「年金だけでは、毎月の返済が追いつかなくなってきた」「親あての督促状が届いていて、どうすればよいか分からない」——垂水区や須磨区にお住まいの高齢のご本人だけでなく、同居されているご家族や、離れて暮らすお子さんから、こうしたご相談が始まることがあります。
年金で生活している方の借金は、整理を検討できる場合があります。ただし、どの方法が向いているかは、毎月の収支、財産の状況、持ち家の有無、保証人がいるか、税金や社会保険料の滞納があるかなどによって変わります。「年金受給者だから手続できない」「年金は絶対に守られる」「家は必ず残せる」といった単純な決めつけは、いずれも正確ではありません。
この記事では、任意整理・個人再生・自己破産の違い、年金や持ち家への影響、保証人や家族への影響、医療費・生活費が原因の借入れの考え方を、一般的な内容として整理します。読み終えたときに、「次に何を確認し、どの資料をそろえ、いつ相談すればよいか」が分かることを目指します。なお、ここでの説明は一般的な整理であり、最終的な見通しは資料を確認したうえで個別に判断する必要があります。
ご本人がすぐに動けない場合でも、ご家族が借入先や残高の分かる資料を整理しておくことで、相談がスムーズになります。まずは状況の整理からご検討ください。
Contents
まずは結論|年金生活でも借金整理を検討できる場合があります
細かい手続の前に、全体像をつかんでおきましょう。借金整理の方法は大きく分けて三つあり、年金収入だけの世帯でも、状況によっていずれかを検討できる場合があります。どれが適しているかは、収支・財産・持ち家・保証人・滞納の有無によって変わります。
| 確認したい点 | 考え方の方向性(一般論) |
|---|---|
| 年金収入だけでも整理できるか | 収支や財産の状況により、任意整理・個人再生・自己破産のいずれかを検討できる場合があります。収入が年金のみであること自体が、整理をできない理由になるわけではありません。 |
| 年金は差し押さえられるか | 公的年金を受け取る権利そのものは、原則として差押えが禁止されています。ただし、年金が口座に振り込まれた後の「預金」は扱いが変わります。税金や社会保険料の滞納も別の扱いです。 |
| 持ち家は残せるか | 自己破産では持ち家が処分の対象になる可能性があります。住宅ローンが残る家は、個人再生の住宅ローンに関する特則で住み続けられる場合があります。ローンを完済した家は、別の注意点があります。 |
| 家族に影響はあるか | 本人の借金と家族の財産は、原則として別のものです。ただし、家族が保証人・連帯保証人になっている場合は、その家族に請求が及ぶ可能性があります。 |
| 原因が医療費・生活費のとき | 借入れの原因を責める必要はありません。債務整理に加えて、家計の立て直しや福祉制度の確認など、生活再建の視点も合わせて検討します。 |
大切なのは、「年金・持ち家・保証人・滞納」という四つの点を確認してから方針を決めることです。順番を踏んで確認すれば、無理のない選択肢が見えてきます。
年金暮らしで返済が苦しいときの基礎知識
任意整理・個人再生・自己破産の違い
借金整理の代表的な方法は、次の三つです。いずれも、生活を立て直すための法的な仕組みです。
任意整理は、裁判所を通さずに、債権者(貸した側)と返済の方法を話し合う手続です。将来の利息のカットや、返済期間の組み直しを交渉し、原則として残った元本を分割で返していくことを前提にします。返済を続けられる収入の見通しがあることが必要になります。
個人再生は、裁判所を通じて借金を大きく減らし、減額後の金額を原則として三年程度で分割返済する手続です。継続的・反復的な収入があることが前提で、住宅ローンが残る持ち家については、一定の要件のもとで住み続けられる特則を利用できる場合があります。
自己破産は、裁判所を通じて返済が難しいことを認めてもらい、原則として返済義務を免除(免責)してもらう手続です。一定の価値を超える財産は処分の対象になりますが、生活に必要な一定の現金や家財などは手元に残せる扱いがあります。なお、税金など一部の支払いは免責されても残ります。
| 項目 | 任意整理 | 個人再生 | 自己破産 |
|---|---|---|---|
| 裁判所の関与 | 原則として関与しない | 関与する | 関与する |
| 借金の扱い | 主に将来利息の見直し | 大きく減額して分割返済 | 原則として返済義務を免除 |
| 返済の有無 | 原則として返済を続ける | 減額後の金額を分割返済 | 原則として返済しない |
| 持ち家 | 影響は受けにくい | 特則で残せる場合がある | 処分対象になる可能性 |
| 主に前提となる収入 | 返済を続けられる収入 | 継続的・反復的な収入 | 収入が乏しくても利用を検討できる |
どの方法が向いているかは、借入総額、毎月の収支、財産、持ち家、家族構成などによって変わります。同じ「年金生活」でも、適切な方法は人によって異なります。
「年金受給者だから手続できない」わけではありません
「年金で暮らしているから、もう何もできない」と思い込んで、督促を放置してしまう方がいます。しかし、年金収入のみであることそのものが、借金整理をできない理由になるわけではありません。たとえば自己破産は、収入が乏しい場合でも利用を検討できる手続ですし、年金は安定した収入と考えられるため、状況によっては個人再生を検討できる場合もあります。
一方で、どの手続にも要件や注意点があり、「年金生活者なら必ずこの方法が使える」と言い切れるものではありません。借入額や財産の状況、持ち家の有無などによって結論は変わります。まずは現状を整理することが出発点になります。
年金は差し押さえられる?|受給権と口座のお金は分けて考える
年金で暮らす方が最も不安に感じるのが、「整理を考えている間に、生活費である年金まで差し押さえられてしまうのではないか」という点です。ここは誤解が生まれやすいので、「年金を受け取る権利」と「口座に入った後のお金」を分けて理解することが大切です。
年金を受け取る権利そのものは原則として守られる
国民年金や厚生年金などの公的年金について、年金を受け取る権利(受給権)は、法律上、原則として他人に譲ったり、担保にしたり、差し押さえたりすることができないものとされています。生活を支えるための制度だからです。したがって、一般の借金(カードローンなど)を滞納したことを理由に、債権者が年金そのものを直接差し押さえることは、原則としてできません。
ただし、「絶対に差し押さえられない」とまでは言えません。税金や社会保険料などの滞納処分による場合には、例外的に一定の範囲で扱いが異なることがあります。詳しくは後述します。
口座に入った後のお金は「預金」として扱われる
注意が必要なのは、年金が銀行口座に振り込まれた後です。口座に入った時点で、そのお金は法律上「預金」という性質に変わると考えられています。預金は、年金そのものとは違い、原則として差押えの対象になり得ます。つまり、年金を受け取る権利は守られていても、振り込まれた直後の預金口座が差し押さえられる、という事態は起こり得るのです。
もっとも、差し押さえられた預金が実質的に年金だと分かる場合には、裁判所に対して、その差押えの範囲を変更してもらうよう申し立てる手続が用意されています。年金の振込口座で、振り込まれた直後に差し押さえられたようなケースでは、実質的に年金を差し押さえたのと同じだと評価され、認められる可能性があります。ただし、預金の状況や生活の状況などを踏まえて裁判所が判断するため、必ず認められるとは限りません。また、対応には時間的な制約があり、早く動く必要があります。差押えの通知が届いたら、できるだけ早く弁護士に相談することをおすすめします。
税金・社会保険料の滞納は借金と扱いが違う
税金(固定資産税・住民税など)や、社会保険料・年金保険料の滞納は、一般の借金とは扱いが異なります。これらは、裁判を経なくても滞納処分として財産を差し押さえられることがあり、自己破産で免責を受けても支払い義務が残るのが原則です。そのため、借金の整理だけでは解決しないことがあります。
税金や保険料の滞納がある場合は、分割納付や猶予などの制度を、自治体や年金事務所の窓口で確認することが重要です。借金の整理と並行して、滞納分への対応も考える必要があります。
持ち家がある場合の注意点|自己破産と個人再生で異なります
長く住んできた持ち家を残せるかどうかは、年金世帯にとって大きな関心事です。ここは選ぶ手続によって扱いが大きく変わるため、慎重な検討が必要です。「自己破産でも必ず住み続けられる」「個人再生なら必ず家を残せる」とは言えません。
自己破産では持ち家が処分対象になる可能性
自己破産では、一定の価値を超える財産は、債権者への配当のために処分の対象になります。持ち家(不動産)は価値のある財産にあたることが多いため、自己破産を選ぶ場合には、処分の対象になる可能性があります。住宅ローンが残っている場合は、ローンの担保(抵当権)の関係でも家を手放すことになるのが一般的です。
住宅ローンが残る家は「住宅ローン特則」で住み続けられる場合
住宅ローンが残っている持ち家については、個人再生の手続のなかで、住宅ローンに関する特則を利用できる場合があります。これは、住宅ローンはこれまでどおり(または条件を調整して)支払い続けることを前提に、その他の借金を減額し、自宅を手放さずに整理を進める仕組みです。
ただし、この特則には、対象となるローンや住宅の種類、居住の状況など、いくつかの要件があります。誰でも利用できるわけではなく、共有名義や、住宅以外の借金の担保にもなっている場合などは利用できないことがあります。利用できるかどうかは、契約内容や登記の状況を確認したうえで判断します。
ローンを完済した持ち家は「清算価値」に注意
意外に見落とされがちなのが、住宅ローンを完済した持ち家がある場合です。ローンがなく価値のある不動産を持っていると、「もし破産して処分したらいくらになるか」という金額(清算価値)が大きくなります。個人再生では、この清算価値を下回らない金額を返済する必要があるという考え方があるため、家の価値が高いほど、必要な返済額も大きくなり、かえって個人再生を使いにくくなることがあります。
「ローンがなく価値のある持ち家がある」場合は、自己破産・個人再生のいずれを選んでも持ち家の扱いが論点になります。査定額や登記、名義(配偶者との共有、親子共有など)を確認したうえで、方針を検討する必要があります。
家族・保証人への影響|本人の借金と家族の財産は別
保証人・連帯保証人になっている家族への請求
まず押さえておきたいのは、本人の借金と家族の財産は、原則として別のものだということです。親が借金を整理しても、子どもがその借金を当然に背負うわけではありません。
ただし、例外があります。家族が保証人や連帯保証人になっている場合です。この場合、本人が自己破産や個人再生をすると、債権者は保証人である家族に請求できることになるのが一般的です。つまり、本人の整理によって、保証人になっている配偶者やお子さんに支払いの請求が及ぶ可能性があります。誰かが保証人になっている借金がないかは、整理の方針を決めるうえで必ず確認すべき点です。
家族が本人に代わって手続を進められるか
「離れて暮らす親の借金を、子どもが代わりに整理してあげたい」と考える方は少なくありません。ご家族が借入先や残高の分かる資料を集めて相談に同席することは、とても役に立ちます。一方で、借金整理はご本人の権利義務に関わる手続のため、原則としてご本人の意思確認や委任が必要であり、家族が本人の意向と関係なく勝手に進めることはできません。
また、ご本人に認知症などがあり、判断能力に不安がある場合には、成年後見といった別の制度の検討が必要になることがあります。こうした場合の進め方も含めて、まずは家族が状況を整理し、相談の場で確認するのがよいでしょう。
医療費・生活費が原因の借入れ|生活再建の視点も一緒に
年金世帯の借入れは、医療費や介護費、冠婚葬祭費、生活費の不足の補填、家族への援助など、生活を維持するなかでやむを得ず生じることが少なくありません。借入れの原因を悔やんだり、責めたりする必要はありません。大切なのは、これからどう確認し、どう生活を立て直すかです。
借金整理は、あくまで手段の一つです。整理と合わせて、家計全体の収支の見直しや、医療・介護の負担を軽くする制度、福祉の窓口など、利用できる支援がないかを確認することも、生活再建には欠かせません。医療費の減免や生活の支援に関する制度は、お住まいの自治体や関係機関の窓口で、最新の内容を確認することをおすすめします。借金の問題と生活の問題を、一緒に整理していく視点が重要です。
相談前に確認しておきたい資料チェックリスト
相談の前に、次のような資料が手元にあると、状況の把握が早く進みます。すべてがそろっていなくても相談は可能です。分かる範囲で集めておきましょう。ご家族が代わりに準備する場合にも役立ちます。
- 借入先の一覧(どこから借りているか)と、おおよその残高が分かるもの
- 請求書・督促状・裁判所からの書類など、届いている郵便物
- ローンやキャッシングの契約書、クレジットカード
- 預金通帳(年金の振込口座を含む)
- 年金の振込通知書や、年金額の分かる資料
- 毎月の家計の収支がおおよそ分かるメモ
- 持ち家がある場合は、固定資産税の通知書、登記に関する書類、住宅ローンの残高が分かる資料
- 誰かが保証人・連帯保証人になっている場合は、その契約に関する資料
- 医療費・介護費の負担が分かる資料
- 税金・社会保険料・年金保険料の滞納が分かる資料(督促状など)
「何から手をつければよいか分からない」という段階でも問題ありません。届いている郵便物と通帳をご用意のうえ、まずは状況の整理からご相談いただけます。ご家族だけで準備を進めることもできます。
弁護士に相談するタイミングと、相談でできること
「もう少し自分で頑張ってから」と考えているうちに、督促が増えたり、預金口座が差し押さえられたりして、対応が難しくなることがあります。次のような場面では、早めに相談を検討することをおすすめします。
- 年金や手元の資金だけでは、毎月の返済が回らなくなってきたとき
- 督促状や裁判所からの書類が届いたとき
- 年金の振込口座が差し押さえられそう、または差し押さえられたとき
- 同居や離れて暮らす家族が、親あての督促に気づいたとき
- 家族が保証人になっている借金があり、影響が心配なとき
相談でできるのは、結果をお約束することではありません。資料を確認したうえで、任意整理・個人再生・自己破産のどれを検討すべきか、年金・持ち家・保証人・滞納への影響を踏まえて、対応方針を整理することです。垂水区・須磨区・名谷・舞子・塩屋など、神戸市西部にお住まいのご本人やご家族からのご相談にも対応しています。ご本人が動きにくい場合は、ご家族が資料を整理して相談を始めることもできます。
資料を確認したうえで、無理のない選択肢を一緒に整理できます。弁護士費用の内容は、費用ページでご確認いただけます。
よくある質問(FAQ)
年金暮らしでも自己破産できますか?
年金収入のみであること自体が、自己破産をできない理由になるわけではありません。自己破産は収入が乏しい場合でも利用を検討できる手続です。ただし、財産の状況などにより手続の進み方は変わります。個別事情により結論は異なりますので、資料を確認したうえで判断する必要があります。
自己破産すると年金は止まりますか?
公的年金を受け取る権利そのものは、自己破産によって失われるものではなく、原則として守られます。自己破産をしたからといって、年金の支給が止まるわけではありません。ただし、口座に振り込まれた後のお金の扱いは別の問題です。
年金が入る口座を差し押さえられることはありますか?
年金そのものを直接差し押さえることは原則としてできませんが、口座に振り込まれた後の預金は、原則として差押えの対象になり得ます。年金由来だと分かる場合には、裁判所に範囲の変更を申し立てて救済される可能性がありますが、必ず認められるとは限らず、早めの対応が必要です。
持ち家があると自己破産できませんか?
持ち家があっても自己破産の申立て自体はできます。ただし、価値のある不動産は処分の対象になる可能性があり、住み続けられないことがあります。家を残したい場合は、個人再生など他の方法も含めて検討します。名義や住宅ローンの有無によって扱いが変わります。
個人再生なら家を残せますか?
住宅ローンが残る持ち家については、一定の要件を満たせば、住宅ローンに関する特則を使って住み続けられる場合があります。一方、ローンを完済した価値のある家がある場合は、清算価値の関係で返済額が大きくなることがあります。利用できるかは個別事情により異なります。
親の借金を子どもが返す必要はありますか?
原則として、親の借金を子どもが当然に返す義務はありません。ただし、子どもが保証人・連帯保証人になっている場合は請求が及ぶことがあります。また、相続が関わる場面では別の検討が必要です。詳しくは個別の状況を確認する必要があります。
保証人になっている家族には影響がありますか?
本人が自己破産や個人再生をすると、保証人・連帯保証人になっている家族に対して、債権者が請求できることになるのが一般的です。誰かが保証人になっている借金がある場合は、その家族への影響も踏まえて方針を検討する必要があります。
相談前に何を準備すればよいですか?
借入先の一覧、届いている請求書・督促状、通帳、年金額の分かる資料、持ち家がある場合は固定資産税の通知書や登記・住宅ローンの資料などがあると役立ちます。すべてそろっていなくても相談は可能です。ご家族が代わりに準備することもできます。
まとめ|年金・持ち家・保証人を確認してから方針を決める
最後に、要点と次の行動を整理します。
- 年金で暮らしていても、収支や財産の状況により、任意整理・個人再生・自己破産のいずれかを検討できる場合があります。
- 公的年金を受け取る権利は原則として守られますが、口座に振り込まれた後の預金は扱いが変わります。税金・社会保険料の滞納も別の問題です。
- 持ち家は、自己破産・個人再生で扱いが異なります。住宅ローンの有無や名義によって結論が変わります。
- 本人の借金と家族の財産は別ですが、保証人になっている家族には請求が及ぶ可能性があります。
- まずは「借入先・残高・督促・通帳・年金額・持ち家・保証人・滞納」を確認することが出発点です。資料がそろわなくても、相談は始められます。
これらは一般的な整理であり、最終的な見通しは、資料を確認したうえで個別事情に応じて判断する必要があります。一人で抱え込まず、ご家族と一緒に、早めに状況を整理することが、生活を立て直す第一歩になります。
年金・持ち家・保証人・滞納の状況を確認したうえで、任意整理・個人再生・自己破産のどれを検討すべきか、対応方針を一緒に整理できます。ご本人からのご相談はもちろん、ご家族からのご相談にも対応しています。
監修者・執筆者
本コラムは、神戸みらい法律会計事務所(神戸市須磨区)の弁護士が監修しています。当事務所は、法律と会計・税務の両面から、借金問題・債務整理に関するご相談に対応しています。弁護士の所属・経歴・取扱分野は、弁護士紹介ページをご覧ください。
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