M&Aについて⑶ ~ 基本合意とは
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M&Aについて⑶ ~ 基本合意とは
1 基本合意とは
1 基本合意とは
基本的な条件が合意に至った時点で基本合意(LOI、Letter of intent、MOU、Memorandum of understanding)をします。
基本合意とは、最終契約に至る前に基本的な事項について両者が合意できたことを書面で確認するものです。
基本合意は、基本的にはM&Aを実行する法的義務を規定するのではなく、価格レンジ、買収スキーム、買収時期などの重要な条件面での合意を定め、重要な条件面での合意を図ることにあります。
ただし、排他的交渉権を買い手企業に与えることがあり、これは法的権利・義務として拘束力を有することになります。
また、基本合意はM&A交渉の節目となるため、基本合意を締結できるかどうかは、M&A交渉が成立するかどうかの確度に大きく影響することになります。
2 基本合意の役割
⑴ 重要な条件に関する合意形成
基本合意には、買収価格のレンジや買収スキームなどといったM&A交渉上の重要な条件における合意が盛り込まれることが多く、基本合意の締結によって、両者における重要な条件に関する合意形成が実現できます。
⑵ 買収価格のレンジ設定
基本合意には、具体的な買収価格のレンジが盛り込まれることがあり、最終的な買収価格は基本合意締結後のDDによる検出事項等も考慮した上で最終的に決定するものですが、基本合意において設定した買収価格のレンジ内での交渉・調整となることが多く、買収価格のレンジを設定することができる。
⑶ M&Aスケジュールの明確化
基本合意には、具体的な最終契約日の目途や基本合意の有効期限が盛り込まれることがあり、これによりM&Aのクロージングまでのスケジュールを明確化することができます。
⑷ 排他的交渉権(独占交渉権)の設定
基本合意では、買い手に排他的交渉権(独占交渉権)が付与されることがあり、売り手は他の第三者と交渉することが禁止され、違反した場合、損害賠償責任をを負うことになります。
前述したとおり、基本合意は、原則として法的義務を規定するのではありませんが、排他的交渉権に関しては、例外的に法的権利・義務として拘束力を有します。
なお、DD(Due Dilligence、デューディリジェンス)に対する協力義務が明記されることもあり、かかる条項も通常、法的権利・義務として拘束力を有するものと考えられます。
⑸ 取引成立に向けた心理的拘束
基本合意が締結されることによって、売り手・買い手双方の取引成立に向けた心理的拘束力が生じることも期待できます。
3 基本合意の条項
⑴ 買収価格のレンジや買収スキーム等
基本合意には、買収価格のレンジや買収スキームなどといったM&A交渉上の重要な条件における合意が盛り込まれることが多く、こうしたM&Aにおける基礎的な取引条件について基本合意の段階で明確にしておくことによって、その後の交渉をスムーズに運ぶことができます。
買収価格に関しては、一定の幅を以て合意する場合のほか、特定の価格で一応の合意をする場合もあるものの、基本合意後のDD(Due Dilligence、デューディリジェンス)により検出された事項によって価格が調整されることを条件として合意がなあされます。
もっとも、特定の価格で合意をした場合、その後、価格が引き下げられない可能性があるため、買い手としてはこのことを十分に認識した上で、受け入れることのできる価格水準で基本合意を締結しておくことが望ましいと考えられます。
⑵ 役員・従業員の引継ぎと雇用条件
基本合意には、役員・従業員の引継ぎについても重要な取引条件となることがあり、その場合、基本合意段階で合意されることがあります。
買収対象企業が非上場のオーナー企業で、後継者不在が売却理由である場合、オーナー経営者が早期に引退することが売り手側の重要な関心事になることが多く、オーナーの引退時期や役員退職慰労金の条件は重要な取引条件になることがあります。
⑶ クロージングの前提条件
クロージングの前提条件として、許認可の取得や重要な契約の更改、不採算部門の撤退などの買収対象企業の抱える重要な課題の解決等が盛り込まれることがあります。
⑷ 最終契約日・クロージング日の目途定
前述したとおり、基本合意には、具体的な最終契約日の目途や基本合意の有効期限が盛り込まれることがあり、これによりM&Aのクロージングまでのスケジュールを明確化することができます。
最終契約日の目途としては、DDに必要な日程などを考慮した上で、概ね基本合意から2~4か月後が目安となります。
⑸ DDに対する協力義務、独占交渉権、秘密保持義務、善管注意義務などの当事者の義務
基本合意では、DD(Due Dilligence、デューディリジェンス)に対する協力義務、排他的交渉権(独占交渉権)のほか、秘密保持義務、善管注意義務などの当事者の義務が明記されることがあります。
売り手はこうした法的義務に違反した場合、損害賠償責任を負うことになり、基本合意において違約金の定めがなされることもあります。
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