法務DD⑸ ~ 組織体制について
企業法務M&A法務DD⑷ ~ 労務コンプライアンスについて
1 組織体制の問題の頻出について
会社法の適用関係を中心とした会社の機関構成、組織運営は、労務コンプライアンス違反と同様、中小企業において頻繁に発見されるコンプライアンス上の問題です。
具体的に頻繁に発見されるコンプライアンス上の問題は以下のとおりです。
2 株主総会・取締役会の不開催
中小企業においては、株主総会及び取締役会を開催していない事例が頻繁に見られ、本来、株主総会及び取締役会の開催を省略するために必要な書面決議も行われていないことが多いです。
具体的には、書面決議等の制度を利用しないで、株主総会における取締役及び監査役の選任、取締役会における代表取締役の選定などの商業登記申請の添付資料として必要な限りで、形だけ司法書士が株主総会議事録及び取締役会議事録を作成していることが散見されます。
このような場合、取締役会が会社法上必要とされる頻度(取締役の3カ月に1回以上の職務執行状況の取締役会に対する報告義務)で開催されていない、利益相反取引において会社法上必要な承認が得られていない、特別利害関係のある取締役が議長を務め又は決議に参加している、必要な招集手続(招集手続省略のための手続を含む。)が採られていない、業務執行の決定に取締役会決議を必要とするにもかかわらず行っていない、取締役の選任手続が行われていない等の問題が生じることになります。
3 定款・社内規程の法令適合性
定款の内容が法令に適合したものとなっていないことがあります。典型的には、会社法の改正に対応した定款の改訂がなされていない場合が見受けられます。
また、取締役会規則・株式取扱規程などの会社の内部規程(社内規程)が法令・定款に適合していないことがあります。社内規程が法令に違反していることはあまりありませんが、定款の規定と整合性を欠いており、定款と社内規程との適用関係に疑義が生じるようなことはよくあります。
4 決算手続
過去の計算書類に誤り(誤謬)があることがあります。
計算書類に誤謬(誤り)が存在しても、会計上の重要性がない場合には、計算書類の承認決議などに違法性が生じることはありません。
もっとも重要な誤謬(誤り)がある場合、問題期及び後続期の計算書類は確定しているとはいえないため、これを確定させるためには、訂正された計算書類について、改めて会社法所定の計算書類の監査、承認の過程を経る必要があります。
また、株式会社においては、毎期、貸借対照表(大会社においては、貸借対照表及び損益計算書)を公告しなければなりません(決算公告)。
しかしながら、中小企業においては、決算公告を懈怠している企業が多いです。
さらに、剰余金の分配を分配可能額の範囲を超えて違法に配当していることもありますので、留意する必要があります。