交通事故で腕や脚を骨折し、治療がひととおり終わったころに、医師から「骨が少し曲がってくっついている」「ねじれが残っている」「偽関節になっている」などと説明され、これは後遺障害になるのだろうか、と不安を感じていませんか。骨の変形は、程度や部位、あわせて残る痛みや動かしにくさによっては、後遺障害として評価される場合があります。もっとも、レントゲン画像だけで結論が決まるわけではなく、画像・診断書・治療経過・症状固定の時期などを総合して検討することになります。
この記事では、上肢・下肢の骨折で残る「変形障害」の基本的な考え方、上肢と下肢で異なる確認ポイント、レントゲンなど画像資料の役割、プレート固定など手術との関係、そして示談や後遺障害申請の前に確認しておきたい点を、交通事故を取り扱う弁護士の視点で整理します。等級認定を保証するものではなく、資料を確認したうえで見通しを検討するための情報として、ご活用ください。
この記事で分かること
- 骨折後の骨の変形が、どのような後遺障害の類型と関係し得るか
- 上肢と下肢で確認されるポイントの違い
- レントゲンなど画像資料の役割と、後遺障害申請のおおまかな流れ
- 示談・申請の前に準備・確認しておきたい資料
骨の変形を指摘され、後遺障害申請や示談の進め方に迷っている方は、画像資料や後遺障害診断書をもとに、後遺障害申請の要否や見通しを整理することができます。交通事故は初回相談無料の対象で、無料電話相談もご利用いただけます。
Contents
骨折後に「骨が変形している」と言われたら|まず確認したいこと
骨折した骨が、完全に元どおりの形に戻らずに癒合(骨がくっつくこと)することは、めずらしくありません。変形の程度や部位、あわせて残る症状によっては、後遺障害として評価される場合がありますが、まずは次の点を落ち着いて確認することが出発点になります。
| 確認したいこと | ポイント |
|---|---|
| 画像資料がそろっているか | 事故直後・手術前後・骨癒合後・症状固定時のX線やCT、画像CD、読影レポートを保存できているか。 |
| 診断書・後遺障害診断書 | 変形の内容や残っている症状が、診断書・後遺障害診断書に記載されているか。作成はこれからか。 |
| 症状固定の時期 | 医師から症状固定(これ以上の改善が見込みにくい状態)と判断されているか、まだ治療中か。 |
| あわせて残る症状 | 痛み・しびれ・動かしにくさ(可動域制限)・脚の長さの左右差なども残っていないか。 |
| 示談の段階かどうか | 保険会社から示談案が出ているか。後遺障害申請の要否を確認する前に示談しようとしていないか。 |
骨の変形は、それだけを見て等級が決まるものではなく、画像・診断内容・症状経過・事故態様などによって結論が変わります。個別事情により結論は異なりますので、まずは手元の資料を整理することをおすすめします。
変形障害とは|長管骨の変形と後遺障害の基礎知識
変形障害・長管骨・骨癒合・偽関節・症状固定とは
ここでは、後遺障害を考えるうえで前提となる用語を、簡単に整理します。
- 変形障害:骨折した骨が変形した状態で癒合するなどして、骨の形に変化が残るものをいいます。
- 長管骨(ちょうかんこつ):腕や脚にある長い骨のことです。上腕骨、前腕の橈骨・尺骨、太ももの大腿骨、すねの脛骨・腓骨などが代表例です。
- 骨癒合:折れた骨がくっつくことをいいます。曲がった状態や、ねじれた状態でくっつくこともあります。
- 偽関節(ぎかんせつ):骨折した部分がうまくくっつかず、本来は動かないはずの場所が関節のように異常に動いてしまう状態です。硬性補装具(患部を固定する装具)が常に必要かどうかなどで、評価が分かれることがあります。
- 症状固定:治療を続けても、これ以上の改善が見込みにくいと医師が判断した状態です。後遺障害の申請は、原則としてこの段階以降に検討します。
- 後遺障害診断書:症状固定の時点で残っている症状を医師がまとめる書類で、後遺障害等級の審査で重要な資料になります。
後遺障害等級は、自動車損害賠償保障法施行令の別表に定められた等級表に基づいて審査されます。骨の障害には、「変形」のほかに「偽関節」「機能障害(動かしにくさ)」「短縮(脚の長さの差)」など複数の視点があり、どれに当たり得るかは資料を確認したうえで判断する必要があります。
上肢と下肢では確認するポイントが異なります
同じ「骨折後の変形」でも、腕(上肢)と脚(下肢)では、あわせて確認される点が異なります。
- 上肢(肩から手まで):肩・肘・手首の動き、腕の軸(まっすぐさ)、手のひらを上下に返す動き(回内・回外)、力の入り方、しびれなどの神経症状が問題になり得ます。
- 下肢(脚の付け根から足まで):股関節・膝・足首の動き、歩行や体重をかけたときの状態(荷重)、脚の長さの左右差(脚長差)、しびれなどの神経症状が問題になり得ます。
変形そのものに加えて、日常生活や仕事にどのような支障が出ているかも、あわせて確認されることがあります。
変形障害・機能障害・短縮障害・神経症状は別の視点で評価されます
「骨が曲がった」という一つの事実から、複数の後遺障害の視点が問題になることがあります。主な類型と、確認できた範囲の等級・条文の対応関係を整理すると、次のとおりです。具体的な号数・認定基準・角度・測定方法・金額は、資料により判断が分かれるため、画像と診断書を確認したうえで慎重に検討します。
| 障害の種類 | 関係し得る等級(号)※条文は自賠法施行令別表第二 | 状態のイメージ |
|---|---|---|
| 長管骨の変形 | 12級8号「長管骨に変形を残すもの」 | 上腕骨・橈骨・尺骨・大腿骨・脛骨・腓骨などが変形して癒合したもの。 |
| 上肢の偽関節 | 8級8号「一上肢に偽関節を残すもの」/著しい運動障害を残す場合は7級9号 | 上腕骨や前腕骨がくっつかず異常に動く状態。硬性補装具の要否などで区別。 |
| 下肢の偽関節 | 8級9号「一下肢に偽関節を残すもの」/著しい運動障害を残す場合は7級10号 | 大腿骨や脛骨などがくっつかず異常に動く状態。 |
| 下肢の短縮 | 13級8号「一下肢を一センチメートル以上短縮したもの」ほか(程度で区分) | 骨折の影響で脚の長さに左右差が生じたもの。 |
| 関節の機能障害 | 可動域制限の程度により別途評価 | 肩・肘・手首・股関節・膝・足首などが動かしにくくなった状態。 |
| 神経症状 | 痛み・しびれの立証状況により別途評価 | 骨折部やその周辺に痛み・しびれが残った状態。 |
骨盤骨などの「著しい変形」は別の考え方です
鎖骨・胸骨・肋骨・肩甲骨・骨盤骨の変形は、長管骨の変形とは別の類型で、12級5号「鎖骨、胸骨、ろく骨、けんこう骨又は骨盤骨に著しい変形を残すもの」として、裸体になったときに目で見て分かる程度の変形が求められると整理されています。腕や脚の長管骨の変形(12級8号)とは、対象となる骨も考え方も異なります。骨盤骨の変形については、別のコラムであらためて解説します。
レントゲンなど画像資料の役割と、後遺障害申請の流れ
レントゲンだけで結論が決まるとは限りません
骨の変形を確認するうえで、レントゲン(X線)画像は重要な資料です。もっとも、変形の程度や部位、そして痛み・しびれ・可動域制限などの症状を評価するには、X線だけでなく、CT画像、読影レポート、診療録(カルテ)、後遺障害診断書、医師の所見などをあわせて確認する必要があることが少なくありません。「レントゲンに写っているかどうか」だけでなく、「その変形や症状が、日常生活や仕事にどのような影響を及ぼしているか」も、あわせて確認されることがあります。
事故直後・手術前後・骨癒合後・症状固定時の画像比較
変形が事故によるものであることや、その経過を示すうえでは、時期の異なる画像を比較できることが役立ちます。事故直後の画像、手術前後の画像、骨癒合後の画像、症状固定時の画像がそろっていると、経過を確認しやすくなります。画像CDや読影レポートは、後日の確認のためにも保存しておくことをおすすめします。手術を受けた場合は、手術記録も重要な経過資料になります。
後遺障害等級認定申請のおおまかな流れ(事前認定と被害者請求)
後遺障害等級の申請は、一般に次のような流れで進みます。数字や期間は事案や資料の状況により異なりますので、目安としてご覧ください。
- 医師から症状固定の診断を受ける
- 医師に後遺障害診断書を作成してもらう
- 画像資料などをそろえて申請する(加害者側の任意保険会社を通じて行う「事前認定」と、被害者側で行う「被害者請求」があります)
- 審査の結果に応じて、必要があれば異議申立てを検討する
認定されるかどうか、どの等級に当たり得るかは、資料・画像・診断内容・症状経過・事故態様によって結論が変わります。申請前に、どの資料が必要か、どの点を医師に確認しておくべきかを整理しておくと、対応の見通しを立てやすくなります。
「事前認定と被害者請求のどちらがよいか」「今ある画像や診断書で足りるか」など、進め方に迷う場面は少なくありません。交通事故を取り扱う弁護士に相談することで、必要資料の整理や申請方針の検討がしやすくなります。
よく問題になるケース
実際のご相談では、次のような場面で判断に迷われることが多くあります。いずれも、個別事情により結論は異なりますので、資料を確認したうえで検討することが重要です。
- プレート固定や髄内釘・ボルトで固定した:手術歴は重要な経過資料になりますが、手術をしたこと自体で直ちに変形障害が認められるわけではありません。変形の程度や症状の状況を、あわせて確認します。
- 抜釘(金属の抜去)の前後で迷っている:抜釘の要否や時期は医師の判断事項です。抜釘の前後で症状や画像所見が変わることもあるため、症状固定の時期とあわせて確認が必要です。
- 骨が曲がって、またはねじれて癒合した:変形の程度や部位、あわせて残る痛み・可動域制限などを、画像と診断書で確認して検討します。
- 痛みやしびれが残っている:変形障害とは別に、神経症状として評価される可能性があります。症状の一貫性や画像所見などが確認されます。
- 動かしにくさ(可動域制限)がある:関節の機能障害として、別途、可動域の測定結果などをもとに評価される可能性があります。
- 脚の長さが違う気がする(下肢短縮の疑い):脚長差は、正確な計測と診断書への記載が重要になります。左右差の程度によって評価が分かれます。
- 示談案が出た後で変形を指摘された:示談が成立した後は、原則として追加請求が難しくなります。示談の前に、後遺障害申請の要否を確認しておくことが重要です。
示談・後遺障害申請の前に確認したいチェックリスト
示談前・後遺障害申請前・症状固定前・保険会社への回答前には、次の資料や事項を確認しておくと、対応の見通しを立てやすくなります。
- 診断書・後遺障害診断書(作成済みか、これからか)
- レントゲン(X線)画像・CT画像・画像CD・読影レポート
- 手術記録・診療録(カルテ)・診療報酬明細
- 症状固定の時期と、現在残っている症状(痛み・しびれ・可動域制限・脚長差など)
- 交通事故証明書など、事故の状況が分かる資料
- 保険会社から示談案が出ている場合は、その提示内容の書面
- ご自身やご家族の保険に、弁護士費用特約が付いていないか
保険会社から示談案が出ている場合でも、画像資料や後遺障害診断書を確認してから判断する必要があります。示談の前に、後遺障害申請の要否を確認することが重要です。
弁護士に相談するタイミングと、相談でできること
弁護士に相談すると聞くと、依頼を前提とした大がかりな話に感じられるかもしれません。もっとも、実際には、次のような段階で早めに相談することで、判断材料を整理しやすくなります。
- 骨の変形や偽関節を指摘され、後遺障害になるのか見通しを知りたいとき
- 症状固定や後遺障害診断書の作成について、どのタイミングで何を確認すべきか整理したいとき
- 事前認定と被害者請求のどちらで進めるか迷っているとき
- 保険会社から示談案が出ており、そのまま応じてよいか確認したいとき
弁護士への相談は、等級認定を保証するものではありません。画像資料や診断書をもとに、必要資料の整理、申請方針の検討、保険会社への対応、示談前の確認事項の整理などを一緒に進めるためのものです。裁判実務上参照される基準を前提に、見通しを検討することができます。
よくある質問(FAQ)
Q.骨折後に骨が曲がってくっついた場合、後遺障害になりますか。
変形の程度や部位、あわせて残る症状によっては、後遺障害として評価される可能性があります。ただし、骨の変形だけで結論が決まるわけではなく、画像・診断書・症状経過などを確認したうえで判断する必要があります。個別事情により結論は異なります。
Q.レントゲンで変形が分かれば、等級は認定されますか。
レントゲンは重要な資料ですが、それだけで認定されるとは限りません。変形の程度や、痛み・可動域制限などの症状、CTや診療録などをあわせて確認します。認定の可否は資料確認が必要です。
Q.プレート固定をしていると変形障害になりますか。
手術歴は重要な経過資料になりますが、手術をしたこと自体で直ちに後遺障害が認定されるわけではありません。変形の程度や残っている症状を、あわせて確認して検討します。
Q.上肢と下肢では、後遺障害の見方が違いますか。
あわせて確認されるポイントが異なります。上肢では肩・肘・手首の動きや腕の軸などが、下肢では股関節・膝・足首の動きや歩行、脚の長さの左右差などが問題になり得ます。
Q.痛みやしびれも、一緒に後遺障害として見てもらえますか。
変形障害とは別に、神経症状として評価される可能性があります。症状の一貫性や画像所見などが確認されます。複数の症状が残っている場合は、それぞれの視点から検討されることがあります。
Q.示談後に変形が分かった場合、追加請求できますか。
示談が成立した後は、原則として追加請求が難しくなります。だからこそ、示談の前に後遺障害申請の要否を確認しておくことが重要です。すでに示談案が出ている場合は、応じる前に一度確認することをおすすめします。
Q.後遺障害申請の前に、何を準備すればよいですか。
後遺障害診断書、X線・CTなどの画像資料や画像CD、読影レポート、手術記録、診療録などがあると、検討がしやすくなります。症状固定の時期や、現在残っている症状を整理しておくことも役立ちます。
Q.弁護士に相談するときは、何を持参すればよいですか。
診断書・後遺障害診断書、画像資料(画像CD)、事故の状況が分かる資料、保険会社からの提示書面、弁護士費用特約の有無が分かる資料などがあると、具体的な検討がしやすくなります。そろっていないものがあっても、まずは現状をお知らせいただければ整理を進められます。
まとめ
- 骨折後に骨の変形を指摘されたら、まず画像資料・診断書・治療経過・症状固定の時期を確認しましょう。
- レントゲンは重要ですが、それだけで結論が決まるとは限りません。CTや診療録、後遺障害診断書などとあわせて確認します。
- 変形障害のほかに、偽関節・機能障害・短縮障害・神経症状など、別の視点で評価される可能性があります。
- プレート固定などの手術歴は重要な資料ですが、手術をしたこと自体で認定されるわけではありません。
- 示談の前に、後遺障害申請の要否を確認することが重要です。示談後は追加請求が難しくなります。
- 弁護士への相談は、等級認定の保証ではなく、必要資料の整理・申請方針・示談前の確認事項を整理するためのものです。個別事情により結論は異なります。
骨の変形や偽関節を指摘され、後遺障害申請や示談の進め方に迷っている方は、画像資料や後遺障害診断書をもとに、後遺障害申請の要否や見通しを整理することができます。交通事故は初回相談無料の対象で、無料電話相談もご利用いただけます(事前のご予約により、時間外・土日祝のご相談にも可能な範囲で対応しています)。
お電話:078―797―5227(受付9:00〜20:00/時間外・土日祝は予約制)
監修
弁護士法人ひょうご支所 神戸みらい法律会計事務所
代表弁護士 藤井 貴之(兵庫県弁護士会所属)/公認会計士・通知税理士
取扱分野:交通事故をはじめとする一般民事・家事ほか
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案の結論をお約束するものではありません。実際の見通しは、医療記録や画像資料などを確認したうえで判断する必要があります。
参考資料
- e-Gov法令検索「自動車損害賠償保障法施行令」(別表第二 後遺障害等級表)
- 国土交通省「自賠責保険・共済ポータルサイト」(後遺障害等級表・補償内容)
- 損害保険料率算出機構(自賠責保険関連資料)
- 自賠責保険・共済紛争処理機構
- 公益財団法人日弁連交通事故相談センター

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