長年連れ添った配偶者との離婚を考え始めたとき、多くの方が最初に悩むのは「本当に離婚できるのか」という点かもしれません。もっとも、50代・60代・70代の熟年離婚では、離婚そのものに加えて、これまで築いてきた財産、年金、退職金、住まい、そして離婚後の生活費を、同時に確認しておく必要があります。
淡路島(南あわじ市・洲本市・淡路市)にお住まいの場合、自宅や実家、農地、家業、親族との関係、島内に住み続けるか島外へ移るかといった事情も、離婚後の生活設計に大きく関わってきます。これらは、財産分与や生活費の見通しと切り離して考えることができません。
この記事では、熟年離婚を考え始めた方に向けて、財産分与、年金分割、退職金、住まい、進め方の全体像を、総論として整理します。個別の論点は、関連する記事や公的な確認先へご案内します。なお、実際にどのような結論になるかは、資料を確認したうえで、個別の事情に応じて変わります。まずは全体像と、次に確認すべきことを押さえていきましょう。
「まだ離婚を決めたわけではない」「何から手を付ければよいか分からない」という段階でも、確認しておくべきことを整理しておくと、その後の判断がしやすくなります。ご自身の状況を整理する前に、離婚・男女問題の取扱内容や相談の流れをご確認ください。
Contents
■ 熟年離婚でまず確認したい六つのこと
熟年離婚では、離婚の可否だけを考えるのではなく、次の六つを同時に確認していくことが出発点になります。結論を急ぐ前に、まずご自身の状況をこの枠組みで整理してみてください。
| 確認する項目 | まず確認したいこと | 主な資料・確認先 |
|---|---|---|
| 財産 | 預貯金、不動産、退職金、保険、株式、自動車、事業用資産、借入金など、夫婦の財産の全体像 | 預貯金通帳、登記事項証明書、保険証券、残高証明書 など |
| 年金 | 婚姻期間中の厚生年金の記録があるか(年金分割の対象になり得るか) | 年金分割のための情報通知書、年金事務所、ねんきん定期便 |
| 住まい | 自宅に住み続けるか、売却するか、住宅ローンや連帯保証がどうなっているか | 住宅ローン返済予定表、登記事項証明書 |
| 生活費 | 離婚後の収入、年金の見込み、生活費、健康保険、医療・介護の見通し | 源泉徴収票、確定申告書、年金の記録 など |
| 手続 | 協議・調停・裁判のどの段階か、相手から書面が届いていないか | 相手方から届いた書面、離婚協議書案 |
| 資料 | 上記の資料が手元にあるか、別居する前に確認できるか | ― |
これらは互いに関係し合っています。たとえば「島内の自宅に住み続けたい」という希望は、住宅ローンや不動産の評価、離婚後の生活費と一体で検討する必要があります。一つずつ切り離すのではなく、全体像として押さえることが大切です。
■ 熟年離婚は「お金」と「生活」を一体で考える
◆ 若い世代の離婚との違い
婚姻期間が長い熟年離婚では、夫婦が協力して築いた財産が積み重なっている一方で、離婚後に新たに収入を得ることが難しい場合もあります。そのため、財産分与や年金分割が、離婚後の生活を左右する度合いが大きくなりやすいという特徴があります。
◆ 退職金・年金・老後資金という視点
定年退職の前後という時期は、退職金や企業年金、公的年金の見込みが、生活設計に直結します。専業主婦・専業主夫として、あるいはパートや家業の手伝いとして家庭を支えてきた方にとっては、年金分割や財産分与が老後の重要な柱になり得ます。逆に言えば、これらを確認しないまま離婚の条件を決めてしまうと、後から見直すことが難しくなる場面もあります。
■ 財産分与の基本|何が分ける対象になるのか
◆ 名義ではなく「夫婦の協力で築いた財産」かどうか
財産分与とは、婚姻中に夫婦が協力して取得し、または維持した財産を、離婚の際または離婚後に分けることをいいます(民法第768条)。対象になり得るのは、預貯金、不動産、自動車、株式などの有価証券、退職金、保険などです。重要なのは、名義がどちらであるかだけで決まるわけではないという点です。一方の名義であっても、夫婦の協力によって築いた財産であれば、分与の対象として検討される可能性があります。
◆ 特有財産(分与の対象になりにくいもの)
他方で、次のような財産は「特有財産」として、原則として分与の対象にならないと考えられています。
- 婚姻前から各自が持っていた財産
- 婚姻中であっても、一方が相続や贈与によって取得した財産
- 社会通念上、一方の固有の財産とみられるもの
ただし、特有財産であっても、その維持や改良、ローンの返済、家業への貢献などに夫婦の協力があった場合には、個別の判断が必要になります。淡路島では、実家や農地、家業の財産など、取得の経緯が複雑な財産が関わることも少なくありません。名義、取得の時期、取得の原因、維持への貢献を、資料で確認していくことが出発点になります。より詳しくは、財産分与の対象や範囲について解説した記事もあわせてご確認ください。
◆ 分与の割合と基準時の考え方
分与の割合は、原則として2分の1を基本に考えられますが、事案により異なります。令和8年(2026年)4月からは、財産の取得・維持についての夫婦の寄与の程度は、その程度が異なることが明らかでないときは等しいものとする、という考え方が条文に明記されました(民法第768条第3項)。家事や育児による貢献も、寄与として考慮されます。また、分与の対象とする財産をいつの時点で確定するか(基準時)は、別居時とされることが多いものの、これも事案によって変わります。
◆ 財産分与を請求できる期間(令和八年四月の変更)
離婚後に家庭裁判所へ財産分与を求める場合には、期間の制限があります。この期間は、令和8年(2026年)4月1日から変更されました。
- 令和8年4月1日以後に離婚した場合:離婚した日の翌日から原則として5年以内
- 令和8年4月1日より前に離婚した場合:離婚した日の翌日から原則として2年以内
(民法第768条第2項ただし書、改正法の附則)。この期間は、話し合いをしている間も進んでいきます。すでに離婚された方や、別居が長くなっている方は、ご自身がどちらの期間にあたるかを早めに確認することをおすすめします。なお、離婚が成立する前であれば、この期間のカウントは始まりません。
◆ 相手に話す前に資料を確認しておく
離婚を切り出した後は、相手方の財産の状況を確認しにくくなる場合があります。手元にある通帳や保険証券、給与や退職金に関する書類などは、可能な範囲で早めに整理しておくと、その後の見通しが立てやすくなります。
財産分与や年金分割は、資料を確認しないと見通しを立てにくいことがあります。離婚協議書への署名前、別居前、調停の申立て前に、現在分かっている資料をもとに方針を整理しておくことをおすすめします。相談条件や費用については、費用ページをご確認のうえご検討ください。
■ 退職金・保険・住宅ローンの確認点
◆ 退職金
退職金は、財産分与で問題になりやすい財産の一つです。すでに支給された退職金と、これから支給される見込みの退職金とでは、検討の仕方が異なります。将来支給される退職金については、支給の可能性や時期などにより、扱いが変わり得ます。勤務先や退職の時期、退職金規程、支給の見込みと婚姻期間との関係などを、資料で確認することが重要です。具体的な金額や計算方法は事案により異なるため、資料を確認したうえで検討する必要があります。
◆ 生命保険・個人年金・積立型の保険
解約返戻金のある生命保険や個人年金、積立型の保険も、婚姻中に夫婦の協力で積み立てられたものであれば、財産分与の対象として検討される可能性があります。保険証券や解約返戻金額が分かる資料を確認しておきましょう。
◆ 住宅ローンと自宅不動産
自宅に住み続けるか、売却するか、どちらか一方が取得するかは、熟年離婚で大きな論点になります。検討にあたっては、住宅ローンの名義、担保の状況、連帯保証・連帯債務の有無、残っているローンの額、不動産の時価を確認する必要があります。
とくに注意が必要なのは、不動産の名義を変更しても、それだけで住宅ローンの債務者が当然に変わるわけではないという点です。誰が住み、誰がローンを負担し、名義や保証をどう整理するかは、金融機関との関係も含めて検討する必要があります。島内に住み続ける場合は、通院・仕事・親族の支援・交通などの生活設計と一体で考えることをおすすめします。
■ 年金分割の基本|「年金が半分になる」制度ではありません
◆ 年金分割とは何か
年金分割は、「相手の年金の半分が自動的にもらえる制度」ではありません。婚姻期間中の厚生年金の記録(標準報酬月額・標準賞与額)を、当事者の間で分ける制度です(日本年金機構)。分割の割合には上限があり、2分の1(50%)を超えることはありません。分割の対象になるのは、あくまで婚姻期間中の厚生年金の記録です。
◆ 合意分割と三号分割
年金分割には、大きく分けて二つの方法があります。
- 合意分割:当事者の合意、または裁判所の手続によって分割の割合を定める方法です。話し合いで割合が決まらない場合は、家庭裁判所に按分割合を定める手続を求めることができます。
- 3号分割:平成20年(2008年)4月1日以後に、いわゆる専業主婦・専業主夫(国民年金の第3号被保険者)であった期間について、その方からの請求により、相手の合意がなくても2分の1ずつ分割できる方法です。
熟年離婚では、婚姻期間が平成20年4月より前から続いていることが多く、その場合、平成20年4月より前の期間は合意分割、それ以後の第3号被保険者期間は3号分割、というように分けて考える必要があります。なお、ご夫婦のいずれかが自営業や農業などで、厚生年金ではなく国民年金のみに加入してきた場合は、その方については分割の対象となる厚生年金の記録がない、という考え方になります。ご自身と配偶者の年金の加入状況によって、年金分割で扱える範囲は変わります。
◆ 情報通知書を取り、年金事務所で確認する
年金分割を検討する際は、まず「年金分割のための情報通知書」を年金事務所で取得します。ただし、情報通知書を取得しただけでは、年金は分割されません。分割の割合を決めたうえで、年金事務所に「標準報酬改定請求書」を提出して、初めて記録が改定されます。実際にどの程度分割されるのか、分割後の年金額の見込みは、日本年金機構・年金事務所でご確認ください。
◆ 年金分割の請求期限(令和八年四月の変更)
年金分割の請求にも期限があり、財産分与と同じく、令和8年(2026年)4月1日から変更されました。
- 令和8年4月1日以後に離婚等をした場合:離婚等をした日の翌日から原則として5年以内
- 令和8年4月1日より前に離婚等をした場合:離婚等をした日の翌日から原則として2年以内
(厚生年金保険法第78条の2、改正法の附則)。離婚後に手続を進めようと考えている方は、この期限にご注意ください。
■ 淡路島で熟年離婚を考えるときの地域事情
◆ 島に住み続けるか、島外へ移るか
淡路島で熟年離婚を考えるときは、離婚後にどこで暮らすかが、財産分与や生活費の見通しと一体になります。南あわじ市・洲本市・淡路市のいずれかに住み続けるのか、それとも島外へ移るのかによって、住まい、通院、仕事、親族の支援、交通、生活費の見通しが変わってきます。住まいをどうするかは、感情面だけでなく、財産の分け方と生活設計の両面から検討することをおすすめします。
◆ 農地・家業・同族会社・親族名義の財産
淡路島では、農地、同族会社、個人事業、農業・漁業・観光・飲食・旅館などの家業に関わる財産があるご家庭も少なくありません。こうした財産は、会社の財産と個人の財産を分けて考える必要があり、評価や分け方が複雑になりやすい傾向があります。株式や事業用の資産、個人事業の財産、借入や保証の状況も確認が必要です。また、親族名義の不動産、家業の財産、これから相続する予定の財産については、名義、取得の時期、取得の原因、維持への貢献を資料で確認する必要があります。
これらは、税務・会計上の取扱いや、農地法・会社法上の確認が必要になる場合があります。税務上の取扱いは税理士等への確認が必要です。農地・自社株・事業用資産の分け方については、農地・自社株の財産分与について解説した記事で詳しく取り上げていますので、あわせてご確認ください。
■ 離婚の進め方|協議・調停・弁護士相談の順番
離婚の進め方には、大きく分けて、当事者どうしの話し合い(協議)、家庭裁判所での調停、そして裁判があります。まずは協議から始め、話し合いがまとまらない場合や話し合いができない場合に、調停へと進むのが一般的な流れです。
協議で条件がまとまった場合は、内容を離婚協議書にまとめておくことが大切です。財産分与や年金分割、慰謝料などの取り決めがある場合には、公正証書にしておくことも検討に値します。公正証書にすることの意味や手続については、事案に応じて確認することをおすすめします。
話し合いが難しい場合は、家庭裁判所の夫婦関係調整調停(離婚)を利用することができます。この調停では、離婚そのものだけでなく、財産分与、年金分割の割合、慰謝料といった財産に関する問題も、一緒に話し合うことができます(裁判所)。相手が財産を開示しない場合や、財産の全体像が分からない場合には、調停や弁護士への相談を早めに検討するとよいでしょう。とくに、離婚協議書に署名する前、別居する前、調停を申し立てる前、財産の開示を受ける前の段階での相談は、判断材料を整理するうえで役立ちます。
■ 離婚を切り出す前の資料チェックリスト
相談や手続に向けて、次のような資料を確認しておくと、見通しを立てやすくなります。すべてが揃っていなくても構いません。分かる範囲で整理しておき、足りない部分は相談の中で確認していくことができます。
| 分類 | 資料の例 |
|---|---|
| 身分関係 | 戸籍関係の資料、本人確認資料 |
| 預貯金・証券 | 預貯金通帳・取引履歴、証券口座の資料 |
| 保険 | 生命保険・個人年金・積立型保険の証券 |
| 不動産 | 不動産登記事項証明書、固定資産税の課税明細書 |
| 住宅ローン | 住宅ローンの返済予定表 |
| 退職金 | 退職金規程、退職金見込額が分かる資料 |
| 年金 | 年金分割のための情報通知書、年金の記録 |
| 収入・事業 | 源泉徴収票、確定申告書、会社・個人事業の決算書・申告書 |
| 相手方関係 | 離婚協議書案、相手方から届いた書面 |
| その他 | 別居の時期や家計の負担についてのメモ |
■ 弁護士に相談するタイミング
弁護士への相談は、次のような場面で、方針や判断材料を整理するのに役立ちます。相談は、結果を保証するものではありませんが、資料を確認したうえで見通しを検討し、次の一手を整理する場としてご活用いただけます。
- 離婚を切り出す前、別居する前
- 財産の資料を集める前後
- 相手から離婚協議書案を示されたとき
- 退職金、年金、住宅、事業に関わる財産があるとき
- 相手が財産を開示してくれないとき
- 調停を申し立てる前
- 年金分割の手続を進める前
- 離婚協議書に署名・押印する前
相談にかかる費用や相談の条件については、費用ページであらかじめご確認いただけます。
■ まとめ|急いで結論を出す前に
- 熟年離婚では、離婚の可否だけでなく、財産・年金・住まい・生活費・手続・資料を一体で確認する
- 財産分与は名義だけで決まらず、特有財産かどうかや貢献の程度で個別に判断される
- 財産分与・年金分割の請求期間は、令和8年4月1日から原則2年から5年に伸長された(施行日前の離婚は原則2年)
- 年金分割は「年金の半分がもらえる制度」ではなく、厚生年金の記録を分ける制度で、合意分割と3号分割がある
- 退職金・住宅ローン・農地・家業がある場合は、評価や手続が複雑になりやすく、資料の確認が重要になる
- 離婚を急ぐ前に、財産、年金、住まい、資料、期限を確認し、必要に応じて署名前・別居前・調停前に相談する
熟年離婚では、財産分与、年金分割、住まい、退職金、生活費を一体として確認する必要があります。弁護士法人兵庫 あわじみらい法律会計事務所では、淡路島(南あわじ市・洲本市・淡路市)で離婚・男女問題に関するご相談をお受けしています。相談の条件や費用をご確認のうえ、相談予約をご検討ください。
■ よくあるご質問(FAQ)
熟年離婚では、財産は必ず半分になりますか。
割合は原則として2分の1を基本に考えられますが、事案により異なります。特有財産にあたるかどうかや、財産の取得・維持への貢献の程度によって、結論は変わります。資料を確認したうえで検討する必要があります。
専業主婦(主夫)でも財産分与を受けられますか。
家事や育児などの貢献も寄与として考慮されるため、専業主婦・専業主夫であっても財産分与を請求できる可能性があります。実際の割合や金額は、個別の事情により異なります。
退職金は財産分与の対象になりますか。
対象となる可能性があります。すでに支給された退職金と、将来支給される見込みの退職金とで検討が異なり、支給の可能性や時期、婚姻期間との関係などによって扱いが変わります。資料を確認して判断する必要があります。
年金分割をすれば、年金は半分もらえますか。
年金分割は「年金の半分がもらえる制度」ではなく、婚姻期間中の厚生年金の記録を分ける制度です。分割の割合は2分の1が上限です。実際にどの程度分割されるか、分割後の年金額の見込みは、年金事務所での確認が必要です。
離婚した後でも、財産分与や年金分割は請求できますか。
離婚後でも、期間内であれば請求できる可能性があります。財産分与・年金分割ともに、令和8年4月1日以後に離婚した場合は原則として離婚等の日の翌日から5年以内、それより前に離婚した場合は原則として2年以内が期限です。早めの確認をおすすめします。
相手が通帳や財産を見せてくれない場合はどうすればよいですか。
財産の全体像が分からない場合でも、分かる範囲の資料をもとに相談することができます。調停の手続の中で、財産に関する資料の提出や説明を求めていく方法もあります。まずは現状を整理することから始めるとよいでしょう。
淡路島の外へ引っ越す予定でも相談できますか。
島外への転居を検討している場合でも、ご相談いただけます。転居先での住まいや生活費の見通しは、財産分与や年金分割と一体で考えることが大切です。転居の前に、確認しておきたい点を整理しておくと安心です。
離婚協議書に署名する前に相談したほうがよいですか。
署名する前の相談をおすすめします。いったん署名すると、後から内容を見直すことが難しくなる場合があります。財産分与・年金分割・住まいなどの条件が、ご自身の状況に照らして無理のないものか、署名前に確認しておくとよいでしょう。
監修者・執筆者情報
弁護士法人ひょうご あわじみらい法律会計事務所
代表弁護士・公認会計士 藤井 貴之
所属:兵庫県弁護士会、日本公認会計士協会兵庫会
取扱分野:離婚・男女問題、企業法務、M&A、事業承継、法律顧問、債権回収、労働法務 ほか
監査法人・コンサルティング会社における財務諸表監査やM&Aにおける財務DDの経験を踏まえ、法務と財務の両面から検討できる場合があります。

24時間365日受付