交通事故でけがをして仕事を休んだとき、会社員であれば勤務先が「休業損害証明書」を作成してくれます。しかし、自営業者・個人事業主・フリーランス・農家の方には、その証明書を発行してくれる勤務先がありません。そのため、「自分は休業損害を請求できるのか」「確定申告上の所得が低いと、ほとんど認められないのではないか」と不安に感じる方が少なくありません。
結論の方向性として、自営業者や農家の方でも、交通事故による休業損害を請求できる可能性があります。ただし、給与所得者と比べて立証が難しくなりやすく、確定申告書だけでなく、帳簿、売上資料、通帳、出荷記録、納税証明書、作業日誌、代替作業の費用資料などを整理することで、提示額を見直す余地がある場合があります。確定申告上の所得が低い、赤字である、開業直後である、農繁期に事故に遭った、家族経営である、といった事情があると、個別事情により結論が変わるため、示談する前に資料を確認しておくことが重要です。
この記事では、自営業者・農家の方が休業損害と後遺障害逸失利益を立証するために、どの資料を集め、何を説明し、どのタイミングで弁護士に相談すればよいかを整理します。なお、具体的な金額や基準は事故の状況や資料により異なり、最終的には個別の検討が必要です。
示談書に署名する前に、提示された休業損害の前提を確認しておきたい方へ。確定申告書だけで判断されていないか、資料を確認したうえで見通しを検討できます。
Contents
自営業者・農家の休業損害で立証すべき五つの要素
休業損害は、交通事故によるけがで仕事を休んだために、本来であれば得られたはずの収入を得られなかったことによる損害です。ここで重要なのは、休業損害は「売上そのもの」ではないという点です。請求にあたっては、次の五つの要素を資料から説明していく必要があります。
- 収入(利益)の減少:事故がなければ得られたはずの収入・利益が、現実に減少したこと。売上ではなく、経費を踏まえた利益が出発点になります。
- 休業の必要性:けがの内容からみて、その期間休む必要があったこと。
- 事故との因果関係:収入の減少が、事故によるけがから生じたものであること。
- 休業日数:実際に休んだ日数、通院日、医師の指示による自宅療養日など。
- 基礎収入:一日あたりいくらの収入が失われたかを算定する基礎となる金額。
給与所得者であれば、これらの多くは勤務先の休業損害証明書でまとめて説明できます。自営業者・農家の方は、これらを自分で集めた資料によって一つずつ説明していくことになります。どの資料が必要かは事案により異なりますが、考え方の枠組みは共通しています。
給与所得者との違い|「休業損害証明書」がない
給与所得者の休業損害は、勤務先が作成する休業損害証明書と源泉徴収票などをもとに、事故前の給与額から算定するのが一般的です。一方、自営業者・農家の方には休業損害証明書を作成してくれる勤務先がないため、確定申告書、青色申告決算書、収支内訳書、帳簿、売上資料などをもとに、自分自身で収入と休業の事実を立証する必要があります。
このとき混同しやすいのが、売上・所得(利益)・固定費の区別です。休業損害の基礎となるのは、売上から経費を差し引いた利益(所得)を出発点としつつ、休業中も支払わざるを得なかった固定費などを個別に検討したものです。売上が大きくても経費も大きければ、基礎となる金額は売上額とは異なります。この点を整理しないまま「売上が減った」とだけ主張しても、適切な休業損害の算定にはつながりにくくなります。
三つの算定基準(自賠責・任意保険・裁判)の位置づけ
休業損害の算定には、一般に三つの基準があるといわれます。自賠責保険の支払基準、任意保険会社が示談交渉で用いる基準、裁判実務上参照される基準(いわゆる裁判基準)です。自動車損害賠償責任保険の支払基準では、休業損害は原則として一日あたり六、一〇〇円とされ、立証資料により一日あたりの収入がこれを超えることが明らかな場合は、自動車損害賠償保障法施行令第三条の二に定める限度額(一日一万九、〇〇〇円)まで実額で認定するものとされています。また、自賠責保険の傷害による損害には、慰謝料や治療費等を含めて一二〇万円という支払限度額があります。
もっとも、これらの数値は事故の発生時期によって異なる場合があり(過去には日額が異なる時期もありました)、最新の基準は公式資料での確認が必要です。任意保険会社の提示額は自賠責基準に近い水準にとどまることがあり、裁判実務上の考え方を前提に検討すると、提示額を見直す余地がある場合があります。どの基準で考えるべきかは、収入額や休業日数などにより異なり、事案により結論が変わります。
確定申告書から確認する資料とその役割
自営業者・農家の休業損害は、まず確定申告書とその関連資料の確認から始まります。それぞれの資料が「何を証明できるのか」を理解しておくと、保険会社とのやり取りや弁護士への相談がスムーズになります。
確定申告書・青色申告決算書・収支内訳書
確定申告書は、事故前年の所得を示す基本資料です。青色申告をしている方は青色申告決算書、白色申告の方は収支内訳書で、収入の内訳や経費の内訳を確認します。農業所得については、事業所得とは別に、農業所得用の青色申告決算書・収支内訳書の様式が用意されています。兼業農家の方は、農業所得と他の所得を分けて把握する必要があります。これらの書類により、売上、経費、所得(利益)の構造を確認します。
基礎収入と固定費の考え方
裁判実務上、事業所得者の基礎収入は、原則として事故前年の申告所得額を基礎に算定されることが多いとされています。年度や時季による変動が大きい場合には、複数年の平均値や前年同期の数値が用いられることもあります。申告額を上回る実収入があった場合でも、帳簿などで確実に立証できれば、その実収入が基礎とされる余地がありますが、立証は厳格に判断される傾向があるとされています。
あわせて検討されるのが固定費の扱いです。休業中であっても支払いを避けられない費用(たとえば従業員給与、地代家賃、リース料、損害保険料、減価償却費、租税公課などが議論されることがあります)については、損害に算入される場合があります。一方、休業すれば発生しない費用(材料費など)は、一般に算入の対象になりにくいとされています。もっとも、どの費目がどこまで算入されるかは費目の性質や事業の実態によって異なり、裁判例の評価が分かれる費目(水道光熱費・通信費など)もあります。具体的な算入の可否は資料を確認したうえで判断する必要があり、個別事情により結論は変わります。
ポイント 保険会社は、確定申告書の所得金額のみを見て休業損害を計算し、固定費や季節変動を考慮していないことがあります。固定費の内容や算入の可否は、決算書・収支内訳書の経費明細をもとに個別に検討する必要があります。
帳簿・通帳・請求書・領収書
確定申告書だけでは、事故前後の売上の動きや、休業による具体的な影響までは説明しきれないことがあります。売上台帳・帳簿、預金通帳、取引先への請求書、経費の領収書などは、事故前後の収入の推移や、固定費の支払実態を裏づける資料になります。特に、事故前後で売上や受注がどう変化したかを示す資料は、休業の影響を説明するうえで役立つ場合があります。
納税証明書・課税証明書
納税証明書は税務署、課税証明書は市区町村で取得できる、所得や納税額に関する公的な証明書です。確定申告書の控えを紛失している場合や、申告内容を客観的に裏づけたい場合に補助的な資料となります。ただし、納税証明書では申告書の「提出年月日」までは確認できないなど、証明できる範囲には限りがあります。どの証明書がどこまで有効かは目的により異なるため、取得前に確認しておくとよいでしょう。
令和七年一月以降の申告書控えと「提出した事実」の証明
国税庁は、令和七年一月から、税務署に書面提出した申告書等の控えへ収受日付印(受付印)を押さない取扱いに変更しました。これにより、紙で確定申告をしている方は、従来のように「収受日付印のある控え」で提出の事実を示すことができなくなっています。代わりに、提出した事実や提出年月日を確認する方法として、次のような手段が案内されています。
- e-Taxの受信通知(メール詳細):電子申告をしている場合、氏名・受付番号・受付日時などが記録され、提出の証明になります。
- 申告書等情報取得サービス:書面提出の場合でも、所得税の確定申告書・青色申告決算書・収支内訳書について、e-TaxからPDFを取得できる仕組みです(マイナンバーカードが必要で、対象年分や申請可能時期に制限があります)。
- 納税証明書の交付請求・申告書等閲覧サービス・保有個人情報の開示請求:税務署等を通じて、所得金額や申告内容を確認する方法です。
交通事故の休業損害の立証では、申告内容そのものに加えて、その申告が確かに行われたことを示せると説明が円滑になる場合があります。控えの保管方法に不安がある方は、早めに確認方法を把握しておくことをおすすめします。手続の詳細や手数料は変更されることがあるため、最新の情報は国税庁の案内で確認してください。
農家で特に問題になりやすい立証ポイント
農業は、収入の季節変動が大きく、作業の時期が限られているという特徴があります。そのため、給与所得者はもちろん、一般的な自営業者とも異なる説明が必要になる場面があります。
農繁期・収穫期・出荷時期と季節変動
農業では、田植え、収穫、出荷など、特定の時期に作業が集中します。その時期に事故で作業ができないと、年間の売上に大きく影響することがあります。事故が農繁期や収穫期・出荷時期に当たった場合、平均的な月よりも損害が大きくなり得ることを、作付計画や例年の出荷実績などから説明できると、季節性を踏まえた検討につながる場合があります。もっとも、季節変動をどこまで考慮するかは資料と事案により異なり、個別事情により結論は変わります。
JA精算書・出荷伝票・市場の資料
JA(農協)の精算書、出荷伝票、市場への出荷記録などは、いつ・どれだけ出荷し、いくらの収入があったかを示す資料です。これらは、確定申告書だけでは見えにくい売上の時期的な動きや、事故による出荷の減少を裏づける資料として役立つ場合があります。例年の同時期の出荷量・金額と、事故があった年の数値を比較できると、影響を具体的に説明しやすくなります。
家族従業者・専従者給与・代替作業と寄与率
家族経営の農家では、確定申告書上の所得が、被害者本人だけでなく家族の労働も含めた結果として計上されていることがあります。この場合、損害の算定にあたっては、事業所得のうち本人の労働がどの程度寄与しているか(寄与率)が問題になることがあります。本人の寄与部分は、事業の内容・規模や家族それぞれの作業内容などを踏まえて判断されるとされており、一律ではありません。専従者給与の有無や金額、家族が事故後に代わりに作業した実態なども、説明のための重要な要素になります。寄与率の考え方は事案により大きく異なるため、資料確認が必要です。
兼業農家の場合
会社勤めをしながら農業を営む兼業農家の方は、給与所得と農業所得を分けて検討する必要があります。給与所得部分は勤務先の休業損害証明書で、農業所得部分は確定申告書・農業所得用の決算書や出荷資料で、それぞれ立証を組み立てることになります。どちらの収入にどの程度の影響が出たかを切り分けて説明できると、検討がしやすくなります。
所得が低い・赤字・開業直後・無申告の場合の考え方
確定申告上の所得が低い、赤字である、開業して間もない、確定申告をしていない、といった事情があると、「休業損害は認められないのではないか」と考えてしまいがちです。しかし、これらの場合に直ちに請求できないと決まるわけではありません。
- 所得が低い・赤字の場合:機械的に計算すると基礎となる金額が小さくなったりゼロになったりすることがありますが、休業中も固定費の負担が続いたことや、事故により赤字が拡大したことなどを説明できれば、損害が検討される余地があります。
- 開業直後・無申告の場合:事故前の確定申告がない場合でも、帳簿、会計記録、通帳、受注資料などから事業の実態と収入を立証できれば、検討の対象になり得ます。
- 事業拡大の途中だった場合:事故がなければ増収していた蓋然性を、事業計画や受注状況などから客観的に示せれば、その点が考慮される場合があります。
注意 いずれの場合も、立証の難易度は上がります。また、申告額を超える実収入を主張する場合は、過少申告の問題として厳格に判断される傾向があります。「認められない」とあきらめる前に、どの資料で何を説明できるかを整理することが重要であり、判断には資料確認と個別の検討が必要です。
休業日数と休業の必要性をどう説明するか
休業損害では、基礎収入と並んで、休業日数と休業の必要性が重要になります。自営業者・農家の場合、「いつ・どの作業ができなかったか」を、けがの内容と結びつけて説明できると、休業の必要性が伝わりやすくなります。
- 医師の診断や通院記録(実際に通院した日、医師の指示による自宅療養の期間)
- けがの部位・程度と、実際にできなかった作業内容との関係(たとえば腰や腕のけがで重量物の運搬や収穫作業ができなかった、など)
- 事故前後で作業や出荷がどう変化したかを示す作業日誌・出荷記録
- 作業を制限せざるを得なかった期間の記録
体に痛みがある段階で無理に作業を続けると、休業の必要性が伝わりにくくなるだけでなく、症状の悪化を招くおそれもあります。通院や療養が必要な時期には、記録を残しながら療養することが、結果として立証にも資する場合があります。なお、どの範囲の休業日数が認められるかは、けがの程度や治療経過により異なり、個別事情により結論は変わります。
代替作業者を使った場合の費用
自分が作業できない間、従業員・家族・外注先・ヘルパーなどに作業を依頼した場合、その費用が損害として検討されることがあります。この場合のポイントは、依頼の必要性と費用の相当性です。
- 誰に、いつ、どの作業を、いくらで依頼したか(領収書、振込記録、作業の記録)
- その依頼が、事故によるけがのために必要だったといえること
- 費用が、作業内容や地域の相場に照らして相当な範囲であること
家族が代わりに作業した場合は、外部への支払いがないため扱いが難しくなることがありますが、家族の協力で減収を免れたといった事情が、損害の検討において意味を持つ場合があります。代替費用と本人の休業損害の関係(二重に評価されないか等)も含め、整理が必要です。費用が認められる範囲は事案により異なるため、資料を確認したうえで判断する必要があります。
休業損害と後遺障害逸失利益の違い
休業損害と後遺障害逸失利益は、別の損害項目です。混同すると、本来検討すべき損害を見落とすことがあります。
| 項目 | 休業損害 | 後遺障害逸失利益 |
|---|---|---|
| 対象となる損害 | 原則として、治療中(症状固定まで)の収入減少 | 後遺障害が残った場合の、将来の収入への影響 |
| 前提 | けがによる休業 | 症状固定・後遺障害等級の認定 |
| 固定費の扱い | 算入される場合がある | 原則として加算しないとされる(事案により例外あり) |
| 主な検討要素 | 基礎収入・休業日数・休業の必要性 | 基礎収入・労働能力喪失率・労働能力喪失期間 |
後遺障害逸失利益は、治療を続けても症状が改善しない状態(症状固定)に至り、一定の後遺障害が残った場合に、後遺障害等級などを前提に、将来の収入への影響を検討するものです。自営業者・農家の場合、将来の収入をどう見積もるか、若年で事業が成長段階にある場合に賃金センサスをどう扱うかなど、立証上の検討点があります。後遺障害が関係しそうな場合は、症状固定の前後で方針を整理しておくことが重要です。等級や算定の前提は事案により異なり、個別の検討が必要です。
後遺障害が残りそうな場合や、症状固定の時期が近い場合は、休業損害と逸失利益の両面から方針を整理しておくと安心です。どの資料をそろえ、何を確認すべきかを、相談のなかで整理できます。
保険会社から提示を受けたときの確認ポイント
保険会社から休業損害の提示を受けた場合、その金額がどのような前提で計算されているかを確認することが大切です。次の点は、提示額を見直す余地があるかどうかを考えるうえで参考になります。
- 確定申告書の所得金額のみで計算され、固定費が考慮されていないのではないか
- 農繁期・出荷時期などの季節性が反映されていないのではないか
- 代替作業に要した費用が検討されていないのではないか
- 家族労働や専従者給与の実態が説明できているか、寄与率が一方的に低く設定されていないか
- 休業日数が、実際の通院・療養の状況に比べて過少に見られていないか
これらはあくまで一般的な確認の視点であり、提示額が妥当かどうかは、資料を確認したうえで個別に判断する必要があります。納得できない点がある場合は、示談書に署名する前に確認することをおすすめします。いったん示談が成立すると、後から増額を求めることは原則として難しくなります。
相談前に準備したい資料チェックリスト
相談や請求の準備として、次の資料を手元に整理しておくと検討がスムーズです。すべてがそろっていなくても構いません。あるものから準備し、不足分は取得方法を確認していきましょう。
| 資料名 | 確認できること | 注意点 |
|---|---|---|
| 確定申告書(控え) | 事故前年の所得(基礎収入の出発点) | 令和七年一月以降は収受日付印が押されないため、提出の証明は別途必要 |
| 青色申告決算書・収支内訳書 | 売上・経費の内訳、固定費の内容 | 農業所得は農業所得用の様式。事業所得と分けて確認 |
| 帳簿・売上台帳 | 事故前後の売上・受注の推移 | 事故前後の比較ができる形で整理すると有用 |
| 預金通帳・請求書・領収書 | 入出金の実態、固定費の支払い | 事業用と私用が混在する場合は区別を意識 |
| 納税証明書・課税証明書 | 所得・納税額の公的な裏づけ | 提出年月日は証明できないなど範囲に限界 |
| JA精算書・出荷伝票・市場資料 | 出荷の時期・量・金額(農業) | 例年の同時期と比較できると影響を説明しやすい |
| 作業日誌・作付計画 | 作業内容、農繁期・出荷時期 | 事故でできなかった作業を具体化できる |
| 診断書・通院記録 | けがの内容、休業の必要性、通院・療養期間 | けがと作業内容の関係を意識して記録 |
| 代替作業の領収書・振込記録 | 誰に何を依頼し、いくら支払ったか | 必要性・相当性を説明できるようにする |
| 保険会社からの提示書面 | 提示額の前提・計算方法 | 署名前に前提を確認 |
弁護士に相談するタイミング
弁護士への相談は、結果を保証するものではありませんが、資料の整理、見通しの検討、保険会社とのやり取りの進め方、示談前の確認といった点で、判断材料を整える助けになります。次のような場合は、早めに相談を検討するとよいでしょう。
- 確定申告書だけでは収入や休業の影響を説明しにくい場合
- 保険会社から休業損害を否定された、または提示額に納得できない場合
- 農繁期・出荷時期の事故で、季節性や代替作業の影響が大きい場合
- 赤字・開業直後・無申告などで、立証の方法に迷っている場合
- 後遺障害が残る可能性があり、症状固定や逸失利益も視野に入れる必要がある場合
- 示談書に署名する前に、提示内容を確認しておきたい場合
よくある質問
- 確定申告をしていないと、休業損害は請求できませんか。
- 確定申告がない場合でも、直ちに請求できないとは限りません。帳簿、通帳、受注資料などから事業の実態と収入を立証できれば、検討の対象になり得ます。ただし立証の難易度は上がり、個別事情により結論は変わります。
- 赤字申告でも、休業損害は認められますか。
- 赤字でも、休業中の固定費の負担や赤字の拡大などを説明できれば、損害が検討される余地があります。認められる範囲や方法は事案により異なるため、資料を確認したうえで判断する必要があります。
- 農繁期に事故に遭った場合、通常の月より大きい損害を説明できますか。
- 作付計画や例年の出荷実績などから、その時期に作業が集中していたことを示せれば、季節性を踏まえた検討につながる場合があります。どこまで考慮されるかは資料と事案によります。
- 家族が代わりに農作業をした場合、損害になりますか。
- 家族の協力で減収を免れた事情や、代替作業の実態は、損害の検討において意味を持つ場合があります。評価の仕方は事案により異なるため、作業内容や時間などを記録しておくとよいでしょう。
- JAの精算書や出荷伝票は、資料になりますか。
- 出荷の時期・量・金額を示す資料として役立つ場合があります。例年の同時期の数値と比較できると、事故の影響を具体的に説明しやすくなります。
- 開業直後で前年の申告がない場合は、どうすればよいですか。
- 会計帳簿や受注資料などで事業の実態と収入を立証する方向で検討します。事業拡大の途中であった事情を、計画や受注状況から客観的に示せる場合もあります。立証の難易度は高くなります。
- 休業損害と逸失利益は、何が違いますか。
- 休業損害は原則として治療中(症状固定まで)の収入減少、後遺障害逸失利益は後遺障害が残った場合の将来の収入への影響です。前提も算定要素も異なるため、別々に検討します。
- 保険会社の提示額に納得できない場合、示談前に何を確認すべきですか。
- 確定申告書の所得のみで計算されていないか、固定費・季節性・代替費用・家族労働・休業日数が適切に考慮されているかを確認するとよいでしょう。示談が成立すると後からの見直しは原則難しいため、署名前の確認をおすすめします。
まとめ|次にとるべき行動
- 自営業者・農家でも、交通事故による休業損害を請求できる可能性がある。ただし給与所得者より立証は難しくなりやすい。
- 確定申告書だけでなく、帳簿・売上資料・通帳・出荷記録・納税証明書・作業日誌・代替作業費用などを整理することで、提示額を見直す余地がある場合がある。
- 所得が低い・赤字・開業直後・農繁期・家族経営などは、個別事情により結論が変わる。示談前に資料を確認することが重要。
- 休業損害と後遺障害逸失利益は別の項目。症状固定や後遺障害が関係する場合は、早めに方針を整理する。
- 令和七年一月以降は申告書控えに収受日付印が押されないため、提出の証明方法(e-Tax受信通知など)も確認しておく。
休業損害や逸失利益の提示額に不安がある方、示談の前に資料を整理しておきたい方へ。確定申告書だけで判断されていないか、農繁期や家族労働の実態が説明できているかなどを、資料を確認したうえで一緒に検討できます。会計と法律の双方の視点から、見通しの整理をお手伝いします。
あわせて、交通事故の取扱業務を見る/弁護士費用を確認する/弁護士紹介を見る/事務所案内・アクセスを見るもご確認ください。
監修者・執筆者
弁護士・公認会計士 藤井 貴之【肩書・氏名は公式表記に合わせて要確認】
弁護士法人ひょうごあわじみらい法律会計事務所(兵庫県南あわじ市)/神戸みらい法律会計事務所(神戸市須磨区)【事務所名・所在地は公式表記に合わせて要確認】
所属弁護士会・登録番号:【要確認】 / 取扱分野:交通事故、企業法務、相続 ほか【公式の取扱分野に合わせて要確認】
本記事は一般的な情報の整理であり、個別の事案に対する法的助言ではありません。税務の取扱いについては、税理士または所轄の税務署にご確認ください。具体的な対応は個別の事情により異なります。
参考資料
- e-Gov法令検索(民法、自動車損害賠償保障法、自動車損害賠償保障法施行令) https://laws.e-gov.go.jp/
- 国土交通省「自賠責保険・共済の限度額と補償内容(支払基準)」 https://www.mlit.go.jp/jidosha/jibaiseki/about/payment/index.html
- 国税庁「令和7年1月からの申告書等の控えへの収受日付印の押なつについて」 https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/onatsu/index.htm
- 国税庁 確定申告書等の様式・手引き(青色申告決算書・収支内訳書〔農業所得用を含む〕) https://www.nta.go.jp/

24時間365日受付