年金収入だけで生活していると、医療費や介護費、物価の上昇が重なったときに、カードローンやクレジットカードの返済、家賃や公共料金の支払いが少しずつ苦しくなることがあります。「年金から毎月返しているのに元金が減らない」「督促状が届いて不安だ」「親の借金に気づいたが、家族がどこまで関わるべきか分からない」――そうしたお悩みは、決して特別なものではありません。
この記事では、年金暮らしで借金の返済が難しくなったときに考えられる債務整理の方法(任意整理・特定調停・個人再生・自己破産)と、年金・住まい・ご家族への影響、相談前に確認しておきたい資料、生活の立て直しに使える公的な相談窓口を、できるだけ分かりやすく整理します。
大切なのは、「返済を続けられるかどうか」だけでなく、「年金と暮らしを守りながら立て直せるかどうか」という視点です。どの方法が適しているかは、借入の金額や債権者の数、家計、年金額、財産、住まい、保証人の有無、滞納している税金や保険料、健康状態などによって変わります。一般的な解説をお読みいただいたうえで、ご自身やご家族の状況に即した判断は、資料を確認しながら弁護士にご相談ください。
年金や家計、借入の資料を整理することで、返済を続けるべきか、債務整理を検討すべきかの見通しを立てやすくなります。まずは状況の整理から始めたい方は、お問い合わせ内容をご確認ください。
Contents
まず押さえておきたい全体像|年金生活で返済が苦しいときの選択肢
借金の返済が難しくなったときに取り得る方法は、一つではありません。主なものとして、裁判所を使わずに債権者と返済方法を話し合う「任意整理」、簡易裁判所を利用する「特定調停」、返済計画を立てて借金を圧縮する「個人再生」、返済の見込みが乏しい場合に検討する「自己破産」があります。これらに加えて、長期間支払っていない借金については時効による消滅を主張できる場合があり、生活そのものが立ち行かないときは生活保護や生活困窮者向けの支援も視野に入ります。
年金収入のみの世帯では、「毎月いくら返せるか」よりも先に、「年金で生活費をまかなえているか」を確認することが出発点になります。次の表は、それぞれの方法の大まかな違いを整理したものです。実際にどれを選ぶべきかは個別事情により異なり、裁判所や債権者の判断、財産・家計の状況によって結論が変わります。
| 方法 | 手続の場所 | 主な特徴 | 向いている状況の例 |
|---|---|---|---|
| 任意整理 | 裁判所外(債権者と協議) | 将来利息や返済方法を話し合いで見直す。対象とする債権者を選びやすい | 安定して一定額を返済でき、住まいや財産を手元に残したい場合 |
| 特定調停 | 簡易裁判所 | 調停委員を介して返済方法を協議する。本人による申立ても想定されている | 費用を抑えつつ裁判所の手続で話し合いたい場合 |
| 個人再生 | 地方裁判所 | 返済計画に基づき借金を圧縮する。住宅を残せる仕組みを利用できる場合がある | 継続的な収入の見込みがあり、持ち家を手放したくない場合 |
| 自己破産 | 地方裁判所 | 返済義務の免除(免責)を目指す。一定の財産は処分の対象となる | 収入や財産から返済の見込みが乏しい場合 |
返済を続けるべきか、債務整理を検討すべきかは、年金額・家賃・医療費・介護費・食費などの家計全体を見て判断する必要があります。「この方法を選べば必ず解決する」と決めつけず、まずは収入と支出、借入の全体像を整理することが、生活再建の第一歩になります。
債務整理とは|年金生活の世帯で特に確認したいこと
債務整理は「借金を整理して生活を立て直す」ための手続
債務整理とは、返済が難しくなった借金について、法律上の方法を使って負担を軽くしたり、返済方法を見直したりする手続の総称です。借金を減らすことだけが目的ではなく、年金や生活費を確保しながら暮らしを立て直すための手段として位置づけられます。
年金収入のみの世帯で問題になりやすい点
年金収入だけで生活している場合、次の点が問題になりやすく、それぞれ分けて確認する必要があります。第一に、公的年金そのものと、年金が口座に振り込まれた後の預貯金は、法律上の扱いが異なる場合があります。第二に、税金や社会保険料の滞納は、消費者金融やカードの借金とは取り扱いが異なることがあります。第三に、賃貸・持ち家・住宅ローンの有無や家賃の滞納によって、住まいへの影響が変わります。第四に、保証人や連帯保証人、共同での借入があるかどうかで、ご家族への影響が変わります。これらを切り分けて確認することが、適切な方法を選ぶうえで重要です。
任意整理|裁判所を使わずに返済方法を話し合う
任意整理は、裁判所を通さずに、債権者と直接、返済方法や返済期間を話し合う手続です。対象とする債権者を選びやすく、住まいや財産を手元に残したまま進めやすい点が特徴です。
年金収入のみの場合に特に大切なのは、無理な分割返済の約束をしないことです。毎月の返済額を生活費とのバランスを欠いて高く設定すると、結局支払えなくなり、生活がさらに苦しくなるおそれがあります。元金や将来利息、遅延損害金をどう扱うか、返済期間をどの程度にするかは、債権者や個別の事情によって異なるため、一律に決まるものではありません。
また、税金、国民健康保険料、介護保険料、後期高齢者医療保険料、家賃の滞納、保証人が付いている借金などは、任意整理とは別に確認・整理が必要になることがあります。これらは取り扱いが異なる場合があるため、借入や滞納の全体を一覧にしたうえで、どの方法が適しているかを検討します。
自己破産|返済の見込みが乏しい場合に検討する手続
自己破産は、収入や財産から返済の見込みが乏しい場合に、裁判所を通じて返済義務の免除(免責)を目指す手続です。年金生活の世帯では、「自己破産をすると年金が止まるのではないか」「住まいを失うのではないか」「家族に迷惑がかかるのではないか」といった不安をお持ちの方が少なくありません。これらは、正確には次のように整理されます。
まず、公的年金の受給権そのものは、法律上、原則として差押えや譲渡が制限されており、自己破産をしたからといって年金の支給が止まるわけではありません。ただし、年金が口座に振り込まれた後の預貯金は、通常の預金として扱われる場合があり、扱いが異なることがあります。
次に、住まいについては、賃貸か持ち家か、住宅ローンや家賃の滞納があるかによって結論が変わります。賃貸住宅に住んでいる場合に直ちに退去を求められるとは限りませんが、持ち家や住宅ローン付きの不動産がある場合は、財産処分の対象になることがあります。「自己破産をすれば必ず住まいを失う」「一切影響がない」と決めつけることはできません。
免責が認められるかどうか、処分の対象となる財産の範囲、手元に残せる財産(自由財産)の範囲、管財事件になるか同時廃止になるかといった点は、裁判所の運用や個別事情によって変わります。さらに、税金や社会保険料は免責の対象とならない場合があり、保証人が付いている借金については、保証人に請求が向かう可能性があります。これらは事前に切り分けて確認する必要があります。
「自己破産すれば借金が必ずなくなる」「年金は絶対に守られる」「家族に一切迷惑はかからない」といった説明は、正確ではありません。免責の可否、財産・住まいの扱い、保証人や税金への影響は、財産状況・家計状況・裁判所や債権者の判断によって変わります。手続を選ぶ前に、資料を確認したうえで判断することをおすすめします。
個人再生|住まいを残しながら借金を整理できる可能性
個人再生は、継続的な収入の見込みがある場合に、裁判所を通じて返済計画を立て、借金を圧縮する手続です。住宅ローンが残る持ち家について、一定の要件のもとで住宅を手元に残せる仕組み(住宅資金特別条項)を利用できる場合があり、持ち家を手放したくない方が検討することがあります。
年金収入のみでも利用できる可能性があるかどうかは、収入の安定性、返済の原資をどう確保するか、借金の総額、財産の状況などによって変わり、一律には言えません。また、返済計画では、財産を処分したと仮定した場合の価値(清算価値)を下回らない返済が求められるなど、いくつかの基準があります。住宅ローンや管理費、税金の滞納がある場合には、別途確認が必要です。利用の可否や見込みは、資料を確認したうえで個別に検討する必要があります。
特定調停|簡易裁判所を利用して話し合う
特定調停は、簡易裁判所の調停委員を介して、債権者と返済方法を話し合う手続です。本人による申立ても想定されており、費用を抑えやすい点が挙げられます。
一方で、手続を進めるには裁判所への出頭が必要になることがあり、債権者との合意が成立した後は、その内容に従って返済を続ける必要があります。合意どおりに返済できなくなった場合のリスクもあります。高齢のご本人が一人で資料の整理や手続の対応を進められるか、ご家族の支援が得られるか、判断能力に不安がないかといった点が問題になることもあります。ご本人とご家族の状況を踏まえて、どの方法が現実的かを検討します。
年金はどうなる?|差押えと「振込後の預貯金」の違い
公的年金そのものは法律上保護されている
公的年金(国民年金・厚生年金)の受給権は、法律上、原則として譲り渡したり、担保に入れたり、差し押さえたりすることが制限されています。したがって、借金の返済が滞ったからといって、年金の受給そのものが直ちに差し押さえられるわけではありません。ただし、税金などの滞納処分による場合など、例外として扱われる場面があり得ます。
口座に振り込まれた後の預貯金は扱いが異なることがある
注意が必要なのは、年金が金融機関の口座に振り込まれた後の預貯金です。振り込まれた後は、通常の預金として扱われる場合があり、年金そのものとは取り扱いが異なることがあります。預金の出所や具体的な事情によって、差押えが認められるかどうかの判断が分かれることがあるため、口座の差押えに関する通知が届いた場合は、早めに資料を確認することが重要です。
税金・社会保険料の滞納は通常の借金と異なる場合がある
税金、国民健康保険料、介護保険料、後期高齢者医療保険料などの滞納は、消費者金融やクレジットカードの借金とは取り扱いが異なる場合があります。これらは債務整理の対象や効果が異なることがあり、自治体の窓口で分割や猶予の相談ができる場合もあります。滞納の通知が届いている場合は、借金とあわせて、どの順序で何を確認すべきかを整理します。
「年金担保貸付制度」は終了|違法な年金担保融資に注意
かつて、年金受給権を担保に小口の資金を借りられる「年金担保貸付制度」がありましたが、令和4年3月末で申込みの受付を終了しています。現在、年金を担保にした貸付けを公的に受けられる制度はなく、「年金を担保にお金を貸す」とうたう民間の勧誘には注意が必要です。生活資金にお困りの場合は、お住まいの地域の自立相談支援の窓口や、社会福祉協議会が実施する生活福祉資金の貸付けなど、公的な相談先を確認することをおすすめします。
住まいはどうなる?|賃貸・持ち家・家賃滞納で変わる
住まいへの影響は、契約の形や滞納の有無によって異なります。賃貸住宅(民間賃貸・UR賃貸・公営住宅など)、持ち家、住宅ローン付きの不動産、家賃や管理費の滞納、保証会社や連帯保証人の有無を、それぞれ分けて整理する必要があります。
自己破産や個人再生をしても、すべての住まいを直ちに失うとは限りません。もっとも、財産の状況、契約の内容、滞納の有無によって結論が変わるため、一律には言えません。特に家賃の滞納がある場合は、債務整理だけでなく、明渡しを求められるリスクや、住居確保給付金、福祉の相談窓口の利用についてもあわせて確認することが大切です。住宅ローンが残っている場合は、個人再生の住宅資金特別条項を利用できるかなど、別途検討が必要です。
家族に借金の支払い義務はある?
ご家族は、保証人・連帯保証人・共同での借入人・相続人などにあたる場合を除き、当然に借金を支払う義務を負うわけではありません。「親の借金だから子が払わなければならない」とは限りません。
ただし、保証人や連帯保証人になっている場合、共同で借り入れている場合、相続が関係する場合には、支払いを求められる可能性があり、個別の確認が必要です。ご家族が肩代わりを検討する前に、まずは保証関係の有無、相続の見通し、今後の生活費や介護費を確認することをおすすめします。安易に立て替えると、かえってご家族の生活が不安定になることもあります。
また、ご本人の判断能力の低下が疑われる場合には、委任契約や成年後見、地域の支援窓口の利用が必要になることがあります。判断能力に関わる手続の詳細は、状況に応じて別途ご確認ください。
借金整理と同時に考えたい生活再建
借金の整理は、生活を立て直すための手段の一つです。あわせて、家計の状況を確認することが欠かせません。年金額、医療費、介護費、公共料金、住居費、食費などを一覧にして、収入と支出のバランスを把握すると、返済を続けるべきか、債務整理を検討すべきかを判断しやすくなります。
生活そのものが立ち行かない場合には、生活保護や生活困窮者向けの自立支援、法テラスによる費用の立替え・相談(民事法律扶助)、地域包括支援センター(神戸市では「あんしんすこやかセンター」)などの相談窓口を利用できる場合があります。これらの利用条件や対象は、公的機関の窓口で確認できます。
なお、生活保護と借金の返済の関係は、状況によって取り扱いが分かれるため、安易に決めつけず、福祉の窓口や弁護士に確認することが大切です。
借金の整理と生活再建は、一緒に考えることで方針を立てやすくなります。年金・住まい・生活費への影響を確認したうえで進め方を整理したい方は、弁護士費用の目安とあわせてご確認ください。
相談前に準備しておきたい資料
相談をスムーズに進めるために、次のような資料を、分かる範囲で整理しておくと役立ちます。すべてがそろっていなくても構いません。手元にあるものから集めていきましょう。
- 年金振込通知書など、年金額が分かる資料
- 通帳、家計の収支が分かるメモ、家賃・公共料金・医療費・介護費の資料
- 借入先の一覧、カード、契約書、利用明細、督促状、催告書、訴状、支払督促、差押命令などの通知
- 住宅ローンの資料、賃貸借契約書、家賃や管理費の滞納が分かる資料
- 税金、国民健康保険料、介護保険料、後期高齢者医療保険料などの滞納通知
- 保証人・連帯保証人の有無、家族名義での借入の有無が分かる資料
- 保険証券、自動車、不動産、預貯金、退職金、相続に関する資料
- 本人確認書類、介護保険に関する資料、判断能力に不安がある場合は医療・介護に関する資料
弁護士に相談するタイミング
弁護士への相談は、「必ず解決する」ことを約束するものではありませんが、年金や住まい、生活費への影響を確認したうえで、返済を続けるべきか、どの方法を検討すべきかという対応方針を整理しやすくなります。
特に、督促状が続いている、裁判所から訴状や支払督促が届いた、差押えの通知が届いた、家賃を滞納している、保証人の問題がある、生活保護の申請を考えている――こうした場面では、早めに資料を確認することが重要です。通知の種類によっては対応に期限があることもあるため、届いた書類は捨てずに保管しておきましょう。
よくある質問(FAQ)
年金だけで生活していますが、借金の返済が苦しいです。どうすればよいですか。
まずは年金額と毎月の支出、借入の全体を一覧にして、家計のバランスを確認することが出発点です。そのうえで、任意整理・特定調停・個人再生・自己破産などのどれが適しているかを検討します。適した方法は個別事情により異なるため、資料を確認しながら判断する必要があります。
自己破産をすると年金は止まってしまいますか。
公的年金の受給権そのものは法律上保護されており、自己破産によって支給が直ちに止まるわけではありません。ただし、口座に振り込まれた後の預貯金は扱いが異なる場合があります。具体的な影響は事案により異なります。
年金が振り込まれる口座が差し押さえられることはありますか。
年金そのものは差押えが制限されていますが、口座に振り込まれた後は通常の預金として扱われる場合があり、判断が分かれることがあります。口座の差押えに関する通知が届いた場合は、早めに資料を確認してください。
持ち家がありますが、残したまま借金を整理できますか。
個人再生の住宅資金特別条項を利用できる場合など、住まいを残せる可能性があります。ただし、利用できるかどうかは収入や財産、住宅ローンや滞納の状況によって変わり、一律には言えません。資料を確認したうえで検討します。
親が借金を抱えていることが分かりました。家族が支払う必要はありますか。
保証人・連帯保証人・共同での借入人・相続人などにあたる場合を除き、当然に支払う義務を負うわけではありません。肩代わりを検討する前に、保証関係や相続、今後の生活費を確認することをおすすめします。
税金や保険料を滞納していますが、借金と一緒に整理できますか。
税金や社会保険料の滞納は、消費者金融やカードの借金とは取り扱いが異なる場合があります。自治体の窓口で分割や猶予を相談できることもあるため、借金とあわせて確認します。
生活保護を受けながら借金を整理することはできますか。
生活保護と借金の返済の関係は、状況によって取り扱いが分かれます。安易に決めつけず、福祉の窓口や弁護士に確認することが大切です。
須磨区や名谷の近くで、借金問題と生活の立て直しを一緒に相談できますか。
借金の整理と生活再建は、あわせて検討することが大切です。資料を整理したうえで、相談の中で年金・住まい・生活費への影響や対応方針を確認できます。下記の相談窓口をご確認ください。
まとめ|年金と暮らしを守りながら借金問題を整理するために
- 年金生活で返済が苦しいときは、「返済を続けられるか」だけでなく「年金と暮らしを守りながら立て直せるか」を軸に考える
- 主な方法は任意整理・特定調停・個人再生・自己破産。適した方法は個別事情により異なる
- 公的年金そのものは保護されているが、振込後の預貯金や税・社会保険料の滞納は扱いが異なることがある
- 家族は、保証人・連帯保証・共同借入・相続でない限り、当然には支払義務を負わない
- 借金整理と同時に、家計の確認や生活保護・生活困窮者支援・法テラス・あんしんすこやかセンターなどの窓口も検討する
- まずは資料を分かる範囲で集め、家計を確認し、相談を検討する
次の一歩として、年金や家計、借入の資料を手元で整理し、相談を検討してみてください。神戸市須磨区、名谷、北須磨周辺で借金問題と生活再建をお考えの方は、資料を整理したうえでご相談ください。
督促や裁判所からの書類、差押えの通知が届いている場合は、対応に期限があることもあります。年金・住まい・生活費への影響を確認しながら方針を整理したい方は、相談予約の方法をご確認ください。
執筆・監修
本コラムは、神戸市須磨区の神戸みらい法律会計事務所が、地域にお住まいの方からのご相談を踏まえて作成しています。債務整理は、年金や住まい、ご家族の状況によって取り得る方法が変わります。記載内容は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士による確認が必要です。担当弁護士の経歴等は弁護士紹介ページをご覧ください。
参考資料(公的機関・公式資料)

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