後継者不在や事業の選択と集中を背景に、中小企業のM&A(合併・買収)は身近な選択肢になりつつあります。一方で、買い手候補や仲介会社・FA(フィナンシャル・アドバイザー)から「DD資料を出してください」と言われ、何をどこまで準備すればよいか戸惑う売り手側の経営者は少なくありません。
DD(デューデリジェンス)は、主に譲り受け側(買い手側)が、譲り渡し側(売り手側)の財務・法務・事業・税務などを調査する工程です。もっとも、資料を準備するのは譲り渡し側です。資料を整えておくことで、質疑への対応や価格交渉、表明保証・補償・クロージング条件の検討を進めやすくなる場合があります。
この記事では、中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」などの公的資料を踏まえ、売り手側が準備すべき資料を、法務DD・財務DDに分けて整理します。資料がそろっていない場合の現実的な対応にも触れます。
なお、結論は個別事情やスキーム(株式譲渡・事業譲渡・会社分割・合併など)によって異なります。資料を確認したうえで判断する必要があるため、本記事は一般的な整理としてお読みください。
この記事でわかること
- DD(デューデリジェンス)の意味と、法務DD・財務DDの違い
- 売り手側が資料を準備する理由と、価格・契約条件への影響
- 法務DD・財務DDで準備すべき資料の一覧と、見られるポイント
- 資料を開示する前に確認すべき秘密保持・個人情報・開示範囲
- 資料が不足している場合の、無理のない整理のしかた
- 弁護士・公認会計士に相談するタイミング
M&Aを検討し始めた段階や、買い手候補・仲介会社からDD資料の提出を求められた段階で、どの資料をどの範囲で開示するかを整理しておくと、その後の交渉や契約条件の検討を進めやすくなる場合があります。
神戸みらい法律会計事務所では、弁護士と公認会計士の視点から、法務・財務の論点整理についてご相談を承っています。開示前・基本合意前・最終契約前に一度ご確認いただくことをおすすめします。
Contents
結論|売り手側が準備する資料の全体像
譲り渡し側が準備する資料は、大きく次の6つに分けて考えると整理しやすくなります。まずは全体像を押さえ、手元にあるものと不足しているものを仕分けることが出発点です。
- 会社の基本資料:定款、登記事項証明書、株主名簿、各種議事録など
- 法務資料:主要契約書、許認可、不動産、知的財産、訴訟・紛争に関する資料など
- 財務資料:決算書、税務申告書、勘定科目内訳明細書、総勘定元帳、試算表など
- 労務・許認可・不動産・知財資料:就業規則、賃金規程、許認可、賃貸借契約、商標・特許など
- 不足資料の一覧:「ない/再発行できる/今後整備する/説明で補う」に分けた一覧
- 質問管理表:買い手からの質問と回答、提出済み資料を管理する一覧
あわせて重要なのが、開示の前提整理です。秘密保持契約(NDA)の締結状況、開示先と開示範囲、従業員や取引先の個人情報・営業秘密の取扱いを、開示前に確認しておく必要があります。資料を「そろえること」と「どこまで・どの順序で見せるか」は、分けて考えることをおすすめします。
デューデリジェンス(DD)とは
DD(デューデリジェンス)とは、M&Aの対象となる会社や事業について、買い手側が、その実態やリスクを調査・検討する工程をいいます。買い手は、調査結果を踏まえて、買収するかどうか、いくらで、どのような条件で取引するかを判断します。
法務DD・財務DD・税務DD・ビジネスDD・労務DDの違い
DDは、調査する分野によっていくつかに分かれます。中小企業のM&Aでは、法務DDと財務DDが中心になることが多く、必要に応じて税務・労務・ビジネス(事業)の観点が加わります。
- 法務DD:会社の設立・株式・契約・許認可・労務・知的財産・訴訟など、法的なリスクを確認します。
- 財務DD:決算書や帳簿をもとに、財政状態や収益力、簿外債務の有無などを確認します。
- 税務DD:過去の税務処理や、将来の税務負担・税務リスクを確認します。税務上の判断には税理士の確認が必要です。
- ビジネス(事業)DD:事業内容、市場、取引先、収益構造など、事業面を確認します。
- 労務DD:労働条件、未払残業代、社会保険、労使トラブルなど、労務面を確認します。
法務DDと財務DDは重なる部分もあります。たとえば役員貸付金や関連当事者取引は、財務面の論点であると同時に、手続の適法性という法務面の論点にもなります。神戸みらい法律会計事務所では、弁護士と公認会計士の双方の視点から、こうした横断的な論点を整理できます。
中小企業のM&AにおけるDDの位置づけ
DDの範囲や深さは、案件によって異なります。中小企業のM&Aでは、規模や取引内容により、簡易な確認にとどまる場合もあります。実施範囲は、買い手側の意向、予算、スキーム、想定されるリスクによって変わります。
そのため、「すべての資料を完璧にそろえなければM&Aができない」というわけではありません。一方で、資料の不備は買い手の不安や追加質問につながり、価格や契約条件に影響する可能性があります。早めに整理しておくほど、説明や対応方針を検討しやすくなります。
スキーム(株式譲渡・事業譲渡・会社分割・合併)で必要資料は変わる
M&Aの方法(スキーム)によって、必要な資料や法的な論点は異なります。たとえば、株式譲渡では株主の確定や譲渡制限株式の承認手続が重要になります。事業譲渡では、その範囲によって株主総会の特別決議が必要となる場合があり、契約上の地位の移転には相手方の同意が必要になることがあります。
会社分割では、労働契約承継法に基づく労働者への通知や協議などの手続が必要となる場合があります。許認可は、スキームによって、承継できるか、再取得が必要かが異なります。どのスキームを採るかによって準備すべき資料が変わるため、早い段階で確認しておくことをおすすめします。
譲り渡し側が資料を準備する理由
買い手候補が確認するポイント
買い手候補は、DDを通じて会社の実態を確認します。具体的には、誰が本当の株主か、契約や許認可は問題ないか、簿外の債務はないか、収益力は実態としてどの程度か、といった点を見ます。これらは、買収後に想定外の負担やリスクを抱えないようにするための確認です。
価格・表明保証・補償・クロージング条件への影響
DDの結果は、価格だけでなく、契約条件にも影響します。最終契約では、売り手が会社の状態について真実であることを表明・保証する条項(表明保証)や、表明保証に反した場合などに売り手が損害を負担する条項(補償条項)、取引を実行(クロージング)するための前提条件が定められることが一般的です。
資料が整っていれば、これらの条項について、何をどこまで表明できるか、どこにリスクがあるかを具体的に検討しやすくなります。逆に、論点が整理されていないと、買い手側に有利な条件で合意せざるを得なくなる可能性もあります。
大切なのは、資料整理は問題を隠すためではなく、説明可能な状態に整えるために行う、という点です。問題点は、隠すのではなく、事前に整理し、開示範囲や説明方法、契約条件への反映を検討するという方向で対応することが望まれます。
法務DDで準備すべき資料
法務DDでは、会社の基礎から契約・労務・知財・紛争まで、幅広い資料が確認の対象になります。下表に主な資料と、見られるポイント、売り手側の準備・注意点を整理します。実際にどこまで求められるかは案件により異なります。
| 資料の種類 | 主な資料例 | 確認されるポイント | 売り手側の準備・注意点 |
|---|---|---|---|
| 会社の基礎・登記 | 登記事項証明書(履歴事項全部証明書)、定款 | 会社の存在、目的、機関設計、役員、資本金 | 最新の登記と定款の整合、変更履歴を確認する |
| 株式・株主 | 株主名簿、株式譲渡の履歴、株主間契約、譲渡承認の記録 | 真の株主、譲渡制限、名義株、相続未了株式の有無 | 名義と実態のズレ、相続未了、承認手続の有無を早期に整理する |
| 機関・組織 | 株主総会議事録、取締役会議事録、組織図、役員名簿 | 重要事項の決議の有無、手続の適法性、役員構成 | 議事録の作成漏れ・不備を確認し、整備方針を検討する |
| 主要契約 | 仕入先・販売先・代理店・業務委託先との契約書 | 取引条件、契約期間、解除事由、地位の移転(チェンジオブコントロール)条項 | 契約書のない取引、口頭・慣行の取引条件を洗い出す |
| 不動産・賃貸借 | 賃貸借契約書、不動産登記、担保設定の資料 | 使用権原、賃料、原状回復、担保・差押えの有無 | 事業所・工場・店舗の権原と承継可否を確認する |
| 金融・債務 | 借入契約書、担保・保証・リース契約、返済予定表 | 借入条件、担保・保証の範囲、経営者保証の有無 | 経営者保証の扱い、期限の利益喪失条項を確認する |
| 許認可・行政 | 許認可・届出の書類、行政指導・監査の記録 | 事業に必要な許認可の有無、承継・再取得の要否 | スキームにより承継可否が異なるため早期に確認する |
| 労務 | 雇用契約書、労働条件通知書、就業規則、賃金規程、退職金規程 | 労働条件、割増賃金、固定残業代、退職金債務 | 規程と実態のズレ、未払残業代リスクを確認する |
| 知的財産 | 商標・特許等の登録、ライセンス契約、ノウハウ管理資料 | 権利の帰属、第三者の権利侵害、ライセンス条件 | 権利が会社・個人どちらに帰属するかを確認する |
| 個人情報・情報管理 | プライバシーポリシー、情報管理規程、委託先管理資料 | 個人情報の取得・利用・第三者提供の適法性 | 開示範囲を限定し、個人情報の取扱いを整理する |
| 紛争・訴訟 | 訴訟・調停・クレーム・行政対応の資料 | 係争中・潜在的な紛争、偶発債務の有無 | 進行中・過去の紛争を一覧化し、説明方針を準備する |
| コンプライアンス・反社 | 反社会的勢力排除に関する資料、コンプライアンス規程 | 反社・コンプライアンス上の懸念の有無 | 取引先・株主の確認状況を整理する |
| 保険・製品 | 保険契約、事故・損害賠償・製品不具合の資料 | 付保状況、過去の事故・クレーム、製造物責任 | 過去の事故・リコール等の有無と対応を整理する |
これらの資料は、単に「ある/ない」だけでなく、実態と整合しているかが見られます。たとえば株主名簿が更新されていない、契約書のない取引がある、といった点は、買い手の追加質問や契約条件の調整につながりやすい部分です。
財務DDで準備すべき資料
財務DDでは、決算書や帳簿をもとに、財政状態・収益力・簿外債務などが確認されます。中小企業では、オーナーと会社の資金が明確に区分されていないことも多く、その整理が論点になりやすい傾向があります。
| 資料の種類 | 主な資料例 | 確認されるポイント | 売り手側の準備・注意点 |
|---|---|---|---|
| 税務申告 | 直近数期分の法人税・消費税等の申告書、勘定科目内訳明細書 | 申告内容と決算の整合、税務リスクの有無 | 直近3〜5期分を目安にそろえる |
| 計算書類 | 決算書(貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、個別注記表) | 財政状態、経営成績、純資産の推移 | 各期の整合と注記の内容を確認する |
| 帳簿 | 総勘定元帳、試算表、月次試算表 | 取引の実在性、勘定科目の妥当性 | 月次・勘定科目別に整理し、説明できる状態にする |
| 売上・損益 | 売上明細、主要顧客別・商品別・部門別売上、月次損益 | 売上の構成、季節変動、特定顧客への依存 | 主要顧客への依存度、一過性の売上を区分する |
| 債権・債務 | 売掛金・買掛金・未収金・未払金の年齢表 | 回収可能性、滞留・不良債権、簿外債務 | 滞留債権・回収不能見込みを整理する |
| 在庫 | 棚卸資産明細、在庫評価、滞留在庫の資料 | 評価の妥当性、滞留・不良在庫の有無 | 実地棚卸との整合、評価方法を確認する |
| 固定資産 | 固定資産台帳、減価償却明細、設備投資・修繕履歴 | 資産の実在性、償却の妥当性、含み損益 | 実在しない資産、除却漏れを確認する |
| 預金・借入 | 銀行口座・預金残高、借入金明細、返済予定表 | 資金繰り、借入条件、担保・保証 | 個人口座との資金移動を区分する |
| 役員・関連当事者 | 役員報酬、親族給与、役員貸付金・借入金、関連当事者取引 | 取引条件の妥当性、利益相反、私的支出の混入 | 会社と個人の資金移動を整理し説明可能にする |
| 損益の調整要素 | 一過性損益、非経常損益、オーナー経費、私的支出 | 実態としての収益力(正常収益力)の把握 | 正常収益力の算定に向け、調整項目を区分する |
| 簿外・引当 | 未払残業代、退職給付、賞与引当、未払の税金・社会保険料 | 簿外債務・偶発債務の有無 | 計上漏れの負債を洗い出す |
| 計画・資金繰り | 事業計画、予算、資金繰り表、受注残、販売計画 | 将来の収益見通し、資金繰りの安定性 | 計画の前提と根拠を整理する |
| 税務リスク | 税務調査・修正申告・追徴の履歴、繰越欠損金の資料 | 過去の税務処理、将来の税務負担 | 税理士に確認しながら整理する |
財務DDでは、表面的な利益だけでなく、実態としての収益力(正常収益力)が重視されます。オーナーの私的支出や一過性の損益を調整すると、実際の収益力が見えてきます。価格の前提となる部分でもあるため、調整項目を整理しておくことが望まれます。なお、株価・買取価格の考え方については、関連コラム「非上場株式の評価方法と買取価格を確認する」もあわせてご覧ください。
財務DD・法務DDで指摘されやすい点は、事前に整理しておくことで、説明や対応方針を検討しやすくなる場合があります。資料を確認したうえで、論点や開示範囲を整理することができます。
神戸みらい法律会計事務所では、弁護士・公認会計士の視点から、法務・財務の両面の論点整理についてご相談を承っています。
資料を開示する前に確認したい秘密保持・個人情報・開示範囲
資料を準備したら、すぐに買い手候補へ渡してよいわけではありません。開示の前提を整理しておくことが、情報漏えいやトラブルを避けるうえで重要です。
秘密保持契約(NDA)の締結
会社情報を開示する前には、秘密保持契約(NDA)を締結しておくことが一般的です。締結状況のほか、開示の目的、開示できる範囲、秘密保持の期間、開示した情報の利用制限などを確認しておくことが望まれます。仲介会社やFAを介する場合も、誰が・どの情報に・どこまでアクセスできるかを整理しておくと安心です。
営業秘密・個人情報・従業員情報・取引先情報の取扱い
開示する資料には、従業員や取引先の個人情報、営業秘密が含まれることがあります。従業員や取引先の個人情報を含む資料は、個人情報保護法上の取扱いに注意が必要です。M&Aの検討段階での開示と、成立後の承継とでは取扱いが異なる場合があります。
実務では、検討段階では氏名などを伏せた形で開示し、交渉が進んだ段階で範囲を広げる、といった対応がとられることがあります。どの情報を、どの段階で、どの範囲まで開示するかを、事前に整理しておくことをおすすめします。
データルーム・開示方法・社内周知のタイミング
開示方法には、紙資料の閲覧、データルーム(資料を保管・閲覧する仕組み)、メール添付などがあります。コピー、ダウンロード、印刷、閲覧期限の管理も検討事項です。
あわせて、社内で誰に知らせるか、従業員や取引先・金融機関にいつ伝えるかというタイミングの整理も重要です。M&Aの検討が早期に外部へ伝わると、事業に影響が出ることがあります。仲介会社・FA・弁護士・公認会計士・税理士・社会保険労務士の役割分担も、あらかじめ確認しておくとよいでしょう。
資料が不足している場合の対応
中小企業では、資料が完全にそろっていないことは珍しくありません。資料がないからといって、直ちにM&Aができないとは限りません。ただし、資料不足は、買い手の不安や追加質問、価格調整、表明保証・補償条項・クロージング条件に影響する可能性があります。
まずは、不足している資料を次の4つに分けて整理することをおすすめします。
- そもそも存在しない資料:作成義務や慣行がなく、過去に作っていないもの
- 再発行・再取得できる資料:登記事項証明書など、改めて取得できるもの
- 今から整備できる資料:契約書、規程、議事録など、今後整える余地があるもの
- 説明資料で補う資料:書面がない取引条件などを、経緯や実態の説明で補うもの
注意したいのは、過去に存在しない資料を、日付をさかのぼって作成したり、実態と異なる内容で後から作ったりすることは避けるべきだという点です。こうした対応は、かえって表明保証違反や信頼喪失につながりかねません。
議事録・契約書・規程・社内資料の整備方針は、弁護士に確認しながら検討することが望まれます。財務資料については、公認会計士・税理士に確認しながら、実態を説明する資料を整理していくとよいでしょう。
DDでよく問題になるケース
中小企業のM&Aでは、次のような点が論点になりやすい傾向があります。これは「不備があるから問題だ」と責めるためのものではなく、事前に確認しておきたいポイントとして整理しています。
| 項目 | 問題になりやすい理由 | 準備の方向性 |
|---|---|---|
| 株主名簿の未更新 | 真の株主が確定できず、全株式の取得の確実性に影響する | 名簿を実態に合わせて整理し、譲渡・相続の経緯を確認する |
| 株式譲渡・相続の資料不足 | 過去の譲渡承認や相続手続の適法性が確認できない | 経緯を時系列で整理し、不足分の補完方法を検討する |
| 議事録の未作成・不備 | 重要事項の決議手続が確認できない | 弁護士に相談し、整備方針と説明方法を検討する |
| 契約書のない取引 | 取引条件・責任分担が不明確で、承継時に争点化しやすい | 主要な取引から、契約化・条件の書面化を検討する |
| 就業規則・残業管理のズレ | 未払残業代などの労務リスクが顕在化する | 実態を確認し、社会保険労務士・弁護士と整理する |
| オーナーと会社の資金移動 | 役員貸付金や私的支出が損益・純資産に影響する | 会社と個人を区分し、説明資料を準備する |
| 役員貸付金・関連当事者取引 | 取引条件の妥当性や回収可能性が問われる | 取引内容を整理し、処理方針を検討する |
| 簿外債務(未払残業代・退職金等) | 表明保証・補償・価格に影響する | 公認会計士・税理士と計上漏れを確認する |
| 許認可の承継可否 | スキームにより再取得・承継手続が必要になる | 監督官庁や専門職に承継の可否を確認する |
| 説明タイミングの未整理 | 従業員・取引先・金融機関への影響が生じる | 開示の順序と社内周知の時期を計画する |
DD前チェックリスト(開示前の確認事項)
買い手候補に資料を開示する前に、次の点を確認しておくと、開示後のやり取りを進めやすくなります。
- 秘密保持契約(NDA)を締結したか、開示の目的・範囲・期間が明確か
- 開示先(買い手候補・仲介会社・専門職)と開示範囲を整理したか
- 個人情報・営業秘密・取引先情報の取扱いを確認したか
- 直近数期分の決算書・税務申告書・勘定科目内訳明細書をそろえたか
- 定款・登記・株主名簿・各種議事録を確認したか
- 主要契約・許認可・労務・不動産・知的財産の資料を整理したか
- 不足資料・未整備資料・争点になりそうな事項を一覧化したか
- 回答担当者を決め、質問管理表を準備したか
- 開示前に弁護士・公認会計士・税理士等に確認したか
弁護士・公認会計士に相談するタイミング
DD資料の準備は、早い段階で専門職に相談しておくほど、論点を整理しやすくなります。次のようなタイミングが、相談を検討する目安になります。
- M&Aを検討し始めた段階
- 仲介会社やFAと契約する前
- 秘密保持契約を締結する前
- 買い手候補に会社情報を開示する前
- 基本合意書・意向表明書・独占交渉権を検討する前
- DD資料の提出を求められたとき
- DDで問題点を指摘されたとき
- 最終契約書の表明保証・補償・クロージング条件を確認するとき
相談の目的は、結果を保証することではありません。資料を確認したうえで、法務・財務の論点を整理し、開示範囲や契約条件について、何を確認すべきかを明らかにすることにあります。M&Aを進めるべきかどうかも含めて、資料をもとに方針を検討できます。
神戸みらい法律会計事務所は、弁護士と公認会計士の視点から、法務・財務の両面で論点を整理することができます。法人のお客様向け業務を見る、または法律顧問・企業法務の取扱業務を見ることもできます。
よくある質問(FAQ)
M&AのDD(デューデリジェンス)とは何ですか?
買い手側が、対象となる会社や事業の財務・法務・事業・税務などの実態やリスクを調査・検討する工程です。買い手は、その結果をもとに、買収するか、いくらで、どのような条件で取引するかを判断します。
法務DDと財務DDは何が違いますか?
法務DDは、株式・契約・許認可・労務・知的財産・訴訟などの法的なリスクを確認します。財務DDは、決算書や帳簿をもとに、財政状態や収益力、簿外債務の有無などを確認します。両者は重なる論点もあるため、横断的に整理することが望まれます。
売り手側はまず何を準備すればよいですか?
まずは直近数期分の決算書・税務申告書・勘定科目内訳明細書をそろえ、次に定款・登記・株主名簿・議事録など会社の基本資料を確認するとよいでしょう。あわせて、不足している資料を一覧化しておくと、その後の整理がしやすくなります。
資料がそろっていなくてもM&Aを進められますか?
資料が完全でなくても、直ちにM&Aができないとは限りません。ただし、資料不足は買い手の不安や価格調整、表明保証・補償条項に影響する可能性があります。不足資料を「ない/再発行できる/今後整備する/説明で補う」に分けて整理することをおすすめします。
買い手候補に資料をすぐ渡しても問題ありませんか?
資料を開示する前に、秘密保持契約(NDA)の締結や、開示先・開示範囲、個人情報・営業秘密の取扱いを確認しておくことが望まれます。どの情報を、どの段階で、どこまで開示するかを整理してから進めると安心です。
契約書や議事録がない場合はどうすればよいですか?
過去にさかのぼって事実と異なる資料を作ることは避けるべきです。まずは実態を整理し、今から整備できるものは整備し、書面がない部分は経緯や実態の説明で補う方針を、弁護士に確認しながら検討するとよいでしょう。
DDで問題が見つかると必ず破談になりますか?
問題が見つかっても、必ず破談になるとは限りません。多くの場合、開示・説明のうえで、価格や表明保証・補償条項・クロージング条件に反映する形で調整が検討されます。事前に論点を整理しておくほど、対応方針を検討しやすくなります。
弁護士・公認会計士にはいつ相談すればよいですか?
M&Aの検討初期、仲介契約前、秘密保持契約前、基本合意前、DD資料の提出前、最終契約前などが目安です。早い段階で相談しておくほど、開示範囲や契約条件について確認すべき点を整理しやすくなります。
まとめ
M&Aの売り手側が準備するDD資料について、要点を整理します。
- DDは買い手側の調査工程だが、資料を準備するのは売り手側であり、早めの整理が交渉や契約条件の検討に役立つ場合がある
- 準備資料は「会社基本資料/法務資料/財務資料/労務・許認可・不動産・知財資料/不足資料一覧/質問管理表」に分けると整理しやすい
- 開示の前に、秘密保持契約・個人情報・営業秘密・開示範囲を確認する
- 資料が不足していても、4つに分類して整理する。後付けで事実と異なる資料は作らない
- スキームや個別事情によって、必要資料も結論も異なる
- 開示前・基本合意前・最終契約前に、資料と契約条件を確認しておく
M&AのDD資料対応でお悩みの中小企業経営者の方へ。資料を確認しながら、法務・財務の論点、開示範囲、表明保証や補償条項の確認ポイントを整理できます。M&Aを進めるべきかどうかも含めて、資料をもとに方針を検討できます。
神戸みらい法律会計事務所は、弁護士と公認会計士の視点から、企業のご相談に対応しています。開示前・基本合意前・最終契約前に、一度ご相談ください。
監修者・執筆者
代表弁護士・公認会計士 藤井 貴之
兵庫県弁護士会所属。企業法務、M&A・事業承継、契約書、労務、相続、交通事故などを取り扱っています。弁護士と公認会計士の双方の視点から、法務・財務の論点整理に対応しています。
経歴・取扱分野の詳細は、弁護士紹介を見るからご確認いただけます。
参考資料
- 中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」
- 中小企業庁「事業承継ガイドライン」
- e-Gov法令検索「会社法」
- 厚生労働省「企業組織の再編(会社分割等)に伴う労使関係」
- 個人情報保護委員会「法令・ガイドライン等」
- 日本公認会計士協会「公認会計士による中小企業支援」

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