熟年離婚で配偶者の隠し財産を疑うとき|資料集めと情報開示命令 |神戸市(須磨・垂水・西神・北神)の弁護士|初回相談無料|弁護士法人ひょうご支所神戸みらい法律会計事務所

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熟年離婚で配偶者の隠し財産を疑うとき|資料集めと情報開示命令

「離婚の話し合いを進めているのに、配偶者が預貯金や保険、退職金の話をはぐらかす」「通帳を見せてもらえず、財産分与で損をするのではないか不安だ」——長年連れ添った相手ほど、家計や事業のお金を一方が管理してきたご家庭は少なくありません。神戸市須磨区・垂水区・西区・北区や名谷周辺、阪神間でも、熟年離婚や別居の前後で、こうした財産分与のお悩みが寄せられます。

本記事では、令和6年の民法等改正で新しく設けられた「情報開示命令」を中心に、配偶者に隠し財産が疑われる場合、財産分与の資料をどう整えていくかを整理します。あわせて、この制度でどこまで確認できるのか、協議・調停・審判・離婚訴訟のどの段階で使えるのか、相談前に準備しておきたい資料、避けるべき証拠の集め方まで確認します。結論の方向性としては、情報開示命令は財産状況を把握するための有力な手段になり得る一方で、万能の財産探索制度ではなく、まずは手元資料の整理と手続の選択が重要になる、という点をおさえていただければと思います。

なお、財産分与の結論は、財産の名義・原資・取得時期・特有財産性などの個別事情により変わります。一般的な整理としてお読みいただき、具体的な見通しは資料を確認したうえで判断する必要があります。

配偶者の財産が分からず、財産分与でどう進めればよいか迷っている段階でも、資料を整理することで方針を検討しやすくなります。

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結論と全体像——情報開示命令は「有力な手段」だが万能ではない

配偶者が財産を開示しないとき、感情的に問い詰めるだけでは、かえって話し合いがこじれてしまうことがあります。まずは手元にある資料を整理し、どの財産の存在を示す手がかりがあるかを把握することが出発点になります。そのうえで、家庭裁判所の手続に進む場合には、改正で新設された情報開示命令が、財産状況を把握するための手段のひとつとして検討できます。

この記事のポイント

  • 情報開示命令は、家庭裁判所や裁判所の手続の中で、当事者に「財産の状況に関する情報」の開示を命じる制度です(人事訴訟法第34条の3、家事事件手続法第152条の2)。
  • 裁判外の協議だけの段階で、相手に直接命じられる制度ではありません。調停・審判・離婚訴訟が前提になります。
  • 申し立てれば必ず認められるわけではなく、裁判所が「必要があると認めるとき」に判断します。開示を求める必要性を、具体的な資料で示すことが重要です。
  • 相手方本人に開示を命じる制度であり、銀行や証券会社などの第三者に直接照会する制度ではありません。
  • 違法な方法での証拠収集は、証拠として使えないだけでなく、かえって不利益になる可能性があります。

離婚に伴う財産の問題は、話し合いの段階(協議)から、家庭裁判所の調停・審判、離婚訴訟まで、進み方によって使える手段が変わります。全体像を整理すると次のとおりです。

段階 主な内容 情報開示命令との関係
協議(裁判外の話し合い) 当事者どうしで財産分与を話し合い、任意の資料開示を求める 裁判所の手続ではないため、情報開示命令は使えない
離婚調停・財産分与請求調停 家庭裁判所で調停委員を交えて話し合う 準用により、調停でも問題になり得る(家事事件手続法第258条第3項)
審判 調停が成立しない場合などに、裁判官が判断する 財産の分与に関する処分の審判事件で対象になり得る(第152条の2第2項)
離婚訴訟(財産分与の附帯処分) 離婚訴訟の中で財産分与もあわせて判断する 附帯処分の申立てがある場合に対象になり得る(人事訴訟法第34条の3第2項)

いずれの段階でも、財産分与の対象や金額は、婚姻中に夫婦が協力して形成した財産か、名義・原資・取得時期はどうか、といった事情を資料で確認しながら検討します。個別事情により結論は変わります。

情報開示命令とは——財産分与のために新設された制度

制度の概要(何を、誰に命じるのか)

情報開示命令とは、財産分与に関する処分の申立てがされている場合に、裁判所が必要があると認めるとき、申立てにより又は職権で、当事者に対して「財産の状況に関する情報」を開示するよう命じることができる制度です(人事訴訟法第34条の3第2項、家事事件手続法第152条の2第2項)。婚姻費用や養育費、扶養に関する手続では「収入及び資産の状況に関する情報」が対象になりますが、財産分与では「財産の状況に関する情報」が対象になります。

改正で何が変わったか

令和6年の民法等改正(令和6年法律第33号、令和8年4月1日施行)では、財産分与に関して、請求できる期間が離婚の時から2年から5年に伸長され(民法第768条第2項)、考慮要素が明確化されました。あわせて、婚姻中に取得・維持した財産への寄与の程度は、その程度が異なることが明らかでないときは相等しいものとする、といういわゆる2分の1の考え方が条文に明記されました(民法第768条第3項)。情報開示命令は、こうした財産分与の審理を進めやすくするために新設された手続です。

どの手続で使えるか

情報開示命令は、財産分与に関する処分の審判事件のほか、家事調停への準用により、財産分与請求調停や離婚調停の中でも問題になり得ます(家事事件手続法第258条第3項)。また、離婚訴訟の中で財産分与の附帯処分が申し立てられている場合にも対象になり得ます(人事訴訟法第34条の3第2項)。一方で、裁判所の手続を経ない当事者だけの協議の段階では、この制度を使うことはできません。

制度の限界——ここを誤解しないことが大切です

情報開示命令は財産状況を把握するための有力な手段になり得ますが、次の点に注意が必要です。第一に、あくまで係属中の裁判手続の中で使う制度で、協議段階で相手に直接命じることはできません。第二に、相手方本人に開示を命じる制度であり、銀行・証券会社・保険会社などの第三者から直接情報を取り寄せる制度ではありません。第三に、申し立てれば必ず認められるものではなく、開示を求める必要性を具体的な資料で基礎づけることが重要です。

過料について:情報開示を命じられた当事者が、正当な理由なく開示せず、又は虚偽の情報を開示したときは、裁判所は10万円以下の過料に処することができます(人事訴訟法第34条の3第3項、家事事件手続法第152条の2第3項)。もっとも、過料の定めがあるからといって、当然に隠し財産が見つかる、当然に分与額が増える、当然に相手が不利になる、というものではありません。裁判所の評価や他の証拠関係に影響し得る、という位置づけで捉えることが適切です。

「情報開示命令を使えばどこまで分かるのか」は、財産の種類や資料の有無によって見通しが変わります。資料を確認したうえで、どの手続でどこまで求められそうかを検討できます。

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隠し財産が疑われる典型的な場面

ご相談の中で、財産隠しが問題になりやすいのは次のような場面です。いずれも「疑い」の段階であり、実際に分与対象になるかどうかは資料を確認したうえでの判断になります。

  • 預貯金の全体像を見せず、一部の口座しか開示しない
  • 事業用の口座と家計の口座が混在し、資金の流れが分かりにくい
  • 退職金や企業年金、生命保険の有無・内容を説明しない
  • 不動産や株式、投資信託、暗号資産などの有無がはっきりしない
  • 配偶者や親族の名義、あるいは法人の名義に財産を移した可能性がある

長年、家計や事業資金の管理を一方が担ってきたご家庭では、他方が財産の全体像を把握できていないことが珍しくありません。まずは「何が、どこに、どの程度ありそうか」を、手元資料から整理していくことが重要です。

情報開示命令を検討する前に整理しておきたい資料

資料と「何の手がかりになるか」

ご自身の手元にある資料や、正当に入手できる資料を整理すると、財産の存在を示す手がかりが見えてきます。代表的なものを整理します。

資料の例 手がかりになりやすい財産
通帳・取引明細 預貯金の残高、入出金の流れ、他口座や証券・保険への送金
固定資産税の納税通知書、不動産登記事項証明書 不動産の所在・持分・担保の有無
保険証券、保険会社からの通知 生命保険・年金保険の有無、解約返戻金の可能性
源泉徴収票、給与明細 収入水準、退職金や企業年金の手がかり
確定申告書の控え、決算書 自営業・会社の収支、事業用資産、役員報酬・貸付金
退職金規程、就業規則 退職金の算定方法や見込額
年金分割のための情報通知書 年金分割の按分割合の検討材料
住宅ローン資料、クレジットカード明細 負債の状況、大きな支出の把握

これらは、財産分与調停や審判で財産の存在を主張する際の基礎資料にもなります。どの資料が、どの財産のどのような手がかりになるかを整理しておくと、必要性の説明がしやすくなります。

違法・不適切な証拠収集への注意

やってはいけない証拠の集め方:相手のスマートフォン・パソコン・ネットバンキング・証券口座・会計ソフト・クラウド・メールに無断でログインすること、パスワードを推測して閲覧すること、無断でデータを抜き取ること、過度な監視をすること、無断の録音・録画を濫用することは避けてください。こうした方法で得た資料は、証拠として使えないおそれがあるだけでなく、別の法的責任やトラブルにつながり、かえって不利益になる可能性があります。

また、配偶者からの暴力(DV)やモラルハラスメント、住所を知られたくない事情がある場合には、資料集めよりもまず安全の確保を優先してください。

手続の流れ——協議から調停・審判・離婚訴訟まで

財産分与を求める手続は、次のような流れで進むことが一般的です。どの段階から進めるべきかは、離婚が成立しているか、相手が資料を出すか、といった事情によって変わります。

  1. 手元資料を整理し、任意の開示を求める(協議)
  2. 話し合いがまとまらない場合、離婚前であれば夫婦関係調整(離婚)の調停、離婚後であれば財産分与請求調停を家庭裁判所に申し立てる
  3. 調停の中で、必要に応じて情報開示命令のほか、調査嘱託・文書送付嘱託・弁護士会照会などの資料収集手段を検討する
  4. 調停が成立しない場合は審判へ移行し、裁判官が資料をもとに判断する。離婚自体を争う場合は離婚訴訟の中で財産分与を求める
  5. 開示された内容をふまえ、財産目録を整理し、分与の内容を検討する

財産分与の審判では、家庭裁判所が職権で事実の調査を行うことを前提としつつ(家事事件手続法第56条)、当事者が資料を提出し、財産の存在や分与対象性を主張していくことが重要になります。情報開示命令は、こうした資料収集手段のひとつという位置づけです。申立先は、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所、または当事者が合意で定めた家庭裁判所となります。お住まいの地域や相手方の住所地によって申立先が異なることがあるため、事前の確認が必要です。

自営業・親族会社・名義分散があるときの注意点

神戸市内や阪神間では、自営業、士業や医療関係、小規模な会社、親族が関わる会社、店舗経営、賃貸不動産などで、事業用資産と家計が混在しているご家庭も多くみられます。こうした場合、次の点に注意が必要です。

  • 会社の財産と個人の財産は法律上別のものです。法人名義の財産が、当然に財産分与の対象になるわけではありません。
  • 非上場株式の評価、役員報酬、役員貸付金・借入金、退職金、生命保険の解約返戻金、賃貸不動産などは、資料を確認したうえで慎重に検討する必要があります。
  • 配偶者や親族の名義に資金が移っている場合でも、名義だけで分与対象性は決まりません。原資、取得時期、実質的な管理・支配、婚姻中の協力、特有財産かどうかといった事情を、資料で確認することが重要です。

財産の有無や分与対象性の整理には専門的な検討を要することが多く、個別事情により結論は変わります。事業や不動産、退職金、保険が絡む場合は、早めに資料を整理しておくことをおすすめします。

弁護士に相談するタイミング

次のような場面では、方針を整理するために早めに相談しておくと、その後の手続を進めやすくなります。

  • 相手が財産資料を出さず、話し合いが進まないとき
  • 別居の前後で、どの資料をどう保全すべきか迷っているとき
  • 離婚協議書や調停条項に署名する前に、財産の範囲を確認したいとき
  • 相手が示した財産目録に不自然な点があるとき
  • 自営業・会社・不動産・退職金・保険が絡み、財産の評価が難しいとき

弁護士への相談では、結果を保証するものではありませんが、手元資料を整理し、どの手続でどこまで開示を求められそうか、法律上の見通しを検討することができます。

手続前チェックリスト

  • 相談前に集める資料:通帳・取引明細、固定資産税の納税通知書、登記事項証明書、保険証券、源泉徴収票、確定申告書の控え、決算書、給与明細、退職金規程、年金分割のための情報通知書など
  • 相手方に確認したい事項:把握できていない口座・不動産・保険・株式・退職金・事業用資産の有無
  • してはいけない証拠収集:無断ログイン、パスワードの突破、無断でのデータ取得、過度な監視、無断録音・録画の濫用
  • 調停・審判・訴訟の前に確認すること:財産の範囲、分与対象性、開示を求める必要性を示す資料
  • 離婚後に請求する場合:申立ての期間に注意すること(離婚の時期によって期間が異なります)

署名や合意の前に一度資料を整理しておくと、財産分与・調停・審判・離婚訴訟のどの段階で何をすべきかを確認しやすくなります。違法な証拠収集を避けながら、必要な資料の整え方を検討できます。

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よくある質問

情報開示命令とは何ですか。

財産分与に関する処分の申立てがある場合に、裁判所が必要があると認めるとき、当事者に「財産の状況に関する情報」の開示を命じることができる制度です(人事訴訟法第34条の3、家事事件手続法第152条の2)。改正で新設されました。

協議離婚の話し合いの段階でも使えますか。

裁判所の手続を経ない当事者だけの協議では使えません。財産分与請求調停や離婚調停、審判、離婚訴訟など、家庭裁判所や裁判所の手続の中で問題になる制度です。

相手が通帳を出さない場合はどうすればよいですか。

まずは手元の資料を整理し、任意の開示を求めます。話し合いで解決しない場合は、家庭裁判所の手続の中で、情報開示命令のほか、調査嘱託や弁護士会照会などの資料収集手段を検討します。どの手段が適切かは個別事情により変わります。

自営業や会社名義の財産も財産分与の対象になりますか。

会社の財産と個人の財産は別のものであり、法人名義の財産が当然に対象になるわけではありません。株式、役員貸付金、事業用資産などは、名義・原資・実質的な支配などを資料で確認したうえで判断します。

親族名義に移された財産はどう扱われますか。

名義が配偶者以外であっても、名義だけで分与対象性は決まりません。原資、取得時期、実質的な管理・支配、特有財産かどうかなどを個別に確認する必要があります。

相手が開示命令に従わない場合はどうなりますか。

正当な理由なく開示せず、又は虚偽の情報を開示したときは、裁判所は10万円以下の過料に処することができます。もっとも、それによって当然に隠し財産が見つかる、当然に分与額が増えるというものではなく、裁判所の評価や他の証拠関係に影響し得る位置づけです。

違法な証拠収集にならないためには何に注意すべきですか。

相手の端末やアカウントへの無断ログイン、パスワードの突破、無断でのデータ取得、過度な監視、無断録音・録画の濫用は避けてください。こうした方法で得た資料は使えないおそれがあり、かえって不利益になる可能性があります。

弁護士に相談するときは何を準備すればよいですか。

通帳や取引明細、納税通知書、登記事項証明書、保険証券、源泉徴収票、確定申告書の控え、決算書、退職金規程、年金分割のための情報通知書など、手元にある資料をお持ちください。整理したうえで、方針や見通しを検討しやすくなります。

まとめ——次の一歩

  • 配偶者が財産を開示しないときも、まずは感情的に責めるより、手元資料の整理から始めることが重要です。
  • 情報開示命令は、財産状況を把握するための有力な手段になり得ますが、協議段階では使えず、第三者に直接届く制度でもありません。
  • 申し立てれば必ず認められるわけではなく、開示を求める必要性を具体的な資料で基礎づけることが大切です。
  • 自営・会社・親族名義・不動産・退職金・保険が絡む熟年離婚では、名義だけでなく、原資・取得時期・実質的支配・特有財産性などの確認が必要です。
  • 離婚協議書・財産分与案・調停条項に署名する前に、資料を整理して方針を確認しておくと安心です。

監修者・執筆者について

本コラムは、神戸みらい法律会計事務所の弁護士が監修しています。担当弁護士の経歴・資格・所属弁護士会・取扱分野については、弁護士紹介ページをご覧ください。

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