暴行・傷害事件の弁護活動について
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暴行事件・傷害事件の弁護活動
はじめに
本コラムでは、暴行事件・傷害事件の弁護活動について、淡路島の弁護士が解説いたします。
「暴行罪」は、他人の身体に対して暴行を加えた場合に成立する犯罪です。
「傷害罪」は、他人の身体に傷害を負わせた場合に成立する犯罪です。
「暴行罪」の法定刑は、2年以下の懲役、30万円以下の罰金、抑留、科料です。
「傷害罪」の法定刑は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金です。
起訴前(逮捕・勾留)段階の弁護活動
1 逮捕・勾留されてしまうかどうか
「暴行罪」では、被害者に傷害結果が生じていないため、そもそも逮捕されないことも多く、逮捕されたとしても勾留されないことが多いです。
ただし、同居の交際相手や家族に対する暴行は、DV事案や虐待などが疑われ、勾留されてしまうことがあります。
「傷害罪」では、もともと被害者と面識がなく酔ってけんかをしてしまったなどの偶発的なケースでは勾留されないことが多いです。
一方で、被害者との関係性や傷害結果の重さによって、勾留されてしまうことがあります。
「暴行罪」、「傷害罪」では、勾留されたとしても、速やかに示談を成立させることで、速やかに釈放されることが多く、勾留も10日までで延長がされないことも多いです。
2 起訴前(逮捕・勾留)段階における弁護活動のポイント
「暴行罪」も「傷害罪」も人の身体の安全を保護する犯罪であることから、被害弁償(=犯罪行為の被害者に対して、金銭等の賠償を行うこと)を行ったかどうか、示談が成立したかどうかが、起訴・不起訴の判断において大きく考慮されます。
「暴行罪」では、被害弁償を行って示談が成立することで不起訴になり、釈放されることが多いです。
「傷害罪」では、初犯であれば示談が成立することで不起訴処分になることが見込まれますが、検察官の見立てにもよるため、検察官に確認しながら示談を進める必要があります。
全治2週間未満の軽微な傷害である場合、示談が成立すれば不起訴処分になることが多いです。
一方で、全治2週間以上の軽微と評価できない場合、示談が成立したとしても起訴されてしまうことがあります。
いずれにせよ、起訴前段階における弁護活動としては、不起訴を勝ち取るためには、被害弁償の申出を行って、示談を成立させることが最も重要になります。
3 示談金の相場
「暴行罪」では、傷害の結果は発生していないので、示談金(慰謝料)の相場は、10万円程度から30万円程度までであると考えられます。
前述したとおり、「暴行罪」の法定刑が30万円以下の罰金であることからしても、30万円は一つの目安になるでしょう。
「傷害罪」では、傷害の結果が生じており、傷害慰謝料のほか、治療関係費、休業損害などの損害も生じていることになります。
ここで、交通事故における裁判基準は、公益財団法人日弁連交通事故相談センターが発行する赤い本(「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」)に基準の詳細が掲載されていますので、こちらの基準も参考にして、被害者に生じた傷害の内容、行為態様、事後の対応、被疑者の資力なども考慮して提示する金額を決定することになります。
ちなみに、赤い本(「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」)では、傷害慰謝料に関しては、入通院期間を基礎として、以下の一覧表を使用して算定します。
・ 骨折などの怪我の場合(別表Ⅰ)
・ むち打ち症などの怪我(別表Ⅱ)
なお、共犯事件で共犯者間で協力できる場合、主犯格の弁護人が中心になるなどして示談をまとめることがあり、共犯者で示談金を用意することがあります。
起訴後(公判)段階の弁護活動
1 保釈が認められるかどうか
保釈請求には、➀権利保釈と➁裁量保釈がありますが、「暴行罪」、「傷害罪」ともに権利保釈が認めれ得る犯罪であるため、除外事由に該当しない限り、被告人の権利として保釈が認められます。
権利保釈の却下事由(除外事由)としては、証拠隠滅行為が疑われること(「罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があること」)ですが、「暴行罪」、「傷害罪」では、保釈が認められる可能性は高いです。
ただし、被害者が同居の交際相手、家族などであるというDV事案であって、自宅以外に被告人が戻る場所がないが自宅に被害者が居住しているため、被害者との接触のおそれがある場合などでは、保釈が認められにくいと考えられます。
このような場合、被害者との間で示談を成立させたり、自宅以外で身元を引き受ける者を探すなどすることで、保釈が許可される可能性は高まります。
2 暴行罪・傷害罪の量刑及び起訴後(公判)段階の弁護活動のポイント
「暴行罪」では、初犯の場合は不起訴になることも多く、示談が成立すれば、さらに不起訴になる可能性が高まります。
半分以上の事案は不起訴処分になっていると考えられ、仮に起訴されてしまったとしても、略式請求による罰金刑にとどまることがほとんどです。
「傷害罪」では、傷害結果が軽微である場合、不起訴になることもあり、「傷害罪」ではなく「暴行罪」として処理されることもあります。
一方で、全治2週間以上の治療を必要とする場合など、傷害結果が軽微と評価できない場合には、略式請求による罰金刑となることが多いです。
さらに、傷害結果が重度である場合、犯行態様が悪質な場合(=暴行に凶器を用いている、暴行の回数が多い、暴行の時間が長いなど)は、公判請求による正式裁判となることがあります。
特に傷害結果が重大なものである場合、犯情が悪質で示談も不成立の場合、初犯でも実刑になることが考えられます。
以上のとおり、「暴行罪」、「傷害罪」ともに、示談が成立したかどうかは、刑事処分の決定にあたって非常に重要な事項となります。
また、同じ示談が成立した場合でも、被害者が宥恕(=寛大な心で罪を許すこと)し、加害者の謝罪を受け入れているかどうかは、刑事処分の決定にあたって考慮されます。
したがって、実刑になるおそれがある場合などでは特に宥恕文言付きの示談をすることが重要になってきます。
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