ある日、封筒で「支払督促」や「訴状」と書かれた裁判所名の書類が届くと、多くの方が強い不安を感じます。心当たりがない場合や、ずいぶん前の借金に関するものに見える場合は、なおさら戸惑うはずです。
このとき大切なのは、慌てて書類記載の連絡先に電話したり、内容をよく確認しないまま支払ったりするのではなく、放置せず、届いた書類の種類と期限を確かめることです。支払督促や訴状には対応の期限があり、何もしないままでいると、強制執行(差押えなど)や、相手の言い分どおりの判決につながるおそれがあります。一方で、期限内に対応すれば、自分の言い分や反論の機会を確保できる場合があります。
この記事では、支払督促・仮執行宣言付支払督促・訴状の違い、それぞれの初動対応と期限の意味、身に覚えのない請求や古い借金で支払う前に確認すべき点、偽の通知の見分け方、相談前に準備する資料を、裁判所や法務省などの公的資料をもとに整理します。なお、最終的な結論は、届いた書類や送達日、個別の事情により変わります。
この記事で分かること
- 支払督促・仮執行宣言付支払督促・訴状の違いと、それぞれの期限の意味
- 届いた当日・支払う前・連絡する前に確認すべきこと
- 身に覚えのない請求や偽の通知への向き合い方
- 弁護士に相談するタイミングと、準備しておく資料
裁判所からの書類は、種類によって対応の期限が異なります。届いた書類一式と封筒を手元に置いたうえで、期限と対応方法を早めに確認することをおすすめします。
Contents
まず確認すること|放置せず、届いた書類と期限を確かめる
裁判所から届く書類は、ひとつではありません。代表的なものに「支払督促」「仮執行宣言付支払督促」「訴状(あわせて口頭弁論期日呼出状・答弁書催告状)」があり、それぞれ手続の性質も、とるべき対応も、期限の意味も異なります。まずは届いた書類がどれかを確認しましょう。
共通して最初に確認したいのは、裁判所名・事件番号・当事者名・受け取った日(送達日)・記載された期限や期日・同封されている書類です。これらは、その後の対応や相談の前提になります。封筒も捨てずに保管してください。
| 項目 | 支払督促 | 仮執行宣言付支払督促 | 訴状 |
|---|---|---|---|
| 手続の性質 | 簡易裁判所の書記官が、債権者の申立てに基づき書類審査だけで発する金銭請求の督促。相手方の言い分は審理されません。 | 支払督促に督促異議がないとき、債権者の申立てにより付される宣言。この段階以降は強制執行の対象になりえます。 | 通常訴訟の開始を告げる書面。原告の言い分が記載され、裁判所で双方の主張・証拠を審理します。 |
| 主に届く書類 | 支払督促(正本) | 仮執行宣言付支払督促(正本) | 訴状、口頭弁論期日呼出状、答弁書催告状 |
| 主な対応方法 | 受け取った日から2週間以内に「督促異議の申立て」 | 受け取った日から2週間以内に「督促異議の申立て」 | 定められた期限までに「答弁書」を提出し、口頭弁論期日に対応 |
| 何もしないと | 債権者の申立てにより仮執行宣言が付され、強制執行に進むおそれ | 確定し、強制執行(差押えなど)の対象になるおそれ | 答弁書を出さず欠席すると、原告の請求どおりの判決が出る可能性 |
| 異議・答弁後 | 督促異議があると通常訴訟へ移行 | 督促異議があると通常訴訟へ移行 | 双方の主張・証拠を踏まえて審理・判決 |
同じ「請求」でも、普通郵便やはがきで届く請求書・督促状は、裁判所の手続とは限りません。逆に、裁判所を装った偽の通知(架空請求)もあります。まずは「本当に裁判所からの正式な書類か」を確認することが出発点になります(後述)。
支払督促・訴状とは|届く書類の基礎知識
対応を考える前に、それぞれの書類が何を意味するのかを押さえておきましょう。用語の意味が分かると、同封書類や期限の見方も整理しやすくなります。
支払督促とは
支払督促は、金銭などの支払いを求める債権者の申立てに基づき、簡易裁判所の書記官が書類審査だけで発する督促です。訴訟のように法廷で審理されるわけではなく、相手方(債務者)の言い分はこの段階では確認されません。だからこそ、内容に反論がある場合は、後述する「督促異議の申立て」によって通常訴訟へ移し、そこで言い分を述べる仕組みになっています。
仮執行宣言付支払督促とは
支払督促を受け取った人が、2週間以内に督促異議を申し立てなかった場合、債権者の申立てにより、支払督促に「仮執行宣言」が付されることがあります。これが仮執行宣言付支払督促です。この書類は強制執行の根拠となりうるもので、受け取った人がさらに2週間以内に督促異議を申し立てないと確定し、差押えなどの強制執行の対象になりえます。支払督促より緊急性が高い段階だと理解してください。
訴状・口頭弁論期日呼出状・答弁書催告状とは
訴状は、通常訴訟が起こされたことを示す書面で、原告が「どんな判決を求めるのか(請求の趣旨)」と「その根拠となる事実(請求の原因)」を記載しています。訴状とあわせて、裁判所に来る日時を知らせる「口頭弁論期日呼出状」や、答弁書の提出を促す「答弁書催告状」が同封されるのが一般的です。
督促異議・答弁書とは
督促異議の申立ては、支払督促・仮執行宣言付支払督促の内容を争うための手続です。異議が申し立てられると、手続は通常訴訟へ移行します。
答弁書は、訴状に書かれた原告の請求や主張に対して、被告が反論・認否を記載して裁判所に提出する書面です。期日に先立って提出しておくことが想定されており、これを出さずに期日も欠席すると、原告の主張を争う意思がないものとして扱われ、不利益を受けるおそれがあります。
「裁判所からの書類」と通常の請求書・督促状の違い
業者やカード会社などから届く請求書・督促状は、裁判所が関与しない民間のやり取りです。これに対し、支払督促や訴状は裁判所の手続であり、対応しないことが法的な不利益(仮執行宣言・確定・強制執行・敗訴)に直結しうる点が大きく異なります。「ただの請求書だろう」と同列に考えて放置しないことが大切です。
届いた書類別の初動対応と手続の流れ
ここからは、書類別に「まず確認すること」と「期限の目安」を整理します。期限の計算(受け取った日をどう数えるか等)は個別事情により異なるため、正確な期限は届いた書類と送達日をもとに確認してください。
| 届いた書類 | 主な意味 | まず確認すること | 期限の目安 |
|---|---|---|---|
| 支払督促(正本) | 書記官が書類審査で発した金銭請求の督促 | 裁判所名・事件番号・送達日・請求内容・同封の督促異議申立書 | 受け取った日から2週間以内に督促異議 |
| 仮執行宣言付支払督促(正本) | 異議がなく仮執行宣言が付された段階 | 送達日・請求内容・異議の可否・強制執行のリスク | 受け取った日から2週間以内に督促異議 |
| 訴状 | 通常訴訟が起こされたことを示す書面 | 原告・請求の趣旨と原因・裁判所・答弁書の提出期限 | 答弁書の提出期限/第1回口頭弁論期日 |
| 口頭弁論期日呼出状 | 裁判所に来る日時の通知 | 期日(日時)・出頭の可否・ウェブ会議の可否 | 記載された期日 |
| 答弁書催告状 | 答弁書の提出を促す書面 | 提出期限・提出方法・記載すべき内容 | 記載された提出期限 |
| 普通郵便・はがきの請求通知 | 裁判所の手続とは限らない請求・督促 | 差出人・裁判所を装っていないか・連絡先の真偽 | まず正式な裁判所書類かを確認 |
支払督促が届いた場合
支払督促を受け取ったら、まず送達日と同封書類を確認します。内容に反論がある場合や、請求の当否を確かめたい場合は、受け取った日から2週間以内に督促異議を申し立てることが基本です。異議を申し立てると通常訴訟へ移行し、そこで言い分を述べることができます。督促異議をしないままでいると、債権者の申立てにより仮執行宣言が付され、強制執行に進むおそれがあります。
仮執行宣言付支払督促が届いた場合
この書類はより緊急性が高い段階です。受け取った人がさらに2週間以内に督促異議を申し立てなければ確定し、差押えなどの強制執行の対象になりえます。心当たりがない場合や争いたい場合は、期限を意識して早めに対応・相談を検討してください。なお、すでに支払督促の段階で異議の機会があったかどうかなど、置かれた状況は事案により異なります。
訴状が届いた場合
訴状が届いたら、原告・請求の趣旨と原因・裁判所・答弁書の提出期限・第1回口頭弁論期日を確認します。原告の主張に反論がある場合は、定められた期限までに答弁書を提出することが重要です。裁判所の案内によれば、被告が答弁書などで原告の請求を争う意思を明らかにしないまま欠席すると、原告の請求どおりの判決が言い渡される可能性があります。期日に出頭できない事情がある場合の取扱いも含め、早めに確認しておくと安心です。
令和8年5月21日からは、改正された民事訴訟のルールのもとで、裁判所に提出する書面を「民事裁判書類電子提出システム(mints)」を使ってオンラインで提出することもできるようになりました。本人(当事者)の場合は紙の書面で提出することも可能です(弁護士などの訴訟代理人はオンライン提出が原則)。どの方法で提出するかも含め、不明な点は提出先の裁判所や弁護士に確認してください。
よく問題になるケース
相談の場面で迷いやすい典型的なケースを整理します。いずれも、最終的な結論は届いた書類・送達日・個別の事情により変わります。
身に覚えのない請求
「身に覚えがないから無視してよい」と考えるのは危険です。法務省も、本当の裁判所からの支払督促であれば、身に覚えがない請求でも、受け取った日から2週間以内に督促異議の申立てを行う必要があると案内しています。まずは正式な裁判所の書類かを確認し、正式なものであれば期限内に対応を検討してください。
古い借金・時効の可能性
「古い借金だから必ず時効」とは限りません。時効は自動的に成立するものではなく、主張(援用)して初めて効果が生じます。支払督促や訴状を放置すると、時効を主張する機会を失い、請求が確定してしまうおそれがあります。また、よく確認せずに支払う・分割払いを申し出る・債務を認めると、時効を主張できなくなる可能性があります。古い請求ほど、対応の前に資料を確認することが大切です。時効援用の具体的な要件は、別の記事や個別の相談で確認してください。
一部支払い・分割払いを申し出てよいか
その場で一部を支払ったり、分割払いを申し出たりする前に、まず請求内容・時効・反論の有無を確認しましょう。支払いや分割の申出が、債務を認めたものとして扱われ、その後の主張に影響することがあります。あわてて行動する前に、資料を整理して見通しを検討することをおすすめします。
家族宛てに届いた場合
同居の家族や親族宛てに裁判所の書類が届くこともあります。期限はあくまで名宛人(書類に記載された当事者)に関するものであり、本人が内容を確認できるよう、書類一式と封筒をそのまま保管したうえで、早めに本人へ渡すことが大切です。本人が対応できない事情がある場合は、弁護士に相談して対応を検討してください。
期限を過ぎたかもしれない場合
期限を過ぎた可能性がある場合でも、あきらめて放置するのは避けてください。状況によってとりうる対応は異なり、ここで「もう手遅れ」と断定することはできません。すぐに届いた書類一式を確認し、裁判所または弁護士に相談する方向で動くことが大切です。
会社・個人事業主に訴状が届いた場合
会社や個人事業主に、売掛金・請負代金・取引上のトラブルに関する訴状や支払督促が届くこともあります。この場合も期限対応は同じく重要で、契約関係や取引の経緯を示す資料(取引基本契約、発注書、納品書、検収書、請求書、入金履歴など)を早めに整理しておくと、反論や交渉の検討がしやすくなります。事業者間の請求・回収については、債権回収の取扱いとあわせて相談を検討してください。
偽の通知かもしれない場合
裁判所を装った架空請求もあります。法務省は、書類記載の連絡先にすぐ連絡してはいけないと注意を呼びかけています。偽りの連絡先が記載されている場合、こちらから連絡することで電話番号などの個人情報を知られてしまうおそれがあるためです。発送元・連絡先が本当の裁判所かどうかは、書類記載の番号ではなく、最高裁判所のホームページ(各地の裁判所のページ)や消費生活センターなどで確認しましょう。そのうえで、本当の裁判所の連絡先に確認し、自分に対する手続が進められているかを確かめます。偽の通知だと確認できた場合、こちらから連絡する必要はありませんが、不安なときは消費生活センターに相談すると安心です。
手続前チェックリスト
支払う前・連絡する前・書面を提出する前に、次の点を確認しておきましょう。
届いた当日に確認すること
- 受け取った日(送達日)を確認したか
- 封筒を捨てずに保管したか
- 裁判所名・事件番号・当事者名を確認したか
- 提出期限・期日・同封書類を確認したか
- 本当に裁判所からの正式な書類かを確認したか
支払う・連絡する・書面を提出する前に確認すること
- 相手方へ連絡する前に、書類記載の番号ではなく裁判所公式などで連絡先を確かめたか
- 支払う前に、時効や反論の有無、請求内容の当否を確認したか
- 一部支払い・分割払い・債務の承認が、その後の主張に与える影響を確認したか
- 督促異議申立書・答弁書の提出方法と期限を確認したか
- 期限が近い場合に、相談予約を検討したか
相談の際は、次の資料がそろっていると、対応方針を整理しやすくなります。
| 区分 | 準備するとよい資料 |
|---|---|
| 裁判所からの書類 | 封筒、届いた書類一式、事件番号が分かる書類 |
| 請求の根拠に関する資料 | 契約書、請求書、明細、返済・取引の履歴、通帳、領収書、和解書 |
| やり取りの記録 | 相手方とのメール、SNSやLINEのメッセージなど |
| 過去の手続に関する資料 | 過去の判決・和解調書・調停調書など(あれば) |
| 会社・個人事業主の場合 | 取引基本契約、発注書、納品書、検収書、請求書、入金履歴など |
請求内容や時効、反論の余地は、資料を確認したうえで判断する必要があります。個人の借金やカードの請求については借金問題(債務整理)の相談を、会社や個人事業主の取引上の請求については債権回収の相談を、それぞれ検討できます。
弁護士に相談するタイミング
弁護士に相談するメリットは、結果を保証することではなく、期限・主張・証拠・時効・支払方法・債務整理の要否などを整理し、対応方針を検討できることにあります。支払督促や訴状には期限があるため、内容を争いたい場合はもちろん、「どう対応すべきか分からない」「期限が近い」という段階でも、届いた書類一式をもとに早めに相談を検討することをおすすめします。
とくに、身に覚えのない請求、古い借金、すでに期限が近い・過ぎたかもしれないといったケースでは、自己判断で支払ったり放置したりする前に、一度資料を確認してもらうことで、とりうる選択肢を整理しやすくなります。費用や担当弁護士について確認したい場合は、費用ページや弁護士紹介ページもご覧ください。
よくある質問(FAQ)
支払督促が届きました。無視するとどうなりますか。
放置すると、債権者の申立てにより仮執行宣言が付され、強制執行(差押えなど)に進むおそれがあります。内容を争いたい場合は、受け取った日から2週間以内の督促異議の申立てが基本です。正確な期限と対応は、届いた書類と送達日により異なります。
身に覚えのない請求でも、督促異議の申立ては必要ですか。
本当の裁判所からの支払督促であれば、身に覚えがない請求でも、放置せず期限内に督促異議を申し立てる必要があるとされています。まずは正式な裁判所の書類かを確認し、正式なものであれば期限内の対応を検討してください。
支払督促の2週間を過ぎてしまった場合はどうすればよいですか。
状況によってとりうる対応は異なり、一律に「手遅れ」とはいえません。あきらめて放置せず、すぐに届いた書類一式を確認し、裁判所または弁護士に相談する方向で動くことをおすすめします。
仮執行宣言付支払督促が届きました。まだ対応できますか。
この書類はより緊急性が高い段階ですが、受け取った日から2週間以内であれば督促異議を申し立てられるのが原則です。確定すると強制執行の対象になりえます。期限を意識し、早めに対応・相談を検討してください。結論は個別事情により異なります。
訴状が届きました。答弁書を出さないとどうなりますか。
答弁書などで原告の請求を争う意思を明らかにしないまま欠席すると、原告の請求どおりの判決が言い渡される可能性があります。反論がある場合は、定められた期限までに答弁書を提出することが重要です。
第1回口頭弁論期日に行けない場合はどうすればよいですか。
事情により取扱いは異なります。事前に答弁書を提出しておく方法や、期日についての対応を含め、早めに裁判所や弁護士に確認しておくと安心です。何もせず欠席することは避けてください。
古い借金なら時効だから、放置してよいですか。
古い借金でも、必ず時効になるとは限りません。時効は主張して初めて効果が生じ、放置すると主張の機会を失うおそれがあります。よく確認せず支払う・債務を認めると、時効を主張できなくなる可能性もあります。支払う前に確認することをおすすめします。
本物の裁判所からの書類か、どう確認すればよいですか。
書類記載の連絡先にすぐ連絡するのは避け、最高裁判所のホームページ(各地の裁判所のページ)や消費生活センターなどで発送元・連絡先を確認しましょう。そのうえで本当の裁判所に確認します。偽の通知だと分かった場合、こちらから連絡する必要はありません。
まとめ
- 裁判所から支払督促・訴状が届いたら、放置せず、書類の種類・送達日・期限・同封書類を確認する。
- 支払督促・仮執行宣言付支払督促は受け取った日から2週間以内の督促異議、訴状は期限内の答弁書提出が基本。
- 身に覚えがなくても、正式な裁判所の書類なら期限内の対応が必要になりうる。
- 支払う・連絡する・分割を申し出る・債務を認める前に、時効や反論の有無を含め資料を確認する。
- 偽の通知は書類記載の連絡先に即連絡せず、裁判所公式や消費生活センターで確認する。
- 期限が近い・過ぎたかもしれない場合も、すぐに書類を確認し、裁判所または弁護士に相談する。
支払督促や訴状は期限があるため、届いた書類一式をもとに、期限と対応方法を早めに確認することが大切です。当事務所では、神戸市須磨区・垂水区・西区・北区、明石市周辺などの方からのご相談に対応しています。費用や担当弁護士についてもご確認いただけます。
監修者
神戸みらい法律会計事務所(弁護士法人ひょうご支所)
担当弁護士:藤井 貴之(兵庫県弁護士会所属)
債務整理・債権回収などの民事事件に対応しています。担当弁護士の経歴・取扱分野は、弁護士紹介ページをご覧ください。
参考資料

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