相続手続について
遺言 相続Contents
相続手続
はじめに
相続が発生した場合、相続人はさまざまな手続を期限までに行うことを強いられます。
そこで、本コラムでは、相続手続の流れについて、淡路島の弁護士が弁護士又は税理士がかかわる手続を中心として解説します。
なお、相続人においては、下記のほか、死亡診断書・死体検案書の取得、死亡届出、埋火葬手続、年金受給停止の手続、健康保険の資格喪失届出、介護保険の資格喪失届出、世帯主変更届出、生命保険会社・金融機関とのやりとり、公共料金・各種サービスの変更・解約、葬祭費・埋葬料の申請手続、遺品整理、葬儀に関する事務、永代供養年忌法要に関する事務、墓地に関する事務などのさまざまな手続を行う必要がありますが、ここでは、弁護士又は税理士がかかわる手続に限り解説しておりますので、ご留意ください。
相続開始から初七日法要まで
葬儀
葬儀費用の負担について争いになることがあります。
葬儀費用の負担者に関する民法上規定はなく、裁判所も明確な判断をしていません。
したがって、葬儀費用を喪主が全額負担すべきか、相続人が法定相続分に応じて負担すべきか、議論があります。
ただし、最近の裁判例においては、他の相続人と合意していると認定できる場合を除いて、葬儀費用は喪主(主宰者)の負担になると判断されています(東京地方裁判所令和3年9月28日判決、同令和3年7月14日判決、同令和2年2月7日判決など)。
したがって、喪主(主宰者)としては、最終的に葬儀費用が自らの負担になる可能性があると考えておくべきです。
ただし、実務上は、相続財産から葬儀費用を支出したときには他の相続人があえて争わないということも多いです。
初七日法要から四十九日法要まで
遺言書の有無の確認
「遺言」には、「自筆証書遺言」、「公正証書遺言」、「秘密証書遺言」の3つがあります。
このうち、「自筆証書遺言」、「秘密証書遺言」を発見した場合、家庭裁判所での検認の手続を行う必要があります。
また、「公正証書遺言」は、原本が公証役場に保管されており、相続人は全国の遺言公正証書を「遺言検索システム」により検索することができます。
相続人の調査(相続関係図の作成)
相続人を確定するためには、被相続人の出生から死亡までの全ての戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍を取得する必要があります。
代襲相続や養子縁組が生じているなど、相続関係が複雑な場合、相続人の調査が難航することもあります。
また、取得した戸籍謄本などから、隠し子が判明することもあります。
取得した戸籍謄本などは、金融機関口座の凍結解除などの手続を行うにあたって必要になります。
取得した戸籍謄本などをもとに、相続関係図を作成します。
なお、相続人全員が関与しないで行われた遺産分割は無効であり、やり直す必要があります。
相続人の調査に関しては、こちらをご覧ください。
相続開始から3か月以内
相続財産の調査
金融機関の預貯金、株式などの有価証券、不動産、貴金属、自動車、負債などの相続財産を調査します。
もし、相続財産の詳細が不明な場合、預貯金通帳、キャッシュカード、金融機関からの郵便物、証券会社からの取引残高報告書、郵便物、固定資産税課税明細書、貸金庫の確認、信用情報の開示請求などにより、漏れなく相続財産を発見できるよう調査する必要があります。
相続財産の調査に関しては、こちらをご覧ください。
相続放棄
相続する資産よりも負債が大きい場合、他の相続人との関わり合いを持ちたくない場合などには、「相続放棄」の制度を利用します。
「相続放棄」は、相続が開始したことを知ったときから3か月以内に家庭裁判所に申述する必要があります。
相続放棄に関しては、こちらをご覧ください。
相続開始から4か月以内
準確定申告(被相続人の所得税の申告)
事業所得や不動産所得のあった方、年400万円を超える公的年金を受給していた方、複数箇所で給与所得があった方などは、死亡から4か月以内に、1月1日から死亡の日までの所得を計算して、申告・納税をしなければなりません。
相続開始から10か月以内
遺言執行又は遺産分割協議・遺産分割協議書の作成
遺言書がある場合、遺言執行者として指定された者が、遺言の内容を実現する遺言執行を行います。
なお、遺言者は遺言書において遺言書を指定したり、遺言執行者を指定することを第三者に委託することができますが、遺言執行者の指定がない場合などは家庭裁判所に遺言執行者を選任してもらうことができます。
遺言書がない場合などは、相続人全員で遺産分割協議を行って、遺産分割協議が成立すれば遺産分割協議書を作成します。
遺産分割協議が難航する場合、家庭裁判所における遺産分割調停の申立てを行うことになります。
相続税の申告・納付
財産(遺産)の総額が、相続税の基礎控除を超える場合、相続税の申告・納付を行う必要があります。
相続税の申告・納付は、相続開始を知った日の翌日から10か月以内に行う必要があります。
期限内に申告・納付を行わなかった場合、加算税・滞納税の対象になります。
なお、遺産分割協議が成立してから相続税の申告・納付を行うことが理想ですが、成立が難しい場合、いったん、未分割のまま相続税の申告・納付を行って、遺産分割が成立してから実際に分割した財産の額に基づいて修正申告又は更正の請求を行うことになります。
また、配偶者税額軽減の特例・小規模宅地等の評価減の特例などの税制上の特例は、「申告期限後3年以内の分割見込み書」を添付した上で、いったん、未分割のまま相続税の申告・納税を行って、申告期限から3年以内に分割したときは、特例の対象となりますので、分割のあった日の翌日から4か月以内に更正の請求を行って、納めた相続税の還付請求手続を行うことになります。
相続税の申告・納付については、こちらをご覧ください。
相続開始から1年以内
遺留分侵害額請求権
遺留分侵害額請求権とは、相続人の遺留分侵害を理由として、金銭給付請求をすることができる権利です。
遺留分侵害額請求権は、相続の開始及び遺留分侵害の事実を知ったときから1年間行使しなければ、時効により消滅します。
遺留分侵害額請求権に関しては、こちらをご覧ください。
特に期限なし
各種名義変更手続相続登記
遺産分割が成立したら、預貯金、株式などの有価証券、不動産、自動車などの名義変更手続を行います。