法務DD⑷ ~ 労務コンプライアンスについて
企業法務M&A法務DD⑷ ~ 労務コンプライアンスについて
1 労務コンプライアンス上の問題の頻出について
労働関連法規制は、複雑かつ膨大であり、中小企業において現実問題として完全に遵守することは困難であり、労務コンプライアンス違反は中小企業において頻出する問題です。
2 労働時間の管理・未払賃金
使用者は労働者の労働時間を把握・算定する義務があり、自己申告制による時間管理は例外として認められているに過ぎません。
自己申告制による場合には厚生労働省通達で定める措置を講ずる必要があり、必要な措置が講じられていない場合には、労働基準監督署から是正勧告又は指導を受けるリスクがあります。
また、長時間労働による安全配慮義務違反のリスクや、禁止されている労働時間の端数処理(切捨て)の実施なども頻出するリスクです。
なお、使用者による労働時間の管理については、こちらをご参照ください。
そして、労働時間の管理方法を確認した上で、サービス残業の実態がないか、割増賃金の算定基礎から除外している賃金(除外賃金)が適切かどうか、管理監督者の範囲は妥当かどうかなどを確認し、未払賃金が生じていないかどうかを確認する必要があります。
3 固定残業代の合意
固定残業代制度とは、時間外手当(残業代)に代えて一定額の手当(固定残業代)を支払う制度です。
株式譲渡によりM&A取引を実施しようとする場合、買主は通常、対象会社の発行済株式の100%の取得を希望するため、少数株主から株式を買い集める必要が生じることがあります。
中小企業のM&Aにおいては、少数株主からの株式の買い集めに関しては、株主の属性をよく知る経営株主に買取交渉を委ね、最終契約においてクロージングの前提条件とするなどの対応をすることがあります。
買い集めにおいては、ある株主に対する譲渡対価と別の株主に対する譲渡対価で差が生じる場合、その差額については寄付金認定されるなど税務上の問題が生じるおそれがあるため、なるべく乖離が生じないよう留意する必要があります。
なお、経営株主が全株式取得をクロージングの前提条件とすることに応じない場合、譲渡案として、少なくともクロージン後にキャッシュアウトによる100%株式取得が可能になるよう、総議決権の90%(特別支配株主による株式等売渡請求(会社法第179条))又は3分の2以上(株式併合によるキャッシュアウト(会社法第180条第2項、第309条第2項))の株式の取得を求めるべきです。
4 名義株主の存在
平成2年商法改正前は会社の設立のためには発起人が7名以上必要であり、設立にあたって発起人7人を揃えるために第三者(名義株主)から名義を借りて発起人とし、出資自体は創業者などの名義借用者が行うということが行われていました。
こうした場合に法的には、実際に出資を行っている創業者(名義借用者)が真正の株主になるというのが判例の立場ですが、平成2年以前に設立された対象会社においては、設立にあたっての実質株主を認定するための客観的資料が残存していないことも少なくありません。
したがって、名義株主が自身が真の株主であるとして権利主張をしてきた場合、名義株に株主名簿の名義を経営株主などの実質株主名義に変更することの同意書を、同意書を作成することの対価(いわゆるハンコ代)を支払って作成してもらうことが考えられます。
M&Aについて⑴ ~ M&Aの流れ
M&Aについて⑵ ~ DDとは
M&Aについて⑶ ~ 基本合意とは
M&Aについて⑷ ~ 企業価値評価とは
法務DD⑴ ~ 法務DDとは
法務DD⑵ ~ 法務DDの流れ
法務DD⑶ ~ 株式・株主について