神戸市の須磨区・垂水区・西区で長く暮らしてきた戸建てを、熟年離婚にあたってどう分ければよいのか。ご相談の場面では、「自宅は誰のものになるのか」「住宅ローンが残っているとどうなるのか」「離婚後もこの家に住み続けられるのか」「いっそ売却したほうがよいのか」といった不安が重なりがちです。長年の住まいであるほど、金額の問題だけでなく、これからの生活の土台にかかわる判断になります。
この記事では、離婚時の財産分与の基本を確認したうえで、自宅(土地・建物)の評価の考え方、住宅ローンが残っている場合の分け方、住み続ける方法と売却する方法の比較、名義変更や連帯保証で問題になりやすい点、そして手続の前に確認しておきたい資料を整理します。結論を先にお伝えすると、自宅の分け方には「一方が取得して代償金で調整する」「売却して清算する」など複数の選択肢があり、どれが現実的かは評価額・ローン残高・名義・お互いの希望・金融機関の対応によって変わります。まずは資料をそろえて全体像を把握することが、見通しを立てる出発点になります。
この記事で分かること
- 自宅が財産分与の対象になる理由と、2分の1ルールの考え方
- 自宅の評価に使われる資料(固定資産評価額・査定額など)の違いと限界
- アンダーローン・オーバーローンそれぞれの分け方の考え方
- 住み続ける場合と売却する場合の比較、名義・連帯保証の注意点
- 調停や協議書の前に確認しておきたい資料
自宅の分け方は、評価額・住宅ローン・名義・お互いの希望によって取り得る選択肢が変わります。ご自身のケースでどの選択肢が現実的かを整理したい場合は、離婚・男女問題のご相談をご利用いただけます。
Contents
まず押さえたい結論——神戸の築古戸建てを分けるときの全体像
自宅を財産分与するときは、感覚で「どちらのものか」を決める前に、事実を示す資料を集めることが先決です。特に次の3点は、どの選択肢を選ぶ場合でも土台になります。
先に確認したい3つのこと(評価・ローン・名義)
| 確認すること | 主な資料 | なぜ必要か |
|---|---|---|
| 自宅の評価(土地・建物) | 不動産会社の査定書、固定資産評価証明書、登記事項証明書、購入時の売買契約書 | 分ける対象の価値を把握するため。評価資料ごとに性質が異なります |
| 住宅ローンの状況 | 住宅ローン残高証明書、返済予定表、金銭消費貸借契約書、抵当権設定契約書 | 残高と担保・債務者・保証の関係を確認するため |
| 名義・権利関係 | 登記事項証明書(土地・建物) | 単独名義か共有名義か、担保がどう付いているかを確認するため |
自宅の分け方には複数の選択肢がある
大きく分けると、一方が自宅を取得して他方に代償金を支払う方法と、売却して代金を清算する方法があります。どちらが適するかは、評価額とローン残高の関係、住み続けたいという希望、支払能力、金融機関の対応などにより変わります。住宅ローンが残っている場合は、名義変更や借換えに金融機関の審査・同意が関係するため、当事者だけで結論を出せないこともあります。
財産分与の基本と、自宅が対象になる理由
財産分与とは(清算的要素・扶養的要素、2分の1ルール)
財産分与は、夫婦が婚姻中に協力して取得・維持した財産を、離婚の際または離婚後に分ける制度です(民法768条)。婚姻中に築いた財産の清算を中心とし(清算的要素)、離婚後の生活を支える扶養的な要素が考慮される場合もあります。分ける割合は、実務上、夫婦の寄与を等しいものとみる「2分の1ルール」が原則とされ、専業主婦(夫)としての家事・育児も財産形成への寄与と評価されます。もっとも、寄与の程度が異なることが明らかな場合には割合が修正されることもあり、結論は個別事情により異なります。
令和8年4月1日施行の改正で変わった点
令和6年の民法等改正(令和6年法律第33号)が令和8年4月1日に施行され、財産分与に関するルールが見直されました。主な点は次のとおりです。
- 請求期間が離婚後2年から5年に伸長されました(民法768条2項ただし書)。ただし、施行日より前(令和8年3月31日以前)に離婚した場合は、従来どおり2年です(経過措置)。この期間は時効と異なり、話合いをしていても進行を止められない「除斥期間」とされています。
- 寄与の程度が異なることが明らかでないときは相等しいものとするという、いわゆる2分の1ルールが条文に明記されました(民法768条3項後段)。
- 家庭裁判所が当事者に対し、財産の状況に関する情報の開示を命じることができる情報開示命令が整備されました(家事事件手続法・人事訴訟法の改正)。正当な理由なく開示しない、または虚偽の開示をした場合の過料も定められています。
離婚の時期によって請求できる期間(2年か5年か)が変わります。既に離婚している場合は、ご自身のケースがどちらにあたるかを早めに確認することをおすすめします。
土地・建物・住宅ローン・名義・担保・連帯保証の関係
自宅は「土地」と「建物」に分けて考えます。名義(登記上の所有者)が夫婦の一方でも、婚姻中に協力して取得した実質的な共有財産であれば、財産分与の対象になり得ます。一方、婚姻前から所有していた財産や、相続・贈与で得た財産は「特有財産」として対象外とされるのが原則ですが、購入資金の一部に用いられた場合などは扱いが複雑になります。
住宅ローンが残っている場合、その借入れには金融機関の担保(抵当権)が設定され、契約者(債務者)や連帯債務者・連帯保証人が定められています。財産分与を考える際は、名義・担保・債務者・保証がそれぞれ誰になっているかをあわせて確認する必要があります。
自宅の「評価」をどう考えるか——資料ごとの性質と限界
評価資料の種類と使い分け
自宅の「価値」を示す資料は複数あり、それぞれ目的も水準も異なります。どれか一つが自動的に「財産分与の金額」になるわけではなく、用いる評価は事案・当事者の合意・裁判所の判断によって変わります。
| 資料・評価 | 主な性質 | 主に使われる場面 |
|---|---|---|
| 固定資産評価額(固定資産税評価額) | 市区町村が固定資産税等の課税のために算定する評価額。課税目的のため市場価格とは水準が異なることがあります | 固定資産税の計算、登記の登録免許税など |
| 相続税路線価 | 国税庁が相続税・贈与税の計算基礎として定める価格。市場価格の指標より低めの水準になることがあります | 相続税・贈与税の計算 |
| 公示地価 | 国土交通省が標準地の正常な価格を毎年公示するもの | 土地取引や評価の指標 |
| 取引価格情報(不動産情報ライブラリ) | 実際の取引価格を集計した情報。周辺相場の参考になります | 相場感の把握 |
| 不動産会社の査定額 | 売却を前提に不動産会社が算出。会社により幅が出ることがあります | 売却・時価の目安 |
| 不動産鑑定評価 | 不動産鑑定士による評価。費用はかかりますが専門的な評価です | 評価に争いがある場合など |
財産分与では、売却できるかどうかを踏まえた時価をどう捉えるかが問題になりやすく、査定額や取引事例、必要に応じて鑑定評価が参照されることがあります。固定資産評価額や路線価は課税のための金額であり、そのまま時価と一致するとは限らない点に注意が必要です。
築古戸建てでは建物評価が下がり土地評価が中心になりやすい
建物は年数の経過とともに評価が下がっていく傾向があり、築年数が進んだ戸建てでは、評価の中心が土地になる場合があります。もっとも、建物の状態、耐震性、リフォームの有無などによって評価は変わり得るため、一律に「古い家に価値はない」と決めつけることはできません。
リフォーム・増改築・修繕履歴の扱い
過去のリフォームや増改築、修繕の履歴は、建物の評価や、住み続けるかどうかの判断に影響することがあります。誰がいつ費用を負担したかによって評価上の考慮が変わる場合もあるため、リフォーム契約書や領収書を保管しておくと整理に役立ちます。
住宅ローンが残る家の分け方——アンダーローンとオーバーローン
住宅ローンが残っている自宅の分け方は、評価額とローン残高のどちらが大きいかで考え方が変わります。
アンダーローン(評価額がローン残高を上回る)の場合
自宅の評価額がローン残高を上回るときは、差額(純資産に当たる部分)が財産分与の対象として考慮され得ます。一方が自宅を取得して他方に差額の一部を代償金として支払う、あるいは売却してローンを完済し残った代金を分ける、といった方法が考えられます。具体的な金額は評価額・残高・寄与の割合などにより異なります。
オーバーローン(ローン残高が評価額を上回る)の場合
ローン残高が評価額を上回るときは、自宅に純資産がない(差引きでマイナスの)状態です。この場合、自宅をプラスの財産として計上できないことがあり、他の財産(預貯金・退職金など)とあわせて全体で調整することがあります。売却する場合は、売却代金で完済できない不足分の負担や、金融機関の同意(いわゆる任意売却)が問題になることがあり、対応は契約内容や金融機関の対応により変わります。
住み続ける場合と売却する場合の比較
| 観点 | 一方が住み続ける(取得) | 売却して清算する |
|---|---|---|
| 手元に残るもの | 自宅(住まい) | 売却代金(諸費用・ローン返済後の残額) |
| 住宅ローンの扱い | 債務者・名義の変更や借換えに金融機関の審査・同意が必要になる場合があります。ローンが残れば支払は継続します | 売却代金での完済が基本。オーバーローンだと不足分の負担が問題になります |
| 代償金 | 取得する側が他方に支払うことがあります | 原則として不要(代金を分けます) |
| 主なメリット | 生活環境を維持しやすい。地域・人間関係を保ちやすい | 現金化して清算が明確になる。将来の維持費・管理から解放されます |
| 主な注意点 | 評価額・ローン残高・支払能力・借換えの可否 | 売却の時期・相場・諸費用、譲渡所得税等の税務、オーバーローンの処理 |
いずれの方法も、住宅ローンの契約内容や金融機関の対応、売却相場や税務によって結論が変わります。税務は税理士、登記は司法書士、売却相場や仲介は不動産会社、ローン審査は金融機関にそれぞれ確認が必要になる場面があります。
名義変更・債務者変更・連帯保証で問題になりやすい点
ここは誤解が生じやすいところです。整理すると次のようになります。
- 名義変更(所有権の移転登記)と、ローンの債務者変更は別の問題です。当事者間で所有権を移すことはできても、住宅ローンが残っている自宅には担保が設定されており、債務者を変える(債務引受)・借換えをするには、金融機関の審査や同意が必要になることが多いです。
- 連帯保証人・連帯債務者は、離婚したからといって自動的に外れるわけではありません。外れるには金融機関の同意や、代わりの保証などが求められることがあります。
- 当事者間の合意は、金融機関を直接拘束しません。「離婚後は相手がローンを払う」と取り決めても、金融機関との関係では従来どおりの責任が残ることがあります。金融機関との関係は別途確認が必要です。
- 誰が支払うか、名義・登記をどうするか、代償金や清算の範囲などは、離婚協議書・公正証書・調停調書で明確に定めておくことが望ましいといえます。
支払の継続、滞納、期限の利益喪失、競売といったリスクは、契約内容や金融機関の対応によって異なります。取り決めの前に、契約書と残高の状況を確認しておくことをおすすめします。
須磨区・垂水区・西区の築古戸建てで確認しておきたい地域的な事情
神戸市の須磨区・垂水区・西区には、郊外の住宅地やニュータウン型の住宅地、駅からの距離や坂の有無、造成の時期などの影響を受けやすい住宅地もみられます。築年数が進んだ戸建ての場合、土地と建物の評価をどう捉えるか、住み続けるか売却するかの判断が悩みどころになりやすい面があります。
もっとも、地価や売却相場は地域や物件ごとに大きく異なり、同じ区内でも条件によって差があります。相場は一般論ではなく、査定や公的な価格情報などで個別に確認する必要があります。判断材料として、登記事項証明書・固定資産評価証明書に加え、複数の査定や取引価格情報を参照しておくと、選択肢を整理しやすくなります。
熟年離婚で自宅とあわせて整理したい財産——退職金・預貯金・年金分割など
熟年離婚では、自宅だけでなく、これまで築いてきた財産全体を見渡して調整することが多くなります。自宅の分け方は、次のような財産とあわせて検討すると全体の見通しが立てやすくなります。
- 退職金・預貯金・生命保険:婚姻中の形成分は財産分与の対象として考慮され得ます。退職金は支給の見込みや基準時の扱いが問題になることがあります。
- 年金分割:婚姻期間中の厚生年金の記録を分ける制度です。分割の対象は厚生年金(報酬比例部分)で、国民年金(基礎年金)は対象外です。合意分割と3号分割があり、按分割合の上限は50%です。請求期限は離婚等をした日の翌日から5年(令和8年3月31日以前に離婚等をした場合は2年)で、財産分与とは別の手続です。手続や見込額は年金事務所で確認できます。
- 相続財産・親からの援助:相続で得た財産や、購入時の親からの援助は「特有財産」として扱いが変わることがあり、資料に基づく確認が必要です。
自宅を「取得する」か「売却する」かは、退職金・預貯金・年金分割まで含めた老後の生活設計と切り離せません。自宅単体ではなく、財産全体のバランスで考えることが大切です。
手続前に確認したい資料チェックリスト
離婚協議書に署名する前、自宅を売却する前、名義変更を考える前、住宅ローンの支払者を変える前、調停を申し立てる前に、次の資料をそろえておくと、話合いや手続を進めやすくなります。
- 登記事項証明書(土地・建物)
- 固定資産税納税通知書
- 固定資産評価証明書(神戸市の固定資産課税台帳登録事項証明書など)
- 住宅ローン残高証明書・返済予定表
- 金銭消費貸借契約書・抵当権設定契約書
- 不動産会社の査定書(複数あると比較しやすい)
- 購入時の売買契約書
- リフォーム契約書・領収書
- 預貯金通帳
- 退職金の見込額が分かる資料
- 年金分割に関する資料(年金分割のための情報提供請求書など)
- 別居時点・離婚時点の財産が分かる資料
なお、財産分与や年金分割の請求には期間の制限があります。離婚の時期によって請求できる期間が異なるため、既に離婚している場合は、ご自身のケースの期限を早めに確認することが大切です。相手方が財産を明らかにしない場合には、家庭裁判所の情報開示命令が用いられることもあります。
弁護士に相談するタイミングと、相談でできること
「まだ離婚を決めていない」「相手と話し合う前」の段階でも、資料を整理して見通しを立てておくことには意味があります。弁護士への相談は、結果を保証するものではありませんが、手元の資料をもとに、住み続ける・売却する・代償金で調整するといった選択肢と、その場合の考え方を整理する助けになります。
自宅の分け方は、税務・登記・住宅ローン審査・売却相場など、弁護士以外の専門家の確認が必要になる場面があります。相談の中で、どの点を税理士・司法書士・不動産会社・金融機関に確認すべきかも整理できます。
手元の資料(登記事項証明書・住宅ローン残高証明書・固定資産評価証明書など)をもとに、選択肢とその見通しを整理できます。署名前・売却前・名義変更前・調停申立て前の確認にご利用ください。
よくある質問(FAQ)
自宅は必ず妻(または夫)がもらえますか。
「どちらがもらう」と一律に決まるものではありません。一方が取得して代償金で調整する、売却して代金を分けるなど複数の選択肢があり、評価額・ローン残高・希望・支払能力・金融機関の対応により変わります。個別事情により結論は異なります。
住宅ローンが残っている家でも財産分与の対象になりますか。
対象として検討され得ます。評価額がローン残高を上回る場合は差額が考慮され、下回る(オーバーローン)場合は他の財産とあわせて全体で調整することがあります。扱いは契約内容により変わります。
離婚後もこの家に住み続けることはできますか。
住み続ける方法もありますが、ローンが残っている場合は、名義・債務者の変更や借換えに金融機関の審査・同意が関係します。支払能力や借換えの可否によって現実的かどうかが変わるため、資料を確認したうえで判断する必要があります。
ローン残高が自宅の評価額を上回る(オーバーローン)ときはどう分けますか。
自宅をプラスの財産として計上できないことがあり、預貯金や退職金など他の財産とあわせて調整することがあります。売却時は不足分の負担や金融機関の同意が問題になる場合があります。事案により異なります。
自宅の評価額は固定資産税の評価額を使えばよいのですか。
固定資産評価額は課税のための金額で、そのまま時価と一致するとは限りません。財産分与では査定額や取引事例、必要に応じて鑑定評価が参照されることがあり、用いる評価は事案や合意、裁判所の判断によって変わります。
住宅ローンの名義や連帯保証は離婚すれば自動的に外れますか。
自動的には外れません。債務者の変更や連帯保証からの離脱には、金融機関の審査・同意が必要になることが多いです。当事者間の取り決めは金融機関を直接拘束しないため、金融機関への確認が必要です。
財産分与はいつまでに請求すればよいですか。
令和8年4月1日施行の改正により、離婚後5年以内とされています(民法768条2項ただし書)。ただし、施行日より前(令和8年3月31日以前)に離婚した場合は従来どおり2年です。この期間は話合い中でも進行を止められないため、早めの確認をおすすめします。
熟年離婚では自宅以外に何を整理しておくべきですか。
退職金・預貯金・生命保険、年金分割などが同時に問題になりやすい財産です。年金分割は財産分与とは別の手続で、請求期限や対象範囲が定められています。自宅と老後の生活設計をあわせて考えることが大切です。
まとめ
- 自宅の分け方には、取得して代償金で調整する方法と、売却して清算する方法など複数の選択肢があります。
- まず、評価(査定・固定資産評価証明書等)・住宅ローン(残高証明書等)・名義(登記事項証明書)を確認しましょう。
- 評価資料は目的ごとに水準が異なり、固定資産評価額がそのまま時価になるわけではありません。
- アンダーローンとオーバーローンで分け方の考え方が変わります。
- 名義変更と債務者変更は別問題で、連帯保証は離婚で自動的に外れません。金融機関の対応により結論が変わります。
- 財産分与・年金分割には請求期間があり、離婚の時期によって期間が異なります。
- 署名前・売却前・名義変更前・調停申立て前に、資料をそろえて見通しを整理しておくと安心です。
神戸で自宅と住宅ローンが残る熟年離婚をお考えの方は、資料をもとに選択肢と見通しを整理することから始められます。離婚・男女問題のご相談や費用のご確認は、下記からお進みください。
監修・執筆
本記事は、神戸みらい法律会計事務所(弁護士法人ひょうご支所)の弁護士・公認会計士 藤井貴之が内容を確認しています。離婚・男女問題に関する取扱業務や弁護士のご紹介は、下記のページをご覧ください。
参考資料(公的機関・公式資料)

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