相続税の申告を終えて一段落したところに、税務署から「相続税の件でご連絡しました」「一度ご来署いただけますか」「資料を確認させてください」といった連絡が届くと、多くの方が強い不安を感じます。神戸市やその周辺にお住まいのご家族から、「何を聞かれるのか」「名義預金や生前の出金を指摘されるのか」「どこまで準備すればよいのか」といったご相談を受けることがあります。
まず落ち着いていただきたいのは、税務署から連絡が来たこと自体は、申告漏れや不正が確定したことを意味するものではないという点です。連絡には、実地調査の事前通知、文書や電話での確認、来署依頼、資料提出の依頼など、いくつかの種類があります。慌てて不正確な説明をしたり、資料を整理しないまま当日を迎えたりすると、かえって事実関係の説明が難しくなることがあります。
この記事では、相続税の税務調査の連絡を受けた方に向けて、連絡が来た直後に確認すべきこと、調査の全体像、説明を求められやすい財産、当日までに準備しておきたい資料、調査後の修正申告や加算税・延滞税の考え方までを整理します。税務上の結論や税額の要否は個別事情により変わるため、断定は避け、確認すべき資料と相談のタイミングをお示しします。
相続税の税務調査の連絡を受け、名義預金・直前出金・相続人間の認識の違いなどにご不安がある場合は、資料を整理したうえで対応方針を検討できます。
Contents
税務署から連絡が来た方へ|まず確認しておきたいこと
連絡を受けた段階では、内容を正確に把握し、記録することが出発点になります。電話でその場での即答を求められても、記憶があいまいな事項は「確認して回答します」と伝えて差し支えありません。次の点を、わかる範囲でメモに残しておくと、その後の準備がしやすくなります。
連絡を受けたときに控えておきたい主な事項
| 確認事項 | 内容の例 |
|---|---|
| 連絡の相手 | どの税務署の、どの部署の、誰からの連絡か(担当者名・連絡先) |
| 対象となる税目・相続 | 相続税か、対象となる被相続人・相続はどれか |
| 連絡の種類 | 実地調査の事前通知か、文書・電話での確認か、来署依頼か、資料提出依頼か |
| 日時・場所・目的 | 希望された日時、場所(自宅・事務所・税務署)、目的として説明された事項 |
| 依頼された資料 | 提出・準備を求められた資料の範囲 |
実地調査の事前通知の場合、税理士等の代理人がいるときは、その代理人にも通知されることがあります。すでに申告を税理士に依頼している場合は、まずその税理士に連絡することが考えられます。
提示された日程の都合がつかない場合、合理的な理由があれば日程調整を申し出ることは一般的に行われています。準備が整わないまま当日を迎えるより、資料を整えられる日程を相談するほうが、正確な説明につながります。電話の段階で、記憶があいまいな金額や経緯を断定的に答える必要はありません。事実と推測を分け、資料を確認したうえで回答する姿勢が、後の食い違いを防ぎます。
相続税の税務調査の基礎知識
「税務調査」と一口にいっても、実際にはいくつかの手続が含まれます。用語の違いを知っておくと、受けた連絡がどの段階のものかを把握しやすくなります。
実地調査・簡易な接触・資料提出依頼の違い
受けた連絡がどれに当たるかによって、準備や対応の重点が変わります。どの手続かがはっきりしないときは、連絡元に確認することが考えられます。
- 実地調査:自宅などに調査官が臨場し、帳簿書類や預貯金の状況などを確認する手続です。原則として事前に通知が行われ、通知では、調査を行う旨、開始日時、場所、目的、対象税目、対象期間、対象となる帳簿書類、担当職員などが示されます(合理的な理由があるときなど、事前通知が行われない場合もあります)。
- 簡易な接触:文書の送付、電話による連絡、来署依頼による面接などにより、申告内容の確認や是正を促す手法で、実地調査とは区別される行政指導として行われるものです。
- 資料提出依頼・お尋ね:特定の資料の提出や、財産・取引に関する確認を求めるものです。
修正申告・更正・更正の請求
- 修正申告:いったん行った申告について、税額が不足していた場合などに、納税者自身が申告をやり直す手続です。
- 更正処分:税務署長が、職権で課税標準や税額を是正する処分です。
- 更正の請求:申告した税額が過大であった場合などに、納税者が減額を求める手続で、原則として法定申告期限から5年以内に行うこととされています(相続税では、遺産分割の確定など一定の事由が生じた場合の特則もあります)。
相続税の申告・納税の期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月とされています。また、更正や決定ができる期間は原則として法定申告期限の翌日から5年、偽りその他不正の行為があった場合は最長7年とされています。具体的な適用は個別に確認が必要です。
相続税の調査で説明を求められやすい財産・取引
相続税の調査では、申告内容の裏付けが確認されます。とくに説明を求められやすい代表的な財産・取引には、次のようなものがあります。該当するかどうか、また評価や特例の適用可否は、資料に基づいて個別に確認する必要があります。
| 財産・取引 | 確認されやすい主な観点 |
|---|---|
| 被相続人名義の預貯金 | 全口座の把握漏れ、取引履歴、残高証明との整合 |
| 家族名義の預貯金(名義預金の可能性) | 原資、通帳・印鑑の管理者、入出金の実行者、名義人の認識 |
| 相続開始前後の出金・手元現金 | 大口出金の使途、現金保管の有無と金額 |
| 生前贈与 | 贈与の事実・時期、贈与契約書、贈与税申告、資金移動の記録 |
| 生命保険金・保険契約 | 契約者・被保険者・受取人の関係、保険料の負担者 |
| 不動産の評価 | 評価方法、土地の形状・利用状況、特例適用の要件 |
| 有価証券・投資信託・自社株 | 保有状況、評価、名義 |
| 貸付金・未収金 | 被相続人が有していた債権の把握 |
| 国外財産・海外口座 | 海外資産の把握、国外送金の記録 |
| 債務・葬式費用 | 控除できる債務・費用の範囲と裏付け資料 |
| 小規模宅地等の特例・配偶者の税額軽減 | 適用要件の充足と必要書類 |
いずれも、「該当するから直ちに問題がある」という関係にはありません。資料で事実関係を確認し、必要に応じて説明できるよう整理しておくことが大切です。
名義預金・直前出金で確認されやすい点
名義預金
家族名義の預金であっても、実質的に被相続人の財産と評価される場合には、相続財産として申告の対象になります。もっとも、口座の名義だけで機械的に決まるわけではなく、次のような事情を総合して判断されるのが一般的です。
- 預入れの原資が誰の財産だったか
- 通帳・印鑑・キャッシュカードを誰が管理していたか
- 入出金を誰が行っていたか
- 名義人が自由に使える状態だったか
- 贈与契約書、贈与税申告、振込の記録、受贈者の認識があるか
「家族名義だから相続財産ではない」とも、「名義預金だから必ず追徴される」とも、一律には言えません。結論は個別事情により異なり、資料を確認したうえで判断する必要があります。
直前出金・使途不明金
相続の開始前後にまとまった金額の出金があると、その使途について説明を求められやすくなります。あらかじめ、使途を種類ごとに分けて整理しておくと、説明がしやすくなります。
- 医療費・入院費(領収書、請求書)
- 介護費・施設利用料(請求書、利用明細)
- 生活費
- 葬儀費用(見積書、領収書)
- 納税資金
- 生前贈与や相続人への移転(記録、契約書)
- 手元現金として保管しているもの
使途をすぐに説明できない出金があっても、それだけで「隠ぺい」や「脱税」と決まるわけではありません。まずは事実関係と裏付け資料を整理し、そのうえで説明を準備することが考えられます。
当日までに準備しておきたい資料
手元の資料を整理しておくと、質問に対して事実に基づいた説明がしやすくなります。次の資料は準備の目安です(すべてが必要になるとは限らず、事案により異なります)。
- 相続税申告書一式、申告時の財産目録
- 遺産分割協議書、遺言書
- 戸籍関係書類
- 被相続人の預貯金通帳、取引履歴、残高証明書
- 相続人名義の通帳のうち、被相続人からの資金移動があるもの
- 贈与契約書、贈与税申告書の控え
- 生命保険証券、支払通知書
- 不動産の固定資産税評価証明書、登記事項証明書、評価資料
- 証券会社の取引報告書
- 借入金・未払金・葬式費用に関する資料
- 医療費・介護費・生活費・葬儀費用の領収書
- 税務署からの通知・提出依頼書、電話の内容を控えたメモ
- 税理士とのやり取りの記録
調査当日の受け答えで意識したいこと
- 事実と推測を分けて話す(あいまいな点は断定しない)
- わからないことは、その場で無理に答えず、資料を確認してから回答する
- 質問された内容と、答えた内容を記録しておく
- 資料を提出・預ける場合は、控えを取り、預けた範囲を確認する
- 相続人の間で認識が異なる事項は、一人で抱えて説明しようとしない
- 税理士・弁護士など、確認すべき相手がいる事項は分けて整理する
正確な資料に基づいて誠実に説明することが基本です。事実に反する説明や資料の隠匿は、かえって不利益につながるおそれがあり、おすすめできません。調査官に対して対立的に振る舞う必要もありません。
調査後の修正申告・更正と、加算税・延滞税
調査の結果、申告内容の見直しが必要と指摘されることがあります。その場合は、指摘の内容、根拠となる資料、対象となる金額、対象者を確認したうえで、修正申告の勧奨に応じるかどうかを検討します。
修正申告に応じると、その内容については、後から不服を申し立てること(再調査の請求や審査請求)ができなくなります。一方、勧奨に応じない場合には、税務署長が更正処分を行うことがあり、その処分に不服があるときは、原則として処分を知った日の翌日から3か月以内に、再調査の請求(税務署長等に対するもの)または審査請求(国税不服審判所長に対するもの)を行うことができます。修正申告をするか、内容を争うかは、指摘内容と資料を踏まえた慎重な検討が必要です。
申告のやり直しに伴い、次のような加算税・延滞税が問題になることがあります。名称と大まかな枠組みは次のとおりですが、実際に課されるかどうか、割合や税額は、個別事情や納付の時期により異なります。
| 種類(根拠) | 課される主な場面 | 割合の目安 |
|---|---|---|
| 過少申告加算税(国税通則法第65条) | 申告はしたが、税額が不足していた場合 | 原則10%。期限内申告税額と50万円のいずれか多い額を超える部分は15% |
| 無申告加算税(国税通則法第66条) | 申告義務があるのに期限内に申告しなかった場合 | 50万円まで15%、50万円超300万円以下は20%、300万円超は30%(法定申告期限が令和6年1月1日以後のもの) |
| 重加算税(国税通則法第68条) | 事実の隠ぺい・仮装があると判断された場合 | 過少申告に代えて35%、無申告に代えて40%(過去5年以内の繰り返し等でさらに加重される場合があります) |
| 延滞税(国税通則法第60条ほか) | 納付が遅れた場合の、利息に相当するもの | 割合は年ごとに見直し。令和8年中は、納期限の翌日から2か月以内が年2.8%、2か月経過後が年9.1% |
上記は割合の目安です。実際の割合・税額は、納付の時期、金額、加重・軽減の有無、個別事情により異なります。最新の割合は国税庁の公表資料でご確認ください。調査の連絡を受ける前に自主的に修正申告・期限後申告をした場合など、加算税が軽減または課されない取扱いもあります。とくに重加算税は、事実の隠ぺい・仮装があったと判断される場合に課されるもので、その有無は個別の事情により判断が分かれます。安易な自己判断は避け、資料に基づいて確認することが大切です。
修正申告により納税額が増える場合、納税資金の準備や、相続人の間での負担の調整、遺産分割の内容との整合が問題になることもあります。税額の要否や計算そのものは、税理士等への確認が必要です。
弁護士に相談を検討したいタイミング
相続税の税務調査は税務の問題ですが、その背景に法律問題が絡んでいることがあります。次のような事情がある場合には、税務面の確認とあわせて、法的な整理を検討する意味があります。
- 名義預金や直前出金について、相続人の間で認識が食い違っている
- 特定の相続人が被相続人の預金を管理・出金していた
- 使途不明金をめぐって、相続人間に争いがある
- 遺産分割協議書の内容と、税務上の説明が食い違っている
- 生前贈与・特別受益・遺留分・寄与分などが関係している
- 修正申告により生じた負担を、相続人間でどう分担するか調整が必要
弁護士に相談しても、調査の結果を保証できるものではありません。もっとも、資料を確認することで対応方針を整理でき、相続人間の紛争リスクを事前に把握しやすくなります。当事務所は、代表弁護士が弁護士・通知税理士・公認会計士の資格を有しており、相続をめぐる法律問題と、財務・税務面の検討を横断して整理することができます。税理士に申告を依頼している場合でも、法律面・証拠面・相続人間の調整といった観点から、必要な資料の整理をお手伝いできます。
相続人間の認識の違いや、使途不明金・名義預金をめぐる問題については、資料を確認したうえで、法律面からの見通しと対応方針を整理できます。
よくある質問(FAQ)
- 相続税の税務調査の連絡が来たら、まず何を確認すればよいですか?
- どの税務署の誰からの連絡か、対象となる税目・相続、連絡の種類(実地調査の事前通知か、文書・電話での確認か、来署依頼か、資料提出依頼か)、希望された日時・場所・目的、依頼された資料の範囲を、わかる範囲で控えておくことが出発点になります。税理士に依頼している場合は、まずその税理士に連絡することが考えられます。
- 税務署から連絡が来た時点で、申告漏れや不正が確定しているのですか?
- いいえ。連絡自体は、確認や資料提出を求めるものが多く、それだけで申告漏れや不正が確定するわけではありません。まずは内容を正確に把握し、資料を整理することが大切です。
- 名義預金は必ず相続財産として扱われますか?
- 一律には決まりません。口座の名義だけでなく、原資、通帳・印鑑の管理者、入出金の実行者、名義人の認識などを総合して判断されるのが一般的です。結論は個別事情により異なり、資料を確認したうえで判断する必要があります。
- 亡くなる前に引き出した預金(直前出金)は、必ず問題になりますか?
- 必ず問題になるわけではありません。医療費・介護費・生活費・葬儀費用・納税資金・贈与・手元現金など、使途を種類ごとに分けて整理し、裏付け資料を準備しておくことで、説明がしやすくなります。使途を説明できない出金があっても、それだけで隠ぺいと決まるわけではありません。
- 税務調査の日程は変更できますか?
- 提示された日程の都合がつかない場合、合理的な理由があれば日程調整を申し出ることは一般的に行われています。準備が整わないまま当日を迎えるより、資料を整えられる日程を相談するほうが、正確な説明につながります。
- 税務署から修正申告を勧められたら、応じなければならないのですか?
- 修正申告に応じるかどうかは、指摘の内容・根拠資料・金額を確認したうえで検討します。修正申告に応じると、その内容については後から不服申立て(再調査の請求・審査請求)ができなくなる点に注意が必要です。内容を争う余地があるかどうかも含め、慎重な検討が求められます。
- 重加算税がかかるのは、どのような場合ですか?
- 事実の隠ぺい・仮装があったと判断される場合に、過少申告加算税・無申告加算税に代えて課されるものとされています。その有無は個別の事情により判断が分かれるため、一律に断定はできません。資料に基づいて確認することが大切です。
- 弁護士に相談するのは、どのタイミングがよいですか?
- 相続人の間で名義預金や使途不明金の認識が食い違っている、遺産分割の内容と税務上の説明が食い違っている、特別受益や遺留分が関係している、といった法律問題が絡む場合は、早い段階で相談する意味があります。結果を保証するものではありませんが、資料を確認して対応方針を整理し、相続人間の紛争リスクを把握しやすくなります。
まとめ
- 税務署からの連絡自体は、不正が確定したという意味ではない。まず内容を正確に把握し、記録する。
- 連絡の種類(実地調査・簡易な接触・資料提出依頼)で準備の重点が変わる。
- 名義預金・直前出金・生前贈与・保険・不動産評価は説明を求められやすいが、該当=問題ではない。資料で個別に確認する。
- 当日は事実と推測を分け、わからないことは資料確認後に回答する。控えを取る。
- 修正申告に応じると、その内容は後から争えなくなる。指摘内容と資料を踏まえて検討する。
- 相続人間の争いや遺産分割との食い違いが絡む場合は、税務面の確認とあわせて法的な整理を検討する。
相続税の税務調査の連絡を受けてお困りの方へ。資料を整理したうえで、相続人間の認識の違いや使途不明金・名義預金をめぐる問題を法律面から確認し、対応方針を整理できます。初回のご相談は無料です(予約制)。夜間・土日祝も、ご予約により対応します。
お電話でのご予約:078-797-5227(受付時間 9時〜20時)
監修・執筆
弁護士法人ひょうご支所 神戸みらい法律会計事務所
代表弁護士 藤井貴之(弁護士・通知税理士・公認会計士)
所属:兵庫県弁護士会/日本公認会計士協会兵庫会
取扱分野:遺言・相続、交通事故、借金問題(債務整理)、離婚・男女問題、労働問題、刑事事件・少年事件、企業法務ほか

24時間365日受付