西神・名谷・鈴蘭台といった神戸のニュータウンには、若い頃にマイホームを構え、そのまま数十年にわたって暮らしてこられたご夫婦が数多くいらっしゃいます。お子さまが独立し、定年を迎える前後になって離婚を考え始めたとき、多くの方が最初に立ち止まるのが「長年住んできた自宅(築年数の古い戸建て)を、いくらと考え、どう分ければよいのか」という問題です。
自宅は、熟年世代にとって最も大きな財産になりやすい一方で、住宅ローンの残り、名義、売るか住み続けるか、代償金をどう用意するかなど、考えるべきことが幾重にも重なります。この記事では、神戸市須磨区・西区・北区周辺で熟年離婚と自宅の財産分与を考える方に向けて、築古戸建ての評価の考え方と分け方の選択肢、相談前に整理しておきたい資料を、可能性ベースで整理します。
結論から申し上げると、まず取り組むべきは、自宅の名義・住宅ローンの残高・固定資産税評価額・売却の査定・取得の経緯・婚姻期間中の負担状況を資料で確認することです。これらが整理できて初めて、売却・居住継続・代償金・共有継続といった選択肢を具体的に比較できるようになります。
自宅の分け方に迷ったら、まずは手元の資料を整理することから始めると、話が前に進みやすくなります。資料を確認したうえで、財産分与の選択肢や今後の進め方を整理できます。
Contents
まず整理すべきこと——築古戸建ての財産分与の全体像
築古戸建てを財産分与でどう扱うかを考えるとき、論点は大きく次の順序で整理できます。いきなり「いくらで分けるか」を決めようとするより、順を追って確認していくほうが、後戻りの少ない結論にたどり着きやすくなります。
築古戸建ての財産分与で整理する主な項目
- その自宅が財産分与の対象になるか(婚姻中に取得・維持した財産か、特有財産の要素はないか)
- 評価額をどう考えるか(どの資料を、どの時点で参照するか)
- 住宅ローンを差し引いた実質的な価値はどれくらいか
- 誰が住むのか、あるいは売るのか
- 一方が取得する場合、代償金をどのように用意し、支払うのか
これらは互いに関係し合っています。たとえば「住み続けたい」と思っても、代償金の資金やローンの名義変更の見通しが立たなければ実現は難しく、逆に「売りたい」と思っても、時期や売却先、引っ越し先の確保が問題になります。まずは全体像を押さえたうえで、一つずつ資料で裏づけていくことが重要です。
財産分与の基礎知識
財産分与とは
財産分与とは、離婚に伴い、夫婦が婚姻中に協力して築いた財産を、離婚の際または離婚後に分け合う制度です(民法768条)。どちらの名義になっているかにかかわらず、婚姻中に夫婦の協力によって取得・維持された財産であれば、対象になり得ます。
財産分与の請求は、原則として離婚のときから5年以内に家庭裁判所へ求めることができます(改正後の民法768条2項ただし書)。ただし、令和8年(2026年)4月1日より前に離婚した場合は、経過措置により従前どおり2年以内とされています(民法附則)。ご自身の離婚の時期によって期間が異なる点に注意が必要です。
夫婦共有財産と特有財産の違い
財産分与の対象になるのは、原則として婚姻中に夫婦の協力で築いた「共有財産」です。これに対し、結婚前から一方が所有していた財産や、婚姻中であっても相続・贈与などで一方が個人的に得た財産は「特有財産」として、原則対象外と整理されます。
もっとも、実際には共有財産と特有財産が入り混じっていることが多く、たとえば親からの援助で購入した自宅や、相続した土地に夫婦で建物を建てたケースなどは、どこまでが特有財産かをめぐって評価が分かれます。こうした場合は、援助や相続の金額・時期・経緯を示す資料を確認したうえで判断する必要があります。
自宅・住宅ローン・退職金・年金分割などの位置づけ
熟年離婚では、自宅(不動産)のほかに、住宅ローン、預貯金、保険、退職金、年金分割など、複数の要素が同時に問題になります。財産分与では、プラスの財産だけでなく住宅ローンなどのマイナスも踏まえて全体を整理するのが基本です。
なお、年金分割についても、離婚のときから原則5年以内(令和8年4月1日より前に離婚した場合は2年以内)に手続を行う必要があります。退職金や年金分割は、それ自体が独立した大きな論点ですので、本記事では自宅(築古戸建て)の評価と分け方を中心に整理し、これらは必要な範囲で触れるにとどめます。
熟年離婚で築古戸建てが問題になりやすい理由
婚姻期間が長い熟年離婚では、預貯金よりも自宅の占める割合が大きくなりやすく、自宅の評価と分け方が話し合いの中心になりがちです。加えて、築年数が古い戸建ては、建物の価値をどう考えるか、土地の評価をどう見るか、そもそも売れるのかといった論点が重なり、評価が一つに定まりにくいという特徴があります。
「築古だから価値がない」と決めつけるのは適切ではありません。建物の評価が低くても、土地の価値や立地、これまでのリフォーム履歴、管理状態、売却の可能性によって、全体の評価は大きく変わり得ます。
築古戸建ての評価方法
目的の異なる評価資料を比較する
不動産の「評価額」には、いくつもの種類があります。いずれも作られた目的が異なるため、どれか一つがそのまま財産分与の分与額として確定するわけではありません。まずは、それぞれが何のための資料なのかを押さえることが重要です。
| 評価資料 | 主な目的・所管 | 財産分与での位置づけ |
|---|---|---|
| 固定資産税評価額 | 市町村(神戸市)が固定資産税などの算定のために評価。原則3年ごとに評価替え | 制度上の評価額であり、実際の売却可能額や分与の合意額と一致するとは限らない。参考資料の一つ |
| 相続税路線価 | 国税庁が相続税・贈与税の算定基礎として設定(毎年1月1日時点) | 土地評価の目安として参照されることがあるが、これも売却額とは異なる |
| 地価公示・都道府県地価調査 | 国土交通省・都道府県が標準地・基準地の価格を公表(公示は1月1日、地価調査は7月1日時点) | 一般の土地取引の指標。周辺相場の把握に役立つ |
| 取引価格情報・成約価格情報 | 国土交通省「不動産情報ライブラリ」で公開される実際の取引・成約価格 | 近隣の実際の取引水準を知る手がかり |
| 不動産会社の査定価格 | 売却を前提に不動産会社が算定する見込額 | 実際に売る場合の目安。会社や前提により差が出るため、複数社の比較が有用 |
| 不動産鑑定評価 | 不動産鑑定士が不動産鑑定評価基準に基づいて評価 | 当事者間で評価が大きく対立する場合などに用いられることがある |
固定資産税評価額や相続税路線価は、あくまで税制上の評価であり、そのまま「売れる金額」や「分けるべき金額」になるわけではありません。財産分与の協議では、複数の資料を突き合わせて検討することが一般的です。
建物の価値が低いときの考え方
築年数が古い戸建てでは、建物部分の評価が小さくなることがあります。しかし、その場合でも土地の評価は残りますし、立地や交通の便、売却の可能性によって全体の価値は変わります。建物と土地を分けて考えたうえで、土地の相場や近隣の取引事例、査定を踏まえて総合的に検討することが重要です。
評価の「時点」について
財産分与では、いつの時点の評価を基準にするかが問題になることがあります。別居時か離婚時かなど、事案によって考え方が分かれ得るため、一律に断定はできません。評価資料をどの時点のもので揃えるかを含め、資料を確認したうえで判断する必要があります。
築古戸建ての主な分け方
自宅の分け方には、いくつかの選択肢があります。どれが適しているかは、評価資料・ローン・生活設計・支払能力によって変わり、一概には言えません。それぞれの概要と注意点、必要になりやすい資料を整理します。
| 方法 | 概要 | 主な注意点 | 主に必要となる資料 |
|---|---|---|---|
| 売却して代金を分ける | 自宅を売り、諸費用やローンを清算した残りを分ける | 売却の時期・価格、譲渡に伴う税金、引っ越し先の確保。ローンが残る場合は完済と抵当権抹消の段取り | 査定書、登記事項証明書、ローン残高証明書、売買契約書 |
| 一方が住み続け、他方へ代償金を支払う | 自宅を取得する側が、相手の持分に相当する額を金銭で支払う | 代償金の資金をどう用意するか、評価額の合意。ローンが残る場合の名義・返済の見通し | 査定書、評価資料、ローン残高証明書、資金計画の資料 |
| 共有のまま継続する | 離婚後も夫婦で共有名義を維持する | 将来の売却・相続・固定資産税・修繕費の負担でトラブルが残りやすい。期限・費用分担・売却条件を取り決めておく必要 | 登記事項証明書、共有に関する合意書 |
| 住宅ローンの借換え・名義変更を検討する | 住み続ける側の単独名義・単独債務へ切り替える | 金融機関の承諾が必要で、当事者の合意だけでは当然にはできない。審査や収入の要件 | ローン契約書、返済予定表、残高証明書、収入資料 |
| 離婚後もしばらく居住を続ける合意をする | すぐには売らず、一定期間の居住を認める合意をする | 使用の条件・期間・費用負担・最終的な処分方法を明確にしておく | 合意書、返済予定表、費用負担の資料 |
共有をそのまま続ける方法は、当面の合意はしやすい一方で、将来の売却・相続・費用負担をめぐって問題が残りやすい選択肢です。共有を選ぶ場合でも、いつ・どのような条件で処分するか、費用を誰がどう負担するかを、あらかじめ明確にしておくことが重要です。
西神・名谷・鈴蘭台など神戸のニュータウンで問題になりやすい点
神戸市によれば、須磨ニュータウン(名谷を含む地区)は昭和30年代以降に開発が進み、昭和40〜50年代にかけて入居が本格化した大規模なニュータウンです。西神中央や鈴蘭台を含め、これらの街に若い頃から住み続けてきた世代が、いま熟年期を迎えています。神戸市も「リノベーション・神戸」や「名谷活性化プラン」として、これらのエリアの活性化に取り組んでいます。
こうした地域の戸建てでは、財産分与を考えるうえで、次のような点が一般的な傾向として問題になりやすいといえます。
- 坂道や駅からの距離、バス便の状況によって、売却のしやすさや相場が変わりやすい
- 買い物や通院の利便性が、住み続けるか売るかの判断に影響する
- これまでのリフォーム履歴や建物の管理状態が、評価や売却可能性に関わる
- お子さまが同居しない場合、将来の管理や処分をどうするかを早めに考える必要がある
ただし、地価や空き家の状況などは地域や時期によって異なります。個別の相場や見通しは、国土交通省の資料や不動産会社の査定などで、その物件について確認することが重要です。
住宅ローンが残っている場合の注意点
自宅に住宅ローンが残っている場合は、分け方を考える前に、次の点を資料で確認する必要があります。ローンの状況によって、取り得る選択肢が変わってくるためです。
- ローンの残高はいくらか(残高証明書・返済予定表で確認)
- 名義は誰か、連帯債務・連帯保証になっていないか
- どの金融機関の、どのような担保が設定されているか
- 借換えや名義変更が可能かどうか
ローンの名義変更や連帯保証からの外れ方は、金融機関の承諾が必要になることが多く、当事者どうしの合意だけで当然に処理できるわけではありません。また、ローン残高が自宅の評価額を上回る、いわゆるオーバーローンの場合の考え方は事案によって異なり、一律に断定はできません。まずは残高と評価を突き合わせ、実質的な価値を確認することが出発点になります。
自宅に住み続けたい場合の注意点
「住み慣れた自宅に住み続けたい」という希望は自然なものですが、実現できるかどうかは、法的な整理だけでなく、生活設計と支払計画にかかっています。次の点を現実的に検討しておくことが重要です。
- 相手方へ代償金を支払う場合、その資金を用意できるか
- 固定資産税、修繕費、火災保険など、維持にかかる費用を継続的に負担できるか
- 高齢期の生活動線、通院や介護の見通し
- 将来、その自宅をどう処分するか、相続の際にどうなるか
住み続けること自体は選択肢の一つですが、代償金や維持費の負担、将来の処分まで見据えて、無理のない計画を立てられるかどうかを確認したうえで判断する必要があります。
よく問題になるケースの整理
実際のご相談では、次のような場面で判断が分かれやすくなります。いずれも結論は個別事情によって変わるため、ここでは論点の整理としてご紹介します。
- 名義は夫単独だが、婚姻後に購入し、夫婦でローンを返済してきたケース
- 親からの援助を受けて購入したケース
- 相続した土地に、夫婦で建物を建てたケース
- 退職金でローンを完済したケース
- リフォーム費用を、どちらか一方が負担したケース
- お子さまが独立し、一方だけが住み続けたいケース
- 不動産会社の査定額に、夫婦の間で差があるケース
- 住宅ローンがまだ残っているケース
いずれのケースでも、名義や取得の経緯、負担の状況を示す資料を確認したうえで判断する必要があります。名義が一方だけであっても、婚姻中に夫婦の協力で取得・維持した財産であれば、他方が財産分与を求められる可能性があります。
手続の前に確認したい資料——チェックリスト
離婚協議書への署名前、調停の申立て前、不動産の売却前、名義変更前、住宅ローンの借換え前、代償金の支払合意前など、後戻りしにくい場面の手前で、次の資料を整理しておくと検討がスムーズです。
- 登記事項証明書(自宅の名義・担保の状況を確認)
- 固定資産税納税通知書・固定資産評価証明書
- 不動産会社の査定書(できれば複数社)
- 住宅ローンの残高証明書・返済予定表・ローン契約書
- 購入時の売買契約書・重要事項説明書
- リフォームの契約書・領収書
- 預貯金通帳など、家計の負担が分かる資料
- 親族からの援助や相続に関する資料
- 退職金の見込額、保険証券、年金分割に関する資料
- 夫婦間のやり取り(合意メモ、メール、メッセージ等)
すべてを一度に揃える必要はありません。まずは登記事項証明書・固定資産税の通知書・ローンの残高が分かる資料から確認すると、全体像がつかみやすくなります。
弁護士に相談するタイミング
次のような場面では、判断材料を整理し、進め方を検討するために、早めに相談しておくと安心です。相談は結果を保証するものではありませんが、資料の整理や分与案の比較、交渉・調停の方針を検討するうえで役立ちます。
- 離婚協議書に署名する前
- 相手から「自宅を売りたい」あるいは「住み続けたい」と言われたとき
- 不動産会社の査定額に差があるとき
- 住宅ローンや連帯保証が残っているとき
- 調停を申し立てる前、または申し立てられたとき
- 不動産のほかに退職金・年金分割・相続財産が絡むとき
離婚に伴う財産分与は、家庭裁判所の夫婦関係調整調停(離婚)の中で話し合うことができ、離婚後に協議が調わない場合は財産分与請求調停を申し立てることもできます。相手が財産の内容を明らかにしない場合には、家庭裁判所の手続の中で、財産の状況に関する情報の開示を命じる制度が新たに設けられています。
評価資料やローンの残高をもとに、売却・居住継続・代償金・共有といった選択肢を比較しながら、今後の進め方を整理できます。まずはお気軽にご相談ください。
よくあるご質問
熟年離婚で自宅は必ず半分に分けるのですか。
婚姻中に夫婦の協力で築いた財産については、寄与の程度が明らかでないときは相等しいものとされ、いわゆる2分の1が一つの目安になります。ただし、特有財産の有無や個別の事情によって結論は変わり得るため、資料を確認したうえで判断する必要があります。
築古戸建てでも財産分与の対象になりますか。
婚姻中に取得・維持した財産であれば、築年数が古くても対象になり得ます。建物の評価が低くても、土地の評価や売却の可能性が問題になります。
建物の価値がほとんどない場合、土地だけを評価するのですか。
建物と土地は分けて考えるのが基本です。建物の評価が小さくても、土地の相場や立地、売却の可能性を踏まえて全体を検討します。断定はできず、資料の確認が必要です。
固定資産税評価額で分ければよいですか。
固定資産税評価額は税制上の評価であり、実際の売却可能額や分与の合意額と一致するとは限りません。複数の資料を比較して検討する必要があります。
住宅ローンが残っている自宅はどう分けますか。
残高・名義・連帯債務や連帯保証の有無・金融機関の承諾などを確認する必要があります。ローンが評価額を上回るかどうかで考え方が変わり、事案によって異なります。
夫名義の家でも妻が財産分与を求められますか。
名義が一方だけであっても、婚姻中に夫婦の協力で取得・維持した財産であれば、他方が財産分与を求められる可能性があります。取得の経緯を示す資料を確認して判断します。
親から援助を受けて購入した家はどう扱われますか。
親からの援助分については特有財産の問題が生じ得ます。援助の金額・時期・経緯が分かる資料を確認したうえで判断する必要があります。
西神・名谷・鈴蘭台周辺の不動産でも相談できますか。
不動産の所在地にかかわらず、評価資料をもとに分け方を検討できます。具体的な相談方法については、相談予約フォームや事務所案内をご確認ください。
まとめ——次に取るべき行動
- まず、自宅の名義・住宅ローンの残高・固定資産税評価額・査定・取得の経緯・負担状況を資料で確認する
- 評価資料は目的が異なるため、複数を比較する。固定資産税評価額や査定額だけで機械的に決めない
- 売却・居住継続・代償金・共有継続のどれが適するかは、評価・ローン・生活設計・支払能力によって変わる
- 住宅ローンや連帯保証が残る場合、名義変更や借換えには金融機関の承諾が必要になり得る
- 財産分与・年金分割の請求には期間の制限があるため、離婚の時期を踏まえて早めに確認する
- 署名前・売却前・名義変更前・調停前など、後戻りしにくい場面の手前で、判断材料を整理しておく
資料を確認したうえで、財産分与の選択肢や今後の進め方を整理できます。費用や相談の流れについても、あわせてご確認いただけます。
監修者・執筆者情報
本記事は、神戸みらい法律会計事務所の弁護士が内容を確認しています。離婚・男女問題や財産分与に関するご相談に対応しています。
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