厳格に扱われるため、早めに企業法務を取り扱う弁護士に相談することをおすすめします。
役員等賠償責任保険に入れば責任追及を避けられますか。
保険は、責任追及そのものを避けるものではありません。役員等賠償責任保険(D&O保険。会社法第四三〇条の三)や補償契約(会社法第四三〇条の二)は、一定の費用や損失を塡補・補償する仕組みであり、対象範囲や手続には会社法上の制約があります。導入の際は、定款・決議・利益相反性・事業報告の記載などを確認したうえで検討する必要があります。
弁護士に相談するときは何を準備すべきですか。
定款、登記事項証明書、株主名簿、取締役会・株主総会の議事録、契約書、会計帳簿や決算書、送金記録、株主から届いた書面、保険証券などがあると、検討がスムーズになります。すべて揃っていなくても構いませんので、手元にある資料からご持参ください。
監修者
藤井 貴之(弁護士・公認会計士)
所属:兵庫県弁護士会/日本公認会計士協会兵庫会
弁護士法人ひょうご支所 神戸みらい法律会計事務所 代表弁護士
企業法務・会社をめぐる紛争などを取り扱っています。取締役の責任や株主との紛争に関するご相談では、弁護士と公認会計士の視点から、議事録・契約書・会計資料などを確認したうえで対応方針を整理します。
参考資料
- e-Gov法令検索「会社法」(https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086/)
- e-Gov法令検索「民法」(https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089/)
- e-Gov法令検索「会社法施行規則」(https://laws.e-gov.go.jp/law/418M60000010012/)
- 裁判所「裁判例検索」(https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/searchType1)
- 法務省「会社法の一部を改正する法律(令和元年改正)」関連資料(https://www.moj.go.jp/)
本コラムは一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法律判断を保証するものではありません。具体的な対応は、資料を確認のうえ個別にご相談ください。

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